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1536 系譜
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レイ・ランデルは戦い方を選べた。
首都を防衛する側のレイに対し、攻め入る側のレイチェルには時間がなかったからだ。
その理由は帝国の首都を覆う闇にある。
この闇は帝国の防衛の要であり、本来はクインズベリー軍を襲うはずだった。
しかし帝国には誤算があった。闇に対抗できる力、光魔法を使うウィッカー・バリオス、そして闇の巫女ルナの二人が、闇を押さえる事に成功したのだ。
これによりクインズベリー軍と、同盟のロンズデール軍は、帝国軍に対して正面から戦う事が可能となった。
だがそれが、いつまでも持つわけではない。
首都を覆う程の闇なのだ、それは果てが見えない程の巨大な闇である。
それをたった二人で押さえているのだ、肉体的にも精神的にも消耗は大きい。
長期戦に持ち込めば、帝国が利を得るのは明白だ。
二人が潰れてしまえば闇は再び動き出す。長引かせるわけにはいかない。
レイチェルは攻めるしかなかった。
レイ・ランデルは、それらの事情を知っていたわけではない。
だが、対峙する赤毛の女戦士を見れば、察せられるものはあった。
うまく隠しているようだが、どこか戦いを急いている。さっきまでランデル一族の話しに時間を費やした分、猶更なのだろう。
だからこそ、そこに付け込めば有利に戦いを進める事はできた。
長期戦に持ち込めば、焦りから技に隙も生まれるだろう。勝つためにはそうするべきであり、そうしなければならなかった。
だが、レイ・ランデルはあえて真向勝負を選んだ。
自分でも、なぜそうしたのか分からない。レイチェルの強さは、あの高速の連打をくらった事で、文字通り身を持って理解した。
正面からぶつかれば、勝敗がどう転ぶか分からない。だが、それでもこの赤毛の女戦士とは正々堂々決着をつけなければならないと思った。
・・・クラレッサの話しをしたからだろうか?
クラレッサの血統として、ランデル一族として、そしてかつての戦いを知る者への敬意として、この戦いだけは正面から受けて立たなければならないと思ったのかもしれない・・・・・
「シッ!」
鋭く短く息を吐くと、レイチェルは地面を蹴って飛び出した!
レイチェルとレイ・ランデル、二人の間には数メートルの距離があったが、この程度の距離は一蹴りで詰める事ができる。
レイチェルは一瞬にしてレイ・ランデルの懐に入り込むと、レイ・ランデルの腹を狙い、右の拳を真っ直ぐ突き出した!
並みの兵士であれば、反応すらできない踏み込みと拳の速さだった。だがレイ・ランデルは左腕を振り下ろし、レイチェルの右拳を払いのけた。
「なめるなよ」
静かに言葉を発し、レイ・ランデルの目が鋭く光る。
腕を払われた事で、がら空きとなったレイチェルの右の脇腹を狙い、左中段蹴りが繰り出される!
なめるなだと?
どの口が言う?なめているのはお前だろ?お前の戦い方はもう理解した。
両腕で防御し、攻撃の主体は足だ。ならば当然そうくる事くらい分かっているさ!
レイチェルは右脚を蹴り上げると、レイ・ランデルの左中段蹴りに膝を合わせた。
「なッ!?」
左脚を弾かれた事で、レイ・ランデルは少なからず動揺した。
膝で受けるだと!?この女、俺の戦い方にもう対応したというのか!?
バカな!早い、早過ぎる!
「ワンパターンなんだよ」
技を見せたのは最初の交戦時だけだ。受けと蹴りを二度見せただけ。たったそれだけで、もう対応してきた。レイチェルの対応の早さに動揺したレイ・ランデルは、次の行動に一歩遅れをとった。
「ハァッ!」
その結果、レイチェルの追撃をまともに食らう事になる。
「ぐッ!」
レイチェルの左拳が右脇腹に深く突き刺さる!内臓が抉られ、呼吸が止まる程の衝撃に、レイ・ランデルの顔が苦痛に歪み動きが止まる。当然次の攻撃への備えなどできるはずもない。
もらった!
レイチェルは右拳を振り上げた!狙いはレイ・ランデルの顎だ。意識を飛ばして決着を付ける!
「ッ!?」
だがレイチェルの右拳は空を切った。
レイ・ランデルの足は止まっていた。躱す事も防ぐ事もできない、絶対のタイミングだった。
しかし目の前にいたはずのレイ・ランデルは、存在そのものが無くなってしまったかのように、跡形もなく消えてしまったのだ。
ありえない。目を見開いたレイチェルの一瞬の思考の停止。しかしその直後、背後に感じた気配にレイチェルは振り返った。
「ぐぅッ!」
レイチェルは反射的に、両腕で抱くようにして腹部を護ったが、それは骨にまで響くものすごい衝撃で、レイチェルは後方へと吹っ飛ばされた。
右の蹴りだった。
レイ・ランデルの蹴り上げた足は、地面から垂直に空へと伸びている。
高々と上がった足は、十分な力を込めた一撃だった証明であり、この一蹴りで決めるつもりの必殺の一撃だった。
「チッ、やはり反応がいい、今のを防ぐか」
レイ・ランデルは眉を潜めて舌を打った。
数メートルも後方へと蹴り飛ばされたレイチェルは、背中から地面に落ちそうになったが、体を縦に回して両足で着地を決めた。
「ゲホッ、つぅ・・・レイ・ランデル、お前・・・」
咳き込んで口元を拭う。
凄まじい蹴りだった。両腕にはビリビリとした感覚が残り、すぐには強い打撃は打てそうにない。
最初に受けた蹴りとは全くの別次元だった、これがレイ・ランデルの本気の一撃か。
だが、それよりも何よりも、考えなくてはならない事がある。
「お前・・・空間を飛び越えている、あるいはそれに近い能力を持っているな?」
レイチェルは確信した。
最初の交戦時にも感じていた事だが、超スピードであるならば、少なくとも動いた際の風の動きは感じる事ができる。だがこのレイ・ランデルの動きにはそれすらなかった。
文字通り一瞬にして目の前から消えるのだ。それは超スピードという言葉では、到底説明がつかないものだった。
「さぁて、どうかな?お前が遅いだけなんじゃねぇの?」
レイチェルの指摘にも表情を変えなかった。肩をすくめて笑うそのしぐさは、ふてぶてしさすら感じる。
「言ってくれるな?私はこれでもスピードには自信があるんだ。お前の動きは足を使ったものじゃない、瞬時に空間を飛び越えているとしか思えないな」
まぁ、話す気がないならそれでもいいさ
レイチェルはスッと目を細めると、腰を落とし、まだ痺れの残る両腕を顔の横に挙げ、左半身を前にして構えた。
「お前の全てを越えて私が勝つ」
全身からほとばしる闘気が、レイ・ランデルを打つ。
「・・・へぇ、そりゃ面白い。じゃあしっかりと返り討ちにしてやらねぇとな」
レイ・ランデルもまた、両の拳を顔の前に挙げて構えた。
睨み合う二人
言葉にせずとも互いに感じ取っていた
次で最後だと・・・
カエストゥスの系譜を持ちながら、別々の道を行くレイチェルとレイ・ランデル
二人の戦いに決着の時が来た
首都を防衛する側のレイに対し、攻め入る側のレイチェルには時間がなかったからだ。
その理由は帝国の首都を覆う闇にある。
この闇は帝国の防衛の要であり、本来はクインズベリー軍を襲うはずだった。
しかし帝国には誤算があった。闇に対抗できる力、光魔法を使うウィッカー・バリオス、そして闇の巫女ルナの二人が、闇を押さえる事に成功したのだ。
これによりクインズベリー軍と、同盟のロンズデール軍は、帝国軍に対して正面から戦う事が可能となった。
だがそれが、いつまでも持つわけではない。
首都を覆う程の闇なのだ、それは果てが見えない程の巨大な闇である。
それをたった二人で押さえているのだ、肉体的にも精神的にも消耗は大きい。
長期戦に持ち込めば、帝国が利を得るのは明白だ。
二人が潰れてしまえば闇は再び動き出す。長引かせるわけにはいかない。
レイチェルは攻めるしかなかった。
レイ・ランデルは、それらの事情を知っていたわけではない。
だが、対峙する赤毛の女戦士を見れば、察せられるものはあった。
うまく隠しているようだが、どこか戦いを急いている。さっきまでランデル一族の話しに時間を費やした分、猶更なのだろう。
だからこそ、そこに付け込めば有利に戦いを進める事はできた。
長期戦に持ち込めば、焦りから技に隙も生まれるだろう。勝つためにはそうするべきであり、そうしなければならなかった。
だが、レイ・ランデルはあえて真向勝負を選んだ。
自分でも、なぜそうしたのか分からない。レイチェルの強さは、あの高速の連打をくらった事で、文字通り身を持って理解した。
正面からぶつかれば、勝敗がどう転ぶか分からない。だが、それでもこの赤毛の女戦士とは正々堂々決着をつけなければならないと思った。
・・・クラレッサの話しをしたからだろうか?
クラレッサの血統として、ランデル一族として、そしてかつての戦いを知る者への敬意として、この戦いだけは正面から受けて立たなければならないと思ったのかもしれない・・・・・
「シッ!」
鋭く短く息を吐くと、レイチェルは地面を蹴って飛び出した!
レイチェルとレイ・ランデル、二人の間には数メートルの距離があったが、この程度の距離は一蹴りで詰める事ができる。
レイチェルは一瞬にしてレイ・ランデルの懐に入り込むと、レイ・ランデルの腹を狙い、右の拳を真っ直ぐ突き出した!
並みの兵士であれば、反応すらできない踏み込みと拳の速さだった。だがレイ・ランデルは左腕を振り下ろし、レイチェルの右拳を払いのけた。
「なめるなよ」
静かに言葉を発し、レイ・ランデルの目が鋭く光る。
腕を払われた事で、がら空きとなったレイチェルの右の脇腹を狙い、左中段蹴りが繰り出される!
なめるなだと?
どの口が言う?なめているのはお前だろ?お前の戦い方はもう理解した。
両腕で防御し、攻撃の主体は足だ。ならば当然そうくる事くらい分かっているさ!
レイチェルは右脚を蹴り上げると、レイ・ランデルの左中段蹴りに膝を合わせた。
「なッ!?」
左脚を弾かれた事で、レイ・ランデルは少なからず動揺した。
膝で受けるだと!?この女、俺の戦い方にもう対応したというのか!?
バカな!早い、早過ぎる!
「ワンパターンなんだよ」
技を見せたのは最初の交戦時だけだ。受けと蹴りを二度見せただけ。たったそれだけで、もう対応してきた。レイチェルの対応の早さに動揺したレイ・ランデルは、次の行動に一歩遅れをとった。
「ハァッ!」
その結果、レイチェルの追撃をまともに食らう事になる。
「ぐッ!」
レイチェルの左拳が右脇腹に深く突き刺さる!内臓が抉られ、呼吸が止まる程の衝撃に、レイ・ランデルの顔が苦痛に歪み動きが止まる。当然次の攻撃への備えなどできるはずもない。
もらった!
レイチェルは右拳を振り上げた!狙いはレイ・ランデルの顎だ。意識を飛ばして決着を付ける!
「ッ!?」
だがレイチェルの右拳は空を切った。
レイ・ランデルの足は止まっていた。躱す事も防ぐ事もできない、絶対のタイミングだった。
しかし目の前にいたはずのレイ・ランデルは、存在そのものが無くなってしまったかのように、跡形もなく消えてしまったのだ。
ありえない。目を見開いたレイチェルの一瞬の思考の停止。しかしその直後、背後に感じた気配にレイチェルは振り返った。
「ぐぅッ!」
レイチェルは反射的に、両腕で抱くようにして腹部を護ったが、それは骨にまで響くものすごい衝撃で、レイチェルは後方へと吹っ飛ばされた。
右の蹴りだった。
レイ・ランデルの蹴り上げた足は、地面から垂直に空へと伸びている。
高々と上がった足は、十分な力を込めた一撃だった証明であり、この一蹴りで決めるつもりの必殺の一撃だった。
「チッ、やはり反応がいい、今のを防ぐか」
レイ・ランデルは眉を潜めて舌を打った。
数メートルも後方へと蹴り飛ばされたレイチェルは、背中から地面に落ちそうになったが、体を縦に回して両足で着地を決めた。
「ゲホッ、つぅ・・・レイ・ランデル、お前・・・」
咳き込んで口元を拭う。
凄まじい蹴りだった。両腕にはビリビリとした感覚が残り、すぐには強い打撃は打てそうにない。
最初に受けた蹴りとは全くの別次元だった、これがレイ・ランデルの本気の一撃か。
だが、それよりも何よりも、考えなくてはならない事がある。
「お前・・・空間を飛び越えている、あるいはそれに近い能力を持っているな?」
レイチェルは確信した。
最初の交戦時にも感じていた事だが、超スピードであるならば、少なくとも動いた際の風の動きは感じる事ができる。だがこのレイ・ランデルの動きにはそれすらなかった。
文字通り一瞬にして目の前から消えるのだ。それは超スピードという言葉では、到底説明がつかないものだった。
「さぁて、どうかな?お前が遅いだけなんじゃねぇの?」
レイチェルの指摘にも表情を変えなかった。肩をすくめて笑うそのしぐさは、ふてぶてしさすら感じる。
「言ってくれるな?私はこれでもスピードには自信があるんだ。お前の動きは足を使ったものじゃない、瞬時に空間を飛び越えているとしか思えないな」
まぁ、話す気がないならそれでもいいさ
レイチェルはスッと目を細めると、腰を落とし、まだ痺れの残る両腕を顔の横に挙げ、左半身を前にして構えた。
「お前の全てを越えて私が勝つ」
全身からほとばしる闘気が、レイ・ランデルを打つ。
「・・・へぇ、そりゃ面白い。じゃあしっかりと返り討ちにしてやらねぇとな」
レイ・ランデルもまた、両の拳を顔の前に挙げて構えた。
睨み合う二人
言葉にせずとも互いに感じ取っていた
次で最後だと・・・
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