異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
336 / 1,560

【335 弥生の気持ち】

しおりを挟む
目が覚めた時、最初に目に入ったのは、板張りの天井だった。
ぼんやりと眺めていると、だんだんと意識がはっきりしてくる。

「・・・そうだ、戦いは?」

アタシは、あの少女、マイリスと戦って勝利したところまでは覚えている。
でも、あの子が倒れたところから先は、何も覚えていない。

体を起こそうとすると、まるで油の切れた機械人形のように体が軋む。
ひどい倦怠感に襲われながら、やっと上半身を起こしたところで、白い毛布が胸から落ちる。
自分がベットに寝ていた事に気が付く。

「痛っ!」

頭が痛み、右手で掴むように押さえる。頭だけじゃない。腕も足も、まるで全身が筋肉痛のようだ。


木作りの扉がかすかに軋む音を立てて開くと、トレーに水差しを乗せたパトリックが部屋に入って来た。

「あ!ヤ、ヤヨイ!気が付いたのか!?」

アタシが体を起こしているのを目にするなり、パトリックはテーブルの上にトレーを置いて、急ぎ足で近づいて来た。

「大丈夫か?何度もヒールをかけてもらったんだが、一向に目を覚まさないから心配したぞ。具合はどうだ?」

ベット脇に片膝を着いて、アタシの手を握ってくる。
その顔を見れば、どれだけ心配してくれていたのか伝わって来る。


「心配かけてごめん。なんかだるいし、あちこち筋肉痛みたいだけど、この通り大丈夫だよ」

アタシが笑いかけると、パトリックはようやく安心したように、ほっと息を付いた。

「・・・そっか、それなら良かったよ」

「あはは、心配性だなぁ・・・ねぇ、ところでアタシ、あの子を倒したところで気を失ったみたいでさ、何も分からないんだけど、戦いはどうなったの?」

「あぁ・・・戦いは終わったよ・・・」



パトリックの話しでは、アタシは丸三日寝ていたらしい。


アタシはマイリスが倒れた後、そのまま一緒に倒れたようだ。
帝国兵も、アタシとマイリスの一騎打ちに目を奪われていた事、そしてマイリスが一太刀で倒された事で、その後の行動を決めるまで、少しばかり時間がかかってしまったらしい。

とにかくアタシに止めを刺さなければと、黒魔法使いが攻撃に入ろうとしたところで、パトリック率いるカエストゥス軍が追い付き、間一髪アタシを護る事ができたそうだ。

その場にいた帝国兵を全滅させると、再びパトリックはメディシングに引き返し、メディシングで攻防を繰り広げる帝国軍を全滅させる事ができたという話しだった。


「そうだったんだ。ごめんね、パトリックが、みんながいなかったら、アタシ死んでたね」

自分が突っ走って行ってしまうのは自覚がある。アタシは戦いになるとどうしても一直線に向かってしまうようだ。
ただ、今回はそれでパトリックにも、軍のみんなにもだいぶ無理をさせ、迷惑をかけてしまった。

俯いていると、ふいにパトリックが指先でアタシの頬を差してきた。

「え?なに?」

普段、そういうちょっかいを出さないのに、なんで急に?
驚いて顔を上げると、パトリックは優し気な笑顔を向けてくれた。

「弥生、俺は旦那だから迷惑なんて事は気にしなくていいよ。それに、軍のみんなも自分達から、風姫に続け!なんて叫んで突っ込んで行ったから、悪い印象は持っていないさ」

「・・・そうなの?でも・・・・・」

「そうだね。今回は弥生のおかげで敵の指揮官も討ち取れたし、この戦いにも勝利できたけど、もっと安全で確実な手段もあったと思う。軍のみんなには、もう少し体が回復したら挨拶に行こう。それと、俺も弥生のフォローに徹すると決めてはいたけど、キミが自分の戦い方を見直すんなら、一緒に話して決めようよ」


「パトリック・・・うん、分かったよ」

アタシがそう返事をすると、パトリックはアタシの顔を少し見つめて、納得したように頷く。
コップに水差しから水をついでアタシに手渡してくる。

あまり意識してなかったけれど、喉はとても乾いていたようで、一気に飲み干してしまう。


「・・・ねぇ、ヤヨイに会いたい?」

コップをパトリックに返す。
ふと思いついたように、そんな質問をしてみた。

パトリックの妻は、あくまでもう一人のヤヨイだ。アタシじゃない。


いきなりそんな質問をしてくるとは思わなかったのだろう。
パトリックはきょとんとしたように目を丸くするが、すぐに大口を開けて笑った。

「あはははは!なに言ってんだよ、そりゃ会いたいに決まってるじゃないか。でも、キミだって弥生だろ?たまにはゆっくりしていったらどうだい?」


意外な返事・・・ではなかった。そうだ、パトリックはアタシという存在も、妻として見てくれている。決してヤヨイと分けたりしない。
だから、こんなふうに答えてくれるかもしれないと、心のどこかで思っていた。

「あはは!そんな事言って、ヤヨイが聞いたら嫉妬するかもしれないよ?」

「え?ヤヨイが弥生に嫉妬するのか?同じ弥生(ヤヨイ)じゃないか?う~ん、なんか言ってて混乱してきたぞ」

パトリックが腕を組んで頭を捻り、ヤヨイが弥生で、とか言い出したので、アタシは笑いが止まらなくなってきた。


ヤヨイ・・・本当に良い旦那だね

アタシも羨ましくなってきたよ

安心して、取ったりしないから

でも、今回はもう少しだけこっち出てていいかな?

アタシも戦い以外で・・・ちょっとだけこの世界に居場所を感じてるんだ


心の中でヤヨイが笑ってくれた事を感じる

ありがとう・・・・・アタシの中のもう一人のヤヨイ・・・
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...