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694 30万ポイントの景品 ①
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「いらっしゃいませー、どうぞご覧になってくださーい」
女性店員の元気の良い声が店内に響き渡る。
150坪程度の程よい広さの店で、入り口を入ってすぐの大テーブルには、Tシャツやボトムスなど衣類が並べられている。
壁際にはコップや皿などの食器の棚や、保存食のコーナーがあり、その奥のレジの前には宝石もあるようだ。
食事会の翌日、アラタ達一行は大海の船団が経営する雑貨店に来ていた。
シャノンの案内で選んだ店だが、食料品や宝石まで扱っているところを見ると、雑貨店という枠を超えているようにも見える。
目的はクインズベリーに帰るアラタ達が、お土産を購入する事だが、なぜ共闘したシャノンのアラルコン商会ではなく大海の船団かと言うと、アラタがロンズデールへ発つ前にミゼルからもらった、ポイント帳を使うためである。
シャノンに黙って来ては義理を欠くと思い、アラタが大海の船団の店に行く事を告げると、意外にもシャノンは快く了承してくれた。それどころか、自分も付いて行くと乗り気なのである。
「いやぁー、久しぶりに来たけど、ディスプレイが前とはずいぶん違うね。ここの店長変わったんだっけ?」
シャノンは興味深そうに店内をぐるりと見回すと、感心したように声を出す。
リンジーとファビアナは食器棚を見て来ると言って離れ、ガラハドとビリージョーは保存食コーナーへ、バルガスとサリーとディリアンは自分達のペースで店内を一周して見て回るようだ。
「あ、なるほど。シャノンはライバル店の調査で来たのか」
入口の大テーブルの前に残ったレイチェルが、シャノンの背中に声をかけると、シャノンは振り返って、そうそう、と頷いた。
「その通り!たまには競合店も見ないとね。うん、前に来た時より品揃えもずっとよくなってるよ。コーナー分けもハッキリして見やすいね」
目線が経営者のものになっているシャノンを見て、アラタもレイチェルも顔を見合わせて笑った。
「あはは、シャノンさん、俺も気持ちは分かりますよ。職業病ってヤツですよね。同系列の店を見ると、自分の店との違いとか探しちゃいますよね」
「そうだな。私も商品を見ながら、つい自分の店ならいくらで売ってとか考えるぞ。これはどうしようもないな。しかし、ずいぶん褒めるじゃないか?確かに良い店だが、前はそんなにひどかったのか?」
「そうだね、アタシも前回来たのが二年前くらいなんだけど、なんかとりあえず並べましたって感じの、やる気のない店だったよ。接客も元気なかったし。でも今日は入口まで元気な声が聞こえてきたし、ディプレイもいいよね。ポップもなにが売りたいかハッキリしてるし。ライバル店だけど、アタシこれ買っていこうかな?」
そう言ってシャノンは大テーブルから黒無地の長袖Tシャツを一枚とった。
「へぇ・・・なんか、意外ですね。ライバル店でも買い物するなんて」
アラタが顎に手を当ててシャノンを見ると、シャノンは顔の前で手を軽く振った。
「いやいや、そんな意外って程の事でもないと思うよ。そりゃ同じ物が自分の店にあれば、自分の店で買うさ。でもこのTシャツ、素材にシルクも入ってるんだよ。肌触り良いし、着心地良さそうなんだよね。うちにはシルク入りで無地の黒なんてないから、買っていこうと思ってさ」
純粋に商品を見て意見を述べるシャノンに、レイチェルも、そうだな、と笑って答えた。
「確かにその通りだ。レイジェスでも服は売っているが、私も他所で買うからな。気にするような事ではないな」
「そういう事だよ。あ、ところでお兄さん、ほら、ミゼルさんの血と涙の30万ポイントの景品を貰って来ないと」
シャノンに促されて、アラタは思い出したようにジーンズの後ろポケットに手をやった。
「あ、そうそう、そうだった。えっと、じゃあ早速だけど行ってくるよ」
ポイント帳を取り出すと、どこか緊張した面持ちでレジへと足を向けるアラタに、レイチェルがからかうように声をかけた。
「待て、アラタ。キミ、緊張してるのか?手が震えているぞ」
「い、いや、だってさ、自分で溜めたポイントじゃないから、なんかプレッシャーがあって。自分のならなんでもいいんだよ。笑われるの俺だし。でも、ミゼルさんでしょ?これでどうしようもない景品だったらって考えるとさ・・・」
やや共同不審、しどろもどろに言い訳しながら話すアラタを、レイチェルとシャノンが挟む形で、その肩に手を置いた。
「全くキミってヤツは・・・本当に気を使ってばかりだな。景品を貰ってくるだけだぞ?」
「そうそう、お兄さんて本当に真面目だよね。いや、考え過ぎかな。アタシらも一緒に行ってあげるから、もっと肩の力抜いて気楽に考えなよ」
レイチェルもシャノンも溜息をついているが、それはアラタの良いところでもあると理解しているため、それ以上とやかく言う事はしなかった。
そして二人に引っ張られるようにして、アラタ達三人はレジへと歩きついた。
「いらっしゃいませー」
レジカウンターに行くと、二十代半ばくらいの女性が明るい声で、どうぞと手を差し出した。
「あ、えっと・・・これ、使えますか?」
遠慮がちにポイント帳を出すアラタ。
無理も無い。いくら有効期限無しと記載があっても、何年も昔のポイント帳なのだ。
今は変わって使えないと言われてもしかたないだろう。
女性店員はアラタからポイント帳を受け取ると、珍しい物を見る様に、パラパラめくったり裏表を確認したりしながら、しげしげと眺める。
「・・・やっぱ、古過ぎて無理・・・ですかね?」
「いえ、大丈夫です。ご利用いただけますよ。すみません、ずいぶん昔のポイント帳だったので、つい眺めてしまいました。それにしても、よく30枚全て埋めましたね。沢山買っていただいてありがとうございます」
使えるという返事にホッとするアラタとは対照的に、レイチェルとシャノンは拳を握って声を上げた。
「本当か!?やったなアラタ!ミゼルも浮かばれるぞ!」
「いや、レイチェル!ミゼルさん生きてるからね!」
「おー!すごい!聞いてみるもんだね!お兄さんもう思い残す事ないね!」
「シャノンさんもさ!なんでちょっと不吉な事言うの!?」
アラタのツッコミに二人は笑いながらハイタッチを交わす。
生死を共にした事や、商売での協力関係も結んだから、ずいぶん仲良くなったようだ。
「さぁ店員さん、早く景品を見せてくれ。私は昨日からずっと気になってたんだ!」
レイチェルがレジカウンターに手をかけて迫ると、店員の女性も両手を胸の高さに上げて、苦笑いしなあがら一歩後ろへ下がった。
「おいおい、レイチェル、まだ酔っぱらってんのか?」
普段あまり目にしないはテンションの高さに、アラタが訝し気な顔をすると、レイチェルは我に返ったようにカウンターから手を離した。
「ん、あぁ、すまないな。ちょっと興奮してしまったよ。なんせミゼルの30万だからな。あいつは酒やタバコやギャンブルで今まで散々迷惑かけてくれたから、ちょっとね」
「あ、でも、クリスさんと結婚するために、酒もタバコもギャンブルも止めるって言ってなかったっけ?」
「あぁ、みんなでクリスさんの宿屋に行った時だろ?確かに言ってたな。でもミゼルの事だからどうだろうなぁ。酒とタバコとギャンブルに関しては、私はミゼルを一切信用しない事にしている」
「うわぁ・・・」
真顔でそう話すレイチェルを見て、アラタはミゼルがどれだけ信用されてないかを感じ、頬を引きつらせた。
「え、えっと、お、お客様、よく分かりませんが、私は景品を持ってまいりますね。少々お待ちくださいませ」
突然何年も前のポイント帳を全て埋めた客が現れただけでも驚いたのに、目の前でなにやら意味不明の話しをしている男女に少し引きながら、店員の女性はレジカウンター裏に足早に消えて行った。
「おいおい、お二人さん・・・あの店員さん引いてたよー」
店員の姿が見えなくなると、シャノンが呆れた様子でアラタとレイチェルに声をかける。
「あははは、私とした事がちょっとはしゃいでしまったようだ」
「えー、今のはほとんどレイチェルのせいでしょ?」
「む、アラタ、私を売る気か?キミも言うようになったな」
アラタとレイチェルがまたも話し出すと、レジカウンター裏からさっきの女性店員が顔をのぞかせた。
「お待たせしましたー。こちらが30万ポイントの景品です!」
女性店員の元気の良い声が店内に響き渡る。
150坪程度の程よい広さの店で、入り口を入ってすぐの大テーブルには、Tシャツやボトムスなど衣類が並べられている。
壁際にはコップや皿などの食器の棚や、保存食のコーナーがあり、その奥のレジの前には宝石もあるようだ。
食事会の翌日、アラタ達一行は大海の船団が経営する雑貨店に来ていた。
シャノンの案内で選んだ店だが、食料品や宝石まで扱っているところを見ると、雑貨店という枠を超えているようにも見える。
目的はクインズベリーに帰るアラタ達が、お土産を購入する事だが、なぜ共闘したシャノンのアラルコン商会ではなく大海の船団かと言うと、アラタがロンズデールへ発つ前にミゼルからもらった、ポイント帳を使うためである。
シャノンに黙って来ては義理を欠くと思い、アラタが大海の船団の店に行く事を告げると、意外にもシャノンは快く了承してくれた。それどころか、自分も付いて行くと乗り気なのである。
「いやぁー、久しぶりに来たけど、ディスプレイが前とはずいぶん違うね。ここの店長変わったんだっけ?」
シャノンは興味深そうに店内をぐるりと見回すと、感心したように声を出す。
リンジーとファビアナは食器棚を見て来ると言って離れ、ガラハドとビリージョーは保存食コーナーへ、バルガスとサリーとディリアンは自分達のペースで店内を一周して見て回るようだ。
「あ、なるほど。シャノンはライバル店の調査で来たのか」
入口の大テーブルの前に残ったレイチェルが、シャノンの背中に声をかけると、シャノンは振り返って、そうそう、と頷いた。
「その通り!たまには競合店も見ないとね。うん、前に来た時より品揃えもずっとよくなってるよ。コーナー分けもハッキリして見やすいね」
目線が経営者のものになっているシャノンを見て、アラタもレイチェルも顔を見合わせて笑った。
「あはは、シャノンさん、俺も気持ちは分かりますよ。職業病ってヤツですよね。同系列の店を見ると、自分の店との違いとか探しちゃいますよね」
「そうだな。私も商品を見ながら、つい自分の店ならいくらで売ってとか考えるぞ。これはどうしようもないな。しかし、ずいぶん褒めるじゃないか?確かに良い店だが、前はそんなにひどかったのか?」
「そうだね、アタシも前回来たのが二年前くらいなんだけど、なんかとりあえず並べましたって感じの、やる気のない店だったよ。接客も元気なかったし。でも今日は入口まで元気な声が聞こえてきたし、ディプレイもいいよね。ポップもなにが売りたいかハッキリしてるし。ライバル店だけど、アタシこれ買っていこうかな?」
そう言ってシャノンは大テーブルから黒無地の長袖Tシャツを一枚とった。
「へぇ・・・なんか、意外ですね。ライバル店でも買い物するなんて」
アラタが顎に手を当ててシャノンを見ると、シャノンは顔の前で手を軽く振った。
「いやいや、そんな意外って程の事でもないと思うよ。そりゃ同じ物が自分の店にあれば、自分の店で買うさ。でもこのTシャツ、素材にシルクも入ってるんだよ。肌触り良いし、着心地良さそうなんだよね。うちにはシルク入りで無地の黒なんてないから、買っていこうと思ってさ」
純粋に商品を見て意見を述べるシャノンに、レイチェルも、そうだな、と笑って答えた。
「確かにその通りだ。レイジェスでも服は売っているが、私も他所で買うからな。気にするような事ではないな」
「そういう事だよ。あ、ところでお兄さん、ほら、ミゼルさんの血と涙の30万ポイントの景品を貰って来ないと」
シャノンに促されて、アラタは思い出したようにジーンズの後ろポケットに手をやった。
「あ、そうそう、そうだった。えっと、じゃあ早速だけど行ってくるよ」
ポイント帳を取り出すと、どこか緊張した面持ちでレジへと足を向けるアラタに、レイチェルがからかうように声をかけた。
「待て、アラタ。キミ、緊張してるのか?手が震えているぞ」
「い、いや、だってさ、自分で溜めたポイントじゃないから、なんかプレッシャーがあって。自分のならなんでもいいんだよ。笑われるの俺だし。でも、ミゼルさんでしょ?これでどうしようもない景品だったらって考えるとさ・・・」
やや共同不審、しどろもどろに言い訳しながら話すアラタを、レイチェルとシャノンが挟む形で、その肩に手を置いた。
「全くキミってヤツは・・・本当に気を使ってばかりだな。景品を貰ってくるだけだぞ?」
「そうそう、お兄さんて本当に真面目だよね。いや、考え過ぎかな。アタシらも一緒に行ってあげるから、もっと肩の力抜いて気楽に考えなよ」
レイチェルもシャノンも溜息をついているが、それはアラタの良いところでもあると理解しているため、それ以上とやかく言う事はしなかった。
そして二人に引っ張られるようにして、アラタ達三人はレジへと歩きついた。
「いらっしゃいませー」
レジカウンターに行くと、二十代半ばくらいの女性が明るい声で、どうぞと手を差し出した。
「あ、えっと・・・これ、使えますか?」
遠慮がちにポイント帳を出すアラタ。
無理も無い。いくら有効期限無しと記載があっても、何年も昔のポイント帳なのだ。
今は変わって使えないと言われてもしかたないだろう。
女性店員はアラタからポイント帳を受け取ると、珍しい物を見る様に、パラパラめくったり裏表を確認したりしながら、しげしげと眺める。
「・・・やっぱ、古過ぎて無理・・・ですかね?」
「いえ、大丈夫です。ご利用いただけますよ。すみません、ずいぶん昔のポイント帳だったので、つい眺めてしまいました。それにしても、よく30枚全て埋めましたね。沢山買っていただいてありがとうございます」
使えるという返事にホッとするアラタとは対照的に、レイチェルとシャノンは拳を握って声を上げた。
「本当か!?やったなアラタ!ミゼルも浮かばれるぞ!」
「いや、レイチェル!ミゼルさん生きてるからね!」
「おー!すごい!聞いてみるもんだね!お兄さんもう思い残す事ないね!」
「シャノンさんもさ!なんでちょっと不吉な事言うの!?」
アラタのツッコミに二人は笑いながらハイタッチを交わす。
生死を共にした事や、商売での協力関係も結んだから、ずいぶん仲良くなったようだ。
「さぁ店員さん、早く景品を見せてくれ。私は昨日からずっと気になってたんだ!」
レイチェルがレジカウンターに手をかけて迫ると、店員の女性も両手を胸の高さに上げて、苦笑いしなあがら一歩後ろへ下がった。
「おいおい、レイチェル、まだ酔っぱらってんのか?」
普段あまり目にしないはテンションの高さに、アラタが訝し気な顔をすると、レイチェルは我に返ったようにカウンターから手を離した。
「ん、あぁ、すまないな。ちょっと興奮してしまったよ。なんせミゼルの30万だからな。あいつは酒やタバコやギャンブルで今まで散々迷惑かけてくれたから、ちょっとね」
「あ、でも、クリスさんと結婚するために、酒もタバコもギャンブルも止めるって言ってなかったっけ?」
「あぁ、みんなでクリスさんの宿屋に行った時だろ?確かに言ってたな。でもミゼルの事だからどうだろうなぁ。酒とタバコとギャンブルに関しては、私はミゼルを一切信用しない事にしている」
「うわぁ・・・」
真顔でそう話すレイチェルを見て、アラタはミゼルがどれだけ信用されてないかを感じ、頬を引きつらせた。
「え、えっと、お、お客様、よく分かりませんが、私は景品を持ってまいりますね。少々お待ちくださいませ」
突然何年も前のポイント帳を全て埋めた客が現れただけでも驚いたのに、目の前でなにやら意味不明の話しをしている男女に少し引きながら、店員の女性はレジカウンター裏に足早に消えて行った。
「おいおい、お二人さん・・・あの店員さん引いてたよー」
店員の姿が見えなくなると、シャノンが呆れた様子でアラタとレイチェルに声をかける。
「あははは、私とした事がちょっとはしゃいでしまったようだ」
「えー、今のはほとんどレイチェルのせいでしょ?」
「む、アラタ、私を売る気か?キミも言うようになったな」
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