異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
877 / 1,560

【876 カエストゥス 対 帝国 ⑩ 受け取った想い】

しおりを挟む
「・・・パトリックさんまで・・・」


絞り出した声には、悲痛な思いが滲んでいた。
目を開けていられずきつく閉じた。
唇を噛みしめて、拳を強く握り締める。込み上げてくるものを無理矢理押さえ込んだ。

一番の友に続いて、兄のような存在だったパトリックさんまで・・・・・

立て続けに大切な人が命を落とした。



・・・・・泣くな。

自分に言い聞かせた。

分かっていた事だろう?これは戦争だ。いつ誰が死んでもおかしくない。
自分の周りだけ無事なんて、そんな都合の良い事はありえるわけがないんだ。

俺だってそうだ。五分後に生きている保証なんてない。


「・・・ヤヨイさん」

さっき聞こえた声の主を思い出した。

「あれは確かに、ヤヨイさんだった・・・」

あの声を忘れるはずがない。
こっちに来てと、ヤヨイさんが俺を導いたんだ。

きっと俺を・・・パトリックさんに会わせたかったんだ。
遺体をこのままにしては、おけなかったという事だろう。

その気持ちは分かる。雪が覆い隠してくれるといっても、やはりきちんと埋めたいはずだ。

そう思い、地面に爆裂弾を撃って穴を空けようとした時、俺はパトリックさんの右手が固く握り締められている事に気付き、手を止めた。

「ん・・・なにか握ってるのか?」

腰を下ろし、パトリックさんの右手を掴むが、よほど力を込めていたのか簡単には開けられなかった。
指を一本一本掴んで開けて、ようやく手を開かせると、そこには指輪があった。


「・・・指輪?これって・・・パトリックさんの結婚指輪じゃないのか?」


なぜ死の間際にこれを握っていたんだ?
普通は左手の薬指にずっとはめている物じゃないのか?
実際パトリックさんは、いつもそこにはめていたはずだ。

「・・・なにか、あるのか・・・?」

なにか理由があって握っていた?そう思って、俺は指輪にそっと触れてみた。

「なッ!?・・・こ、これは!?」

触れた瞬間、指輪は強く輝き出し、俺の中にパトリックさんの感情が流れ込んできた。

それは祈りと願いだった。

どうかカエストゥスを護ってほしい。
どうか子供達を護ってほしい。

その強い気持ちが押し寄せる波のように、俺の胸の内に流れ込んでくる。

パトリックさんは、平和と子供の事を祈り亡くなったんだ。

ヤヨイさんを亡くして一人親になったパトリックさんは、俺には想像もできないくらい、子供達への強い想いがあったのだろう。

指輪から流れて来る想いに、俺は胸が痛くなった。

テリー君とアンナちゃん・・・あの二人はこれから、祖母のモニカさんに育てられていくのだろう。

前に会った時は、うちのティナと一緒に、三人で仲良く遊んでいたのに・・・・・
テリー君はティナの事を気にいっていたようだから、将来二人が結婚するかもしれないねって、そんな話しをした事もあったな・・・・・



「・・・・・パトリックさん・・・」



パトリックさんの手から、指輪を取って握り締めた。

これはパトリックさんの形見だ。
生きて帰り、俺がモニカさんに渡します。

テリー君とアンナちゃんの事も心配しないでください。
モニカさんがいるから大丈夫でしょうけど、俺もメアリーも、二人の事は自分の子供のように可愛く思ってるんです。だから俺達も協力して、立派に育ててみせますから。


形見の指輪に誓うと、指輪が青く光り輝いた。
まるでパトリックさんの魂が応えてくれたように。



「・・・さぁ、いくか」



指輪をローブのポケットにしまうと、腰を上げて俺は城へと顔を向けた。

城壁を抜けると石造りの階段があり、その先の王宮内へと続く門の前には、あの火の精霊使いが立っていた。
顔は分からないが、強い視線を感じる。あいつがこっちを見ている事だけは分かる。



「ふぅ・・・・・ハァァァァァァー----ッ!」


一つ息を吐くと、俺は魔力を風に変えて放出した。
足元から発生した風は周囲に積もった雪を吹き飛ばし、叩きつけて来る吹雪も寄せ付けない。

チラリと辺りに目を向けるが、さっきの俺の魔力を見たせいか、帝国兵達は俺に攻撃をしかけられず、遠巻きに武器を構えて様子を見ているようだった。数十人はいるだろう。
しかし、俺と目が合うとジリジリと距離を詰めてきて、飛び掛かるタイミングを狙っていた。


こいつらを倒す事は簡単だが、俺はすでに巨槍を防ぐために風魔法を使い、その後にトルネードバーストも撃っているため、それなりに魔力を消耗している。
魔力回復促進薬も飲んでおいたが、やはり自然回復を早めるだけだから全回復とまではいかない。

あの精霊使いとの戦いを控えて、ここでこれ以上魔力を使うわけにはいかない。
だが囲まれている以上、無視して先に行く事もできない。

やむを得ない、もう一度風魔法で吹き飛ばして・・・そう考えた時だった。



「ラァァァァー---ーッ!」
「ぐぁッ!」

突然の叫び声、そして数人の敵が倒れて囲みに穴が開くと、黒いマントを風になびかせながら、大剣を持った金髪の女剣士が包囲網を抜けて駆け込んできた。


「ペトラ!」

「ウィッカー様、ここは私に任せて先へ行ってください!」


剣士隊隊長ペトラ・ディサイアが、大剣を構えて帝国兵達の前に立った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

処理中です...