異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
504 / 1,560

503 最後の一欠けら

しおりを挟む
それから先の決着までは、僅か10秒と短いものだった。

だが、光と闇、相反する二つの力を持つ両者の、全てを出し尽くす覚悟で交わされた拳と技は、途方もない時間を感じさせるほどに高密度の攻防となった。

攻撃手段が拳だけのアラタは、どうしても距離を詰めなければならない。
だが、すでにそれを承知しているマウリシオは、闇の波動の連射でアラタを突き離そうとした。

トレバーは闇の波動を撃つために、5秒の溜めを必要とした。
しかし、トレバーよりもはるかに闇の力が強いマウリシオは、一切の溜めを必要としない。
何発でも続けて撃つ事ができるため、マウリシオは両手から矢継ぎ早に闇の波動を撃ち続けた。

確かに早い。だが今のアラタの目をもってすれば、10メートル以上離れて撃たれる波動など、躱す事は容易い事だった。

ボクシングのジャブ。
相手の息遣いが聞こえる位置から放たれるあの左ジャブに比べれば、なんとのんびりした攻撃だろうか。
加えて、協会で戦ったマルコス・ゴンサレスの突き、あのスピードを見てしまった以上、今のアラタにとっては、ただ真っ直ぐ撃たれるだけの波動など、足止めにもならなかった。


飛び込めば拳が届く!
闇の波動をかいくぐり、そこまでアラタが距離を詰めた時、マウリシオの顔に浮かんだ表情は、追い詰められた者の焦りではなく、獲物を罠にはめた時のニヤリとした笑みだった。



馬鹿め!ここまで不用意に突っ込んで来るとはな!
俺の攻撃は手段は闇の波動だけではないとまだ分からないか!?
闇全てが俺なのだ!この体から発する瘴気は全て自在に動かす事ができる!
俺の瘴気に触れる場所にいるという事は、貴様はすでに拘束されているという事だ!


マウリシオの懐に入り込んだアラタは、やや腰をかがめ、左から右へと体全体をぶつけるように腰を捻り、その左拳をマウリシオの右わき腹へと目掛けて繰り出した!

しかし・・・あと少し、もうほんの数センチで、光を纏ったその拳が入るという距離で、アラタの全身が闇の瘴気に捕まり、微動だにできない程に固められてしまう。


「勝った!死ねぃッツ!」

アラタを拘束したマウリシオが両手に闇を集める。
この一撃で勝負をつける!確実に撃ち殺す!
それだけの執念を込めたマウリシオの闇がアラタに向けられ、今まさに放たれようとしたその瞬間、アラタの全身から放たれた光が闇の拘束を吹き飛ばした。



ここで決着を付ける!
何が何でも、是が非でもコイツは倒す!
その執念はアラタとて同じだった。
この場に立つために、仲間がみんなその身を盾にしてくれたのだ。
それも全て、自分ならこの偽国王、闇の化身を倒せると信じて!

光とは心の強さである。
仲間の想いを胸に抱いたアラタの光がより一層強く輝き、その拳に力を宿した。

「光よォーーーーーッツ!」

アラタの渾身の右ストレートが繰り出された。



まだだ!
マウリシオにとって、アラタが闇の瘴気による拘束を解いた事は決して意外ではない。
実際にアラタはその光の力で、何度も闇を消し飛ばしているのだ。

本気で拘束したこの闇を吹き飛ばした事には少し驚かされたが、想定の範囲内だ。
ようはこの両手に集めた、正真正銘全力の闇の波動を食らわせる事ができればそれでいい!
それで決着なのだ!
そのための一瞬、ほんの瞬き程の一瞬動きを止める事ができればそれでいいのだ!

そんな光など・・・

「消し飛ばしてくれるわぁぁぁァァァァーーーーッツ!」

マウリシオは両手を合わせると闇の波動を撃ち放った。




・・・初めてサンドバックを叩いた時の事を思い出した。

天井から鎖に繋がってぶら下がっているソレは、本当にそんなに重いのかと疑問を感じたものだった。

村戸さんはそんな俺の心を読んだかのように、試しに一発殴ってみろ、そう言って使い古しのグローブを渡してくれた。
きっと、このジムの練習生が毎日毎日これで殴ったのだろう。
初めて手を通したグローブは、なんだか湿っていて妙に柔らかかった。

こんなの全力で叩けば簡単に跳ね上がるだろ?

そう思って見様見真似の右ストレートを打ち込んだ。

自分の拳が跳ね返される程の弾力、少しは揺らす事ができたが、跳ね上げるなんてとんでもない。
重く頑丈で、自分がどれだけ殴っても壊す事はできないだろう。
そう思えるものだった。


そして今、アラタの光の拳とぶつかり合う闇の波動は、あの時の感触を思い出させた。

「ぐっ!うおぉぉぉっ!」

拳を通じて感じる圧力に歯を食いしばる。
一瞬でも気を抜けば、拳を弾かれてしまうだろう。
この波動がマウリシオの最後の一撃だと感じとり、アラタも闘志を燃やす!

負けられない!
絶対に負けるわけにはいかない!

俺の光に全てがかかっているんだ!
こんな闇に負けてたまるかぁーーーーーッツ!

レイジェスの仲間達の顔が頭に浮かび、アラタの拳に一層強い光が宿った。



馬鹿な!?
お、押されているだと!?
俺の全力の闇の波動だぞ!それが、それがこんな光なんぞにぃぃぃぃーーーーッツ!

両手から放っている闇の波動が押し戻され、伸ばした腕が曲げられていく・・・そして・・・



アラタの光の拳が、闇の波動を押し返し打ち消した。

「ウォォォォーーーーッツ!」

最後の波動は消した!もはやマウリシオには手はない!
俺はそのまま右拳を真っすぐに突いて、マウリシオの顔面を撃ち抜い・・・

「うぐぁッ!・・・あ、が・・・」



突然腹に受けた鋭い痛み、それは背中まで貫いた。
あまりの痛みに顔を下げ腹に目をやると、血が滲みだし白いシャツを真っ赤に染めていく。

マウリシオに目をやる。
すでに闇はほとんど散らされ、マウリシオ自身を黒く染めていた闇も薄くなっている。
力を使い果たした事は明らかだった。

だが、ならばこの攻撃は?・・・なにをされた?

「ぐ、こ・・・れは・・・」

あまりの痛みに膝が曲がり、腰を下ろしそうになるが、唇を噛みしめ耐えた。
この痛みはまずい・・・一度膝を着けば、二度と立てなくなる・・・・・

額に大粒の汗を浮かべながらマウリシオを睨み付けると、マウリシオは勝利を確信したようにニヤリと口の端を持ち上げた。


「結界刃・・・俺の魔道具だ」

その名には聞き覚えがあった。
200年前の戦争で、カエストゥスのロビンと戦った、ジャキル・ミラーが持っていたという、直径20cm程の円盤型の魔道具だ。

結界刃は、ロビンでさえ捉えきれなかったというスピードで放たれる。
そして結界さえすり抜けて対象を斬り裂く刃には、防御方法が無かった。

闇の力を使い果たしたマウリシオの最後の切り札は、祖先から受け継いできた魔道具だった。

そして結界刃はただ速いだけではなく、もう一つ、単純だが厄介な性能が付いていた。


「ぐぅ・・・う・・・」

歯を食いしばる懸命に耐えるが、アラタの意思とは関係なく膝から力が抜けていく。

「結界刃ッ!止めだ!」

アラタの体が前のめりに崩れ、頭も下がった事を見ると、マウリシオは叫んだ!

結界刃のもう一つの性能、それは使い手の元に戻ってくる事である。

結界刃は使い手の魔力で操れる。
アラタの腹を切り裂いたその円盤型の刃は、マウリシオの魔力に引かれ戻ってくる。

マウリシオは結界刃を操作する右手を、アラタの首の前で広げる。
結界刃は回転しながらブーメランの如き軌道を描き、アラタの背後からアラタの首に目標を付け、マウリシオの元へと超スピードで戻って来る!


あと一撃!ここが分水嶺!その首を斬り落として終わりだ!







「アラタ!ヤヨイさんは何があっても最後まで諦めなかったぞ!」

ふいに耳に届いたその声に、アラタの体の中の最後の一欠けら・・・光が力を宿す。

ほとんど倒れかけたその体勢から、右足に力を入れギリギリで踏みとどまった。
その体勢から上半身ごと叩きつけるように繰り出した左のボディブローは、マウリシオの右脇腹に深く突き刺さった。

大口を開けて声にならない叫びをあげ、胃液まで吐き散らしたマウリシオだが、その目はまだ死んでいない!
執念で操作した結界刃の魔力は解かない。

死ね!

恐ろしいまでの殺意で研ぎ澄まされた超高速の刃が、アラタの首を今!後ろから・・・・・

「ッツ!な、んだとォォォォォッッツ!?」

絶たれて宙を舞ったのは、アラタの左腕だった。

背後に迫る結界刃を感じ取り、体を捻り左半身を後ろに流して左腕を犠牲にした。

覚悟があれば耐えられる!

痛みにもがくよりも、アラタはそのまま腰を回し、一連の動きで繰り出したのは右拳。
アラタの最後の光が宿った右拳が、マウリシオの顎を撃ち抜いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...