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翌朝5時
10月も下旬になると、この時間はまだ夜の闇が残っている。
暗い内は朝というよりまだ夜という感覚を覚える。
事務所の出入り口前には、エリザベートとリーザの二人が支度を終え、レイジェスのメンバーと別れの挨拶を交わしていた。
「みなさん、この度は本当にありがとうございました」
エリザベートが感謝の言葉を述べて頭を下げると、隣のリーザもそれに倣い頭を下げる。
「ふぁ~~~あ」
全く空気を読まない大きな欠伸を漏らしたリカルドの胸元を、隣に立つユーリが掴み上げる。
「リカルド、さすがにそれはない。空気読もうよ?」
「うっ、ぐっ、ユ、ユーリ、この暴力女が!離しやがれ!」
リカルドがユーリの手を掴みもがいていると、ジャレットが間に入り二人を引き離した。
「おいおい、喧嘩してんじゃねぇよ。エリザ様の前だぞ」
「うふふ、ジャレット、よいのです。朝早いですから欠伸もでますよ。喧嘩するのも仲の良い証拠でしょう」
「・・・はぁぁぁぁぁあ!?誰と誰が!?俺とコイツが!?仲が良いっうぐぁッツ!」
大口を開けてエリザベートをまくし立てようとしたリカルドの腹に、ユーリの右の拳が突き刺さった。
「リカルド、学習しなよ?エリザ様になに怒鳴ってんの?殴るよ?」
「うぐっ・・・ユ、ユーリ、てめぇ・・・殴ってから、言ってんじゃ、ねぇぞ・・・」
腹を押さえてうずくまるリカルドを、ユーリは冷たい目で見下ろしていた。
「ほらほら二人とも、その辺で・・・ね?エリザ様はお忙しいんだから」
シルヴィアはユーリの両肩に手を置いてリカルドから離すと、屈んでリカルドの脇に手を入れ支える様にして立たせる。
「痛ってぇ~、ったくよ!ユーリは手が早過ぎんだよ」
「リカルド、確かにユーリは手が早いけど、あなたも礼儀がなってないわ。反省しなさいね?」
「いや、朝五時だしかたなくね?出るものは出るんだよ。欠伸に言えよ」
「反省するのよ?」
「けどよ・・・」
「ね?」
「・・・お、おう」
シルヴィアの笑顔の裏に隠れたものを感じとったリカルドは、これ以上は危険だと冷や汗を搔きながら首を縦に振った。
「ぷっ・・・あははは!お前達は愉快だな?」
リカルド達のやりとりを見ていたリーザが、堪えきれずに口を開けて大笑いを始めた。
「まぁ、リーザったら、そんなに笑っては失礼ですわ」
「あははは!あ、あぁ、いやいや、姫様これは失礼。つい掛け合いが面白くて」
175cmあり女性にしては長身のリーザは、リカルドに近づくと見下ろす形で頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「わっ!て、てめぇいきなり何すんだよ!はなせバカ!」
「ははは!これで流石に目が覚めただろ?例え相手が姫様でなかろうと、人の挨拶の途中で欠伸はもうするなよ?」
そう言って手を離すと、恨みがましい目で睨むリカルドを尻目に、リーザはエリザベートの隣に戻り、失礼いたしました。と小さく言葉にした。
「エリザ、写しの鏡はここで預かって本当にいいのかい?まぁ、確かにあれば助かるが、これほど高価な物を・・・」
レイチェルがテーブルに置いた写しの鏡に目を向ける。
「大丈夫よ。それに王妃がレイジェスに渡してと言っていたのだから、返されても困るわ」
昨晩の話し合いから、エリザベートとレイチェルは、お互いに敬語は使わないようになっていた。
今は立場を越えてとても気楽に言葉をかわせている。
「・・・分かった。取り扱いは気を付けるよ。何かあればいつでも連絡してくれ」
レイチェルの言葉にエリザベートは微笑みを持って返した。
そろそろ行きましょうか。とリーザが声をかけると、エリザベートは昨日と同じ白いパーカーのフードを被り顔を隠した。
「そうしてると本当に町娘だねぇ、王女様だなんて誰もわかんないや。今度その格好で遊びに行かない?エリザ」
ケイトが声をかけると、エリザベートは驚いたように振り返り、そしてすぐに花が咲いたような笑顔を見せた。
「ケイト!ええ、もちろんよ!絶対に行きましょうね!」
ケイトは歯を見せて笑い、エリザベートに右手を挙げて応えた。
外に出ると、空が薄っすらと白み始めて来た。まもなく夜が明けるだろう。
「・・・ギリギリか、あと数分もすれば完全に明るくなるだろうが、行けなくはないな。さ、エリザ様」
リーザが屈んで背中を向けると、エリザベートはもじもじして動こうとしない。
「リ、リーザ、ここで・・・ですか?」
「エリザ様、我々は隠密でここに来ております。ここに来た事は城の誰にも知られてはならないのです。急いで帰らなければなりません。ですから早く乗ってください」
偽国王に知られないように隠れて城から抜け出した二人は、夜が明け城で朝食の時間になる前には戻らなければならなかった。
そして馬車ではなく、リーザの背中に乗って来たエリザベートは、帰りもそうなる事は当然だった。
「う、うぅ・・・みんなに見られながらのおんぶは、は、恥ずかしいですね」
少し顔を赤くしてリーゼの背に乗ると、エリザベートはレイチェル達に小さく手を振った。
「ありがとうございました。こういう時に不謹慎かもしれませんが、皆さんとお泊りができて、とても楽しかったです。またお会いしましょう」
「・・・エリザ様」
アラタが一歩前に出ると、エリザベートは顔を向けて微笑みを見せた。
「アラタさん、お話しできて良かったです。無理なお願いを聞いてくださり、本当にありがとうございました」
「はい、俺もエリザ様とお話しできて良かったです。ヤヨイさんの言葉を届けてくれて・・・俺、救われました。本当にありがとうございます」
「・・・約束が果たせてジャニスもきっと喜んでます。アラタさん、私も救われたのですよ」
「はい・・・」
少しだけ笑顔でお互いを見合うと、アラタは、お気をつけて、と言い会釈をして一歩下がった。
「・・・エリザ様、そろそろ」
「はい、リーザ、お待たせしました。では、お手柔らかに頼みますよ」
リーザはエリザベートを背負い直すと、出入口前に並んでいるレイジェスのメンバーに顔を向けた。
「じゃあ、レイジェスのみんな・・・世話になったな。また会おう」
そう言い残し背を向け一歩踏み出したか思うと、リーザは一瞬の内に樹々を走り抜けて街へと消えて行った。
10月も下旬になると、この時間はまだ夜の闇が残っている。
暗い内は朝というよりまだ夜という感覚を覚える。
事務所の出入り口前には、エリザベートとリーザの二人が支度を終え、レイジェスのメンバーと別れの挨拶を交わしていた。
「みなさん、この度は本当にありがとうございました」
エリザベートが感謝の言葉を述べて頭を下げると、隣のリーザもそれに倣い頭を下げる。
「ふぁ~~~あ」
全く空気を読まない大きな欠伸を漏らしたリカルドの胸元を、隣に立つユーリが掴み上げる。
「リカルド、さすがにそれはない。空気読もうよ?」
「うっ、ぐっ、ユ、ユーリ、この暴力女が!離しやがれ!」
リカルドがユーリの手を掴みもがいていると、ジャレットが間に入り二人を引き離した。
「おいおい、喧嘩してんじゃねぇよ。エリザ様の前だぞ」
「うふふ、ジャレット、よいのです。朝早いですから欠伸もでますよ。喧嘩するのも仲の良い証拠でしょう」
「・・・はぁぁぁぁぁあ!?誰と誰が!?俺とコイツが!?仲が良いっうぐぁッツ!」
大口を開けてエリザベートをまくし立てようとしたリカルドの腹に、ユーリの右の拳が突き刺さった。
「リカルド、学習しなよ?エリザ様になに怒鳴ってんの?殴るよ?」
「うぐっ・・・ユ、ユーリ、てめぇ・・・殴ってから、言ってんじゃ、ねぇぞ・・・」
腹を押さえてうずくまるリカルドを、ユーリは冷たい目で見下ろしていた。
「ほらほら二人とも、その辺で・・・ね?エリザ様はお忙しいんだから」
シルヴィアはユーリの両肩に手を置いてリカルドから離すと、屈んでリカルドの脇に手を入れ支える様にして立たせる。
「痛ってぇ~、ったくよ!ユーリは手が早過ぎんだよ」
「リカルド、確かにユーリは手が早いけど、あなたも礼儀がなってないわ。反省しなさいね?」
「いや、朝五時だしかたなくね?出るものは出るんだよ。欠伸に言えよ」
「反省するのよ?」
「けどよ・・・」
「ね?」
「・・・お、おう」
シルヴィアの笑顔の裏に隠れたものを感じとったリカルドは、これ以上は危険だと冷や汗を搔きながら首を縦に振った。
「ぷっ・・・あははは!お前達は愉快だな?」
リカルド達のやりとりを見ていたリーザが、堪えきれずに口を開けて大笑いを始めた。
「まぁ、リーザったら、そんなに笑っては失礼ですわ」
「あははは!あ、あぁ、いやいや、姫様これは失礼。つい掛け合いが面白くて」
175cmあり女性にしては長身のリーザは、リカルドに近づくと見下ろす形で頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「わっ!て、てめぇいきなり何すんだよ!はなせバカ!」
「ははは!これで流石に目が覚めただろ?例え相手が姫様でなかろうと、人の挨拶の途中で欠伸はもうするなよ?」
そう言って手を離すと、恨みがましい目で睨むリカルドを尻目に、リーザはエリザベートの隣に戻り、失礼いたしました。と小さく言葉にした。
「エリザ、写しの鏡はここで預かって本当にいいのかい?まぁ、確かにあれば助かるが、これほど高価な物を・・・」
レイチェルがテーブルに置いた写しの鏡に目を向ける。
「大丈夫よ。それに王妃がレイジェスに渡してと言っていたのだから、返されても困るわ」
昨晩の話し合いから、エリザベートとレイチェルは、お互いに敬語は使わないようになっていた。
今は立場を越えてとても気楽に言葉をかわせている。
「・・・分かった。取り扱いは気を付けるよ。何かあればいつでも連絡してくれ」
レイチェルの言葉にエリザベートは微笑みを持って返した。
そろそろ行きましょうか。とリーザが声をかけると、エリザベートは昨日と同じ白いパーカーのフードを被り顔を隠した。
「そうしてると本当に町娘だねぇ、王女様だなんて誰もわかんないや。今度その格好で遊びに行かない?エリザ」
ケイトが声をかけると、エリザベートは驚いたように振り返り、そしてすぐに花が咲いたような笑顔を見せた。
「ケイト!ええ、もちろんよ!絶対に行きましょうね!」
ケイトは歯を見せて笑い、エリザベートに右手を挙げて応えた。
外に出ると、空が薄っすらと白み始めて来た。まもなく夜が明けるだろう。
「・・・ギリギリか、あと数分もすれば完全に明るくなるだろうが、行けなくはないな。さ、エリザ様」
リーザが屈んで背中を向けると、エリザベートはもじもじして動こうとしない。
「リ、リーザ、ここで・・・ですか?」
「エリザ様、我々は隠密でここに来ております。ここに来た事は城の誰にも知られてはならないのです。急いで帰らなければなりません。ですから早く乗ってください」
偽国王に知られないように隠れて城から抜け出した二人は、夜が明け城で朝食の時間になる前には戻らなければならなかった。
そして馬車ではなく、リーザの背中に乗って来たエリザベートは、帰りもそうなる事は当然だった。
「う、うぅ・・・みんなに見られながらのおんぶは、は、恥ずかしいですね」
少し顔を赤くしてリーゼの背に乗ると、エリザベートはレイチェル達に小さく手を振った。
「ありがとうございました。こういう時に不謹慎かもしれませんが、皆さんとお泊りができて、とても楽しかったです。またお会いしましょう」
「・・・エリザ様」
アラタが一歩前に出ると、エリザベートは顔を向けて微笑みを見せた。
「アラタさん、お話しできて良かったです。無理なお願いを聞いてくださり、本当にありがとうございました」
「はい、俺もエリザ様とお話しできて良かったです。ヤヨイさんの言葉を届けてくれて・・・俺、救われました。本当にありがとうございます」
「・・・約束が果たせてジャニスもきっと喜んでます。アラタさん、私も救われたのですよ」
「はい・・・」
少しだけ笑顔でお互いを見合うと、アラタは、お気をつけて、と言い会釈をして一歩下がった。
「・・・エリザ様、そろそろ」
「はい、リーザ、お待たせしました。では、お手柔らかに頼みますよ」
リーザはエリザベートを背負い直すと、出入口前に並んでいるレイジェスのメンバーに顔を向けた。
「じゃあ、レイジェスのみんな・・・世話になったな。また会おう」
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