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246 血を引く者
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「これは、アンリエール王妃様からレイジェスへの贈り物だ」
ひとまずエリザベートと、護衛のリーザ・アコスタにイスを用意し、テーブルに着いてもらった。
リーザは背負っていた少し大きめのカバンを置くと、中から箱詰めの菓子を取り出しテーブルに置いた。
「うん・・・これはすごいね。見た事もない菓子だよ。箱を見ただけで高いのは分かるけどね。そうか・・・あの時、城で王妃様が使いの者に菓子を届けさせるとおっしゃられていましたが、エリザ様がそうだったのですね」
レイチェルがエリザベートの希望通り、エリザと呼ぶと、エリザベートは大きな笑顔を見せて、機嫌の良さがハッキリ分かる明るい声で言葉を返した。
「はい、その通りです。私は今日、王妃の使いとしてまいりました。そして、これを・・・」
エリザベートが、隣に座るリーザに目を向けると、リーザはカバンからもう一つ、固そうな木箱を取り出した。
50cm四方程の大きさで、やや平たい木箱をテーブルの上に置くと、リーザは許可を求めるようにエリザベートに顔を向ける。
エリザベートが頷くと、リーザがゆっくりと慎重に木箱を開けた。
「・・・鏡?」
なぜここで鏡がでるのか意図が読めず、レイチェルが見たままの感想を述べる。
箱の中には特に豪華な装飾も無く、なにか変わったところのない、一枚の大きな丸い鏡が納められていた。
ただ、よく見るととても滑らかで、一点の曇りもなく、まるで水面を見ているかのように透き通っていた。
レイチェルも、ジャレットも、シルヴィアも、なぜここで鏡を出されるのか理解できず、首を捻りエリザベートに問いかけるように顔を向けると、ミゼルが何かに気付いたように声をあげた。
「お、おい!これ・・・写しの鏡のじゃねぇか!?」
テーブルに両手を付き、身を乗り出して鏡を覗き込むと、その言葉にカチュアも反応した。
「え!?これ、写しの鏡なの?うそー!」
ケイト、シルヴィア、ユーリ、ジーンと、次々に魔法使い達が席を立ち、エリザベートの前に置かれた、写しの鏡を覗き込む。
離れた場所にいる人と連絡が取れる魔道具で、その値段は五千万イエンもするため、一般人はまず目にする事もない代物だった。
「うふふ、やっぱり魔法使いの方は反応しますよね。はい、これは写しの鏡です。王妃からレイジェスとの連絡用として持たせられました」
予想通りの反応だったのだろう。魔道具を扱う事が多く、自分で魔道具を作る事もできる魔法使いは、初めて見る魔道具、新しい魔道具には飛びつく事が多い。
エリザベートは口元に手を当て小さく笑った。
「・・・いやぁ~、ロンズデールにいた頃、アラルコン商会で一度だけ見た事があったけどよ・・・まさかここでまた見れるなんて思わなかったぜ。エリザベート様、なんでまた王妃様はこんなどえらい物をレイジェスとの連絡用に持たせたんですか?」
ミゼルは許可が出ていないので、鏡に触れる事はしなかったが、強い関心をもった眼差しで、写しの鏡を見つめている。
「ミゼル、私の事はエリザとお呼びください。つまり、写しの鏡を使用する程の事態という事です。
ケイト、採取した真実の花は、薬にできておりますか?」
話しを向けられたケイトは、もちろん、と言ってトレードマークの黒の鍔付きキャップを、ピンと指で弾いた。
「レイチェル、出していいよね?」
「あぁ、もちろんだ。エリザ様、店長は不在ですが、作り方はケイトが聞いていて、薬は二つ作れました」
ケイトは金庫から真実の花の薬を出し、エリザベートの前に置いた。
10cmもないくらいの小さい透明のビンを手に取り、中の薄い緑色の液体を眺め、エリザベートは、これが真実の花の薬、と独り言ちた。
「ケイト・・・大変でしたね。王妃に代わり感謝を・・・本当にありがとうございます」
「あ、いやいや、そんな頭下げないでくださいよ」
エリザベートの言葉に、ケイトは少し照れた様子で手を振る。
「・・・この薬の回収、そして写しの鏡、どちらも他の者に知られる訳にはいかなかったのです。
そしてなにより、サカキ・アラタ様・・・あなたにお会いしたかった」
エリザベートがアラタに顔を向ける。アラタも王女を前にして、多少気持ちの切り替えができていた。
弥生の事は頭から離れない。ジャレットの話しの続きも気になる。
だが、王女がわざわざここまで真実の花の薬を回収に来て、五千万イエンはするという魔道具、写しの鏡まで出した。
ただならぬ事だというのは察せられた。
「え!?そ、それって、エリザ様!どういう!?駄目です!アラタ君は私の旦那さんです!」
エリザベートの言葉に、アラタの隣に座るカチュアが反応し、アラタを隠すようにアラタの前に身を乗り出した。
「・・・ふふ、ごめんなさいカチュア、そうですね。今の言い方ですと誤解させてしまいますね。大丈夫です。王妃から聞いております。ご結婚されるのですよね?私はお二人を祝福いたします。
お会いしたかったというの・・・・・・恋愛ではありませんが、もっと深い・・・そう、私のご先祖様からの、悲願とでも申しましょうか・・・」
エリザベートの言葉にカチュアは、ほっと息を付く。
そしてカチュアの隣に座っていたアラタが、エリザベートの言葉に疑問を投げかけた。
「あの、エリザベート様・・・さっきもお伺いしましたが、その、なぜ俺に会いたかったんですか?それと、悲願とおっしゃいましたが・・・エリザベート様とは初対面だと思いますし、ご先祖様と言われても・・・よく分からないです」
アラタは治安部隊隊長だった、クインズベリー国最強の男、マルコス・ゴンサレス。通称マルゴンと戦い勝利している。
その一件で城へ出向き、国王陛下と謁見し、その帰りに王妃との顔を合わせている。
どこかでエリザベートがアラタを見かけた可能性はあるが、会いたかったと言われる程の接点は無かった。
「アラタ様、私の事は他の皆様と同じように、エリザとお呼びください。私は、レイジェスの皆様とは身分を越えてお友達になりたいのです。だって、私のご先祖様はお友達・・・いいえ、家族だったのですから」
アラタの問い、エリザベートはどこか遠くを見るような目を宙に向けた。
「一体、どういう・・・」
「私の母、王妃の旧姓はコルバートです」
アラタが最後まで疑問を口にする前に、エリザベートが聞き覚えの無い言葉を口にした。
意味が分からず、ただ呆気に取られているアラタを見て、エリザベートは自分だけが分かったように、そうですか、と呟いた。
「ここまではご存じないようですね。王妃の旧姓で名乗れば、私はエリザベート・コルバートとなります。アラタ様、試すような真似をして申し訳ありません。この世界の歴史を、どのくらいご存じか確認したかったのです。特に、200年前のカエストゥス国とブロートン帝国の戦争について・・・」
「ん?・・・コルバート?・・・コルバートだって!?エリザ様、まさかあなた!?」
エリザベートの説明の本質が掴めず、アラタだけでなく、カチュアもレイチェルも、みんながただエリザベートの言葉だけを黙って聞いていたが、ジャレットだけはエリザベートが何を言いたいのか理解し、エリザベートに言葉を向けた。
「ジャレット、あなたは知っておりましたか?そうです・・・あなたの察した通りです」
全員の視線が、エリザベートとジャレットを交互に行き来する。
エリザベートはどこか寂し気な表情でジャレットを見つめ、ジャレットは驚きを隠せず、眉をしかめ険しい顔でエリザベートから目を離せずにいる。
エリザベートに対し、負の感情を持っているわけではない。ただ、信じられないという思いが、全面に出ているのだ。
エリザベートの隣に座る、護衛のリーザ・アコスタは、全てを知っているのか、表情を変える事なく、ただ口を閉ざし少しだけエリザベートに顔を向けていた。
「・・・エリザ様、そろそろ私達にも分かるようにご説明いただけませんか?」
テーブルを挟み、エリザベートの正面に座るレイチェルが、話しの結論を促した。
「・・・そうですね。皆様を置いてけぼりにしていたようです。失礼いたしました。先程申し上げました通り、母である王妃の旧姓で名乗れば、私はエリザベート・コルバートです」
エリザベートは、そこで言葉を区切り、一つ息を付くと席を立った。
胸に手を当て、全員の顔を見渡し、これまでより強く大きな声で、その存在を示すようにハッキリとその名を口にした。
「私は、カエストゥス国 最高の白魔法使い ジャニス・コルバートの血を引く者です」
ひとまずエリザベートと、護衛のリーザ・アコスタにイスを用意し、テーブルに着いてもらった。
リーザは背負っていた少し大きめのカバンを置くと、中から箱詰めの菓子を取り出しテーブルに置いた。
「うん・・・これはすごいね。見た事もない菓子だよ。箱を見ただけで高いのは分かるけどね。そうか・・・あの時、城で王妃様が使いの者に菓子を届けさせるとおっしゃられていましたが、エリザ様がそうだったのですね」
レイチェルがエリザベートの希望通り、エリザと呼ぶと、エリザベートは大きな笑顔を見せて、機嫌の良さがハッキリ分かる明るい声で言葉を返した。
「はい、その通りです。私は今日、王妃の使いとしてまいりました。そして、これを・・・」
エリザベートが、隣に座るリーザに目を向けると、リーザはカバンからもう一つ、固そうな木箱を取り出した。
50cm四方程の大きさで、やや平たい木箱をテーブルの上に置くと、リーザは許可を求めるようにエリザベートに顔を向ける。
エリザベートが頷くと、リーザがゆっくりと慎重に木箱を開けた。
「・・・鏡?」
なぜここで鏡がでるのか意図が読めず、レイチェルが見たままの感想を述べる。
箱の中には特に豪華な装飾も無く、なにか変わったところのない、一枚の大きな丸い鏡が納められていた。
ただ、よく見るととても滑らかで、一点の曇りもなく、まるで水面を見ているかのように透き通っていた。
レイチェルも、ジャレットも、シルヴィアも、なぜここで鏡を出されるのか理解できず、首を捻りエリザベートに問いかけるように顔を向けると、ミゼルが何かに気付いたように声をあげた。
「お、おい!これ・・・写しの鏡のじゃねぇか!?」
テーブルに両手を付き、身を乗り出して鏡を覗き込むと、その言葉にカチュアも反応した。
「え!?これ、写しの鏡なの?うそー!」
ケイト、シルヴィア、ユーリ、ジーンと、次々に魔法使い達が席を立ち、エリザベートの前に置かれた、写しの鏡を覗き込む。
離れた場所にいる人と連絡が取れる魔道具で、その値段は五千万イエンもするため、一般人はまず目にする事もない代物だった。
「うふふ、やっぱり魔法使いの方は反応しますよね。はい、これは写しの鏡です。王妃からレイジェスとの連絡用として持たせられました」
予想通りの反応だったのだろう。魔道具を扱う事が多く、自分で魔道具を作る事もできる魔法使いは、初めて見る魔道具、新しい魔道具には飛びつく事が多い。
エリザベートは口元に手を当て小さく笑った。
「・・・いやぁ~、ロンズデールにいた頃、アラルコン商会で一度だけ見た事があったけどよ・・・まさかここでまた見れるなんて思わなかったぜ。エリザベート様、なんでまた王妃様はこんなどえらい物をレイジェスとの連絡用に持たせたんですか?」
ミゼルは許可が出ていないので、鏡に触れる事はしなかったが、強い関心をもった眼差しで、写しの鏡を見つめている。
「ミゼル、私の事はエリザとお呼びください。つまり、写しの鏡を使用する程の事態という事です。
ケイト、採取した真実の花は、薬にできておりますか?」
話しを向けられたケイトは、もちろん、と言ってトレードマークの黒の鍔付きキャップを、ピンと指で弾いた。
「レイチェル、出していいよね?」
「あぁ、もちろんだ。エリザ様、店長は不在ですが、作り方はケイトが聞いていて、薬は二つ作れました」
ケイトは金庫から真実の花の薬を出し、エリザベートの前に置いた。
10cmもないくらいの小さい透明のビンを手に取り、中の薄い緑色の液体を眺め、エリザベートは、これが真実の花の薬、と独り言ちた。
「ケイト・・・大変でしたね。王妃に代わり感謝を・・・本当にありがとうございます」
「あ、いやいや、そんな頭下げないでくださいよ」
エリザベートの言葉に、ケイトは少し照れた様子で手を振る。
「・・・この薬の回収、そして写しの鏡、どちらも他の者に知られる訳にはいかなかったのです。
そしてなにより、サカキ・アラタ様・・・あなたにお会いしたかった」
エリザベートがアラタに顔を向ける。アラタも王女を前にして、多少気持ちの切り替えができていた。
弥生の事は頭から離れない。ジャレットの話しの続きも気になる。
だが、王女がわざわざここまで真実の花の薬を回収に来て、五千万イエンはするという魔道具、写しの鏡まで出した。
ただならぬ事だというのは察せられた。
「え!?そ、それって、エリザ様!どういう!?駄目です!アラタ君は私の旦那さんです!」
エリザベートの言葉に、アラタの隣に座るカチュアが反応し、アラタを隠すようにアラタの前に身を乗り出した。
「・・・ふふ、ごめんなさいカチュア、そうですね。今の言い方ですと誤解させてしまいますね。大丈夫です。王妃から聞いております。ご結婚されるのですよね?私はお二人を祝福いたします。
お会いしたかったというの・・・・・・恋愛ではありませんが、もっと深い・・・そう、私のご先祖様からの、悲願とでも申しましょうか・・・」
エリザベートの言葉にカチュアは、ほっと息を付く。
そしてカチュアの隣に座っていたアラタが、エリザベートの言葉に疑問を投げかけた。
「あの、エリザベート様・・・さっきもお伺いしましたが、その、なぜ俺に会いたかったんですか?それと、悲願とおっしゃいましたが・・・エリザベート様とは初対面だと思いますし、ご先祖様と言われても・・・よく分からないです」
アラタは治安部隊隊長だった、クインズベリー国最強の男、マルコス・ゴンサレス。通称マルゴンと戦い勝利している。
その一件で城へ出向き、国王陛下と謁見し、その帰りに王妃との顔を合わせている。
どこかでエリザベートがアラタを見かけた可能性はあるが、会いたかったと言われる程の接点は無かった。
「アラタ様、私の事は他の皆様と同じように、エリザとお呼びください。私は、レイジェスの皆様とは身分を越えてお友達になりたいのです。だって、私のご先祖様はお友達・・・いいえ、家族だったのですから」
アラタの問い、エリザベートはどこか遠くを見るような目を宙に向けた。
「一体、どういう・・・」
「私の母、王妃の旧姓はコルバートです」
アラタが最後まで疑問を口にする前に、エリザベートが聞き覚えの無い言葉を口にした。
意味が分からず、ただ呆気に取られているアラタを見て、エリザベートは自分だけが分かったように、そうですか、と呟いた。
「ここまではご存じないようですね。王妃の旧姓で名乗れば、私はエリザベート・コルバートとなります。アラタ様、試すような真似をして申し訳ありません。この世界の歴史を、どのくらいご存じか確認したかったのです。特に、200年前のカエストゥス国とブロートン帝国の戦争について・・・」
「ん?・・・コルバート?・・・コルバートだって!?エリザ様、まさかあなた!?」
エリザベートの説明の本質が掴めず、アラタだけでなく、カチュアもレイチェルも、みんながただエリザベートの言葉だけを黙って聞いていたが、ジャレットだけはエリザベートが何を言いたいのか理解し、エリザベートに言葉を向けた。
「ジャレット、あなたは知っておりましたか?そうです・・・あなたの察した通りです」
全員の視線が、エリザベートとジャレットを交互に行き来する。
エリザベートはどこか寂し気な表情でジャレットを見つめ、ジャレットは驚きを隠せず、眉をしかめ険しい顔でエリザベートから目を離せずにいる。
エリザベートに対し、負の感情を持っているわけではない。ただ、信じられないという思いが、全面に出ているのだ。
エリザベートの隣に座る、護衛のリーザ・アコスタは、全てを知っているのか、表情を変える事なく、ただ口を閉ざし少しだけエリザベートに顔を向けていた。
「・・・エリザ様、そろそろ私達にも分かるようにご説明いただけませんか?」
テーブルを挟み、エリザベートの正面に座るレイチェルが、話しの結論を促した。
「・・・そうですね。皆様を置いてけぼりにしていたようです。失礼いたしました。先程申し上げました通り、母である王妃の旧姓で名乗れば、私はエリザベート・コルバートです」
エリザベートは、そこで言葉を区切り、一つ息を付くと席を立った。
胸に手を当て、全員の顔を見渡し、これまでより強く大きな声で、その存在を示すようにハッキリとその名を口にした。
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