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633 水の追跡
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「う・・・うぅ・・・こ、の・・・ララ、が・・・・・」
着用者の生命の危機には、その傷を癒す魔道具、命の護布。
バルデスの推察通り、命の護布は使用回数の上限に達し、ララを癒す事はなかった。
すでに成人男性の胸程の高さまで満ちた水。
水面に力なく浮かんでいるララの右腕と左足は、バルデスの風魔法、サイクロン・プレッシャーによって、関節が本来とは逆方向に曲げられていた。
容赦なく天井や壁に叩きつけられ、水の冷たさで覚醒したララだが、満足に体を動かす事はできず、ボソボソと恨み言だけを口にしていた。
ゆ・・・許せん・・・
このララに何たる事を・・・
許せませんが、今回はもう動けそうにありません。
この傷を癒したら、必ず後悔させてあげましょう・・・・・
このララに止めを刺さなかっ・・・・・!?
「うぐおぁぁぁぁーーーーーッツ!」
突然足に感じた激痛は、ララがこれまで味わった事のない種類のものだった。
剣とも槍とも違うそれは、ララの両腿を上下から突き刺すと、信じられない程の強い力でララの体を右に左に、上に下に揺さぶり始めた。
「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーッツ!」
暗く狭く、水が溢れる通路にララの悲鳴が響き渡る。
こ、これは・・・ち、違う!
剣でも、槍でもない・・・ま、まさか・・・・!?
振り返ったララの目が映したもの、それは自分の足に噛みつく頬の黒い鮫だった。
「う・・・ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーッツ!」
ララは必死に抵抗した。
腰に差していたナイフを抜き取り、鮫の顔を何度も突き刺した。
しかしララの攻撃もむなしく、ララが鮫を仕留めるよりも早く、鮫の牙はララの腹を食い破り、胸を抉った。それが致命傷となった。
ララは口からドロリとした血を吐き出すと、体をビクリと震わせて絶命した。
ララの抵抗が無くなると、最初に噛みついた頬黒鮫が胸から下を嚙み千切り、残った部分を集まった槍鮫達が齧り取っていった。
血と肉が鮫達を興奮させる。
・・・・・この奥にまだ獲物がいる。
ララを倒し、先へ進んだバルデスとサリー。
負傷しているバルデスの血の匂いを嗅ぎ取った鮫達は、更なる獲物を求めて静かに追跡をする。
結局、この階でバルデスとサリーが鮫に掴まる事はなかった。
だが、船内の水かさはどんどん増していく。
バルデスとサリーが上の階に逃れたとしても、船内にいる限り、追いかけてくる水から逃れる事はできない。いずれは追いつかれる運命である。
鮫はゆっくりとその時を待つ。
逃げ場を無くした獲物を、恐怖に怯える獲物を追い詰め、牙を突き立てるその時を・・・・・
「・・・バルデス様、お体はいかがですか?」
「うむ、ずいぶん楽になった。さすがだサリー、素晴らしいヒールだ」
三階に逃れたバルデスとサリーは、まだ水がきていない事と、周囲に敵がいない状況を見て、ここで治療を済ませようと決め、腰を下ろしていた。
「右目はどうでしょう?」
「・・・うむ、痛みは引いた。だが、視力はずいぶん弱いな。自分の手の平がブレて見える。これは一時的なものか?」
顔からいくから手を離して、左目は瞑り右目だけで見つめながら質問に答える。
「私も、潰れた目を治療した事は初めてですので、言い切る事はできません。ですが、一時的なものかと思います。目は完璧に治しましが、傷の回復に視力が追いついていないのだと思います。一度は潰れていたのですから、失われた視力の回復には時間がかかるのでしょう」
サリーの見解を聞きながら、バルデスは自分の右目に手を当てた。
見えないわけではないが、まともに見えるのは数十センチ程度の距離で、それ以上はぼやけて見える。
サリーの説明の通りならば、徐々に元のように不自由なく見えるようになるだろう。
「・・・そうか、まぁしかたあるまい。ならば気長に待つとしよう」
「申し訳ありません。私の魔力がもう少し強ければ、もっと完璧に・・・」
「何を言う。サリーのヒールは見事なものだぞ。王宮仕えの白魔法使いでも、一人で眼球を治せる者がどれだけいるか・・・ん、この気は?」
バルデスは何かを察知し、途中で言葉を止める。
サリーもまたバルデスの様子から、ただ事ならぬものを感じ取った。
「・・・サリー」
「はい、ここからは離れていますが、同じフロアにいますね。どうされますか?」
二人が感じ取ったものは、ぶつかり合う戦いの気配。
空気が震え、足元からは振動が伝わってくる。
「・・・この気は知っている。アラタの光だ・・・どうやら、敵と出会ったしまったようだな」
「はい。バルデス様、助けに行きますか?」
判断を仰ぐサリーに、バルデスは自分の体をじっと見て答えた。l
「・・・あぁ、行こう。アラタの光の力は強い。だが、この相手も同じくらい強い・・・」
「はい。では参りましょう」
三階に上がった二人だが、バルデスはアラタが戦っている事を察し、サリーと共に加勢に向かった。
そう、この時アラタは魔道剣士四人衆の、アロル・ヘイモンと戦っていた。
現場に辿りついた時、バルデスの目に入ってきたのは、水中に浮かぶアラタとヘイモンの姿だった。
着用者の生命の危機には、その傷を癒す魔道具、命の護布。
バルデスの推察通り、命の護布は使用回数の上限に達し、ララを癒す事はなかった。
すでに成人男性の胸程の高さまで満ちた水。
水面に力なく浮かんでいるララの右腕と左足は、バルデスの風魔法、サイクロン・プレッシャーによって、関節が本来とは逆方向に曲げられていた。
容赦なく天井や壁に叩きつけられ、水の冷たさで覚醒したララだが、満足に体を動かす事はできず、ボソボソと恨み言だけを口にしていた。
ゆ・・・許せん・・・
このララに何たる事を・・・
許せませんが、今回はもう動けそうにありません。
この傷を癒したら、必ず後悔させてあげましょう・・・・・
このララに止めを刺さなかっ・・・・・!?
「うぐおぁぁぁぁーーーーーッツ!」
突然足に感じた激痛は、ララがこれまで味わった事のない種類のものだった。
剣とも槍とも違うそれは、ララの両腿を上下から突き刺すと、信じられない程の強い力でララの体を右に左に、上に下に揺さぶり始めた。
「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーッツ!」
暗く狭く、水が溢れる通路にララの悲鳴が響き渡る。
こ、これは・・・ち、違う!
剣でも、槍でもない・・・ま、まさか・・・・!?
振り返ったララの目が映したもの、それは自分の足に噛みつく頬の黒い鮫だった。
「う・・・ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーッツ!」
ララは必死に抵抗した。
腰に差していたナイフを抜き取り、鮫の顔を何度も突き刺した。
しかしララの攻撃もむなしく、ララが鮫を仕留めるよりも早く、鮫の牙はララの腹を食い破り、胸を抉った。それが致命傷となった。
ララは口からドロリとした血を吐き出すと、体をビクリと震わせて絶命した。
ララの抵抗が無くなると、最初に噛みついた頬黒鮫が胸から下を嚙み千切り、残った部分を集まった槍鮫達が齧り取っていった。
血と肉が鮫達を興奮させる。
・・・・・この奥にまだ獲物がいる。
ララを倒し、先へ進んだバルデスとサリー。
負傷しているバルデスの血の匂いを嗅ぎ取った鮫達は、更なる獲物を求めて静かに追跡をする。
結局、この階でバルデスとサリーが鮫に掴まる事はなかった。
だが、船内の水かさはどんどん増していく。
バルデスとサリーが上の階に逃れたとしても、船内にいる限り、追いかけてくる水から逃れる事はできない。いずれは追いつかれる運命である。
鮫はゆっくりとその時を待つ。
逃げ場を無くした獲物を、恐怖に怯える獲物を追い詰め、牙を突き立てるその時を・・・・・
「・・・バルデス様、お体はいかがですか?」
「うむ、ずいぶん楽になった。さすがだサリー、素晴らしいヒールだ」
三階に逃れたバルデスとサリーは、まだ水がきていない事と、周囲に敵がいない状況を見て、ここで治療を済ませようと決め、腰を下ろしていた。
「右目はどうでしょう?」
「・・・うむ、痛みは引いた。だが、視力はずいぶん弱いな。自分の手の平がブレて見える。これは一時的なものか?」
顔からいくから手を離して、左目は瞑り右目だけで見つめながら質問に答える。
「私も、潰れた目を治療した事は初めてですので、言い切る事はできません。ですが、一時的なものかと思います。目は完璧に治しましが、傷の回復に視力が追いついていないのだと思います。一度は潰れていたのですから、失われた視力の回復には時間がかかるのでしょう」
サリーの見解を聞きながら、バルデスは自分の右目に手を当てた。
見えないわけではないが、まともに見えるのは数十センチ程度の距離で、それ以上はぼやけて見える。
サリーの説明の通りならば、徐々に元のように不自由なく見えるようになるだろう。
「・・・そうか、まぁしかたあるまい。ならば気長に待つとしよう」
「申し訳ありません。私の魔力がもう少し強ければ、もっと完璧に・・・」
「何を言う。サリーのヒールは見事なものだぞ。王宮仕えの白魔法使いでも、一人で眼球を治せる者がどれだけいるか・・・ん、この気は?」
バルデスは何かを察知し、途中で言葉を止める。
サリーもまたバルデスの様子から、ただ事ならぬものを感じ取った。
「・・・サリー」
「はい、ここからは離れていますが、同じフロアにいますね。どうされますか?」
二人が感じ取ったものは、ぶつかり合う戦いの気配。
空気が震え、足元からは振動が伝わってくる。
「・・・この気は知っている。アラタの光だ・・・どうやら、敵と出会ったしまったようだな」
「はい。バルデス様、助けに行きますか?」
判断を仰ぐサリーに、バルデスは自分の体をじっと見て答えた。l
「・・・あぁ、行こう。アラタの光の力は強い。だが、この相手も同じくらい強い・・・」
「はい。では参りましょう」
三階に上がった二人だが、バルデスはアラタが戦っている事を察し、サリーと共に加勢に向かった。
そう、この時アラタは魔道剣士四人衆の、アロル・ヘイモンと戦っていた。
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