異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
543 / 1,560

542 海に囲まれた城

しおりを挟む
「ここがサンドリーニ城よ」

アラルコン商会を出てから、俺達はリンジーさんに付いてロンズデールの城へと向かった。
歩きでは距離があったので、途中で馬車を拾い20分程走り着いたのが、このサンドリーニ城だった。

海と共に生きるロンズデールらしく、青い屋根に石造りの白い外壁が、見る物に海を連想させる。
中央の本丸には4つの巨大な塔。これはクインズベリー城を知っているアラタやレイチェルには、四勇士のいた見張りの塔を思い出させた。

そして本丸は大きな塔2基と共に巨大な前壁を作っていて、後部にはさらに大きな塔2基がある。
水辺に囲まれていて、城に入るためには幅広く長い橋を渡らなければならないのだが、これが馬車で渡り切るにも2~3分はかかった事から、想像以上にかなりの距離があると分かった。


「・・・けっこう長いんですね」

さながら海に浮かず孤島の城だ。いざという時でも、逃げ道は城の正面のこの橋を渡るしかない。
いつ、誰がこの城を造ったのか分からないが、もし城に攻め込まれたらと考えなかったのだろうか?

「何百年も前、この城が建てられた時は、ここまで長くはなかったみたいよ。でも、長い年月をかけて波が土を削っていって、それに合わせてちょっとづつ橋を補強しては、長く伸ばしていったらしいの。自然の力ってすごいわね」

リンジーさんは、今渡った橋を振り返り、遠くを見るように目を細めながら説明してくれた。

とても綺麗な景色だった。
橋を中心に、左右に分かれた海が空の青を吸収し、目の覚めるような美しい青に染まっている。
太陽の光を浴びて眩い輝きを放つ青い海に、俺はすっかり目を奪われてしまった。



「アラタ、今度はカチュアを連れてきてやるんだぞ」

「うおっ!」

いきなり耳元でささやかれ、驚きに体をよじり声を上げると、なにやら意味深な目で俺を見ているレイチェルがいた。

「び、びっくりしたー・・・驚かすなよ」

「あははは、いや、なに、この美しい景色を見ながら、隣にカチュアがいない寂しさに暮れているんだろうなと思ってね」

軽く睨みながら、一つ文句を言ってやるが、レイチェルはケラケラ笑って右から左に聞き流している。

「・・・それ、服も売ってて良かったな」

「ん、あぁ、言ってみるものだよな。さすがにあのボロボロのシャツを着て、城に来るわけにはいかないからな。まぁ、正装でない時点で大差ないかもしれないが」

レイチェルの着ている黄色のジッパー式のパーカーを指すと、レイチェルは服を見せるように右腕を上げて、左手で裾を摘まんで見せた。

「黄色なんて普段着ないから、なんだか新鮮だよ。どうだ?似合ってるかい?」

「うん、いいと思うよ。似合ってる。しかし、それも魔道具ってのは驚いたよ。普通のパーカーにしか見えないけどね」

「うん、これは私も驚いたよ。まさか魔道具だとは思わなかった。着ている者の体温と、周囲の気温に合わせて快適な暖かさになる。というのは嬉しいね。コートもボロボロで捨ててしまったから、本当に助かるよ」

アラルコン商会で買った黄色のパーカーの、お腹のポケットに両手を入れると、そろそろ行こうか、と言ってレイチェルは顔を城に向けた。






「よぉ、来たか。どうだ?旅の疲れはとれたか?」

城に入ると、入り口近くで待っていたガラハドさんがすぐに近寄って来た。

「ガラハド、時間は大丈夫ですか?」

「あぁ、いつ来るか分からんかったから、大臣の都合に合わせる事にした。お前達が来たら取りついでもらう事になっている。大臣の手があくまで待つ事になるが、そこは我慢してくれ」

「大丈夫ですよ。お忙しい大臣の時間をあまり拘束できませんしね。ではガラハド、私達はどこで待っていればいいですか?」

「あぁ、二階の応接室をとって置いた。執務室の隣だ。先に行っててくれ。俺はお前達が来た事を伝えて来る。まぁ、今からなら昼を過ぎるのは確定だぞ」

一歩前に出たリンジーさんが、これからの調整をつける。
昨日はあまり時間もなかったし、どの宿に泊まるかも分からなかったから、事前に面会の時間を決められなかった事はしかたないだろう。

「さて、どんなに早くても午後になるのは間違いないみたいね。みんな、せっかくだから二階に行く前に少し城を見て行かない?案内するわ」


ガラハドさんがいなくなると、リンジーさんの案内で城内を見て回る事になった。
リンジーさんはよほどこの城が好きなようで、いかにこの城が素晴らしいかを、熱の入った調子で語りながら歩く。


クインズベリー城は豪華絢爛、それは城らしい城で、映画に出てくる中世の城そのものだった。
しかし、このロンズデールのサンドリーニ城は、アニメに出て来るファンタジーな城という印象だ。

内装は白を基調とし、広間や通路には煌びやかな調度品は見当たらない。
シャンデリアも無く、その代わりに太陽光パネルのような、いくつものガラスを張り合わせた物が天井に取り付けられていて、それが広間や通路を明るく照らしている。
リンジーさんに聞いてみると、これも魔道具であり、発光石と原理は同じらしい。

絨毯は海をイメージした青らしく、外観もそうだったが、この城に使われている色はほぼ青と白のみである。
冬場には寒々しい印象を受けそうなものだが、天井から照らされる明かりは、良く見ないと分からないが淡い黄色で、これのおかげで暖かく優しい印象になる。

「よく計算されてますね」

「そうなの、すごいでしょ!この城には余計な飾り付けは必要ないの。どこからでも見える海と、そして海を象徴するこの色だけで十分なのよ」


そう話すリンジーさんの笑顔からは、心からこの城が好きなんだと伝わって来る。
色々見て周り、俺もこの城はこのままが一番だと思った。どれだけ見ても飽きないし、観光地として開放してもいいのではないかと思うくらいだ。


「さて、こんなところかな。じゃあ、そろそろ・・・」
「リンジー・・・戻ってきていたのか」

たっぷり一時間は歩いただろう。
それでもまだ城を全部見て回れたわけではないが、11時近くなりだんだん応接室に行こうかというところで、ふいにリンジーさんに声がかけられる。




30代くらいだろうか。
黒に近いダークグレーの髪は、トップを残しサイドを刈り上げている。
やや色黒で、鼻の下には丁寧に切りそろえられた髭、顎の回りにも同様に揃えられた髭が、耳に向かって伸びていた。
身長はリンジーさんより若干高いくらいで、180㎝あるかないかくらいだろう。

装備は全て銀製だった。丸みのある肩当て、肘から手首にかけてのアームガード。胸当て。腰から下にもしっかりと防具は付けられている。

そして左腰には大降りの剣が下げられていた。
確認するまでもなく、完全に体力型だと分かる装備だ。


「・・・カーン」

あまり会いたくなかった人物なのかもしれない。

リンジーさんは沈んだ声でその名を呟いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...