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757 ギラギラと暑い夏の日
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季節は夏、アラタとカチュアの結婚式から三か月が経った。
「兄ちゃんよ~、今日はなんでこんなに暑いんだよ?」
「なんでって言われてもなぁ、七月なんてこんなもんじゃないのか?」
額にタオルを巻いたリカルドが、うちわで扇ぎながらしきりに文句を口にする。
今日は青のヘンリーネックTシャツに、黒いハーフパンツとラフな格好をしている。
普段は鉄の胸当てなどのフル装備を着用しているのだが、七月の外ではさすがに普段着を着ている。
見上げた空はギラギラと輝く太陽が、地上を容赦なく照りつけている。
建物の日陰にいる分いくらかマシだが、流れ出る汗は一向に止まる気配がない。
「あ~暑い暑い!嫌んなるぜ!兄ちゃん、氷アイスもう一本くれよ」
「もうねぇよ。お前俺の分も食ったじゃん。そんなに暑いなら意地張らなきゃいいのに」
「なんだよそれ!俺のせいだってのか!?」
「他に誰がいんだよ?お前頭の中どうなってんだ?」
アラタとリカルドが言い合いを始めると、鋭い蹴りが二人の脛に突き刺さった。
「アラタ、リカルド、うるさい。暑いんだから、イライラさせないで」
あまりの痛みで座り込む二人を、ユーリが冷ややかな目で睨みつける。
ユーリはラベンダー色の、ノースリーブのワンピースを着ている。
涼し気に見えるが、やはりずいぶん汗をかいているのが、一目で分かる。
「ユ、ユーリ、てめぇ、この暴力女が!んな事言うなら、てめぇはあっち行けばいいだろ!」
リカルドが顔を上げて睨みつけると、ユーリはリカルドの顔に右ストレートを寸止めして見せた。
「これ以上騒ぐと、リカルドの顎も割っちゃうよ?」
「・・・・・あ、はい」
リカルドが顔を引きつらせながら、何度も頷いてみせると、ユーリは拳を下ろしてその場に座り込んだ。頭にタオルを乗せて少しでも陽を浴びないようにしている。
「おい、兄ちゃん・・・なんでユーリにボクシング教えたんだよ?前よりタチ悪いぞ」
ひそひそとユーリに聞こえないように、口の横に手を当ててアラタに耳打ちをする。
「いや、しかたねぇだろ?ミゼルさんのアバラがバラバラになるとこだったんだぞ!?」
「・・・何言ってっか分かんね」
「いや、だからミゼルさんのアバラがピンチだったんだよ!」
ボクシングを教えなければ、ミゼルのアバラを粉砕すると脅されたのだが、リカルドが知る由もなかった。リカルドはアラタの説明にもなっていない説明に、怪訝な顔をして見せる。
「・・・・・いいか、兄ちゃんのやった事はな、通り魔にこん棒渡したようなもんなんだよ。強くしてどうすんだよ?なんだよあのパンチ?兄ちゃんよっか鋭いんじゃねぇのか?」
「え!?いやいや、さすがにそれはないだろ?俺もボクシングにはプライド持ってるぞ!ユーリに負けるって、お前それは舐め過ぎだ!」
「兄ちゃん、ユーリのパンチで膝付いた事あんじゃん?つまり負けてんじゃん?」
「いや、お前それは・・・ぐはっ!」
アラタの腹のユーリの左フックが深々と突き刺さる。
「うるさいって言ってるでしょ?馬鹿なの?」
徐々に声が大きくなる二人に、ユーリの怒りが頂点に達した。冷たい眼差しに、気温が一気に下がったようにさえ感じる。
アラタが倒れると、ユーリはリカルドに目を移した。
「お、おいおいおい!お、俺は悪くねぇぞ!兄ちゃんだ!全部兄ちゃんがっぐはぁッツ!」
両手を前に出して、必死に弁明するリカルドだったが、ユーリは鋭いステップインで懐に入ると、左ストレートをリカルドの腹に突き刺した。
前のめりにリカルドが倒れる。ユーリはタオルで額の汗を拭き、倒れている二人を一瞥して、フンと鼻を鳴らすと元の場所に腰を下ろした。
「・・・遅い。式典はまだなの?」
前方の人だかりを睨み付け、ユーリは額から流れる汗を、タオルでごしごしと拭った。
「相変わらずだねぇ・・・」
数メートル程距離を置いて、一部始終を見ていたケイトが呆れた声を出す。
トレードマークの黒の鍔付きキャップに、黒の半袖Tシャツ、腰には青のチェック柄のシャツを巻いて、カーキ色の七分丈カーゴパンツを穿いている。明るいベージュの髪は首の後ろでヘアゴムで縛っている。
「うん、特にリカルドかな。もう分かっててやってるとしか思えないよ」
ジーンはネイビーの半袖ポロシャツに、白のロングパンツを穿いている。
肩の下まである長く青い髪は、ケイトと同じように首の後ろで一本に結んでいた。
「あんなに暑がってるのに、気温調整魔法かけなくていいって言うし、リカルドって変なとこにこだわるよね?」
「暑くなくちゃ夏じゃない、だっけ?まぁ、分かる気はするけどね。でも、今日は殺人的な暑さだよ。アラタは強制されてたけど、ユーリも付き合ってるのはびっくりしたな」
ジーンとケイトは汗を全くかいていない。気温調整魔法のテンパラを使っているからである。
ケイトは以前、この魔法でセインソルボ山も登頂している。
極寒の雪山に比べれば、夏の日差し程度は片手間の魔力で防げる。
「ユーリってさ、リカルドの事どう思ってんのかな?」
「・・・え?」
一人毎のように呟いたケイトの言葉に、ジーンは目を見開いた。
「前からちょっと気になってたんだよね、犬猿の仲って感じだけど、なんだかんだでリカルドってユーリを気にかけてない?ユーリも意外とリカルドと一緒にいるの多い気がするんだよね。ほら、前にアラタの家に一緒に泊ったって聞いた事ない?」
「・・・えっと、じゃあ、ユーリもリカルドも、お互い意識してるって事?」
「う~ん、意識って程じゃないかもしれないけど、少し気にしてるって感じかな?ほら、今日だってあんなに汗かきながら、なんで一緒にいるのって思わない?」
ケイトの言葉に、ジーンは腕を組んで首をひねる。
「・・・う~ん、言われてみると確かにそうだよね・・・」
「でしょ!アタシらと一緒にいれば汗かかなくてすむのにさ」
ケイトはぐるっと首を回す。
ジャレットとシルヴィア、ミゼルとクリス、エルとエルの両親、みんながジーンとケイトの気温調整魔法の中にいて、快適に楽しそうに話しをしながら、式典が始まるのを待っている。
「あんなに汗ダラダラかいちゃってさ・・・しかたない、あとでクリーンかけてやるか」
ケイトが呆れたように溜息をつくと、前の人だかりで大きな声が上がった。
「あ、始まるみたいだよ」
ジーンが遠くを見るように、額に手を当てた。
その声に反応して、みんなも前方に注目する。
今日この日のために、朝から沢山の人が集まっていた。
何か月も前から職人による工事が行われ、大きな建物が少しづつ出来上がっていく様子は、クインズベリーの人々の興味を大きく引いていた。
そして職人や、現地で雇われた人から話しが広まっていったのである。
行商人は来るが、店舗を構える事はなかった。
今回が初めてのクインズベイー進出となる、アラルコン商会クインズベリー支店の開店である。
「兄ちゃんよ~、今日はなんでこんなに暑いんだよ?」
「なんでって言われてもなぁ、七月なんてこんなもんじゃないのか?」
額にタオルを巻いたリカルドが、うちわで扇ぎながらしきりに文句を口にする。
今日は青のヘンリーネックTシャツに、黒いハーフパンツとラフな格好をしている。
普段は鉄の胸当てなどのフル装備を着用しているのだが、七月の外ではさすがに普段着を着ている。
見上げた空はギラギラと輝く太陽が、地上を容赦なく照りつけている。
建物の日陰にいる分いくらかマシだが、流れ出る汗は一向に止まる気配がない。
「あ~暑い暑い!嫌んなるぜ!兄ちゃん、氷アイスもう一本くれよ」
「もうねぇよ。お前俺の分も食ったじゃん。そんなに暑いなら意地張らなきゃいいのに」
「なんだよそれ!俺のせいだってのか!?」
「他に誰がいんだよ?お前頭の中どうなってんだ?」
アラタとリカルドが言い合いを始めると、鋭い蹴りが二人の脛に突き刺さった。
「アラタ、リカルド、うるさい。暑いんだから、イライラさせないで」
あまりの痛みで座り込む二人を、ユーリが冷ややかな目で睨みつける。
ユーリはラベンダー色の、ノースリーブのワンピースを着ている。
涼し気に見えるが、やはりずいぶん汗をかいているのが、一目で分かる。
「ユ、ユーリ、てめぇ、この暴力女が!んな事言うなら、てめぇはあっち行けばいいだろ!」
リカルドが顔を上げて睨みつけると、ユーリはリカルドの顔に右ストレートを寸止めして見せた。
「これ以上騒ぐと、リカルドの顎も割っちゃうよ?」
「・・・・・あ、はい」
リカルドが顔を引きつらせながら、何度も頷いてみせると、ユーリは拳を下ろしてその場に座り込んだ。頭にタオルを乗せて少しでも陽を浴びないようにしている。
「おい、兄ちゃん・・・なんでユーリにボクシング教えたんだよ?前よりタチ悪いぞ」
ひそひそとユーリに聞こえないように、口の横に手を当ててアラタに耳打ちをする。
「いや、しかたねぇだろ?ミゼルさんのアバラがバラバラになるとこだったんだぞ!?」
「・・・何言ってっか分かんね」
「いや、だからミゼルさんのアバラがピンチだったんだよ!」
ボクシングを教えなければ、ミゼルのアバラを粉砕すると脅されたのだが、リカルドが知る由もなかった。リカルドはアラタの説明にもなっていない説明に、怪訝な顔をして見せる。
「・・・・・いいか、兄ちゃんのやった事はな、通り魔にこん棒渡したようなもんなんだよ。強くしてどうすんだよ?なんだよあのパンチ?兄ちゃんよっか鋭いんじゃねぇのか?」
「え!?いやいや、さすがにそれはないだろ?俺もボクシングにはプライド持ってるぞ!ユーリに負けるって、お前それは舐め過ぎだ!」
「兄ちゃん、ユーリのパンチで膝付いた事あんじゃん?つまり負けてんじゃん?」
「いや、お前それは・・・ぐはっ!」
アラタの腹のユーリの左フックが深々と突き刺さる。
「うるさいって言ってるでしょ?馬鹿なの?」
徐々に声が大きくなる二人に、ユーリの怒りが頂点に達した。冷たい眼差しに、気温が一気に下がったようにさえ感じる。
アラタが倒れると、ユーリはリカルドに目を移した。
「お、おいおいおい!お、俺は悪くねぇぞ!兄ちゃんだ!全部兄ちゃんがっぐはぁッツ!」
両手を前に出して、必死に弁明するリカルドだったが、ユーリは鋭いステップインで懐に入ると、左ストレートをリカルドの腹に突き刺した。
前のめりにリカルドが倒れる。ユーリはタオルで額の汗を拭き、倒れている二人を一瞥して、フンと鼻を鳴らすと元の場所に腰を下ろした。
「・・・遅い。式典はまだなの?」
前方の人だかりを睨み付け、ユーリは額から流れる汗を、タオルでごしごしと拭った。
「相変わらずだねぇ・・・」
数メートル程距離を置いて、一部始終を見ていたケイトが呆れた声を出す。
トレードマークの黒の鍔付きキャップに、黒の半袖Tシャツ、腰には青のチェック柄のシャツを巻いて、カーキ色の七分丈カーゴパンツを穿いている。明るいベージュの髪は首の後ろでヘアゴムで縛っている。
「うん、特にリカルドかな。もう分かっててやってるとしか思えないよ」
ジーンはネイビーの半袖ポロシャツに、白のロングパンツを穿いている。
肩の下まである長く青い髪は、ケイトと同じように首の後ろで一本に結んでいた。
「あんなに暑がってるのに、気温調整魔法かけなくていいって言うし、リカルドって変なとこにこだわるよね?」
「暑くなくちゃ夏じゃない、だっけ?まぁ、分かる気はするけどね。でも、今日は殺人的な暑さだよ。アラタは強制されてたけど、ユーリも付き合ってるのはびっくりしたな」
ジーンとケイトは汗を全くかいていない。気温調整魔法のテンパラを使っているからである。
ケイトは以前、この魔法でセインソルボ山も登頂している。
極寒の雪山に比べれば、夏の日差し程度は片手間の魔力で防げる。
「ユーリってさ、リカルドの事どう思ってんのかな?」
「・・・え?」
一人毎のように呟いたケイトの言葉に、ジーンは目を見開いた。
「前からちょっと気になってたんだよね、犬猿の仲って感じだけど、なんだかんだでリカルドってユーリを気にかけてない?ユーリも意外とリカルドと一緒にいるの多い気がするんだよね。ほら、前にアラタの家に一緒に泊ったって聞いた事ない?」
「・・・えっと、じゃあ、ユーリもリカルドも、お互い意識してるって事?」
「う~ん、意識って程じゃないかもしれないけど、少し気にしてるって感じかな?ほら、今日だってあんなに汗かきながら、なんで一緒にいるのって思わない?」
ケイトの言葉に、ジーンは腕を組んで首をひねる。
「・・・う~ん、言われてみると確かにそうだよね・・・」
「でしょ!アタシらと一緒にいれば汗かかなくてすむのにさ」
ケイトはぐるっと首を回す。
ジャレットとシルヴィア、ミゼルとクリス、エルとエルの両親、みんながジーンとケイトの気温調整魔法の中にいて、快適に楽しそうに話しをしながら、式典が始まるのを待っている。
「あんなに汗ダラダラかいちゃってさ・・・しかたない、あとでクリーンかけてやるか」
ケイトが呆れたように溜息をつくと、前の人だかりで大きな声が上がった。
「あ、始まるみたいだよ」
ジーンが遠くを見るように、額に手を当てた。
その声に反応して、みんなも前方に注目する。
今日この日のために、朝から沢山の人が集まっていた。
何か月も前から職人による工事が行われ、大きな建物が少しづつ出来上がっていく様子は、クインズベリーの人々の興味を大きく引いていた。
そして職人や、現地で雇われた人から話しが広まっていったのである。
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