異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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571 ウラジミールの目

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「あ、シャノンさん」

「・・・最悪だ。本気で帝国の要人を迎えるつもりだよ」

シャノンは憎々し気に唇を噛み、大声で演説をするウラジミール・セルヒコを鋭く見据える。
アラルコン商会は青の船団を率いている。その商会の跡取り娘としての立場を考えれば、大海の船団は商売敵なのだろう。だが、この表情を見るからに、それだけではなさそうだ。

「帝国の要人を?」

再会の挨拶もしていないが、話しの中身がそれだけ重いという事はアラタにも察せられた。

「そう、あいつの話してる通りだよ。大海の船団は国王派だから、このまま帝国の言いなりになって、国を売り切りしてやってくつもりなんだよ。今回のクルーズには、大臣クラスの相手を迎えてもてなすようだ。そこでどんな話しが出るかなんて想像できるだろ?自分達の利権は確保しつつ、ますますこの国で帝国の人間がのさばるようになるのさ。最悪だよ」

アラタの問いに、シャノンは苛立ちを隠さずに答える。声に含まれる敵意は、そのままウラジミールに向けられる。



「やぁ、シャノンさん、色々あるみたいだね?詳しく聞かせてほしいな」

話しを聞いていたレイチェルが、シャノンに詳細を求めると、シャノンは気持ちを落ち着けるように深く息を吐いて、アラタとレイチェルに顔を向けた。

「・・・二人とも久しぶり。新顔もいるみたいだね?」

レイチェルの後ろにいるディリアンに目を向ける。
ディリアンは挨拶をするでもなく、チラリとシャノンに目線だけを向けた。

「はは、難しそうな子だねぇ?」

「あっちにいる二人も、違う意味で難しいぞ」

レイチェルが少し離れた場所に立つ、バルデスとサリーを指差す。
人だかりの中、黒いワンピースに白いエプロン姿のサリーは人目を引き、面識のないシャノンでもすぐに特定できた。

「・・・今度のお友達は、ずいぶん可愛いメイドさんだね?」

どんな仲間かと思い、目を向けた先にいたのがまさかのメイドだった。
予想外の事にシャノンは一瞬目を丸くしたが、すぐにレイチェルに向き直る。

「ただのメイドじゃないぞ。彼女は白魔法使いで、なかなかの魔力を持っている。貴重な戦力だ。それと、隣にいるのが黒魔法使いのシャクール・バルデス。あれでクインズベリーの貴族だ。メイドの名はサリーと言うのだが、彼の専属なんだ」

レイチェルとシャノンが目を向けていると、視線を感じたのか、それに気付いたバルデスとサリーが近づいて来た。

「なにやら大声で話しているものだから、つい聞き入ってしまったよ。待たせてしまったかな?」

「いや、私達も同じだ。気にしないでくれ。それより紹介しよう。こちらがアラルコン商会の跡取り娘、シャノン・アラルコンさんだ」

レイチェルが手を向けると、シャノンは一歩前に出て、胸に手を当て軽く会釈をした。

「初めまして、アラルコン商会の、シャノン・アラルコンです。どうぞお見知り置きを」

「これはご丁寧に、私はシャクール・バルデス。あなたの事は聞いている。クインズベリーの貴族だが、シャクールと気軽に呼んでくれてかまわん」

「私はバルデス様の侍女で、サリー・ディルトンと申します。よろしくお願いいたします」

親しみやすい笑顔を見せるバルデスと、寄り添うように並んで挨拶をするサリー。

「お二人は仲が良いんですね?」

距離の近さにシャノンが思った事をそのまま口にする。
その質問にバルデスとサリーは、お互いに顔を見わせるが、すぐにシャノンに向き直った。

「あらたまって何を聞いている?私とサリーはいつも通りだぞ。まぁ、喧嘩などしたことがないから、仲が良いかと問われれば当然その通りなのだがな。そうだろサリー?」

「はい。バルデス様。私とバルデス様は仲良しです。喧嘩もした事がありません」

「う~ん、あなた達ってなんだかすごいね。あ、それでそこのキミ、名前くらい教えてよ」

バルデスとサリーとの挨拶を終えると、さっきは目線を合わせただけで終わったディリアンに、もう一度顔を向けて声をかけた。

「・・・ディリアン・ベナビデスだ」

「ん?ベナビデスって、もしかしてベナビデス公爵家?」

ディリアンの名前に反応したシャノンは、僅かに眉を潜めた。
大商人として活躍しているシャノンは、他国の貴族でも押さえるべき名前は押さえていたのだ。

「へぇ、よく知ってるじゃねぇか?そうだ。そのベナビデス家だ。俺はそこの三男だ。もっとも、俺はいないものとして扱われているから、家の力なんて使う事はできねぇがな」

自嘲気味な笑みを浮かべ、肩をすくめて見せるディリアンに、シャノンは少し考えるように腕を組んで目を閉じるた後、ディリアンの肩をバシンと叩いた。

「なにイジケてんのさ!?それって、キミは自由って事じゃん!型に捕らわれた貴族としての人生じゃ歩めない、冒険ができるって事だよ!もっと前向きに考えなよ!」

笑顔で激励の言葉をぶつけるシャノンに、ディリアンは目を丸くした。
まさかそんな声をかけてもらえるとは、夢にも考えなかったからだ。

「・・・変な女だな?」

「商人てのは、基本前向きに考えないとやってられないからね。売れなかったらどうしよう!?じゃ、暗くなるだけでしょ?人生も同じさ。キミの考え方一つで道は無限に広がるんだよ?」

両手を腰に当て、どこか誇らしげに話すシャノン。彼女もまた、大商会の跡取りとしての苦労があったのだろう。

ディリアンは言葉を返す事はしなかったが、シャノンを見る目には、先ほどまでとは違う、シャノンという人間に対する興味、関心の色が宿って見えた。



「で、あるからして!我々大海の船団は、近日中に帝国の方々をお招きしてクルーズに出立する!皆さん!これはロンズデールで生きる全ての民のためである!ぜひ、我々の後押しをお願いしたい!」

シャノンとディリアンの話しが終わると、ちょうど大海の船団船長、ウラジミール・セルヒコも演説を終えて、集まった聴衆に一礼をしたところだった。

「おい、あいつこっちを見てるぞ」

ビリージョーの言葉に、アラタ達が顔を向けると、礼を終えて顔を上げたウラジミールが、口の端を上げて嘲るような目でこちらに顔を向けていた。

「・・・いや、俺達を見てるんじゃない。シャノンさんだ、あいつはシャノンさんを見ている」

そう指摘するアラタ。
どこで気付いたかは分からないが、シャノンと固まって話している以上、アラタ達がシャノンと関係のある者だとは分かったはず。
だが、ウラジミールはアラタ達は眼中に無いと言うように、シャノンだけをその青い目で捉えていた。

それは狙った獲物を決して逃がさない野生のハンターのように、鋭い殺意と執念の光が宿った目だった。
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