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126 限られた記録
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店に着いたのは、開店10分前だった。
俺達が最後だったようで、すでに全員揃って事務所でコーヒーを飲んでいた。
朝の挨拶をして、俺達もロッカーに荷物を置き空いてる席についた。
「これ、みんなにお土産」
ジェロムからもらったワインをテーブルに置いて、一人づつ手渡していくと、酒好きのジャレットさんとミゼルさん、そしてシルヴィアさんの反応が特に良かった。
シルヴィアさんはワインが好きなようで、今回渡したワインも知っていた。
これ大好きなの、と笑顔で受け取ってくれた。
レイチェルは普通に嗜む程度らしい。
カチュアが美味しかったと伝えると、帰ったら早速飲んでみると笑顔で答えた。
ユーリは飲めないようで、兄達に上げると話していた。
リカルドは飲めなくはないが、特に好きというわけでもないようで、おう、と軽い返事で受けとっていた。
全員にワインが行き渡ったところで、俺は今回パスタ屋でおきた事を簡単に説明した。
時間が無かったので、要点だけをまとめて話すような形になったが、やはり内容が内容だったので、詳しく話すべきだというレイチェルの一言で、閉店後にミーティングという事になった。
「・・・アラやん、前に話した、タジーム・ハメイドの話しの、続きが聞きたいんだって?」
開店作業を終え、いつも通り防具コーナで品出しを行っていると、ジャレットさんが後ろから声をかけてきた。
少し眉を寄せて、なにか考えているような難しい顔をしている。
「はい、さっき少し話しましたけど、今回のパスタ屋で見た闇は、カエストゥスの闇とジェロムは言っていました。断片的にですけど、色んな事が俺達の生活に繋がっているように感じるんです。そして、タジーム・ハメイドの話しは、その中心だと思うんです」
ジャレットさんは、そうか、と小さく一人言のように呟く。珍しく歯切れの悪かった。
「・・・じゃあよ、今日の帰り話すわ。この際、全員聞いた方がいいと思うんだ。ただ、俺も結末までは知らねぇぞ。店長も、最後は教えてくれなかったからな。長くなるから、店に泊まりになるけどいいか?」
なにか迷っているような口振りだった。ジャレットさんらしくない。
前回話しを聞いた時は、元々トバリの事を聞くためだった。だけど、その時はジャレットさんも快く話してくれた。
時間が足りず最後まで聞けなかったが、200年前の戦争、タジーム・ハメイドが、トバリに関係している事はなんとなく分かったつもりだった。
俺が泊まりを了承すると、ジャレットさんは、他のみんなにも話してくると言って、防具コーナーを離れて行った。
その日の仕事はなんだか集中できず、俺は細かいミスを何度かしてしまった。
上の空で仕事をするとジャレットさんに怒られるのだが、なぜかジャレットさんは、気を付けろ、の一言で済ませた。
ジャレットさんの様子もいつもと違っていた。
それは閉店後のミーティングが原因なのだろうと思う。
ジャレットさんは俺に対して、何か言いにくい事があるように見える。
タジーム・ハメイドの話しの続きを聞きたいと言った時から、なにかをずっと悩んでいるようだった。
一体何があると言うのだろう。
昼食後、事務所で買取り台帳の整理をしていた、レイチェルとミゼルさんにも聞いてみたが、200年前の戦争と、タジーム・ハメイドに関する事は、俺がジャレットさんから聞いた事くらいしか知らなかった。
バッタから首都を護った後の事は、ジャレットさんと店長しか知らないだろうという事だった。
「私も、バッタを退けた後の話しは、なかなか時間が無くて聞けなくてな。ジャレットは店長と二人で酒を飲んだ事があるようで、その時に少し酔いが回って、珍しく饒舌になった店長から聞いたとか言ってたな。店長は自分から話したそうだ・・・・・・誰かに聞いて欲しかったのかもしれないな。想像でしかないけど、きっと店長に関係する何かがあったんだろう」
そう話すレイチェルは、どこか寂し気な目をしていた。
レイチェルは13歳の時に店長と出会い、この店で働くようになったらしい。
ケイトが言うには、レイチェルはとても店長を尊敬している。きっと、いつも心配しているのだろう。
19歳で自分より年長者もまとめている事を考えると、レイチェルも店長から深い信頼を受けている事がよく分かる。
「アラタ、俺もバッタより先の話しは知らない。ジャレットに聞いてもいいんだが、かなり長い話しのようでな。そのうちまとまった時間をとろうと思っていたら、ついそのままになっちまっててな。まぁ、俺も以前、独自に調べた事はあるんだが、あの戦争に関して詳しい記録や資料はほとんどないんだ。ブロートン帝国が公式に発表している声明はあるが、それは最小限の説明で、ブロートン帝国が完全勝利を治めたって事を記載したくらいなんだ。全く信用できない。あの戦争の結末で、隠しておきたい事があるんだろうな。店長は結末まで全て知っていると言っていたけど、結末を話す気はないようだったし、俺も店長が自分から話そうと思うまで、無理に聞こうとは思わない。だから、バッタまでしか知らないんだ。バッタまでは調べようと思えば調べられるからな。」
ミゼルさんが言うには、バッタまでを記載した書物は、少しだが出回っているそうだ。
その理由について、バッタまではブロートン帝国が関わっていないからな、と言葉を発した。
「俺がブロートンが発表している公式声明を信用していないのは、そこが理由だ。俺が独自で調べた限りでは、バッタ以降、カエストゥスがその歴史を閉じるまで、全てブロートンが関わっているはずなんだ。そしてあの戦争で、ブロートンが勝利した裏には、世界に発表できない後ろ暗い理由があるんだろう。下手に改竄した記録を世に出すより、ただ勝利したという言葉だけを発表して、後は記録が残っていないから発表できないで通す事にしたんだ。本物の記録はある事はあるらしいんだが、噂でしかないからな、もしかすると、本当に何一つ記録が無い可能性も十分ある。でもな、店長の言葉は信じられる。店長は嘘は言わない。これまでの付き合いでそれは分かる。店長の言葉は無条件で信じられる。あの人にはそれだけのものがある。だから、店長が結末まで知っているというのなら、店長の知る結末が真実だ」
ミゼルさんは店で一番の物知りだ。分からない事は大抵ミゼルさんに聞くと答えが返ってくる。
そのミゼルさんが調べても分からないのな、カエストゥスとブロートンの戦争の記録は、本当に世の中に残っていないのかもしれない。
そして、結末までは知らなくても、ジャレットさんは店長から聞いて、かなり深い部分まで知っている。
店長が不在の今、ジャレットさんの話しは、現在知りえる最大の情報になる。
「しかし、ベン・フィングの裏切りか・・・アラタがそのパスタ屋で聞いた話しと、今日ジャレットから聞ける話しを合わせれば、真実に近づけるかもな」
なんにしても閉店後だ、そう話しをまとめてミゼルさんとレイチェルは仕事に戻った。
俺達が最後だったようで、すでに全員揃って事務所でコーヒーを飲んでいた。
朝の挨拶をして、俺達もロッカーに荷物を置き空いてる席についた。
「これ、みんなにお土産」
ジェロムからもらったワインをテーブルに置いて、一人づつ手渡していくと、酒好きのジャレットさんとミゼルさん、そしてシルヴィアさんの反応が特に良かった。
シルヴィアさんはワインが好きなようで、今回渡したワインも知っていた。
これ大好きなの、と笑顔で受け取ってくれた。
レイチェルは普通に嗜む程度らしい。
カチュアが美味しかったと伝えると、帰ったら早速飲んでみると笑顔で答えた。
ユーリは飲めないようで、兄達に上げると話していた。
リカルドは飲めなくはないが、特に好きというわけでもないようで、おう、と軽い返事で受けとっていた。
全員にワインが行き渡ったところで、俺は今回パスタ屋でおきた事を簡単に説明した。
時間が無かったので、要点だけをまとめて話すような形になったが、やはり内容が内容だったので、詳しく話すべきだというレイチェルの一言で、閉店後にミーティングという事になった。
「・・・アラやん、前に話した、タジーム・ハメイドの話しの、続きが聞きたいんだって?」
開店作業を終え、いつも通り防具コーナで品出しを行っていると、ジャレットさんが後ろから声をかけてきた。
少し眉を寄せて、なにか考えているような難しい顔をしている。
「はい、さっき少し話しましたけど、今回のパスタ屋で見た闇は、カエストゥスの闇とジェロムは言っていました。断片的にですけど、色んな事が俺達の生活に繋がっているように感じるんです。そして、タジーム・ハメイドの話しは、その中心だと思うんです」
ジャレットさんは、そうか、と小さく一人言のように呟く。珍しく歯切れの悪かった。
「・・・じゃあよ、今日の帰り話すわ。この際、全員聞いた方がいいと思うんだ。ただ、俺も結末までは知らねぇぞ。店長も、最後は教えてくれなかったからな。長くなるから、店に泊まりになるけどいいか?」
なにか迷っているような口振りだった。ジャレットさんらしくない。
前回話しを聞いた時は、元々トバリの事を聞くためだった。だけど、その時はジャレットさんも快く話してくれた。
時間が足りず最後まで聞けなかったが、200年前の戦争、タジーム・ハメイドが、トバリに関係している事はなんとなく分かったつもりだった。
俺が泊まりを了承すると、ジャレットさんは、他のみんなにも話してくると言って、防具コーナーを離れて行った。
その日の仕事はなんだか集中できず、俺は細かいミスを何度かしてしまった。
上の空で仕事をするとジャレットさんに怒られるのだが、なぜかジャレットさんは、気を付けろ、の一言で済ませた。
ジャレットさんの様子もいつもと違っていた。
それは閉店後のミーティングが原因なのだろうと思う。
ジャレットさんは俺に対して、何か言いにくい事があるように見える。
タジーム・ハメイドの話しの続きを聞きたいと言った時から、なにかをずっと悩んでいるようだった。
一体何があると言うのだろう。
昼食後、事務所で買取り台帳の整理をしていた、レイチェルとミゼルさんにも聞いてみたが、200年前の戦争と、タジーム・ハメイドに関する事は、俺がジャレットさんから聞いた事くらいしか知らなかった。
バッタから首都を護った後の事は、ジャレットさんと店長しか知らないだろうという事だった。
「私も、バッタを退けた後の話しは、なかなか時間が無くて聞けなくてな。ジャレットは店長と二人で酒を飲んだ事があるようで、その時に少し酔いが回って、珍しく饒舌になった店長から聞いたとか言ってたな。店長は自分から話したそうだ・・・・・・誰かに聞いて欲しかったのかもしれないな。想像でしかないけど、きっと店長に関係する何かがあったんだろう」
そう話すレイチェルは、どこか寂し気な目をしていた。
レイチェルは13歳の時に店長と出会い、この店で働くようになったらしい。
ケイトが言うには、レイチェルはとても店長を尊敬している。きっと、いつも心配しているのだろう。
19歳で自分より年長者もまとめている事を考えると、レイチェルも店長から深い信頼を受けている事がよく分かる。
「アラタ、俺もバッタより先の話しは知らない。ジャレットに聞いてもいいんだが、かなり長い話しのようでな。そのうちまとまった時間をとろうと思っていたら、ついそのままになっちまっててな。まぁ、俺も以前、独自に調べた事はあるんだが、あの戦争に関して詳しい記録や資料はほとんどないんだ。ブロートン帝国が公式に発表している声明はあるが、それは最小限の説明で、ブロートン帝国が完全勝利を治めたって事を記載したくらいなんだ。全く信用できない。あの戦争の結末で、隠しておきたい事があるんだろうな。店長は結末まで全て知っていると言っていたけど、結末を話す気はないようだったし、俺も店長が自分から話そうと思うまで、無理に聞こうとは思わない。だから、バッタまでしか知らないんだ。バッタまでは調べようと思えば調べられるからな。」
ミゼルさんが言うには、バッタまでを記載した書物は、少しだが出回っているそうだ。
その理由について、バッタまではブロートン帝国が関わっていないからな、と言葉を発した。
「俺がブロートンが発表している公式声明を信用していないのは、そこが理由だ。俺が独自で調べた限りでは、バッタ以降、カエストゥスがその歴史を閉じるまで、全てブロートンが関わっているはずなんだ。そしてあの戦争で、ブロートンが勝利した裏には、世界に発表できない後ろ暗い理由があるんだろう。下手に改竄した記録を世に出すより、ただ勝利したという言葉だけを発表して、後は記録が残っていないから発表できないで通す事にしたんだ。本物の記録はある事はあるらしいんだが、噂でしかないからな、もしかすると、本当に何一つ記録が無い可能性も十分ある。でもな、店長の言葉は信じられる。店長は嘘は言わない。これまでの付き合いでそれは分かる。店長の言葉は無条件で信じられる。あの人にはそれだけのものがある。だから、店長が結末まで知っているというのなら、店長の知る結末が真実だ」
ミゼルさんは店で一番の物知りだ。分からない事は大抵ミゼルさんに聞くと答えが返ってくる。
そのミゼルさんが調べても分からないのな、カエストゥスとブロートンの戦争の記録は、本当に世の中に残っていないのかもしれない。
そして、結末までは知らなくても、ジャレットさんは店長から聞いて、かなり深い部分まで知っている。
店長が不在の今、ジャレットさんの話しは、現在知りえる最大の情報になる。
「しかし、ベン・フィングの裏切りか・・・アラタがそのパスタ屋で聞いた話しと、今日ジャレットから聞ける話しを合わせれば、真実に近づけるかもな」
なんにしても閉店後だ、そう話しをまとめてミゼルさんとレイチェルは仕事に戻った。
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