異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
896 / 1,560

【895 カエストゥス 対 帝国 ㉙ 兄弟の絆】

しおりを挟む
「マルコ、そろそろ休め」

弟であり、現国王のマルコを一瞥した。
カエストゥス軍が帝国へ出立して以来、マルコはずっと気を張っている。
食事も満足にとらず、まるで何かに取り憑かれているように、執務に没頭していた。

「・・・兄上、これで良かったのでしょうか・・・・・」

マルコは書類に走らせていたペンを置くと、机の上で拳を握り、俯いたまま静かに言葉を口にした。

目鼻立ちは俺に似て少しキツ目の印象があるが、ふわりとした柔らかそうな金色の髪、細身の体付きはまるで女のような雰囲気だ。一見するとマルコは、荒事には向いていないように見える。

だが王位継承の儀で、父である国王を殺害した犯人を突き止めた時の堂々としたたたずまいは、一国の王たる風格が垣間見えた。

今はまだ即位したばかりで足りないところはある。
だがロペスが脇を支えて育ててやれば、マルコはきっと名君となるだろう。

俺の役目は、全ての悪意からマルコを護る事だ。


「・・・どういう意味だ?」

「・・・帝国との戦争で、10万もの兵を出しました。出立してからの日数を数えれば、もう帝国に入っている頃でしょう。いったいどれだけの命が失われるか・・・そう考えると、戦争を決断した私の判断は間違っていたのではないか・・・・・そう考えてしまうのです」


なるほど・・・思い詰めている原因はそれか・・・・・


「お前らしいな、マルコ・・・」

優しいお前らしいよ。マルコ、お前はそのままでいい。その心を忘れないでくれ。


顔を後ろに向けると、窓の外の白い雪景色が目に映る。豪雪地帯のカエストゥスらしく、辺り一面が白く染まっていた。

帝国には雪は降らないと聞いた事がある。
火の精霊の加護を受けている事が理由のようだが、毎年大雪に見舞われるカエストゥスとは正反対だ。

「兄上・・・教えてください。私は正しかったのでしょうか?帝国の軍門に下るわけにはいきません。けれど、兵に血を流させる事が正しいとも思えないのです。もっと他にやり方があったのでは・・・」

「マルコ、何が正しいか間違っているか、そんな事は考えなくていい」

「え・・・」

マルコはそこで初めて顔を上げると、少しだけ驚いたように目を開いて俺を見た。
目を合わせてその視線を受け止める。

マルコは真面目で純粋だ。責任感も強い。だからこそ国王としての決断は下した。
しかし、それ以上に優しいんだ。だからこそ、兵を数ではなく一人の人間として見てしまう。
それは正しい。そしてそうあるべきだ。ただの駒、そして数字でしか見れなくなったら、それは人の上に立っていい人間ではない。


「マルコ・・・お前の決断はが正しかったかどうかは、後の世の人間が判断するだろう。この戦争が終わった後、国がどういう形で残るか?それを見た人達が決めるものだ。歴史とはそういうものだ」

けどな、マルコ・・・・・

「兄上・・・」

俺はマルコの肩に手を置いた。マルコに必要なものは自信だ。
そしてそれを持たせてやれるのは、俺だけだ。


「マルコ、後の世の人間が何を言おうと、どう評価しようと、侵略戦争をしかけた帝国が悪だ。それだけは間違っていない。お前は王として国民を護るための決断をした。兵達もお前の決断を支持するからこそ戦場に赴いたのだ。あの時の兵達の顔を覚えているだろ?士気も高く、誰もが国を護るという気概を見せていた。お前は正しい。少なくとも俺達はお前を信じている」

真っすぐにマルコの目を見て話した。


「あ、あに、うえ・・・・・わ、私は・・・・・」


お前の重圧は俺が思っている以上だろう。
お前の判断が兵を、国民の命を左右するんだ。これでいいのか?間違っていないのか?
決めては悩み、そして後悔する事も多いだろ。それはこれから先ずっと続いていく。

だから・・・

「・・・泣くのは俺の前だけにしろ。お前は国王なんだ。弱みは見せるな」

「・・・は、はい・・・あに、うえ、ありがとう、ござい、ます・・・・・」


だから兄である俺が、お前の逃げ場になってやろう。

お前が辛い時、苦しい時は、その重荷を俺も背負おう。


「礼を言う事ではないだろ、俺達は兄弟なんだ」

声を押し殺し、肩を震わせて涙するマルコの頭を、俺はそっと撫でた。







「フゥ・・・ハァ・・・・・」

静かに息を吐き、精神を落ち着かせる。

「ハァァァァァァァーーーーーーーッツ!」

両足を肩の幅より広げ、拳を握り、魔力を全身の隅々まで行き渡らせる。
俺の体から放出される魔力の密度が増す。
鋭く研ぎ澄まされた魔力が壁に、そして天井を支える柱に亀裂を走らせる。


「ほぉ・・・やるではないか。その体でこれ程の魔力を出せるとは、大陸一の黒魔法使いと呼ばれるだけはある」

自身の体をビシビシと打ち付けてくる魔力の波動さえ、皇帝はまったく意に介していない。
いかにウィッカーが消耗していても、その魔力は絶大。まともに浴びて平然としている事などできるものではない。

涼しい顔でウィッカーの魔力を受け流している皇帝。

それはつまり・・・


「だが、余を相手にするには少しばかり、足りないのではないかな?」


両者の力量の差が、それ程あるという事だった。


「受けてみろ!」

ウィッカーの右手から、破壊の魔力を込めた弾が撃ち放たれた!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...