異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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03 夜

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いざ話し始めると、どこから何を話していいか自分の中での迷いもあり、
スムーズに伝えられないところも多かった。

しかし、レイチェルは話の腰を折らず、なにか聞きたい事があっても、
話が止まったタイミングで口をはさむようにしてくれた。要領の良い子なのだろう。
一時間程話しただろうか。

「・・・アラタの話しは分かった。それが本当なら、キミはどこか違う世界から来たんだろうね」

「・・・信じられないけど、頭に怪我もしてないし、レイチェルは日本語を知らないのに、俺と会話できてるしさ・・・俺はなんらかの力でこの国、えっと・・・クインズベリー国だっけ?に来たのかな」

レイチェルはこの国の事も簡単に説明をしてくれた。
やはり日本、中国、アメリカなど俺が知っている世界は全く存在しなかった。
そして現在はプライズリング大陸のクインズベリー国というところにいるらしい。


「うーん、そうなんだろうね。正直半信半疑だけど、キミは頭がおかしくは見えないし、嘘をついて何かたくらむような悪人にも見えない。とりあえず信じようかなって思うよ」

「ありがとう。レイチェルが話せる人で良かったよ。多分、俺が聞く立場だったら信じられないと思う」

「それで、これからどうするんだい?異世界から来たんだし、どうしていいか分からないんでしょ?」

「うっ・・・確かに、右も左も分からないよ。正直すげー困ってる」


「じゃあさ、明日からうちの店で働かない?キミ、元の世界でリサイクルショップの店員だったんでしょ?
うちも同じだよ。世界が違っても同じ仕事ならできるでしょ?いやー実は最近バックレが続いてさ、人手不足だったんだよ。助かるよ!ありがとう!」

レイチェルは身を乗り出して、満面の笑みを浮かべながら一方的に話しだした。

しかも返事をしていないのに、勝手に働く事になっている。
物分かりの良い、落ち着いた子という印象だったが、案外押しが強いというか、我が強いのかもしれない。
それにしても異世界でもリサイクルショップがあるなんて。いったい何を販売、買い取りしているんだ?

「いや、その、こっちにもリサイクルショップがあったのは驚きだけどさ、何を取り扱ってるの?俺は古着や玩具、漫画本とか担当してたけど」

「古着?それならうちもやってるよ。共通するとこあるね。漫画本ってのはちょっと分からないけど、武器は?武器は買ってなかったの?」

「え?武器?武器って、剣とか槍とかの武器?」

「そうだよ?他になんかあるのかい?」

レイチェルは当然のように話している。この世界では武器は当たり前のように出回っているようだ。
確かに俺の元いた世界にも武器はある。剣も槍も銃もある。だが、リサイクルショップで売ったり買ったりできるか?元々もっていた常識は一度捨てた方が良いように思い始めた。


「俺のいた世界では、武器は一般人は持てなかったよ。持つ必要が無いって方が正しいかな。料理に使う程度の刃物はどこでも買えたけど、それ以上の、武器としての刃物や銃は、国の許可が無ければ持つ事はできなかったよ。持てても不用意に外には出せないし。ここはずいぶん簡単に持てるみたいだね?」

「へー。アラタの世界は平和なんだね。ここは違うよ。特に今はブロートン帝国の悪い噂も流れているから、結構ピリピリしてるんだ。剣はともかく、自分の身を守る手段としてナイフや短刀くらいなら、誰でも持ってるんじゃないかな?こういう時は因縁つけられやすいしさ」


レイチェルの言葉に、紛争地域を思い出した。日本は女性が夜一人で外を歩けるくらい平和だが、海外ではそうはいかない。
誘拐や強盗だって日本より身近な出来事だろう。戦争をしている国もある。
それに考えてみれば俺だって平和な日本で頭を割られたじゃないか。あれは絶対に現実だった。


「また難しい顔してるね?キミ、考え事する癖でもあるのかい?ま、長々話しこんじゃったけど、そういう事だよ。うちはリサイクルショップで、武器も防具も売ってるし買ってるよ。この世界の事はおいおい分かっていけばいいんじゃないかな?今日はここに泊まっていいからさ、ゆっくり休みなよ。あ、お腹空いたでしょ?あとでご飯持ってくるね」


そう言うとレイチェルは立ち上がり部屋から出て行った。一人で部屋に残されると、静けさに耳が痛くなる。日本では夜中でも車の走る音や、夜遊びする若者の声などがどこからか聞こえてきたものだが、ここは全く音がしない。

外を見ようと2つある窓に目を向けると、カーテンで閉め切られていた。


近づいてみると日本では目にしないような作りのカーテンだった。レールで開閉するものではなく、布に10cm程度の等間隔で丸い穴をあけており、その穴に窓枠に付けられている鉄のフックのような物を引っ掛けている。


「・・・異世界ねぇ・・・」


フックから布を外して外に目を向けると、外は真っ暗闇だった。
高層ビルやデパート、アスファルトの道路を走る自動車などは一切見当たらない。
ただ、暗闇が広がっていた。

その時、闇の中から強い視線を感じて、ゾクリと背筋に冷たいものが走る。
俺はすぐにフックにカーテンを引っ掛け直した。

頬を冷たい汗が伝う。動悸が治まらない。
なんだ今のは?暗闇でなにも見えなかったが、何かがそこにいて俺を見ていた。

町中でふと視線を感じるような類ではない。視線に込められた恐ろしいなにかを、ほんの一瞬だが俺は感じていた。

「おーい、ご飯持ってきたよ。あんまり材料なくて、簡単な物しか作れなかったけど・・・どうしたんだい?」

部屋に入ってきたレイチェルに、ゆっくり振り返る。
木製のトレーに焼き魚と白いご飯。透明なスープも乗っていた。
よほどこわばった顔をしていたのだろう。

なにか察したレイチェルは、トレーを机に置くと、俺の肩にそっと手を置き、イスに座るよう促した。


「・・・外を見たんだね?」

食事を終えて、少し落ち着いた様子を見て、レイチェルが切り出した。
俺は黙って頷いた。

「・・・あれがトバリだよ。闇の主トバリ・・・闇そのものの存在なんだ。だからどこにいても見られるし、逃げようがない。食べられたくなかったら、夜はカーテンをきちんと閉めて、外に出ちゃダメだよ」

レイチェルはそう言い残し、食器を持って部屋を出て行った。

本当に異世界なんだな。得体の知れない恐怖を肌で感じ、ここは日本ではないという事実を感じ取った。

これからどうなるんだ?

レイチェルは店を手伝ってと言っていたが、この世界の常識も分からず大丈夫なのか?

言葉はスムーズに通じていたがなぜだ?そして俺はなぜ怪我一つないんだ?

一人になり、する事もなくなると様々な疑問、不安が頭を駆け巡った。

いても立ってもいられなくなり、ベッドに入り丸くなり目を堅く閉じた。これが夢であればいい。

そう願い、いつしか眠りに落ちた。

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