28 / 1,560
28 査定
しおりを挟む
「おう、アラやんお帰り・・・ん?なんか変わったか?」
店に戻ると、ジャレットさんが俺の顔を見て、訝しげに目を細めた。
「いや・・・なにも変わってないですよ」
そう言って後ろを向くと、カチュアが小さく手を振って、白魔法コーナーに戻って行った。
午後1時、昼食を終えた人がそのまま店に寄る事が多く、忙しくなる時間帯だった。
今日も所狭しと人が入っており、店内は活気で溢れていた。
俺が出ている間に、防具の査定も入ったようで、
カウンターには鉄の兜と、指ぬきの革の手袋が置いてある。
「それより、買い取り入ったんですね?査定もう終わったんですか?」
「ん、あぁこれか、鉄兜は今終わったとこだ。左右の角が真ん中辺りで折れてるけど、それ以外は目立った傷は無い。でも、角が折れたままかぶるのは、カッコわりぃだろ?
だからそこは根元から加工して、違和感無いデザインに仕上げる必要がある。その辺の手間暇を考えて、3,000イエンだな。元は20,000イエンはするだろうけど、これ以上は出せないな。まぁ売ってくれるだろ。この角が原因で売りに来たんだろうからな」
ジャレットさんは兜を見せながら、どこを見なければならないかを細かく話してくれた。
やはり仕事は丁寧だ。これで変なあだ名を付ける癖と、自分の趣味を押し付ける事さえなければ、
理想の上司NO.1だろう。
「アラやん、革の手袋はアラやんが査定してみ?そろそろセカンドステージ行こうぜ」
そう言って、ジャレットさんはイスから立ち場所を開けると、今まで自分が座っていたイスに、
座るよう促した。
「え?いいんですか?」
「あぁ、このニか月でアラやんも、防具の基礎は分かってきたんじゃね?この兜と小手、同じ人なんだけど、4時頃来るって言ってたから時間あんだよ。
俺もメシ食ってくるから、それまで値段出しといてな。理由も聞くからちゃんと見んだぞ」
そう言って、ジャレットさんはコーナーを出て行った。
一人で査定か・・・イスに座り、手袋を手に取る。この店で、自分一人で査定するのは初めてだった。なんだか感慨深くなり、ウイニングで働いていた時の事を思い出す。
土日祝日は特に忙しかった。
家族連れで、玩具、ゲーム、古着を売りに来る事が多く、査定場所はいつも山のように積まれていた。
【坂木!なんとかしろよ!なんで皆古着ばっか持ってくんだよ~、もう私疲れたから、代わりにやっといて!】
「・・・弥生さん、土日はいっつも文句言って、俺に押し付けてたっけな」
「ヤヨイって、誰かな?」
つい一人言を漏らすと、目の前にベージュのランチバスケットが置かれた。
顔を上げると、シルヴィアさんが立っていた。
肩の下まであるウェーブがかった髪を耳にかけ、小首をかしげている。
「あぁ、俺の故郷の人です。仕事の先輩で、ちょっと思い出して」
「そうなんだ・・・アラタ君、やっぱり元の世界に帰りたいの?」
「ん~、そうですね・・・やっぱり帰りたい気持ちはありますよ。でも、ここでの生活も気に入ってるんです。だから、今はこの店で頑張ろうって決めてます」
「アラタ君・・・なんだか変わったわね?なにかあったの?」
シルヴィアさんが、俺の顔をじっと見てくる。
「な、なんもないっスよ」
ジャレットさんと言い、シルヴィアさんと言い、なんでこう鋭い人が多いんだ?
確かに心境の変化はあった。
だが、カチュアの前で故郷を思い出して泣いて、溜め込んでた事全部聞いてもらって、慰められて吹っ切れた。なんて言える訳が無い。
「そう?じゃあ、カチュアに聞いてみるわね。あの子なら何か知ってそうだし」
「えぇぇッツ!?な、なんでそうなんですか!?シルヴィアさん勘弁してくださいよ!」
踵を返し、白魔法コーナーに歩いて行くシルヴィアさんを必死に引き留める。
「フフ、冗談よ冗談、誰にでも秘密はあるわ。無理には聞かないわよ。これ、お腹空いたら食べてね。明日の朝食でも大丈夫だから」
そう言って、俺にランチバスケットを手渡すと、シルヴィアさんは自分の黒魔法コーナ-へ戻って行った。
フタを開けてみると、チョコクロワッサンと、チーズを練りこんだパンが入っていた。
「・・・相変わらずうまそうだな。しかし、なんであの人はあんな鋭いんだ・・・」
俺はどっと疲れを感じ、体を投げ出すようにイスに腰を下ろした。
手袋は使われた形跡が無いように見える。
新品同様と言っていいだろう。という事は、売りに来た理由も経験上、だいたい想像がつく。
サイズが合わなくて返品も出来なかったから。
なんとなく買って、使わずにしまっておいた物。
多分、この辺の理由だろう。
ゲームソフトやフィギュアだと、新品未使用だと価値が高いから、開封せず取っておく人もいるが、
この世界でもそういう物はあったりするのだろうか?
「ジャレットさんの話だと、この世界には合皮は無いみたいだからな。皮は全て本革だろ。
そんで、防具には求められるのは、見た目より、耐久性と使いやすさ。その辺りを見て査定しなきゃならないわけだ」
指ぬき手袋は、指の第二関節から出るようになっている。
長さは手首が隠れる程度で、甲に鉄の補強も入っていた。これなら剣は無理でも、棒での打撃くらいなら防げるかもしれない。いくら位の物だろう?
店で売っている手袋と比較したり、もし自分がこれを使うとしたらを考えて、値段を出してみた。
店に戻ると、ジャレットさんが俺の顔を見て、訝しげに目を細めた。
「いや・・・なにも変わってないですよ」
そう言って後ろを向くと、カチュアが小さく手を振って、白魔法コーナーに戻って行った。
午後1時、昼食を終えた人がそのまま店に寄る事が多く、忙しくなる時間帯だった。
今日も所狭しと人が入っており、店内は活気で溢れていた。
俺が出ている間に、防具の査定も入ったようで、
カウンターには鉄の兜と、指ぬきの革の手袋が置いてある。
「それより、買い取り入ったんですね?査定もう終わったんですか?」
「ん、あぁこれか、鉄兜は今終わったとこだ。左右の角が真ん中辺りで折れてるけど、それ以外は目立った傷は無い。でも、角が折れたままかぶるのは、カッコわりぃだろ?
だからそこは根元から加工して、違和感無いデザインに仕上げる必要がある。その辺の手間暇を考えて、3,000イエンだな。元は20,000イエンはするだろうけど、これ以上は出せないな。まぁ売ってくれるだろ。この角が原因で売りに来たんだろうからな」
ジャレットさんは兜を見せながら、どこを見なければならないかを細かく話してくれた。
やはり仕事は丁寧だ。これで変なあだ名を付ける癖と、自分の趣味を押し付ける事さえなければ、
理想の上司NO.1だろう。
「アラやん、革の手袋はアラやんが査定してみ?そろそろセカンドステージ行こうぜ」
そう言って、ジャレットさんはイスから立ち場所を開けると、今まで自分が座っていたイスに、
座るよう促した。
「え?いいんですか?」
「あぁ、このニか月でアラやんも、防具の基礎は分かってきたんじゃね?この兜と小手、同じ人なんだけど、4時頃来るって言ってたから時間あんだよ。
俺もメシ食ってくるから、それまで値段出しといてな。理由も聞くからちゃんと見んだぞ」
そう言って、ジャレットさんはコーナーを出て行った。
一人で査定か・・・イスに座り、手袋を手に取る。この店で、自分一人で査定するのは初めてだった。なんだか感慨深くなり、ウイニングで働いていた時の事を思い出す。
土日祝日は特に忙しかった。
家族連れで、玩具、ゲーム、古着を売りに来る事が多く、査定場所はいつも山のように積まれていた。
【坂木!なんとかしろよ!なんで皆古着ばっか持ってくんだよ~、もう私疲れたから、代わりにやっといて!】
「・・・弥生さん、土日はいっつも文句言って、俺に押し付けてたっけな」
「ヤヨイって、誰かな?」
つい一人言を漏らすと、目の前にベージュのランチバスケットが置かれた。
顔を上げると、シルヴィアさんが立っていた。
肩の下まであるウェーブがかった髪を耳にかけ、小首をかしげている。
「あぁ、俺の故郷の人です。仕事の先輩で、ちょっと思い出して」
「そうなんだ・・・アラタ君、やっぱり元の世界に帰りたいの?」
「ん~、そうですね・・・やっぱり帰りたい気持ちはありますよ。でも、ここでの生活も気に入ってるんです。だから、今はこの店で頑張ろうって決めてます」
「アラタ君・・・なんだか変わったわね?なにかあったの?」
シルヴィアさんが、俺の顔をじっと見てくる。
「な、なんもないっスよ」
ジャレットさんと言い、シルヴィアさんと言い、なんでこう鋭い人が多いんだ?
確かに心境の変化はあった。
だが、カチュアの前で故郷を思い出して泣いて、溜め込んでた事全部聞いてもらって、慰められて吹っ切れた。なんて言える訳が無い。
「そう?じゃあ、カチュアに聞いてみるわね。あの子なら何か知ってそうだし」
「えぇぇッツ!?な、なんでそうなんですか!?シルヴィアさん勘弁してくださいよ!」
踵を返し、白魔法コーナーに歩いて行くシルヴィアさんを必死に引き留める。
「フフ、冗談よ冗談、誰にでも秘密はあるわ。無理には聞かないわよ。これ、お腹空いたら食べてね。明日の朝食でも大丈夫だから」
そう言って、俺にランチバスケットを手渡すと、シルヴィアさんは自分の黒魔法コーナ-へ戻って行った。
フタを開けてみると、チョコクロワッサンと、チーズを練りこんだパンが入っていた。
「・・・相変わらずうまそうだな。しかし、なんであの人はあんな鋭いんだ・・・」
俺はどっと疲れを感じ、体を投げ出すようにイスに腰を下ろした。
手袋は使われた形跡が無いように見える。
新品同様と言っていいだろう。という事は、売りに来た理由も経験上、だいたい想像がつく。
サイズが合わなくて返品も出来なかったから。
なんとなく買って、使わずにしまっておいた物。
多分、この辺の理由だろう。
ゲームソフトやフィギュアだと、新品未使用だと価値が高いから、開封せず取っておく人もいるが、
この世界でもそういう物はあったりするのだろうか?
「ジャレットさんの話だと、この世界には合皮は無いみたいだからな。皮は全て本革だろ。
そんで、防具には求められるのは、見た目より、耐久性と使いやすさ。その辺りを見て査定しなきゃならないわけだ」
指ぬき手袋は、指の第二関節から出るようになっている。
長さは手首が隠れる程度で、甲に鉄の補強も入っていた。これなら剣は無理でも、棒での打撃くらいなら防げるかもしれない。いくら位の物だろう?
店で売っている手袋と比較したり、もし自分がこれを使うとしたらを考えて、値段を出してみた。
41
あなたにおすすめの小説
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる