異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
243 / 1,560

【242 結婚式】

しおりを挟む
5月15日

ウィッカーさんとメアリーちゃんの結婚式だ。

街の教会で行われ、お城からも沢山の人が集まって二人を祝福した。
純白のウエディングドレスに身を包んだメアリーちゃんは、溜息がでるくらい綺麗だった。

私が憧れの眼差しを向けているのを察してか、隣に座るパトリックさんが、そっと手を握ってきた。

目を向けると、少し照れ臭そうにしているけど、じっと私の目を見て離さないので、私は微笑みを返した。
パトリックさんは最初の頃が嘘のように、しっかりとしているように思う。
魔法兵団副団長に昇進もして、最近は訓練にも一層気が入っているようだ。
なんだかここ最近、急に逞しくなったように思う。



ウィッカーさんとメアリーちゃんは、神父様の前で誓いの言葉を述べ、指輪を交換し口づけを交わすと、教会内に拍手が沸き起こり、沢山の祝福の言葉が向けられる。

ウィッカーさんは孤児ではないけれど、小さい頃から見て来たブレンダン様は満足そうに、そしてまるで我が子を見るような温かい眼差しを向けていた。

ジャニスさんも普段はウィッカーさんを、ちょっと雑に扱ったりしているけど、
やはり小さい頃からずっと一緒にいたからだろう。二人は幼馴染であり家族なんだ。
目元をハンカチで押さえながら、何度もおめでとうと口にしていた。

孤児院の子供達、タジーム王子、お城のみんな、ジョルジュさん一家、リンダさんにニコラさん、アラルコン商会のレオネラちゃん、沢山の人達に祝福され、二人はとても幸せそうだった。

羨ましいな、私も結婚したくなってきた。

私の手を握るパトリックさんの手を、今度は私が力を入れて握り返した。





「素敵な結婚式でしたね」

その日の夜、子供達を寝かしつけた後、私とブレンダン様とジャニスさんの三人は、一階の広間で紅茶を飲んで結婚式のお話しをしていた。

王子も誘ったけれど、俺はいい、とだけ言って子供部屋へ行ってしまった。

だいぶ打ち解けられているとは思うけれど、まぁ、タジーム王子がこうしてお茶を飲みながら、今日は良かったね!と話すというのも、柄ではないのかなと自分で納得した。

風もなく、柔らかな月明かりがほんの少し部屋に差しこむ、穏やかで静かな夜だった。


主役のウィッカーさんとメアリーちゃんは、今日はウィッカーさんの自宅に泊まる事になった。

メアリーちゃんのご両親は、式やお食事が終わると村に帰ろうとしたのだけれど、ウィッカーさんのご両親が今日は泊まっていきませんか?と声をかけ、メアリーちゃんと一緒にウィッカーさんのお家に一拍する事になったのだ。

ウィッカーさんの家は、お母さんが一番強いらしく、お父さんは影が薄いと言っていた。
確かに、ウィッカーさんのお母さんはずっと話し続けていて、お父さんは隣でニコニコして聞いている感じだった。

メアリーちゃんのご両親は、前にウィッカーさんから聞いた通りのイメージで、メアリーちゃんのご両親という感じだった。

ウィッカーさんのお母さんが、こんな息子で~、とウィッカーさんを駄目息子扱いすると、メアリーちゃんのご両親は揃って、いいえ!ウィッカーさんなら安心です!と力強く答えるのだ。

メアリーちゃんの家でのウィッカーさんの評価は非常に高いようだし、ご挨拶に行ったらすぐに息子扱いされたと言うし、気に入られているのは何よりだろう。

「そうじゃな、本当に良い結婚式じゃった。ワシはこれまで孤児院を出た子供達の結婚式に、何十回も参列したが、みんな本当に幸せそうじゃった。ウィッカーも本当に幸せそうじゃった・・・嬉しい限りじゃよ」

「うん。私も感動したよ・・・でも、あのウィッカーがねぇ・・・男の子ってすぐに大きくなるよね」


少し寂し気に呟くと、ジャニスさんは紅茶を口に運びゆっくり味わうように喉に流した。

「・・・なんだか、こんなに静かなの・・・久しぶりですね」

「・・・そうじゃな、ほんの一年前は、大人はワシとウィッカーとジャニスしかおらんかった。ウィッカーは通いで来ておったから、夜はワシとジャニスだけじゃったしな。それが、メアリーが来て、ヤヨイさんが来て、リンダとニコラも来て、ジョルジュやパトリック達、商会のレオネラ・・・ほんの一年で大勢が集まるようになった。こんなに静かなのは、本当にひさしぶりじゃな」

「そうだね・・・たった一年で、色んな事が変わったよね。あ、もちろん良い方にだよ・・・私、ヤヨイさんが来てくれて嬉しい・・・」


「・・・私も、ここに来れて、この孤児院に住めて、ジャニスさんに会えて嬉しいわ」


紅茶を飲んだあと、ブレンダン様がなんとなくお酒を飲みたがっているように見えたのだ、私はジャニスさんをキッチンに呼んで、今日はブレンダン様と一緒に飲まない?と誘ってみた。

ジャニスさんも、なんとなく分かってはいたみたいで、昼間あんなに飲んだのに、と小さく息を付くと、しかたないと言うように棚からおつまみを取り出した。

私は普段、あまりお酒は飲まないけれど、今日は私とジャニスさんがブレンダン様に付き合った。
結婚式の後の会食で、ジョルジュさんの父エディさんと、パトリックさんの父ロビンさんの三人で、たっぷりお酒を飲んでいたのに、今日はまだまだ飲み足りないのだそうだ。



「ヤヨイさん、あまり飲めんと言うが・・・けっこういける口じゃな?」

「ふふ、そうですか?あまり飲まないので、自分ではよく分かりませんが、強いのかもしれませんね」

「そうですよー、ヤヨイさん全然顔変わってないー」

「あら・・・ジャニスさん、もう真っ赤ね・・・」

「ほっほっほ、久しぶりに見たのう、ジャニス、お前すぐ真っ赤になるから、飲まんと言って最近付き合ってくれんからな」


ブレンダン様は饒舌だった。
ウィッカーさんの子供の頃の話しを、懐かしむように沢山話してくれた。

小さい頃から魔力が強く、同世代の子供達より頭一つも二つも抜きんでた才能を持っていて、この子は将来国を背負う程の魔法使いになるかもしれないと感じた事。

よくジャニスさんと喧嘩しては、二歳下のジャニスさんに負かされて悔しがっていた事。

10歳の時、初めてタジーム王子と一緒に修練を行った時、当時わずか4歳だった王子の圧倒的魔力を目の当たりにしても、腐らず努力を重ねた事。

トロワ君とキャロルちゃんが入ってきて、お兄さんとして張り切っていた事。

お城の魔法兵団から、入団要請があっても断り続け、大臣からの心象が悪くなった時、ロビンさんが助けてくれた事。

「あの・・・どうしてウィッカーさんは、そんなに魔法兵団に入りたくないんですか?この前も、ロペスさんに副団長のイスを用意されたのに、すごく困った感じで断ってましたし・・・・孤児院の仕事もありますし、レイジェスも手伝ってくれてますので、忙しいのは分かるんですが、それだけではないような気がして」

「ん、あぁ・・・そうじゃな・・・まぁ、大した理由はないんじゃ。ウィッカーはの、ただ自分が人の上に立って、あれこれ指示をするのが向いてないと思うておるんじゃ。実力はロビンやロペスより上、王子を除けばこの国一の黒魔法使いじゃ、じゃが自分には周りを引っ張る気持ちの強さがないと思うておる」


ブレンダン様の表情は、どこか歯がゆさを感じているように見えた。
確かに、ウィッカーさんはお城の魔法兵団に指導をしに行く程の実力者だし、あのロペスさんが自分の代わりにと副団長に押す程の実力者なのに、孤児院にいる時のウィッカーさんは、子供達にいじられて、トロワ君に怒られたり、なんと言うか・・・


「・・・きっと、優しすぎるんですね」


まだ一年足らずの付き合いだけど、私はウィッカーさんの優しさを知っている。
気を使って、自分が損をしちゃう事もあるけれど、それはそれだけ周りの事を考えているというウィッカーさんの優しさだ。
だから、あくまで外部から指導に行くのならいいけれど、きっと自分が中に入ってあれこれ決める事になると、その考え過ぎる性格のせいで、かえってうまくいかなくなると思ってるんだろう。


「・・・弱いリーダー、か・・・」

「弱いリーダー?」

ジャニスさんがグラスを空けたので、おかわりを注ぎ目を向けると、私の疑問を察して言葉を続けてくれた。

「あ、あの時ヤヨイさんいなかったよね。あのね、去年、王子の軟禁を解くために、私とウィッカーと師匠がお城へ行ったの覚えてる?」

「えっと、うん。覚えてるわ、最初は大臣との話し合いに行ったのよね?」

あれは去年の夏の終わり頃だったと思う。
私はまだこの世界に来たばかりで、孤児院にもようやく少し慣れてきた頃だっただろうか。

タジーム王子がバッタの一件での、黒渦という魔法を使用した事で、国を危険にさらしたという言いがかりとしか言えない責任を追及され、城へ軟禁されていたのだ。

納得のいかないブレンダン様達が、大臣との話し合いに城へ出かけた事があった。


「あの日ね、帰りにロビンさんに会って色々話したの。で、ロビンさんがまた魔法兵団に誘ったんだけど、ウィッカーがなんか弱気な事言うから、ロビンさんが言ったのよ。お前は周りに助けてもらう弱いリーダーでいいって」

「そう言えば、そんな事があったのう・・・ロビン、あやつ、あれでたまに良い事言うから驚くわい。
ウィッカーも、その言葉は心に響いたようじゃった。・・・うむ、今は本人がやりたがらんから無理じゃろうが、力があればいつか回ってくるかもしれん。その時が来れば、嫌でも上に立つしかなかろうな・・・ウィッカーの考えるリーダーとしてな」


ジャニスさんとブレンダン様は、これまでの事を思い出すように、目を閉じて少しの間、思い出にふけっていた。


ジャニスさんの気持ちは、恋愛ではなく、家族としての喪失感のようなものだと思う。
子供の頃から一緒に育ったウィッカーさんが結婚した事で、言いようのない切なさを感じているのではないだろうか。

この世界の結婚は、10代のうちでも特に早いとは思われないようだ。
ジャニスさんも、誰か良い人が見つかって幸せになってほしい。


「のう、ジャニス・・・お前も、もし誰か見つかったら、ワシに遠慮せんでええんじゃからな」

「ん?・・・師匠・・・私、そんな人いないから、まだまだしばらく面倒かけるつもりだよ」


「親というもんはな、子供にはずっと子供でいてほしいと思う反面、もう親がいなくても大丈夫なんだと思いたい・・・そういう気持ちがあるんじゃよ」

「師匠、なに言いたいのか、よく分かんない」

ずっと一緒にいてほしいけど、親は先にいなくなる。
だから、まかせられる人が現れてくれたら、大切な娘をまかせて安心したい。

私には、ブレンダン様の気持ち分かったけれど、ここでは口をはさまないでおこう。
今度、ジャニスさんの様子を見て、ブレンダン様の気持ちを伝えよう。


それからしばらくして、酔いが回ったジャニスさんが飲み潰れると、私は二階にジャニスさんを運んだ。
一階へ戻ると今度はブレンダン様が潰れてテーブルに伏せて寝ていた。

さすがに男性のブレンダン様は重かったので、肩へ毛布をかけた。


「・・・ブレンダン様、今日は本当に楽しい一日でしたね」


ブレンダン様の寝顔は、どこか笑っているように見えた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...