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【847 キャシーの不敵な笑み】
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チラチラと降り始めた雪も、今ではその量を増やし頭や肩に積もり始めている。
風も吹き始め、遅からず吹雪になるだろうと予想できた。
エリンに斬られた深紅のローブの女が、エリンを追ってこのこの場を離れて行くと、入れ替わるように空を飛んで来た黒魔法使いの集団が、俺を目にして動きを止めた。
どうやら俺の顔はそれなりに売れているようだ。
黒いローブ姿の魔法使い達は、言葉を交わす事もなく、魔力を放出して戦闘態勢に入った。
「フッ・・・即時攻撃か、無駄話しをする必要もない。俺もその方が好ましい」
弓を構えて空中の魔法使いの一人に狙いを付ける。
障害となる樹々もなく、こちらの姿は丸見えだ。
この場合、弓使いである俺は本来圧倒的に不利なのだろう。
当然だ。どこかに身を隠しながら撃つ事が定石であり、真正面から矢を放って当たるかと言えば、それは言うまでもなく難しい。
だが、それは普通の弓兵の場合だ。
全ては風だ。風を読む事ができれば真正面から放った矢でも簡単に当てる事ができる。
特に今日のように強い風が吹く日はな・・・・・
「ジョルジュ・ワーリトン!その命もらったぁぁぁー--ッツ!」
先頭に立つ黒魔法使いは、その両手で轟々と燃える炎を、地上の俺に向かって撃ち放った!
それに続き周囲の魔法使い達も、ウインドカッターや、刺氷弾、爆裂空破弾など、数々の魔法を撃ってくる!
「風の精霊の力は使えない。しかし風を読む事はできる」
ジョルジュは己に向けて放たれた、数えきれない程の黒魔法にも顔色一つ変えず、正面から狙いを大きく外して、誰の姿も無い空に向かって矢を射った。
ジョルジュが矢を射った直後、火、氷、風、爆の四系統全ての、数十発にも及ぶ魔法が地上にぶつかった。それは大気を震わせ地上を大きく揺らし、巨大な爆炎を空へと立ち上げた。
「はっ!所詮噂は噂でしかないな!ジョルジュ・ワーリントン!最後に放った矢も・・・ッ!?」
見当違いとしか思えない。誰もいない空間に矢を射ってなんの意味がある?
先頭に立ち火魔法を放った魔法使いが、首を回してジョルジュが矢を射った方向に目を向けたその時!
「なッ!?ぐっ!」
それが爆発に伴う風によるものなのかは分からない。
だが、吹き荒れる強い風に軌道を変えられた鉄の矢は、真っすぐに黒魔法使いの男を目掛けて突き進み、その額を抉り突き刺さった。
頭を貫いても鉄の矢の勢いは衰える事なく、そのまま引っ張るように地上まで落ちると、地面に男の頭を突き刺した。
「なッ・・・!?なんだ!?」
「お、おい!なんだよこれは!?」
先頭に立っていた黒魔法使いが落とされた。しかも、あらぬ方向に撃たれた矢が突然向きを変え、狙いすましたかのように額を撃ち抜くという異常な場面を目にして、残りの黒魔法使い達に走った動揺は大きく、攻撃の手も止まり完全に浮足立ってしまった。
「くそっ!まぐれだ!まぐれに決まっ、がぁッ!」
「ま、まさか生きているのか!?この爆発でどうやっ、うぐぁッ!」
突如、頭上から二本が降り落ち、二人の魔法使いの頭を貫き落す。
「なにッツ!?い、いったい・・・な、なにが!?」
「上だ!上にいるぞ!」
続けて二人倒され、どちらも頭の上からの矢で仕留められた事で、残った魔法使いが顔を上げると、その弓使いは空から降って下りてきた。
「自分の跳躍に爆風を利用し、貴様達よりも高く飛び上がる。さして難しい事ではない」
ジョルジュが黒魔法使い達の制空権を取り、地上に落下するまではほんの数秒、非常に短い時間だった。だがジョルジュは、その極めて短い時間で実に10人以上を射殺した。
落下しながらという不安定な状態にもかかわらず、一射で二人を同時に射抜き、二本の矢をも同時に放つ。瞬く間に仲間の数が減っていく状況に、帝国の魔法使い達に恐怖が植えつけられる事は、当然と言えば当然だった。
「さて、先を急いでるんでな。あっさり終わらせてもらうぞ」
軽やかに地上に着地した弓使いは、空中で青い顔をしている帝国軍の魔法使い達に向かって、決定事項だけを淡々と告げた。
「すばしっこいヤツめ!」
キャシーが右手を振るうと、鋭く研ぎ澄まされた風の刃がエリンに向かって放たれる。
空気を斬り裂く鋭い音は、それが例え鉄であっても、触れれば真っ二つになると感じさせていた。
「くっ!」
胴体目掛けて飛んできた風の刃を、エリンは腰が地面に着くほど低く落として躱す。
「ハァァァァー----ッ!」
しゃがんだエリンを狙い、地面を縦に斬り裂きながら放たれた風が、エリンは体を捻り鼻先スレスレで回避する。前髪を何本か持っていかれたが、エリンの目はキャシーの魔法を見切っており、矢継ぎ早に撃たれるが決して当たる事はなかった。
地上に降りたキャシーは、魔法使いの身でありながら、エリンに接近戦を挑んできた。
エリンは自分の挑発に当てられたのかと思った。確かにその一面はある。
だが大きくは、自分の刺氷弾を打ち砕いたエリンの剣技に、空中から狙い撃つだけでは勝てないと判断しての事だった。
手痛い一撃はもらったが、仲間の肩を借りて飛んでくるなんて、あんな奇策は二度とは通用しない。
もっと高い場所から、撃ち続けてもよかったかもしれない。
だがおそらく、それでは勝てない。
空中からの攻撃は、ジョルジュもエリンもほぼ完全に躱しきっている。
このまま撃ち続けても当たるとは思えない。むしろ魔力を消耗するだけ、戦いが長引けば長引く程自分が不利になる。
それならば、余力のあるうちに正面から戦った方がいいだろう。そう考えての決断である。
「ウインドカッターも刺氷弾も駄目か、直線的な攻撃では捉えきれないか・・・」
地上に降りて接近戦を挑んでも、キャシーの魔法はエリンに躱され続けた。
発動の早い初級魔法を連発しているが、エリンの魔道具遠目の鏡は、魔法の発射台となるキャシーの両手に集中していた。そしてその手の動きから、攻撃の軌道を捉え、撃たれた瞬間には回避行動を起こしていた。
「私の目はあんたの魔法を見切っている。何を使おうが無駄だよ」
首を狙って飛んで来たウインドカッターを頭を下げて躱すと、エリンはその手に持つ剣を握り直し、大地を強く蹴って、正面のキャシーに向かい飛び出した!
「認めるよ。確かにこのままでは魔法を当てる事は難しい。けれどこれならどうかな?」
エリンが迫って来る事を見て、口元に不敵な笑みを浮かべると、キャシーは深紅のローブを脱ぎ捨てた。
そしてエリンが剣を掲げ、キャシーに斬りかかったその時、まるで降りしきる雪に飲み込まれるかのように、キャシーの姿が消えた。
「なにッ!?」
標的を見失い、エリンの動きが止まった次の瞬間、エリンの耳元で何かが囁いた。
「お前の負けだ」
腹の下でエネルギーの塊が爆発し、轟音と共にエリンの身体は空中に吹き飛ばされた。
風も吹き始め、遅からず吹雪になるだろうと予想できた。
エリンに斬られた深紅のローブの女が、エリンを追ってこのこの場を離れて行くと、入れ替わるように空を飛んで来た黒魔法使いの集団が、俺を目にして動きを止めた。
どうやら俺の顔はそれなりに売れているようだ。
黒いローブ姿の魔法使い達は、言葉を交わす事もなく、魔力を放出して戦闘態勢に入った。
「フッ・・・即時攻撃か、無駄話しをする必要もない。俺もその方が好ましい」
弓を構えて空中の魔法使いの一人に狙いを付ける。
障害となる樹々もなく、こちらの姿は丸見えだ。
この場合、弓使いである俺は本来圧倒的に不利なのだろう。
当然だ。どこかに身を隠しながら撃つ事が定石であり、真正面から矢を放って当たるかと言えば、それは言うまでもなく難しい。
だが、それは普通の弓兵の場合だ。
全ては風だ。風を読む事ができれば真正面から放った矢でも簡単に当てる事ができる。
特に今日のように強い風が吹く日はな・・・・・
「ジョルジュ・ワーリトン!その命もらったぁぁぁー--ッツ!」
先頭に立つ黒魔法使いは、その両手で轟々と燃える炎を、地上の俺に向かって撃ち放った!
それに続き周囲の魔法使い達も、ウインドカッターや、刺氷弾、爆裂空破弾など、数々の魔法を撃ってくる!
「風の精霊の力は使えない。しかし風を読む事はできる」
ジョルジュは己に向けて放たれた、数えきれない程の黒魔法にも顔色一つ変えず、正面から狙いを大きく外して、誰の姿も無い空に向かって矢を射った。
ジョルジュが矢を射った直後、火、氷、風、爆の四系統全ての、数十発にも及ぶ魔法が地上にぶつかった。それは大気を震わせ地上を大きく揺らし、巨大な爆炎を空へと立ち上げた。
「はっ!所詮噂は噂でしかないな!ジョルジュ・ワーリントン!最後に放った矢も・・・ッ!?」
見当違いとしか思えない。誰もいない空間に矢を射ってなんの意味がある?
先頭に立ち火魔法を放った魔法使いが、首を回してジョルジュが矢を射った方向に目を向けたその時!
「なッ!?ぐっ!」
それが爆発に伴う風によるものなのかは分からない。
だが、吹き荒れる強い風に軌道を変えられた鉄の矢は、真っすぐに黒魔法使いの男を目掛けて突き進み、その額を抉り突き刺さった。
頭を貫いても鉄の矢の勢いは衰える事なく、そのまま引っ張るように地上まで落ちると、地面に男の頭を突き刺した。
「なッ・・・!?なんだ!?」
「お、おい!なんだよこれは!?」
先頭に立っていた黒魔法使いが落とされた。しかも、あらぬ方向に撃たれた矢が突然向きを変え、狙いすましたかのように額を撃ち抜くという異常な場面を目にして、残りの黒魔法使い達に走った動揺は大きく、攻撃の手も止まり完全に浮足立ってしまった。
「くそっ!まぐれだ!まぐれに決まっ、がぁッ!」
「ま、まさか生きているのか!?この爆発でどうやっ、うぐぁッ!」
突如、頭上から二本が降り落ち、二人の魔法使いの頭を貫き落す。
「なにッツ!?い、いったい・・・な、なにが!?」
「上だ!上にいるぞ!」
続けて二人倒され、どちらも頭の上からの矢で仕留められた事で、残った魔法使いが顔を上げると、その弓使いは空から降って下りてきた。
「自分の跳躍に爆風を利用し、貴様達よりも高く飛び上がる。さして難しい事ではない」
ジョルジュが黒魔法使い達の制空権を取り、地上に落下するまではほんの数秒、非常に短い時間だった。だがジョルジュは、その極めて短い時間で実に10人以上を射殺した。
落下しながらという不安定な状態にもかかわらず、一射で二人を同時に射抜き、二本の矢をも同時に放つ。瞬く間に仲間の数が減っていく状況に、帝国の魔法使い達に恐怖が植えつけられる事は、当然と言えば当然だった。
「さて、先を急いでるんでな。あっさり終わらせてもらうぞ」
軽やかに地上に着地した弓使いは、空中で青い顔をしている帝国軍の魔法使い達に向かって、決定事項だけを淡々と告げた。
「すばしっこいヤツめ!」
キャシーが右手を振るうと、鋭く研ぎ澄まされた風の刃がエリンに向かって放たれる。
空気を斬り裂く鋭い音は、それが例え鉄であっても、触れれば真っ二つになると感じさせていた。
「くっ!」
胴体目掛けて飛んできた風の刃を、エリンは腰が地面に着くほど低く落として躱す。
「ハァァァァー----ッ!」
しゃがんだエリンを狙い、地面を縦に斬り裂きながら放たれた風が、エリンは体を捻り鼻先スレスレで回避する。前髪を何本か持っていかれたが、エリンの目はキャシーの魔法を見切っており、矢継ぎ早に撃たれるが決して当たる事はなかった。
地上に降りたキャシーは、魔法使いの身でありながら、エリンに接近戦を挑んできた。
エリンは自分の挑発に当てられたのかと思った。確かにその一面はある。
だが大きくは、自分の刺氷弾を打ち砕いたエリンの剣技に、空中から狙い撃つだけでは勝てないと判断しての事だった。
手痛い一撃はもらったが、仲間の肩を借りて飛んでくるなんて、あんな奇策は二度とは通用しない。
もっと高い場所から、撃ち続けてもよかったかもしれない。
だがおそらく、それでは勝てない。
空中からの攻撃は、ジョルジュもエリンもほぼ完全に躱しきっている。
このまま撃ち続けても当たるとは思えない。むしろ魔力を消耗するだけ、戦いが長引けば長引く程自分が不利になる。
それならば、余力のあるうちに正面から戦った方がいいだろう。そう考えての決断である。
「ウインドカッターも刺氷弾も駄目か、直線的な攻撃では捉えきれないか・・・」
地上に降りて接近戦を挑んでも、キャシーの魔法はエリンに躱され続けた。
発動の早い初級魔法を連発しているが、エリンの魔道具遠目の鏡は、魔法の発射台となるキャシーの両手に集中していた。そしてその手の動きから、攻撃の軌道を捉え、撃たれた瞬間には回避行動を起こしていた。
「私の目はあんたの魔法を見切っている。何を使おうが無駄だよ」
首を狙って飛んで来たウインドカッターを頭を下げて躱すと、エリンはその手に持つ剣を握り直し、大地を強く蹴って、正面のキャシーに向かい飛び出した!
「認めるよ。確かにこのままでは魔法を当てる事は難しい。けれどこれならどうかな?」
エリンが迫って来る事を見て、口元に不敵な笑みを浮かべると、キャシーは深紅のローブを脱ぎ捨てた。
そしてエリンが剣を掲げ、キャシーに斬りかかったその時、まるで降りしきる雪に飲み込まれるかのように、キャシーの姿が消えた。
「なにッ!?」
標的を見失い、エリンの動きが止まった次の瞬間、エリンの耳元で何かが囁いた。
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