異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
841 / 1,560

【840 巨槍】

しおりを挟む
「皇帝、始まりました。ワイルダーが巨槍を投擲したようでございます」

ブロートン帝国大臣ジャフ・アラムは、玉座の間の階段下で一礼をすると、部下から報告を受けた戦局を話し始めた。

「ほぅ・・・さっそくアレを放ったか。カエストゥスの被害は確認できるのか?」

皇帝は金と宝石がふんだんに使われた玉座で足を組むと、その金色の目に興味の色を浮かべて、少しだけ身を乗り出した。

「恐れながら、カエストゥスの姿はまだ見えません。偵察隊の報告では、ここから十数キロ程の距離まで来ているとの事でしたが・・・おそらくワイルダーは、おおよその狙いを付けて放ったのかと・・・」

ジャフはもう一度頭を下げ、推測を述べた。
しかしこの推測は、ワイルダーを知っている者からすると確率の高い推測であり、皇帝もジャフと同じ考えだった。

「かつて帝国を二分して余と戦った時も、あの投擲には苦しめられたからな。一体誰が投擲であれほどの距離を飛ばせると思う?恐ろしい男よ、デズモンデイ・ワイルダー・・・だが、味方となるとこれほど頼もしい男もおらん」

「左様でございます。それにしても、まさかあのような仕掛けを施されていたとは・・・このジャフ、感服しております。あれでは皇帝に従う他ありますまい」

口の端を上げて笑う皇帝を見て、ジャフ・アラムも目を細めて歪んだ笑みを浮かべる。

「フッ・・・ワイルダーにとって、アンソニーは唯一絶対の主君、その主君の命を余に握られていては、従う他あるまいて。それに全てが終われば皇帝の座を譲るとも約束した。であれば、アンソニーにしても、命を捨ててまで余に歯向かう理由もなかろう」

皇帝の座を譲る。
牢から出され、ここに連れて来られたアンソニーとワイルダーの二人は、当然その話しに聞く耳を持たなかった。そこで皇帝が使用した物は、二人が皇帝の話しを聞くしかない、聞かざるを得ないものだった。

「ふっふっふ、寄生魔道具、臓物喰(ぞうもつく)らい・・・その名の通り、対象の身体に巣食い、その内臓を喰らう拷問用の魔道具・・・まさかまだお持ちだったとは・・・」

「虫が小さ過ぎる上に体内で勝手に増える。制御できる使用者がいないから、結局埋められた者を殺してしまう。これでは道具として失敗作としか言えんだろう。無くなって当然だ。だが、制御できる者がいれば話しは別だ。余の魔力ならば臓物喰らいは制御できる」


皇帝の弟、アンソニーの体内には、寄生魔道具、臓物喰らいが埋め込まれていた。
臓物喰らいは皇帝の魔力に反応し、いつでもアンソニーの体内を食い破る事ができる。
ワイルダーはアンソニーを護るために、カエストゥスと戦うしか選択肢はなかった。

アンソニーには、己の命惜しさに皇帝に服従する考えはなかった。
だが、忠臣であるワイルダーの説得、そして嘘だと分かっていても皇帝の座を譲ると言うその言葉に、自分の気持ちを向ける事で納得するしかなかった。

「全てが終われば、臓物喰らいは余の魔力で殺して無害にする。そして皇帝の座も手に入る。アンソニーには理由が必要だったのだ。だから余がその理由を用意してやった。フッ、哀れな弟よ・・・継承者争に敗れ、憎き兄のために今もこうして力を振るわされるとはな」


アンソニー、そしてワイルダー、せいぜい頑張る事だな。
カエストゥスを見事殲滅させる事ができれば、貴様らを解放してやらんでもないぞ。

もっとも、どのような形での解放かは分からんがな。

「ククク・・・ハハハ・・・フハハハハハハハハハハ!」

皇帝の邪悪な笑いが玉座の間に響き渡った。







「・・・次だ」

人の頭でも握り潰せそうな大きな手を向けられた兵士は、慌てたように裏返った声で返事をすると、急ぎ足で槍を用意し運んで来た。

「お、お持ちしました!」

一投目と同じ大きさの巨槍を、黒い肌の指揮官の手元に差し出す。
全長250cm、直径40cmの鋼鉄は、とても一人で運べる物ではない。体格の良い兵士二人でやっと抱えている。本来は武器として成立する物とも考えられないが、この男だけは例外だった。

自分に献上するように差し出される巨槍を、左手一本で掴み取ると、感触を確かめるように頭上で回して見せる。それは鋭いと言うより、重いと言う表現が適切だった。
たった今槍を手渡した二人の兵士の顔に、槍を振り回した時に発生した台風のような風が当たり、思わず腰を落として、守るように両手を前に出す。


「ふぅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・」


一投目と同じく、巨大な槍を目線の高さに構え深く息を吸うと、またもや左腕が大きく膨れ上がっていく。そして息を吐き出し大きく足を踏み込むと、己が体を砲台として、鋼鉄の巨槍を撃ち出した!


「ふぅ・・・・・・さて、次だ」

二投目を撃ち終えたワイルダーは、短く息を吐くだけで一切の疲労を感じさせる事なく、三本目の槍を要求した。






「くっ!な、なんだこれは!?」

自分の背に広がる血の海に、理解が追いつかなかった。
百、二百・・・いや、あるいはもっと・・・いったいどれだけの兵が、今の一撃で・・・・・
乾燥していた地面は、無残に引き千切られた兵達の体から流れ出る赤い流動体によって、泥のように粘着性を持ち、俺の足にまとわりつく様な感触を残した。

ジョルジュが叫んだあの時、一瞬遅れても俺も何かが迫り来るのは感じ取った。
とっさに風魔法で盾を作ったが、アレは俺の風どころか、青魔法使いが幾重にも重ねた結界をも貫き、そして・・・・・


「ウィッカーーーーーッツ!なにをしている!立て直せ!お前が総大将だぞ!」


僅かな時間だが呆然としていた俺を、ジョルジュの激が覚まさせた。

「槍のような物だ!敵は巨大な槍のような物を撃ってきた!並の結界では防げんぞ!」

ジョルジュはあの一瞬で撃たれた物の正体を捉えていた。
そしてその威力は今目にした通りだ。俺の風も貫き、生半可な結界では防ぐことすら適わない。


「!?・・・チィッ!早い、二発目だ!」

一撃目からほとんど間を置かずに放たれた二度目の凶弾。
ジョルジュが再びを声を張り上げたその時、クインズベリー最強と謳われた青魔法使いが前に出た。

「師匠!?」

「ウィッカーよ、指揮官は常に冷静でなきゃいかんぞ。慌てる事はない。お前にはワシらが付いておるんじゃ。さて、とんでもない一撃じゃが・・・・・」


腰を落とし、両手を前に出すと、青く輝く光の壁が俺達を包み込むように張り巡らされた。


「ワシの天衣結界とどっちが上かのう?」


そう言い終えるか否かの刹那の間に、空気を貫く轟音と共に、巨大な槍がとてつもないスピードで眼前に差し迫ってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...