327 / 1,560
【326 ルチルの秘めた力】
しおりを挟む
時間差での攻撃により、一時はマイリスの遠距離攻撃を躱し、帝国兵を抑え込めていた。
倍以上の数を有する帝国兵とも互角に渡り合っていたが、長くは続かなかった。
マイリスの対応能力はパトリックの想像以上だった。
「・・・なるほど、そういうタイミングか。それなら、こっちもそれに合わせて撃つだけです」
自分の攻撃がどのタイミングで読まれているのか?
マイリスは数回の攻撃のあとにそれを把握した。
一度感覚を掴めば、それ以降はマイリスの独壇場だった。
時間差で放たれた魔法すらタイミングを読まれ、撃った直後に相殺されてしまう。
徐々にペースを崩されるカエストゥス軍に対し、帝国は支配力を強めて行き、あと一歩というとこまでカエストゥスを追い詰めていた。
「・・・ん?あの炎はへリングさんの天地焦炎斬・・・あれを出すなんて、けっこうてこずってるみたいですね」
2000メートル先にある、8メートルの石壁よりも高く上がる炎の柱に気付き、マイリスは表情を引き締め直した。
「さすがカエストゥスです。でも、ここまで追い込めば、僕達の勝利は揺るぎませんよ」
マイリスは指先をメディシングに向け構えると、慣れた仕草で狙いを付け、魔力を込め撃ち放った。
「なんだあの火柱は!?」
パトリックが石壁を降り、門番に重厚で大きな門を開けるよう命じた時、石壁よりも高く、まるで天をも焼き付くしそうな程に激しい炎が突如立ち昇った。
周囲の兵士達からもその異常な光景に、驚愕の声がもれる。
その炎に僅かばかり目を奪われてしまったが、パトリックはすぐに状況を察した。
あの男だ。
ルチルが戦っているあの男が、勝負に出たのだろう。
帝国の兵士達を抑えるだけで精一杯の状況で、あの炎がどう働くのか?
「・・・ルチル、信じているぞ!」
パトリックは再び門番に開門を指示する。
・・・ルチルはまかせろと言ったんだ。大丈夫だ、ルチルは強い。信じるんだ。
目にした炎の大きさには衝撃を受けた。あの炎をどう使うのか?そしてその結果によっては、ギリギリで耐えているこの均衡が破られる事になるだろう。
不安も懸念もあったが、今この状況でパトリックまでルチルの加勢に向かう訳にはいかない。
目の前には、ギリギリの状態で結界を維持している青魔法使い達がいるのだ。
パトリックはルチルを信じ、待機していた剣士隊を引きつれ飛び出した。
「カエストゥスはもう限界だ!撃って撃って撃ち続けろ!こんな結界破壊してやれ!」
門を開けパトリックと剣士隊が出ると、壁から十数メートル先に張り巡らされた結界の前で、肉厚の鎧で全身を固めた大柄な男が、声高々と号令を出していた。
その手には、並みの体力型ではとても扱えそうに見えない程、巨大な鉄のハンマーが握られている。
片手で軽々と肩にかけているところをみると、そうとうな腕力の持ち主だという事が分かる。
「あーっ!まどろっこしい!どけっ!俺がやる!」
大柄な男は魔法使い達を押しのけると、体をいからせながら大股で前に進み結界の前に立つ。
「おお!ブリックス兵士長!」
「やる気だ!兵士長がやる気だぞ!」
「兵士長の、全てを破壊する一撃!久しぶりに出るぞ!」
期待を込めた歓声に気を良くしたブリックスは、勢いよくその巨大な鉄のハンマーを振りかぶった。
「こんなクソ結界はなぁぁぁ!こうやってぶっ叩けば一発なんだよぉぉぉ!」
ブリックスの全てを破壊する一撃がカエストゥスの結界にぶち当たったと思われた瞬間、突如、大きな破裂音が響き渡り、それと同時にブリックスの巨体が真後ろに弾き飛ばされた。
ブリックスは、何度か転がった後に力なく横たわる。
その口からは泡が吐き出され、小刻みな痙攣をおこしている。
肉厚の鎧の胸部は砕け、むき出しになった胸板は黒く焦げて煙が立っていた。
ブリックスの姿を見て、その場にいた全ての帝国兵が沈黙する。
「ここは一歩も通さん。そいつと同じようになりたいヤツは前に出ろ」
パトリックは指先を突き付け、眼光鋭く帝国軍を睨みつけた。
その指には、金色に輝く雷の指輪がはめられていた。
炎の剣と呼ぶにはあまりに大きすぎる。
へリングの振り下ろしたその一撃は、ルチルの体など丸のみしても余りある大きさだった。
「ウオラァァァーッ!」
迫り来る炎を見て、ルチルはこのままではかわしきれないと判断した。
横に飛び退いたとて、熱波が届かない距離までは逃げられないだろう。
そしてへリングが横に凪ぎ払ってくる事も予想できる。
これ程の質量で、さらに炎という形が定まっていないものを、いつまでもかわしきる事はできない。
・・・ならばやるしかない
ルチルが爪先を地面に強く打ちつけると、足元から金色に輝く光が放出される。
ヘリングがその光を目にした時には、すでにルチルはヘリングの後ろを取っていた。
なんだと!?
どうやって?いつの間に後ろに回った?一瞬足が光ったと思ったら、次に意識が捉えた時は背中を取られていた。
多くの疑問が頭に浮かんだが、考えるよりも今は背中をとられたという危機を脱する事が最優先だ。
驚きの声さえ呑み込み、ヘリングは腰を捻り、振り下ろした腕を無理やり横に払い背後のルチルに炎の柱を打ちつける。
「ラァァァァーッツ!」
だが、ヘリングが振り切るより早く、ルチルはヘリングの懐に入り込んでいた。
「遅いッツ!」
左脇腹から右肩へ、ルチルのシャムシールがヘリングを袈裟懸けに斬り裂いた。
倍以上の数を有する帝国兵とも互角に渡り合っていたが、長くは続かなかった。
マイリスの対応能力はパトリックの想像以上だった。
「・・・なるほど、そういうタイミングか。それなら、こっちもそれに合わせて撃つだけです」
自分の攻撃がどのタイミングで読まれているのか?
マイリスは数回の攻撃のあとにそれを把握した。
一度感覚を掴めば、それ以降はマイリスの独壇場だった。
時間差で放たれた魔法すらタイミングを読まれ、撃った直後に相殺されてしまう。
徐々にペースを崩されるカエストゥス軍に対し、帝国は支配力を強めて行き、あと一歩というとこまでカエストゥスを追い詰めていた。
「・・・ん?あの炎はへリングさんの天地焦炎斬・・・あれを出すなんて、けっこうてこずってるみたいですね」
2000メートル先にある、8メートルの石壁よりも高く上がる炎の柱に気付き、マイリスは表情を引き締め直した。
「さすがカエストゥスです。でも、ここまで追い込めば、僕達の勝利は揺るぎませんよ」
マイリスは指先をメディシングに向け構えると、慣れた仕草で狙いを付け、魔力を込め撃ち放った。
「なんだあの火柱は!?」
パトリックが石壁を降り、門番に重厚で大きな門を開けるよう命じた時、石壁よりも高く、まるで天をも焼き付くしそうな程に激しい炎が突如立ち昇った。
周囲の兵士達からもその異常な光景に、驚愕の声がもれる。
その炎に僅かばかり目を奪われてしまったが、パトリックはすぐに状況を察した。
あの男だ。
ルチルが戦っているあの男が、勝負に出たのだろう。
帝国の兵士達を抑えるだけで精一杯の状況で、あの炎がどう働くのか?
「・・・ルチル、信じているぞ!」
パトリックは再び門番に開門を指示する。
・・・ルチルはまかせろと言ったんだ。大丈夫だ、ルチルは強い。信じるんだ。
目にした炎の大きさには衝撃を受けた。あの炎をどう使うのか?そしてその結果によっては、ギリギリで耐えているこの均衡が破られる事になるだろう。
不安も懸念もあったが、今この状況でパトリックまでルチルの加勢に向かう訳にはいかない。
目の前には、ギリギリの状態で結界を維持している青魔法使い達がいるのだ。
パトリックはルチルを信じ、待機していた剣士隊を引きつれ飛び出した。
「カエストゥスはもう限界だ!撃って撃って撃ち続けろ!こんな結界破壊してやれ!」
門を開けパトリックと剣士隊が出ると、壁から十数メートル先に張り巡らされた結界の前で、肉厚の鎧で全身を固めた大柄な男が、声高々と号令を出していた。
その手には、並みの体力型ではとても扱えそうに見えない程、巨大な鉄のハンマーが握られている。
片手で軽々と肩にかけているところをみると、そうとうな腕力の持ち主だという事が分かる。
「あーっ!まどろっこしい!どけっ!俺がやる!」
大柄な男は魔法使い達を押しのけると、体をいからせながら大股で前に進み結界の前に立つ。
「おお!ブリックス兵士長!」
「やる気だ!兵士長がやる気だぞ!」
「兵士長の、全てを破壊する一撃!久しぶりに出るぞ!」
期待を込めた歓声に気を良くしたブリックスは、勢いよくその巨大な鉄のハンマーを振りかぶった。
「こんなクソ結界はなぁぁぁ!こうやってぶっ叩けば一発なんだよぉぉぉ!」
ブリックスの全てを破壊する一撃がカエストゥスの結界にぶち当たったと思われた瞬間、突如、大きな破裂音が響き渡り、それと同時にブリックスの巨体が真後ろに弾き飛ばされた。
ブリックスは、何度か転がった後に力なく横たわる。
その口からは泡が吐き出され、小刻みな痙攣をおこしている。
肉厚の鎧の胸部は砕け、むき出しになった胸板は黒く焦げて煙が立っていた。
ブリックスの姿を見て、その場にいた全ての帝国兵が沈黙する。
「ここは一歩も通さん。そいつと同じようになりたいヤツは前に出ろ」
パトリックは指先を突き付け、眼光鋭く帝国軍を睨みつけた。
その指には、金色に輝く雷の指輪がはめられていた。
炎の剣と呼ぶにはあまりに大きすぎる。
へリングの振り下ろしたその一撃は、ルチルの体など丸のみしても余りある大きさだった。
「ウオラァァァーッ!」
迫り来る炎を見て、ルチルはこのままではかわしきれないと判断した。
横に飛び退いたとて、熱波が届かない距離までは逃げられないだろう。
そしてへリングが横に凪ぎ払ってくる事も予想できる。
これ程の質量で、さらに炎という形が定まっていないものを、いつまでもかわしきる事はできない。
・・・ならばやるしかない
ルチルが爪先を地面に強く打ちつけると、足元から金色に輝く光が放出される。
ヘリングがその光を目にした時には、すでにルチルはヘリングの後ろを取っていた。
なんだと!?
どうやって?いつの間に後ろに回った?一瞬足が光ったと思ったら、次に意識が捉えた時は背中を取られていた。
多くの疑問が頭に浮かんだが、考えるよりも今は背中をとられたという危機を脱する事が最優先だ。
驚きの声さえ呑み込み、ヘリングは腰を捻り、振り下ろした腕を無理やり横に払い背後のルチルに炎の柱を打ちつける。
「ラァァァァーッツ!」
だが、ヘリングが振り切るより早く、ルチルはヘリングの懐に入り込んでいた。
「遅いッツ!」
左脇腹から右肩へ、ルチルのシャムシールがヘリングを袈裟懸けに斬り裂いた。
0
あなたにおすすめの小説
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜
伽羅
ファンタジー
事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。
しかも王子だって!?
けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。
助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。
以前、投稿していた作品を加筆修正しています。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる