457 / 1,560
456 シルヴィアの気持ち
しおりを挟む
重厚な鉄の扉を開けると、中は殺風景で非常に広い部屋だった。
部屋の隅に机があるのは見えるが、それだけだ。生活感はまるでなかった。
そして部屋の中央で、俺達を見据えて立っている男こそ、この塔を護る四勇士、レオ・アフマダリエフだろう。
一見すると、ただ立っているだけに見えるかもしれないが、圧倒的な存在感だった。
195cm、いやそれ以上かもしれない長身と、鎧の上からでも分かる筋骨隆々の体躯は、まさに体力型そのものと言えるものだった。
目の覚めるような金色の長い髪は後ろにまとめて結ばれており、鋭い眼光は目の前のジャレットとシルヴィアを射貫くように見据えている。
際立ったのは額に撒かれた黒く細い紐だった。
紐にはまるで人間の目をモチーフにしたような、奇妙な石が付けられており、それが額の中心に当たるようになっている。異質としか言えない物だった。
身に纏っている鎧は鋼鉄で肉厚。クインズベリー国の色でダークブラウン一色だった。
兜は付けていない。そして二の腕と太腿、そして関節部以外は全て覆われている。
総重量は100キロを軽く超えているだろう。重装兵という印象だった。
「・・・メイスか」
素材は鉄だと思うが、長さはおそらく1メートルを超えている。
レイジェスでもメイスは扱っているが、一般的なメイスは1メートル以下、70~80cmくらいが平均というところだ。だが、この男の持っているメイスは明らかに長い。
メイスの頭部は良く見える球型だったが、扱いやすさや、スピードを出したい場合は球型頭部の中を空洞にする事も多い。
しかしこの男、レオは軽々と片手で持っているが、そのメイスの中はしっかりと詰まっているのは経験上見て分かる。一撃でもくらえば甚大なダメージを受けるだろう。
「・・・俺の殺気には気付いたようだな?最低限、俺の前に立つ資格はあるようだ」
レオは普通に話しているだけなのだろうが、腹の底に響くような重い声だった。
それだけで冷たい汗が頬を伝うが、呑まれるわけにはいかない。
「・・・おい、お前は国王が偽者だって知ってんのかよ?」
返答次第では、戦わずにすむかもしれない。
俺は数メートル先に立つレオを見据え、言葉を待った。
「・・・そうか、ここまで来た貴様がそう言うのなら、やはり偽者だったという事なのだろうな」
レオは一度目を閉じ、少し考えるようなそぶりを見せた後、自分も納得したかのように僅かに頷いて口を開いた。
「あなた、知ってたの?」
シーちゃんも少し驚いたような声で、レオに問いかけた。
「確信は持っていなかったがな。しかし、あれだけ変わってしまえば疑わぬほうがおかしいだろう?ここには国賊が来ると聞いていたが・・・どうやら違うようだ。目を見れば分かる。お前らはむしろ逆だ。偽国王を倒し、この国を救う・・・そんなところか?」
レオの考察に、俺は驚きのあまりすぐに言葉を返せなかった。
だが、そこまで分かっているのなら戦いは避けられる。
「そうだ・・・俺達は偽国王を倒す!今、王妃様は城内で騎士団に追われているんだ!一国も早く助けに行かなきゃならねぇ!お前もそこまで分かっているんなら、力を貸してくれ!」
この時ジャレットは、戦いを回避できるという思い込みで、レオへの警戒がわずかに緩んでいた。
それは半ば願望。レオの返答には可能性があった。
国王が偽者で、こちらの事情も全て知っているのであれば、強敵レオ・アフマダリエフと戦わずにすむかもしれない。
ジャレットは、レオ・アフマダリエフとの戦闘を回避できるという可能性を、確信としてとらえていた。
ジャレットは自分よりはるか格上であろうレオに対して、できれば戦いたくないという気持ちが、無意識のうちに自分に都合の良い考えを作り出し、それを妄信してしまっていた。
レオの返答には確かに可能性があった・・・
しかしそれはあくまで可能性だった。
現実は、メイスを振り上げたレオがジャレットに飛び掛かかり、その頭めがけてメイスを振り下ろしていた。
レオの返事を聞いて、ジャレットが少し前のめりになっている事を感じた私は、身を護る事に集中した。
ジャレットは怒るだろうけど、レオに対して戦う前から勝てないと思っているようだった。
ハッキリ言えば、恐怖を感じているんだと思う。
この部屋に入る前、ジャレットはマルゴンに勝てないと言っていた。
そしてそれはレオに対しても同じ印象だと。
・・・なにそれ?
ねぇジャレット、あなたそんなに臆病だったかしら?
私の知ってるあなたは、俺について来いって感じで、いつも自信に満ちていたわ。
例え自分より強い相手でも、戦う前から諦めたりする人じゃない。
それとも・・・私がいるから?
あなた、私に逃げろって何度も言ったけど、私が怪我をするのを恐れているの?
だから戦わずに済ませたかったの?
・・・・・ジャレット、あなたそんなに私が信用できないの?
「・・・なに?」
レオの振り下ろしたメイスは、ジャレットの頭を打ち砕く前にその動きを止めた。
いや・・・・・止められた。
「・・・私、氷魔法が得意なの」
シルヴィアの右手から放たれた冷気は、握ったメイスから肩まで、レオの右腕を氷漬けにして固めていた。
部屋の隅に机があるのは見えるが、それだけだ。生活感はまるでなかった。
そして部屋の中央で、俺達を見据えて立っている男こそ、この塔を護る四勇士、レオ・アフマダリエフだろう。
一見すると、ただ立っているだけに見えるかもしれないが、圧倒的な存在感だった。
195cm、いやそれ以上かもしれない長身と、鎧の上からでも分かる筋骨隆々の体躯は、まさに体力型そのものと言えるものだった。
目の覚めるような金色の長い髪は後ろにまとめて結ばれており、鋭い眼光は目の前のジャレットとシルヴィアを射貫くように見据えている。
際立ったのは額に撒かれた黒く細い紐だった。
紐にはまるで人間の目をモチーフにしたような、奇妙な石が付けられており、それが額の中心に当たるようになっている。異質としか言えない物だった。
身に纏っている鎧は鋼鉄で肉厚。クインズベリー国の色でダークブラウン一色だった。
兜は付けていない。そして二の腕と太腿、そして関節部以外は全て覆われている。
総重量は100キロを軽く超えているだろう。重装兵という印象だった。
「・・・メイスか」
素材は鉄だと思うが、長さはおそらく1メートルを超えている。
レイジェスでもメイスは扱っているが、一般的なメイスは1メートル以下、70~80cmくらいが平均というところだ。だが、この男の持っているメイスは明らかに長い。
メイスの頭部は良く見える球型だったが、扱いやすさや、スピードを出したい場合は球型頭部の中を空洞にする事も多い。
しかしこの男、レオは軽々と片手で持っているが、そのメイスの中はしっかりと詰まっているのは経験上見て分かる。一撃でもくらえば甚大なダメージを受けるだろう。
「・・・俺の殺気には気付いたようだな?最低限、俺の前に立つ資格はあるようだ」
レオは普通に話しているだけなのだろうが、腹の底に響くような重い声だった。
それだけで冷たい汗が頬を伝うが、呑まれるわけにはいかない。
「・・・おい、お前は国王が偽者だって知ってんのかよ?」
返答次第では、戦わずにすむかもしれない。
俺は数メートル先に立つレオを見据え、言葉を待った。
「・・・そうか、ここまで来た貴様がそう言うのなら、やはり偽者だったという事なのだろうな」
レオは一度目を閉じ、少し考えるようなそぶりを見せた後、自分も納得したかのように僅かに頷いて口を開いた。
「あなた、知ってたの?」
シーちゃんも少し驚いたような声で、レオに問いかけた。
「確信は持っていなかったがな。しかし、あれだけ変わってしまえば疑わぬほうがおかしいだろう?ここには国賊が来ると聞いていたが・・・どうやら違うようだ。目を見れば分かる。お前らはむしろ逆だ。偽国王を倒し、この国を救う・・・そんなところか?」
レオの考察に、俺は驚きのあまりすぐに言葉を返せなかった。
だが、そこまで分かっているのなら戦いは避けられる。
「そうだ・・・俺達は偽国王を倒す!今、王妃様は城内で騎士団に追われているんだ!一国も早く助けに行かなきゃならねぇ!お前もそこまで分かっているんなら、力を貸してくれ!」
この時ジャレットは、戦いを回避できるという思い込みで、レオへの警戒がわずかに緩んでいた。
それは半ば願望。レオの返答には可能性があった。
国王が偽者で、こちらの事情も全て知っているのであれば、強敵レオ・アフマダリエフと戦わずにすむかもしれない。
ジャレットは、レオ・アフマダリエフとの戦闘を回避できるという可能性を、確信としてとらえていた。
ジャレットは自分よりはるか格上であろうレオに対して、できれば戦いたくないという気持ちが、無意識のうちに自分に都合の良い考えを作り出し、それを妄信してしまっていた。
レオの返答には確かに可能性があった・・・
しかしそれはあくまで可能性だった。
現実は、メイスを振り上げたレオがジャレットに飛び掛かかり、その頭めがけてメイスを振り下ろしていた。
レオの返事を聞いて、ジャレットが少し前のめりになっている事を感じた私は、身を護る事に集中した。
ジャレットは怒るだろうけど、レオに対して戦う前から勝てないと思っているようだった。
ハッキリ言えば、恐怖を感じているんだと思う。
この部屋に入る前、ジャレットはマルゴンに勝てないと言っていた。
そしてそれはレオに対しても同じ印象だと。
・・・なにそれ?
ねぇジャレット、あなたそんなに臆病だったかしら?
私の知ってるあなたは、俺について来いって感じで、いつも自信に満ちていたわ。
例え自分より強い相手でも、戦う前から諦めたりする人じゃない。
それとも・・・私がいるから?
あなた、私に逃げろって何度も言ったけど、私が怪我をするのを恐れているの?
だから戦わずに済ませたかったの?
・・・・・ジャレット、あなたそんなに私が信用できないの?
「・・・なに?」
レオの振り下ろしたメイスは、ジャレットの頭を打ち砕く前にその動きを止めた。
いや・・・・・止められた。
「・・・私、氷魔法が得意なの」
シルヴィアの右手から放たれた冷気は、握ったメイスから肩まで、レオの右腕を氷漬けにして固めていた。
0
あなたにおすすめの小説
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜
伽羅
ファンタジー
事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。
しかも王子だって!?
けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。
助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。
以前、投稿していた作品を加筆修正しています。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる