異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
406 / 1,557

405 見送り

しおりを挟む
翌朝5時

10月も下旬になると、この時間はまだ夜の闇が残っている。
暗い内は朝というよりまだ夜という感覚を覚える。

事務所の出入り口前には、エリザベートとリーザの二人が支度を終え、レイジェスのメンバーと別れの挨拶を交わしていた。


「みなさん、この度は本当にありがとうございました」

エリザベートが感謝の言葉を述べて頭を下げると、隣のリーザもそれに倣い頭を下げる。

「ふぁ~~~あ」

全く空気を読まない大きな欠伸を漏らしたリカルドの胸元を、隣に立つユーリが掴み上げる。

「リカルド、さすがにそれはない。空気読もうよ?」

「うっ、ぐっ、ユ、ユーリ、この暴力女が!離しやがれ!」

リカルドがユーリの手を掴みもがいていると、ジャレットが間に入り二人を引き離した。

「おいおい、喧嘩してんじゃねぇよ。エリザ様の前だぞ」

「うふふ、ジャレット、よいのです。朝早いですから欠伸もでますよ。喧嘩するのも仲の良い証拠でしょう」


「・・・はぁぁぁぁぁあ!?誰と誰が!?俺とコイツが!?仲が良いっうぐぁッツ!」

大口を開けてエリザベートをまくし立てようとしたリカルドの腹に、ユーリの右の拳が突き刺さった。

「リカルド、学習しなよ?エリザ様になに怒鳴ってんの?殴るよ?」

「うぐっ・・・ユ、ユーリ、てめぇ・・・殴ってから、言ってんじゃ、ねぇぞ・・・」

腹を押さえてうずくまるリカルドを、ユーリは冷たい目で見下ろしていた。


「ほらほら二人とも、その辺で・・・ね?エリザ様はお忙しいんだから」

シルヴィアはユーリの両肩に手を置いてリカルドから離すと、屈んでリカルドの脇に手を入れ支える様にして立たせる。

「痛ってぇ~、ったくよ!ユーリは手が早過ぎんだよ」

「リカルド、確かにユーリは手が早いけど、あなたも礼儀がなってないわ。反省しなさいね?」

「いや、朝五時だしかたなくね?出るものは出るんだよ。欠伸に言えよ」

「反省するのよ?」

「けどよ・・・」

「ね?」

「・・・お、おう」

シルヴィアの笑顔の裏に隠れたものを感じとったリカルドは、これ以上は危険だと冷や汗を搔きながら首を縦に振った。


「ぷっ・・・あははは!お前達は愉快だな?」

リカルド達のやりとりを見ていたリーザが、堪えきれずに口を開けて大笑いを始めた。

「まぁ、リーザったら、そんなに笑っては失礼ですわ」

「あははは!あ、あぁ、いやいや、姫様これは失礼。つい掛け合いが面白くて」

175cmあり女性にしては長身のリーザは、リカルドに近づくと見下ろす形で頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「わっ!て、てめぇいきなり何すんだよ!はなせバカ!」

「ははは!これで流石に目が覚めただろ?例え相手が姫様でなかろうと、人の挨拶の途中で欠伸はもうするなよ?」

そう言って手を離すと、恨みがましい目で睨むリカルドを尻目に、リーザはエリザベートの隣に戻り、失礼いたしました。と小さく言葉にした。


「エリザ、写しの鏡はここで預かって本当にいいのかい?まぁ、確かにあれば助かるが、これほど高価な物を・・・」

レイチェルがテーブルに置いた写しの鏡に目を向ける。

「大丈夫よ。それに王妃がレイジェスに渡してと言っていたのだから、返されても困るわ」

昨晩の話し合いから、エリザベートとレイチェルは、お互いに敬語は使わないようになっていた。
今は立場を越えてとても気楽に言葉をかわせている。

「・・・分かった。取り扱いは気を付けるよ。何かあればいつでも連絡してくれ」

レイチェルの言葉にエリザベートは微笑みを持って返した。

そろそろ行きましょうか。とリーザが声をかけると、エリザベートは昨日と同じ白いパーカーのフードを被り顔を隠した。

「そうしてると本当に町娘だねぇ、王女様だなんて誰もわかんないや。今度その格好で遊びに行かない?エリザ」

ケイトが声をかけると、エリザベートは驚いたように振り返り、そしてすぐに花が咲いたような笑顔を見せた。

「ケイト!ええ、もちろんよ!絶対に行きましょうね!」

ケイトは歯を見せて笑い、エリザベートに右手を挙げて応えた。


 

外に出ると、空が薄っすらと白み始めて来た。まもなく夜が明けるだろう。

「・・・ギリギリか、あと数分もすれば完全に明るくなるだろうが、行けなくはないな。さ、エリザ様」

リーザが屈んで背中を向けると、エリザベートはもじもじして動こうとしない。

「リ、リーザ、ここで・・・ですか?」

「エリザ様、我々は隠密でここに来ております。ここに来た事は城の誰にも知られてはならないのです。急いで帰らなければなりません。ですから早く乗ってください」

偽国王に知られないように隠れて城から抜け出した二人は、夜が明け城で朝食の時間になる前には戻らなければならなかった。

そして馬車ではなく、リーザの背中に乗って来たエリザベートは、帰りもそうなる事は当然だった。

「う、うぅ・・・みんなに見られながらのおんぶは、は、恥ずかしいですね」

少し顔を赤くしてリーゼの背に乗ると、エリザベートはレイチェル達に小さく手を振った。

「ありがとうございました。こういう時に不謹慎かもしれませんが、皆さんとお泊りができて、とても楽しかったです。またお会いしましょう」


「・・・エリザ様」

アラタが一歩前に出ると、エリザベートは顔を向けて微笑みを見せた。

「アラタさん、お話しできて良かったです。無理なお願いを聞いてくださり、本当にありがとうございました」

「はい、俺もエリザ様とお話しできて良かったです。ヤヨイさんの言葉を届けてくれて・・・俺、救われました。本当にありがとうございます」

「・・・約束が果たせてジャニスもきっと喜んでます。アラタさん、私も救われたのですよ」

「はい・・・」

少しだけ笑顔でお互いを見合うと、アラタは、お気をつけて、と言い会釈をして一歩下がった。


「・・・エリザ様、そろそろ」

「はい、リーザ、お待たせしました。では、お手柔らかに頼みますよ」

リーザはエリザベートを背負い直すと、出入口前に並んでいるレイジェスのメンバーに顔を向けた。

「じゃあ、レイジェスのみんな・・・世話になったな。また会おう」


そう言い残し背を向け一歩踏み出したか思うと、リーザは一瞬の内に樹々を走り抜けて街へと消えて行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

駆け落ち男女の気ままな異世界スローライフ

壬黎ハルキ
ファンタジー
それは、少年が高校を卒業した直後のことだった。 幼なじみでお嬢様な少女から、夕暮れの公園のど真ん中で叫ばれた。 「知らない御曹司と結婚するなんて絶対イヤ! このまま世界の果てまで逃げたいわ!」 泣きじゃくる彼女に、彼は言った。 「俺、これから異世界に移住するんだけど、良かったら一緒に来る?」 「行くわ! ついでに私の全部をアンタにあげる! 一生大事にしなさいよね!」 そんな感じで駆け落ちした二人が、異世界でのんびりと暮らしていく物語。 ※2019年10月、完結しました。 ※小説家になろう、カクヨムにも公開しています。

異世界に飛ばされた人見知りの僕は、影が薄かったから趣味に走る事にしました!

まったりー
ファンタジー
主人公は、人見知りな占いが大好きな男の子。 そんな主人公は、いるのか分からない程の影の薄さで、そんなクラスが異世界に召喚されてしまいます。 生徒たちは、ステータスの確認を進められますが、主人公はいるとは思われず取り残され、それならばと外に1人で出て行き、主人公の異世界生活が始まります。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~

Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。 それでも、組織の理不尽には勝てなかった。 ——そして、使い潰されて死んだ。 目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。 強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、 因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。 武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。 だが、邪魔する上司も腐った組織もない。 今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。 石炭と化学による国力強化。 情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。 準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。 これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、 「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、 滅びの未来を書き換えようとする建国譚。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...