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【870 カエストゥス 対 帝国 ④パトリックの戦い】
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「でかい!」
ジャミールの放った双炎砲。それは結界を覆いつくす程に大きな炎だった。そしてその圧力はパトリックの結界を一気に軋ませヒビを入れた。
パトリックは全力で魔力を発して結界を維持している。魔法兵団団長として認められ、ブレンダンに師事しているパトリックの魔力は、王宮仕えの魔法兵と比べても、頭一つも二つも抜き出ている。だがそのパトリックを相手にしても、ジャミールの攻撃力が一枚上をいっていた。
「オラオラ!どうした!?そんなもんかよ?だったらすぐに消してやるぜぇッ!」
自分の発した双炎砲がパトリックの結界を押している。
炎を通じて感じる手ごたえに、ジャミールは己の優位を確信して笑い声を上げた。
一見慢心にも見える不遜な態度だが、以前ジョルジュとも互角の戦いを繰り広げ、今もパトリックを圧倒しているという、確かな実力に裏打ちされたものだった。
「ぐっ!」
押し寄せる炎の圧力は凄まじかった。結界のヒビも大きく広がり、いよいよ限界が近づいてきた。
もう持たない・・・そう思った時、パトリックの背後から突如氷の竜が飛び出し、目の前の炎に喰らいついた!
「これは!?」
氷の上級魔法 竜氷縛
巨大な氷の竜は大きく顎を開き、ジャミールの双炎砲に横からぶつかるように食らいつくと、爆音を立てて炎と共に消滅してしまった。
「パトリック団長!援護します!」
その声に首を後ろに向ける。カエストゥス魔法兵が、数人走り寄って来た。
帝国軍との激しい戦いが繰り広げられている中、彼らはパトリックの窮地を見で、援護射撃に入ってきたのだ!
「団長!ご無事ですか!?」
「はぁ・・・ふぅ・・・お前達、すまない。助かった」
窮地を脱したパトリックは、結界を解除すると額の汗を袖で拭った。
竜氷縛と双炎砲が相殺し蒸発したため、白い蒸気が辺り一面に巻き散らかされたが、吹雪はあっという間に蒸気をかき消し、正面の敵の姿を露(あら)わにした。
「へぇ、俺の双炎砲と相殺か。さすが魔法大国ってだけあるな、ただの兵士でもなかなかの魔力をもってやがる」
「深紅のローブ・・・団長、こいつは帝国の幹部ですね?」
ジャミールの体から発せられている炎が、降りかかる風と雪から身を護っている。
よほど自分に自信があるのか、パトリックと魔法兵達を前にしても、まったく警戒する素振りを見せず、撃って来いとでも言うように両手を広げ、笑いながらゆっくりと歩き近づいて来た。
「気を付けろ・・・竜氷縛で双炎砲と五分だ。こいつの魔力は一枚も二枚も上だ」
パトリック自身、自分の結界で直接受けて分かった。ジャミール・ディーロの魔力は自分よりも上であると。
自分達の団長の硬い声に、魔法兵達も、はい、と緊張を帯びた声で頷いた。
彼らとて鍛えられた兵士である。対峙している敵と己の力の差は、敏感に感じ取っていた。
「・・・ふぅん、こんな戦場とっととフケちまおうかって思ったけど、お前らを始末してからでもいいかな。ジョルジュの野郎が死んでよぉ、親父の仇討ちができなくなったからな。お前らあいつの代わりによぉ、俺の憂さ晴らしにつきあってくれよ?」
首を鳴らし、その黒い眼がギラギラとした狂気を帯びていく。
体から静かに発せられていた炎が、ジャミールの精神に呼応するように強さを増し、そして一気膨れ上がりに天高く立ち昇った。
「・・・でたな、灼炎竜・・・」
それは黒魔法使いの代名詞と言ってもいいだろう。パトリックも訓練で灼炎竜は何度も見た事がある。見慣れていると言ってもいい。だがそれだけに、目の前の浅黒い肌をした男の灼炎竜が、どれほどの強さかを肌で感じ取った。
こいつ・・・!この魔力は予想以上だ・・・・・大きさは現時点で5メートル程度か?
だが、こいつの秘めている魔力なら、まだまだこんなもんじゃない。
親父と同じ15メートル・・・いや、それ以上になるかもしれない。
強い事は分かっていた。
だが予想を上回るジャミールの魔力を感じ、パトリックの頬を一筋の汗が伝い落ちる。
「いくぜぇッ!」
ジャミール・ディーロが腕をふるうと、荒ぶる炎の竜はその大きな顎を開けて、大地を焦がしながら襲いかかった!
「ハァァァァァー--ー---ッ!」
魔法兵達の気の入った声が、吹雪の中響き渡る。
カエストゥスの魔法兵が最初にとった行動は迎撃だった。
ジャミールの放った灼炎竜に対して、竜氷縛をぶつけて相殺する。炎に対しての氷は至極当然と言えた。
ジャミールに一対一では勝てない。彼らはそれも分かっていた。
上級魔法の竜氷縛で、中級魔法の双炎砲と互角。
そしてジャミールから感じる桁違いの魔力に、一人で勝てると思えるほど、自惚(うぬぼ)れている者はいない。だからこそ、数人がかりで一斉に竜氷縛を撃ったのだ。
「オラァァァー---ーッ!」
ぶつかり合う炎の竜と氷の竜!一体の灼炎竜に対して竜氷縛は5体。これでやっと互角だった。
「ぐっ!ぬぐぅっ!」
「オラオラ!どうした!?やっぱりそんなもんか?それじゃ俺は止められねぇんだよぉッ!」
互角だったが、苦しそうな表情のカエストゥスの魔法兵達とは対照的に、嘲笑を浮かべるジャミールには大きな余裕があった。
「オラァァァー----ッ!」
ジャミールがもう一度、今度は押し出すように腕をふるうと、その手から伸びる炎の竜が一段大きさを増した!
「なにっ!?」
「そ、そんな、これほどなのか!?」
炎と氷、相反する二つの力のぶつかり合いは、大きさを増したジャミールの灼炎竜が、あっさりと竜氷縛を打ち破った。
「う、うわぁぁぁぁぁーーーーーっ!」
しかし、そのまま一直線に突き進み、カエストゥスの魔法兵達を呑み込もうとしたその瞬間、青く輝く結界がジャミールの灼炎竜を食い止め、カエストゥスの魔法兵達を救っていた。
「くっ!こ、これほどとは・・・!」
パトリックの天衣結界である。通常の結界では中級魔法さえくいとめられない。
身をもってそれを知ったパトリックは、この灼炎竜に最高峰の結界を持って挑んだ。
「へッ!天衣結界か!?よく止めたなぁ!だが、いつまでもつかな!?」
ジャミールはまだ全力を出していない。
この灼炎炎も少し力を入れたが、まだ10メートルに満たない大きさである。
もう一押しすれば、パトリックの天衣結界さえも破ってしまうだろう。
「ぐ・・・つ、強い・・・」
猛吹雪にさらされているが、パトリックは全身に汗をかく程の劣勢に立たされていた。
歯を食いしばって耐えているが、この天衣結界も長くは持たない事は分かる。
守勢に回っていては確実に負ける。
「はぁっ・・・はぁっ・・・パ、パトリック団長、申し訳ありません、我々が不甲斐ないばかりに・・・」
パトリックの後ろでは、今の激突で押し負けた魔法兵達が、膝を着いて悔しさに歯噛みをしていた。五人がかりで撃ち負けたのだ。そのプライドはズタズタであろう。
だがそれ以上に、この戦いの場で役に立てない事が、情けなくてしかたないのだ。
「お前達・・・っ!」
叱責しようとして口をつぐんだ。
いつものパトリックなら、立ち上がれ!と厳しい言葉を発していた。
だが口を開いたその時、ここからの逆転の手がある事に気が付いた。
「だ、団長・・・どうかしたんですか?」
急に真顔になり、なにか思いついたように、ハッとした顔になったパトリック。
そんなパトリックを見て、魔法兵の一人が表情を伺うように声をかけた。
「・・・あるぞ。まだできる事が・・・逆転がある。お前達に、俺に命を預けられるか?」
ジャミールの放った双炎砲。それは結界を覆いつくす程に大きな炎だった。そしてその圧力はパトリックの結界を一気に軋ませヒビを入れた。
パトリックは全力で魔力を発して結界を維持している。魔法兵団団長として認められ、ブレンダンに師事しているパトリックの魔力は、王宮仕えの魔法兵と比べても、頭一つも二つも抜き出ている。だがそのパトリックを相手にしても、ジャミールの攻撃力が一枚上をいっていた。
「オラオラ!どうした!?そんなもんかよ?だったらすぐに消してやるぜぇッ!」
自分の発した双炎砲がパトリックの結界を押している。
炎を通じて感じる手ごたえに、ジャミールは己の優位を確信して笑い声を上げた。
一見慢心にも見える不遜な態度だが、以前ジョルジュとも互角の戦いを繰り広げ、今もパトリックを圧倒しているという、確かな実力に裏打ちされたものだった。
「ぐっ!」
押し寄せる炎の圧力は凄まじかった。結界のヒビも大きく広がり、いよいよ限界が近づいてきた。
もう持たない・・・そう思った時、パトリックの背後から突如氷の竜が飛び出し、目の前の炎に喰らいついた!
「これは!?」
氷の上級魔法 竜氷縛
巨大な氷の竜は大きく顎を開き、ジャミールの双炎砲に横からぶつかるように食らいつくと、爆音を立てて炎と共に消滅してしまった。
「パトリック団長!援護します!」
その声に首を後ろに向ける。カエストゥス魔法兵が、数人走り寄って来た。
帝国軍との激しい戦いが繰り広げられている中、彼らはパトリックの窮地を見で、援護射撃に入ってきたのだ!
「団長!ご無事ですか!?」
「はぁ・・・ふぅ・・・お前達、すまない。助かった」
窮地を脱したパトリックは、結界を解除すると額の汗を袖で拭った。
竜氷縛と双炎砲が相殺し蒸発したため、白い蒸気が辺り一面に巻き散らかされたが、吹雪はあっという間に蒸気をかき消し、正面の敵の姿を露(あら)わにした。
「へぇ、俺の双炎砲と相殺か。さすが魔法大国ってだけあるな、ただの兵士でもなかなかの魔力をもってやがる」
「深紅のローブ・・・団長、こいつは帝国の幹部ですね?」
ジャミールの体から発せられている炎が、降りかかる風と雪から身を護っている。
よほど自分に自信があるのか、パトリックと魔法兵達を前にしても、まったく警戒する素振りを見せず、撃って来いとでも言うように両手を広げ、笑いながらゆっくりと歩き近づいて来た。
「気を付けろ・・・竜氷縛で双炎砲と五分だ。こいつの魔力は一枚も二枚も上だ」
パトリック自身、自分の結界で直接受けて分かった。ジャミール・ディーロの魔力は自分よりも上であると。
自分達の団長の硬い声に、魔法兵達も、はい、と緊張を帯びた声で頷いた。
彼らとて鍛えられた兵士である。対峙している敵と己の力の差は、敏感に感じ取っていた。
「・・・ふぅん、こんな戦場とっととフケちまおうかって思ったけど、お前らを始末してからでもいいかな。ジョルジュの野郎が死んでよぉ、親父の仇討ちができなくなったからな。お前らあいつの代わりによぉ、俺の憂さ晴らしにつきあってくれよ?」
首を鳴らし、その黒い眼がギラギラとした狂気を帯びていく。
体から静かに発せられていた炎が、ジャミールの精神に呼応するように強さを増し、そして一気膨れ上がりに天高く立ち昇った。
「・・・でたな、灼炎竜・・・」
それは黒魔法使いの代名詞と言ってもいいだろう。パトリックも訓練で灼炎竜は何度も見た事がある。見慣れていると言ってもいい。だがそれだけに、目の前の浅黒い肌をした男の灼炎竜が、どれほどの強さかを肌で感じ取った。
こいつ・・・!この魔力は予想以上だ・・・・・大きさは現時点で5メートル程度か?
だが、こいつの秘めている魔力なら、まだまだこんなもんじゃない。
親父と同じ15メートル・・・いや、それ以上になるかもしれない。
強い事は分かっていた。
だが予想を上回るジャミールの魔力を感じ、パトリックの頬を一筋の汗が伝い落ちる。
「いくぜぇッ!」
ジャミール・ディーロが腕をふるうと、荒ぶる炎の竜はその大きな顎を開けて、大地を焦がしながら襲いかかった!
「ハァァァァァー--ー---ッ!」
魔法兵達の気の入った声が、吹雪の中響き渡る。
カエストゥスの魔法兵が最初にとった行動は迎撃だった。
ジャミールの放った灼炎竜に対して、竜氷縛をぶつけて相殺する。炎に対しての氷は至極当然と言えた。
ジャミールに一対一では勝てない。彼らはそれも分かっていた。
上級魔法の竜氷縛で、中級魔法の双炎砲と互角。
そしてジャミールから感じる桁違いの魔力に、一人で勝てると思えるほど、自惚(うぬぼ)れている者はいない。だからこそ、数人がかりで一斉に竜氷縛を撃ったのだ。
「オラァァァー---ーッ!」
ぶつかり合う炎の竜と氷の竜!一体の灼炎竜に対して竜氷縛は5体。これでやっと互角だった。
「ぐっ!ぬぐぅっ!」
「オラオラ!どうした!?やっぱりそんなもんか?それじゃ俺は止められねぇんだよぉッ!」
互角だったが、苦しそうな表情のカエストゥスの魔法兵達とは対照的に、嘲笑を浮かべるジャミールには大きな余裕があった。
「オラァァァー----ッ!」
ジャミールがもう一度、今度は押し出すように腕をふるうと、その手から伸びる炎の竜が一段大きさを増した!
「なにっ!?」
「そ、そんな、これほどなのか!?」
炎と氷、相反する二つの力のぶつかり合いは、大きさを増したジャミールの灼炎竜が、あっさりと竜氷縛を打ち破った。
「う、うわぁぁぁぁぁーーーーーっ!」
しかし、そのまま一直線に突き進み、カエストゥスの魔法兵達を呑み込もうとしたその瞬間、青く輝く結界がジャミールの灼炎竜を食い止め、カエストゥスの魔法兵達を救っていた。
「くっ!こ、これほどとは・・・!」
パトリックの天衣結界である。通常の結界では中級魔法さえくいとめられない。
身をもってそれを知ったパトリックは、この灼炎竜に最高峰の結界を持って挑んだ。
「へッ!天衣結界か!?よく止めたなぁ!だが、いつまでもつかな!?」
ジャミールはまだ全力を出していない。
この灼炎炎も少し力を入れたが、まだ10メートルに満たない大きさである。
もう一押しすれば、パトリックの天衣結界さえも破ってしまうだろう。
「ぐ・・・つ、強い・・・」
猛吹雪にさらされているが、パトリックは全身に汗をかく程の劣勢に立たされていた。
歯を食いしばって耐えているが、この天衣結界も長くは持たない事は分かる。
守勢に回っていては確実に負ける。
「はぁっ・・・はぁっ・・・パ、パトリック団長、申し訳ありません、我々が不甲斐ないばかりに・・・」
パトリックの後ろでは、今の激突で押し負けた魔法兵達が、膝を着いて悔しさに歯噛みをしていた。五人がかりで撃ち負けたのだ。そのプライドはズタズタであろう。
だがそれ以上に、この戦いの場で役に立てない事が、情けなくてしかたないのだ。
「お前達・・・っ!」
叱責しようとして口をつぐんだ。
いつものパトリックなら、立ち上がれ!と厳しい言葉を発していた。
だが口を開いたその時、ここからの逆転の手がある事に気が付いた。
「だ、団長・・・どうかしたんですか?」
急に真顔になり、なにか思いついたように、ハッとした顔になったパトリック。
そんなパトリックを見て、魔法兵の一人が表情を伺うように声をかけた。
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