異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
690 / 1,542

689 大臣バルカルセルの提案

しおりを挟む
青と白、海と生きるロンズデール国のイメージカラーだ。
光沢がある暗めのブルーのスーツに、清潔感のある白いシャツ、首から下げている青いの金具が付いた紐はループタイという物だ。
背は高くないが、がっしりとした大きな体で、年齢の割にはボリュームのある白髪は後ろに撫でつけられている。

「やぁ、よく来てくれた!待っていたぞ!」

従者の案内で通された大臣の執務室に入ると、大臣のバルカルセルはアラタ達の顔を見るなりイスから立ち上がり、大きく笑って迎え入れた。

「大臣、ご報告に上がりました」

ガラハドが前に出て一礼をすると、大臣は軽く手を振って頭を上げるように促した。

「いやいや、そうかしこまる事はない。昨日の内に早馬で帰って来た兵からおおまかには聞いていた。お前達はこの国の英雄だ。詳しく聞かせてくれ」

ソファに座るよう手を向けられ、アラタ達がそれぞれ腰を下ろすと、ビリージョーが代表して口を開いた。

「そうですね。長くなるかもしれませんが、順にご説明いたします。まず船に潜入した我々は・・・」




ビリージョーの説明の途中で、何度か口を挟んで不明点の確認などをする事はあったが、バルカルセルは基本的に話しの腰を折る事はせずに、最後まで説明を受けた。

「・・・まぁ、だいたいこんなところです。帝国との関係はこれまで通りとはいかないでしょう。いや、もう完全に決別したと言っていいでしょう」

ビリージョーが話しを終えると、バルカルセルは目を閉じて深く息を付いた。
早馬のからの一報を聞いた時には、国王やリンジー達の安否が確認でき、そして船が沈んだという事だけを耳にしていたが、当事者からの報告は想像以上に凄まじいものだった。

浸水に鮫、そしてカーンを始めとする魔道剣士や、帝国との戦いは全滅していてもおかしくなかった。
全員無事に帰還できたのは幸運だった。

報告を受けて、それを飲み込むために考えを整理しているのだろう。
腕を組んで目を閉じて押し黙る大臣に、誰も言葉をかけず、ただ黙って座っていた。

「・・・船を沈没させたのは、おそらく帝国だろうな・・・」

やがてポツリと呟いて目を開けると、大臣バルカルセルは宙に目をやって言葉を続けた。

「クルーズ船を成功させても帝国に不利益はない。むしろ裏で進めていた国売りの交渉も進ませる事ができただろう。だが、帝国の大臣を招待しておいて、その船が沈没なんてしてみろ?どれほどの賠償を要求されるか想像できるだろ?そこにつけこんで、今回一気に決めようとしたのだろうな」

「なるほど・・・しかし大臣、そうすると帝国は事を急いだように思えるのですが、なぜでしょう?これまでも時間をかけて侵略を進めてきたのに、なぜ突然こんなに強引な手段をとったのでしょうか?事実、帝国は失敗し貴重な戦力を失った」

船を破壊しなければ、少なくとも全滅する事はなかっただろう。
しかしそこまでのリスクをおかしてまで、今回のクルーズでロンズデールを確実に支配下に置こうとした。なぜだ?

レイチェルの疑問に、バルカルセルは思い当たる事があったようだ。
レイチェルの目を真っすぐに見て、真剣みを帯びた声で答えた。

「おそらくだが、クインズベリーの一戦だろう。キミ達が偽国王を倒した事実が、帝国に焦りをもたらしたのではないかと思う。クインズベリーが反撃の準備を整える前に、ロンズデールを完全に取り込んで牽制したかったのだろう」

大臣の推測にレイチェルは得心がいったようだ。
唇を隠すように指先を当て、なるほどと頷いた。

「さて、これからの事だが、こうなった以上、もう帝国との戦争は避けられないだろう。だが、大陸一の軍事国家の帝国を相手にして、ロンズデールに勝ち目はないだろう。そこで提案がある」

大臣のあらたまった言い方に、全員の視線が集まった。

ここでの提案とはなんだ?当然の疑問に、大臣はそれぞれの視線を受け止めて答えた。

「ロンズデールはクインズベリーとの同盟を希望する」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

神スキル【絶対育成】で追放令嬢を餌付けしたら国ができた

黒崎隼人
ファンタジー
過労死した植物研究者が転生したのは、貧しい開拓村の少年アランだった。彼に与えられたのは、あらゆる植物を意のままに操る神スキル【絶対育成】だった。 そんな彼の元に、ある日、王都から追放されてきた「悪役令嬢」セラフィーナがやってくる。 「私があなたの知識となり、盾となりましょう。その代わり、この村を豊かにする力を貸してください」 前世の知識とチートスキルを持つ少年と、気高く理知的な元公爵令嬢。 二人が手を取り合った時、飢えた辺境の村は、やがて世界が羨む豊かで平和な楽園へと姿を変えていく。 辺境から始まる、農業革命ファンタジー&国家創成譚が、ここに開幕する。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活

髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。 しかし神は彼を見捨てていなかった。 そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。 これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...