異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
717 / 1,560

716 信頼

しおりを挟む
「・・・ユーリお姉ちゃん、これなに?」

「・・・なんだろ?気持ち悪い」

ユーリとエルがキッチン・モロニーから帰って来ると、店の裏には雪の上に全身を投げ出すようにして
倒れている、ジャレット、ミゼル、アラタ、リカルドがいた。
見るからに疲れ切った表情で、四人は仰向けで息を切らせながらぐったりとしている。

エルはきょとんとした顔で首を傾げている。
何でこの寒空の下、雪の上で寝ているのか不思議でしかたないらしい。

「はぁ、はぁ・・・あ、ユ、ユーリ・・・エルちゃん・・・おかえり・・・」

ユーリとエルの声が耳に届き、アラタが薄く目を開いて二人に声をかけると、ユーリが眉を寄せながら近づいて来た。

「アラタ、こんなところで何してるの?雪の上で男四人でハァハァ言って・・・変態なの?」

膝を曲げてアラタの横に腰を落とすと、ユーリはアラタの目をじっと見て問いかけた。

「ち、ちがう!て、店長!店長に、稽古つけられたんだよ!」

「え、店長来てるの?」

アラタが慌てて体を起こして説明すると、店長という言葉にユーリが反応する。

「ああ、今は俺達の代わりに売り場に入ってるよ。ユーリン、悪いけど、ヒールかけてくれね?すっげぇ疲れた。ちょっと今立てない」

ジャレットも肘を突いて体を起こした。
額の汗を拭い大きく息をつくジャレットを見れば、どれだけ疲弊しているのかよく分かる。

「ユーリンて言うな。ふぅ・・・しかたない。キッチン・モロニーの新作のパウンドケーキで手を打つ。私とエルの二つね」

右手を前に出し、ピースで二個と伝えるユーリ。

「え!?ユーリン金取んの!?」

「お金じゃない。パウンドケーキ。スライスしたアーモンドの入ってるヤツ。一個1200イエンだった」

「そこそこすんじゃん!」

「嫌ならいい。足がくがくしたまま、ここで風邪を引いても知らないから」

「くっ!」

「ジャ、ジャレットお兄ちゃん、私の分は別にいいですよ。いつもお世話になってるのに、迷惑かけられません」

苦虫を噛み潰したように顔をしかめるジャレットを見て、エルが両手を前に出して、ぶんぶんと何度も顔を横に振った。

「ジャレット、こんな小さな女の子に気を遣わせるなんて・・・・・最近はレイチェルの代わりもしっかりやってるって見直してたのに。やっぱりただのウザ男だった」

「ユ、ユーリお姉ちゃん!そ、そんな事言ったらだめだよ!ジャレットお兄ちゃんは仕事も早いし、とっても優しいんだよ!」

「そ、そうだぞユーリン!俺がパウンドケーキの二つや三つで、ケチケチするわけないだろ!?そんなのすぐに買って来てやるよ!エッちゃんも遠慮しないでいいんだからね!」

「交渉成立。はい、ヒール。あ、エルはミゼルとリカルドにヒールして」

「え、あ、うん!分かったよユーリお姉ちゃん!」

ジャレットが買って来ると言うなり、ユーリはさっさと済ませようとばかりに、ジャレットの胸に手を当ててヒールをかけ始めた。
更にエルにも迅速な指示を出すので、ジャレットも唖然としてしまう。

「・・・はい。ジャレットはお終い。次はアラタね」

「ありがと。俺も同じアーモンドのパウンドケーキでいいの?」

ユーリがアラタの胸に手を伸ばしてきたところで、アラタがお礼の品を確認すると、ユーリは興味が無さそうな、そっけない声で答えた。

「別に何もいらない。ジャレットにはいつも変な呼びかたされるから、迷惑料として要求しただけ。でも、あれが美味しそうに見えたのは事実。アラタも今度買ってみたらいい」

「え・・・?はは、そうだったんだ」

アラタは頬が引きつって苦笑いしていたが、回復したジャレットがすでに店内に戻っていて、この場にいなかったのは幸いだと思っていた。


「・・・稽古、どうだった?」

「ん、ああ・・・・・なんて言うか、とにかくすごいな。昨日もそうだったけど、実践形式で俺の攻撃は一発も当たらなかった。それで、店長は足しか使わないんだ。何十回も足を払われて、来ると分かってても躱せない。転ばされると、今の攻撃のどこが悪かったか教えてくれるんだ。ズバっとダメ出しされたけど、改善すべきところも一緒に教えてくれるから納得しかないよ」

「うん、店長のまかせればいい。店長の言う通りにしてれば、アラタはもっと強くなれる」

「・・・すごい信頼だね?」

手放しでここまで口にするユーリに、少しの驚きを含んで見せる。

「うん。私だけじゃない。みんな店長の事を信頼している。アラタはまだ日が浅いけど、そのうち分かるはず・・・・・はい、ヒール終わり」

確かにアラタはまだバリオスと出会って日が浅い。
だが、その正体にほぼ確信を持った今、バリオスに対してアラタも信頼を感じ始めていた。

「うん、そうだな。確かにまだ数回しか会ってないけど・・・」


革紐で結んで首から下げた樹木・・・新緑の欠片を手に取る。


「店長の事は、俺も信頼してるよ」


そう言ってユーリに笑って見せる。
アラタの反応が意外だったのか、ユーリは少しだけ目を丸くしたが、すぐに目を細めて微笑んだ。

「・・・うん。良かった」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...