異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
38 / 1,560

38 ヴァンの協力

しおりを挟む
エルウィンがいなくなると、鉄格子から腕が伸びてくる。その手にはパンがあった。

「ほら、食えよ」

「あぁ、いつも悪いな」

ヴァンからパンを受け取り、さっそく口に運ぶ。俺に配られたパンより、柔らかく甘みがあった。

「いいんだよ。俺だけ量が多いんだ。気にすんな。それっぽっちじゃ、死んじまうぜ」

エルウィンは信用できそうだが、念のため誰かがいる時には、ヴァンとは話さないようにしていた。
もし、ヴァンから食べ物をもらっている事が知られたら、独房を離されてしまうかもしれない。

粗末な食事で俺を弱らせ、口を割らせる思惑もあるのかもしれないと思っていた。
ヴァンが隣だった事は幸運だった。

「なぁ、お前いつまでここにいる気だ?分かってると思うが、マルコスは絶対にお前を帰さないぞ」

「分かってる。いつまでもいるつもりは無い。でも、結局マルゴンが諦めない限り、何の解決にもならない。目を付けられている限り、俺もレイジェスの皆も安心して生活できない。だから、ここで決着をつけるために、自分の意志で来たんだ」

「・・・へぇ、そのハッキリした言い方だと、何か考えあるんだろ?」

「ある。でも、聞きたいんなら、ヴァンにも共犯になってもらう。どうする?」

あの時、ジーンが耳打ちしてくれた策は、俺一人でもできない事はないかもしれないが、難しいと思った。
だが、ヴァンが協力してくれれば、おそらく可能だろう。元治安部隊で、しかも上の方にいたという。
いまでも支持している隊員が多いとなれば、ヴァンの協力は絶対に欲しいところだ。

俺の返事に、いつものクックックッと、含みのある笑い声が聞こえる。

「アラタ、正直に言えよ?お前のやろうとしている事は、俺がいないと難しいんじゃないのか?」

全てお見通しと言わんばかりに、ヴァンは愉快そうに笑いながら聞いてきた。

壁越しにだが、1週間毎日話して分かった事がある。癖のありそうな男だが、人を欺く事はしない男という事だ。俺が連れて来られた日、何をしたんだ?と聞かれ正直に話した。

その日は、それは災難だったな、で終わってしまったのだが、翌日の朝食で、給仕のエルウィンがいなくなると、鉄格子からすっとパンを渡してきた。
みんなが待ってるんだろ?それっぽっちじゃ死ぬぞ、と言って。

駆け引きみたいなやり方はヴァンに失礼だな。

「悪い、本当はヴァンの力が必要なんだ。助けてくれないか?」

見えないだろうが、壁越しに頭を下げて頼むと、また含み笑いが聞こえてきた。

「お前って面白いな。あっさり認めやがって。なんかよ、お前がそこで俺に頭下げてる姿が目に浮かぶよ。いいぜ。話してみろよ」


ジーンから聞かされた策をそのままヴァンに伝えると、少しの間を置いて、またいつもの含み笑いが聞こえてきた。

「クックックッ・・・なるほど、不可能ではないが、お前一人ではかなりハードルは高かったな。俺がいて良かったな?俺なら話は通し易いだろう。だが、お前はマルコスを諦めさせなきゃならないんだろ?結局最後は自分の力でなんとかしないとな?エルウィンの話からも、お前が結構な強さなのは分かったが、フェンテスと互角程度じゃマルコスには勝てないぞ。マルコスはどうする?」

「俺の目的は普通の生活だ。マルゴンに俺を狙う事を止めさせて、普通にレイジェスで働いて普通に暮らす。そのためにはマルゴンと正面からやって勝つしかないと思うし、勝ってみせる」

「クックックッ、マルコス相手に正面から勝ってみせるか・・・よく言い切ったな。まぁ、確かにそれしかないだろう。結局のところ治安部隊は力が全てだ。お前がマルコスに勝ってみせれば、全ての隊員がお前の言葉に耳を貸すだろう。そうすれば、もう誰も手だしはできない」

「あぁ、マルゴンと戦う覚悟はできている。アイツの強さも分かってるつもりだ。腕を掴まれた事があるが、とんでもない力だった。純粋なパワーならマルゴンが上だ。だから、スピードと技で上回って勝つ」

俺の発言にヴァンは大笑いした。笑い声が部屋中に響いたが俺達二人しかいないので、周りを気にする事はない。

「はぁ~・・・本当に面白いな。治安部隊20,000人の頂点、この国最強の男マルコス・ゴンサレスに、スピードと技で勝つか・・・しかも素手で。お前みたいなヤツは初めてみたぞ。まぁ、そのくらい自信がないとそもそも戦いのステージにも立てないか」

ヴァンはひとしきり笑った後、自分を納得させるような口ぶりで会話を続けた。

「よし、いいだろう。俺もその話に乗るぜ。お前がマルコスと1対1で戦えるよう、できるだけの事はしてやるよ」
「本当か!?恩に着るよ!ありがとうヴァン」

「いいんだ。どのみち俺ももうここは飽きた。お前が来なかったら、ぼちぼち田舎に帰るつもりだった。二度と首都には来ないとでも言えば、扱いに困る俺が自主的にいなくなってマルコスも喜んで保釈したろうな。でもよ、お前は本当に面白い。うまくいけばマルコスに一泡吹かせられるしな。やってやるよ」

鉄格子から左手が伸びてきた。俺はその手をしっかり握った。

「よろしく頼むぜアラタ」

「あぁ、こっちこそ頼むよヴァン」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...