異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
871 / 1,560

【870 カエストゥス 対 帝国 ④パトリックの戦い】

しおりを挟む
「でかい!」

ジャミールの放った双炎砲。それは結界を覆いつくす程に大きな炎だった。そしてその圧力はパトリックの結界を一気に軋ませヒビを入れた。

パトリックは全力で魔力を発して結界を維持している。魔法兵団団長として認められ、ブレンダンに師事しているパトリックの魔力は、王宮仕えの魔法兵と比べても、頭一つも二つも抜き出ている。だがそのパトリックを相手にしても、ジャミールの攻撃力が一枚上をいっていた。

「オラオラ!どうした!?そんなもんかよ?だったらすぐに消してやるぜぇッ!」

自分の発した双炎砲がパトリックの結界を押している。
炎を通じて感じる手ごたえに、ジャミールは己の優位を確信して笑い声を上げた。

一見慢心にも見える不遜な態度だが、以前ジョルジュとも互角の戦いを繰り広げ、今もパトリックを圧倒しているという、確かな実力に裏打ちされたものだった。



「ぐっ!」

押し寄せる炎の圧力は凄まじかった。結界のヒビも大きく広がり、いよいよ限界が近づいてきた。
もう持たない・・・そう思った時、パトリックの背後から突如氷の竜が飛び出し、目の前の炎に喰らいついた!

「これは!?」

氷の上級魔法 竜氷縛

巨大な氷の竜は大きく顎を開き、ジャミールの双炎砲に横からぶつかるように食らいつくと、爆音を立てて炎と共に消滅してしまった。

「パトリック団長!援護します!」

その声に首を後ろに向ける。カエストゥス魔法兵が、数人走り寄って来た。
帝国軍との激しい戦いが繰り広げられている中、彼らはパトリックの窮地を見で、援護射撃に入ってきたのだ!

「団長!ご無事ですか!?」

「はぁ・・・ふぅ・・・お前達、すまない。助かった」

窮地を脱したパトリックは、結界を解除すると額の汗を袖で拭った。

竜氷縛と双炎砲が相殺し蒸発したため、白い蒸気が辺り一面に巻き散らかされたが、吹雪はあっという間に蒸気をかき消し、正面の敵の姿を露(あら)わにした。

「へぇ、俺の双炎砲と相殺か。さすが魔法大国ってだけあるな、ただの兵士でもなかなかの魔力をもってやがる」

「深紅のローブ・・・団長、こいつは帝国の幹部ですね?」

ジャミールの体から発せられている炎が、降りかかる風と雪から身を護っている。
よほど自分に自信があるのか、パトリックと魔法兵達を前にしても、まったく警戒する素振りを見せず、撃って来いとでも言うように両手を広げ、笑いながらゆっくりと歩き近づいて来た。


「気を付けろ・・・竜氷縛で双炎砲と五分だ。こいつの魔力は一枚も二枚も上だ」

パトリック自身、自分の結界で直接受けて分かった。ジャミール・ディーロの魔力は自分よりも上であると。

自分達の団長の硬い声に、魔法兵達も、はい、と緊張を帯びた声で頷いた。
彼らとて鍛えられた兵士である。対峙している敵と己の力の差は、敏感に感じ取っていた。


「・・・ふぅん、こんな戦場とっととフケちまおうかって思ったけど、お前らを始末してからでもいいかな。ジョルジュの野郎が死んでよぉ、親父の仇討ちができなくなったからな。お前らあいつの代わりによぉ、俺の憂さ晴らしにつきあってくれよ?」

首を鳴らし、その黒い眼がギラギラとした狂気を帯びていく。
体から静かに発せられていた炎が、ジャミールの精神に呼応するように強さを増し、そして一気膨れ上がりに天高く立ち昇った。


「・・・でたな、灼炎竜・・・」

それは黒魔法使いの代名詞と言ってもいいだろう。パトリックも訓練で灼炎竜は何度も見た事がある。見慣れていると言ってもいい。だがそれだけに、目の前の浅黒い肌をした男の灼炎竜が、どれほどの強さかを肌で感じ取った。


こいつ・・・!この魔力は予想以上だ・・・・・大きさは現時点で5メートル程度か?
だが、こいつの秘めている魔力なら、まだまだこんなもんじゃない。
親父と同じ15メートル・・・いや、それ以上になるかもしれない。

強い事は分かっていた。
だが予想を上回るジャミールの魔力を感じ、パトリックの頬を一筋の汗が伝い落ちる。


「いくぜぇッ!」

ジャミール・ディーロが腕をふるうと、荒ぶる炎の竜はその大きな顎を開けて、大地を焦がしながら襲いかかった!





「ハァァァァァー--ー---ッ!」

魔法兵達の気の入った声が、吹雪の中響き渡る。

カエストゥスの魔法兵が最初にとった行動は迎撃だった。
ジャミールの放った灼炎竜に対して、竜氷縛をぶつけて相殺する。炎に対しての氷は至極当然と言えた。

ジャミールに一対一では勝てない。彼らはそれも分かっていた。

上級魔法の竜氷縛で、中級魔法の双炎砲と互角。
そしてジャミールから感じる桁違いの魔力に、一人で勝てると思えるほど、自惚(うぬぼ)れている者はいない。だからこそ、数人がかりで一斉に竜氷縛を撃ったのだ。


「オラァァァー---ーッ!」

ぶつかり合う炎の竜と氷の竜!一体の灼炎竜に対して竜氷縛は5体。これでやっと互角だった。

「ぐっ!ぬぐぅっ!」

「オラオラ!どうした!?やっぱりそんなもんか?それじゃ俺は止められねぇんだよぉッ!」

互角だったが、苦しそうな表情のカエストゥスの魔法兵達とは対照的に、嘲笑を浮かべるジャミールには大きな余裕があった。

「オラァァァー----ッ!」

ジャミールがもう一度、今度は押し出すように腕をふるうと、その手から伸びる炎の竜が一段大きさを増した!

「なにっ!?」
「そ、そんな、これほどなのか!?」

炎と氷、相反する二つの力のぶつかり合いは、大きさを増したジャミールの灼炎竜が、あっさりと竜氷縛を打ち破った。

「う、うわぁぁぁぁぁーーーーーっ!」

しかし、そのまま一直線に突き進み、カエストゥスの魔法兵達を呑み込もうとしたその瞬間、青く輝く結界がジャミールの灼炎竜を食い止め、カエストゥスの魔法兵達を救っていた。


「くっ!こ、これほどとは・・・!」

パトリックの天衣結界である。通常の結界では中級魔法さえくいとめられない。
身をもってそれを知ったパトリックは、この灼炎竜に最高峰の結界を持って挑んだ。

「へッ!天衣結界か!?よく止めたなぁ!だが、いつまでもつかな!?」

ジャミールはまだ全力を出していない。
この灼炎炎も少し力を入れたが、まだ10メートルに満たない大きさである。
もう一押しすれば、パトリックの天衣結界さえも破ってしまうだろう。


「ぐ・・・つ、強い・・・」

猛吹雪にさらされているが、パトリックは全身に汗をかく程の劣勢に立たされていた。
歯を食いしばって耐えているが、この天衣結界も長くは持たない事は分かる。
守勢に回っていては確実に負ける。


「はぁっ・・・はぁっ・・・パ、パトリック団長、申し訳ありません、我々が不甲斐ないばかりに・・・」

パトリックの後ろでは、今の激突で押し負けた魔法兵達が、膝を着いて悔しさに歯噛みをしていた。五人がかりで撃ち負けたのだ。そのプライドはズタズタであろう。
だがそれ以上に、この戦いの場で役に立てない事が、情けなくてしかたないのだ。

「お前達・・・っ!」

叱責しようとして口をつぐんだ。
いつものパトリックなら、立ち上がれ!と厳しい言葉を発していた。
だが口を開いたその時、ここからの逆転の手がある事に気が付いた。


「だ、団長・・・どうかしたんですか?」

急に真顔になり、なにか思いついたように、ハッとした顔になったパトリック。
そんなパトリックを見て、魔法兵の一人が表情を伺うように声をかけた。

「・・・あるぞ。まだできる事が・・・逆転がある。お前達に、俺に命を預けられるか?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

処理中です...