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【922 限界を超えて】
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な・・・なぜ、だ!?
時を、止めたの、だぞ!?
それなのに・・・なぜ・・・なぜこいつは、動ける!?
「ウ、ウィッカァァァ・・・き、貴様、いったい・・・」
深く腹にめり込んだ拳を押さえながら、皇帝は歯を食いしばって顔を向けた。
「どうやってぐぶぁッツ!」
左の拳が皇帝の右頬を撃ち抜いた。
まともに食らった皇帝は受け身すらとれず、地面に背中を強かに打ち付ける。
そのまま二度三度体を転がされて、やっとその動きを止めた。
「ぐ、うぅ・・・がはっ!」
よろよろと体を起こす。口内に感じる違和感に口を開くと、血と共に折れた歯が吐き出される。
あ、ありえん!
余の砂時計は間違いなく発動した!止まった時の中を動けるのは余だけだ!
これまで例外はなかったんだ!なのになぜこいつは動けるんだ!?
皇帝は困惑していた。
この戦いの中で、すでに何度も時を止めている。
そして一つの例外もなく、自分意外の全てが動きを止めていた。
当然ウィッカーの時も止まっていた。さっきまでは確実に止まっていたのだ。
それなのに、なぜここにきて突然動けるようになったのか?
「皇帝、覚悟はできてるか?」
前方からかけられたその声に、ビクリと体が反応した。
膝を着いて顔を上げると、静かだが、燃えるような怒りをその目に宿した男、ウィッカーが、一歩一歩、自分に向かって足を進めてくる。
その歩みが自分への死のカウントダウンのように感じられ、皇帝は生まれて初めて焦りと恐怖を肌で感じた。
プレッシャーによる精神性の発汗。頼みの綱の砂時計が通じず、打つ手を無くした事への不安は体を震わせた。
「ぐッ!な、なぜだ!?」
殴り飛ばされても離さなかった、左手の砂時計に目を落とす。
間違いない。上から下へと砂は流れ落ちている。今も時は止まっている。
それなのになぜ動ける!?
考えられるのは、ウィッカーの発している光か?
この未知の魔力が、砂時計の力をも無効化しているのだろうか?
考え難いが、他に思いつくものは無かった。
さっきは止められた。しかし今突然止められなくなった事を考えると、さっきと今での違いは、ウィッカーが光の魔力を使い出した事だけだったからだ。
「・・・それか?その砂時計が皇帝、お前の魔道具なんだろ?」
目の前に立ったウィッカーは、皇帝の左手に目を向けている。
探るというよりは、断定した物言いだった。
その口ぶりから、砂時計の能力にもおそらく勘づいていると皇帝は判断した。
「・・・その通りだ。貴様、砂時計の能力にもあたりを付けているな?」
「時間を止めるんだろ?全く気配を感じさせず、あれだけ動けるものではない。何度も体験すれば分かる」
見下ろすウィッカーと見上げる皇帝、つい先刻までは皇帝がウィッカーをはるかに凌駕していたが、今やその図式は完全に入れ替わっていた。
光を纏ったウィッカーから感じられる魔力は、今や完全に皇帝を上回っている。
皇帝を絶対者として仕立て上げていた、無敵の砂時計でさえ通じない。
もはや皇帝は完全に追い詰められていた。
「・・・時間切れか」
その時、砂時計の砂が落ちきり効果時間が切れた。
吹雪は再び猛威を振るい、黒煙は消える事無く空を焦がす。千切れた雲が風に流され、炎が大地を焼き払う。
時が動き出した。
「・・・なるほど。時を止められようが、再び動き出そうが、、体にかかる影響はないらしいな」
ウィッカーは手の平を見つめ、拳を握ってみる。
時を止められた時も確認はしたが、止まっていた時が動き出しても、体の感覚の狂いや、違和感というものは感じなかった。
「・・・この皇帝を前にして、余裕のつもりか?」
皇帝である自分を前にして、他に気を逸らすという行為は、屈辱以外のなにものでもなかった。
やろうと思えば今この瞬間にでも叩き伏せる事ができる。
だがウィッカーはそれをせず、体の状態の確認を優先した。これまで自分に挑んできた者は、わずかな隙を探し、必死に挑んで来たのだ。それがこのありさまか?
・・・・・なめるなよ!
プライドが許さなかった。皇帝とは大陸を統べる者。世界の支配者なのだ。
それがこんなに軽く見られる事など、あってはならない!
皇帝は立ち上がると、両の拳を握り締めた。
そして腹の奥底から声を絞り出した!
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーッツ!」
全身からほとばしる強烈な魔力!これまでで最大のとてつもない魔力が皇帝から放出される!
「・・・さすがだな、皇帝」
自身の纏う光は皇帝を大きく上回っている。たった今までそう確信していた。
だが、皇帝はやはり皇帝だった。伊達に帝国の頂点に立ってはいない。
最後の最後で、皇帝は己の限界を超えてきた。
「だがな、勝つのは俺だッ!」
ウィッカーもまた魔力を全開し、光をより強く輝かせた。
皇帝が限界を超えてくるのならば、俺はそれをさらに超えるだけだ!
両手に魔力を集中させ、皇帝に向かって構える!
「ウィッカァァァーーーーッ!決着をつけてやるッツ!」
己の歪んだ欲望を現したかのように、黒く凶悪な魔力を放出させて、皇帝はウィッカーへ魔力を撃ち放った!
時を、止めたの、だぞ!?
それなのに・・・なぜ・・・なぜこいつは、動ける!?
「ウ、ウィッカァァァ・・・き、貴様、いったい・・・」
深く腹にめり込んだ拳を押さえながら、皇帝は歯を食いしばって顔を向けた。
「どうやってぐぶぁッツ!」
左の拳が皇帝の右頬を撃ち抜いた。
まともに食らった皇帝は受け身すらとれず、地面に背中を強かに打ち付ける。
そのまま二度三度体を転がされて、やっとその動きを止めた。
「ぐ、うぅ・・・がはっ!」
よろよろと体を起こす。口内に感じる違和感に口を開くと、血と共に折れた歯が吐き出される。
あ、ありえん!
余の砂時計は間違いなく発動した!止まった時の中を動けるのは余だけだ!
これまで例外はなかったんだ!なのになぜこいつは動けるんだ!?
皇帝は困惑していた。
この戦いの中で、すでに何度も時を止めている。
そして一つの例外もなく、自分意外の全てが動きを止めていた。
当然ウィッカーの時も止まっていた。さっきまでは確実に止まっていたのだ。
それなのに、なぜここにきて突然動けるようになったのか?
「皇帝、覚悟はできてるか?」
前方からかけられたその声に、ビクリと体が反応した。
膝を着いて顔を上げると、静かだが、燃えるような怒りをその目に宿した男、ウィッカーが、一歩一歩、自分に向かって足を進めてくる。
その歩みが自分への死のカウントダウンのように感じられ、皇帝は生まれて初めて焦りと恐怖を肌で感じた。
プレッシャーによる精神性の発汗。頼みの綱の砂時計が通じず、打つ手を無くした事への不安は体を震わせた。
「ぐッ!な、なぜだ!?」
殴り飛ばされても離さなかった、左手の砂時計に目を落とす。
間違いない。上から下へと砂は流れ落ちている。今も時は止まっている。
それなのになぜ動ける!?
考えられるのは、ウィッカーの発している光か?
この未知の魔力が、砂時計の力をも無効化しているのだろうか?
考え難いが、他に思いつくものは無かった。
さっきは止められた。しかし今突然止められなくなった事を考えると、さっきと今での違いは、ウィッカーが光の魔力を使い出した事だけだったからだ。
「・・・それか?その砂時計が皇帝、お前の魔道具なんだろ?」
目の前に立ったウィッカーは、皇帝の左手に目を向けている。
探るというよりは、断定した物言いだった。
その口ぶりから、砂時計の能力にもおそらく勘づいていると皇帝は判断した。
「・・・その通りだ。貴様、砂時計の能力にもあたりを付けているな?」
「時間を止めるんだろ?全く気配を感じさせず、あれだけ動けるものではない。何度も体験すれば分かる」
見下ろすウィッカーと見上げる皇帝、つい先刻までは皇帝がウィッカーをはるかに凌駕していたが、今やその図式は完全に入れ替わっていた。
光を纏ったウィッカーから感じられる魔力は、今や完全に皇帝を上回っている。
皇帝を絶対者として仕立て上げていた、無敵の砂時計でさえ通じない。
もはや皇帝は完全に追い詰められていた。
「・・・時間切れか」
その時、砂時計の砂が落ちきり効果時間が切れた。
吹雪は再び猛威を振るい、黒煙は消える事無く空を焦がす。千切れた雲が風に流され、炎が大地を焼き払う。
時が動き出した。
「・・・なるほど。時を止められようが、再び動き出そうが、、体にかかる影響はないらしいな」
ウィッカーは手の平を見つめ、拳を握ってみる。
時を止められた時も確認はしたが、止まっていた時が動き出しても、体の感覚の狂いや、違和感というものは感じなかった。
「・・・この皇帝を前にして、余裕のつもりか?」
皇帝である自分を前にして、他に気を逸らすという行為は、屈辱以外のなにものでもなかった。
やろうと思えば今この瞬間にでも叩き伏せる事ができる。
だがウィッカーはそれをせず、体の状態の確認を優先した。これまで自分に挑んできた者は、わずかな隙を探し、必死に挑んで来たのだ。それがこのありさまか?
・・・・・なめるなよ!
プライドが許さなかった。皇帝とは大陸を統べる者。世界の支配者なのだ。
それがこんなに軽く見られる事など、あってはならない!
皇帝は立ち上がると、両の拳を握り締めた。
そして腹の奥底から声を絞り出した!
「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーッツ!」
全身からほとばしる強烈な魔力!これまでで最大のとてつもない魔力が皇帝から放出される!
「・・・さすがだな、皇帝」
自身の纏う光は皇帝を大きく上回っている。たった今までそう確信していた。
だが、皇帝はやはり皇帝だった。伊達に帝国の頂点に立ってはいない。
最後の最後で、皇帝は己の限界を超えてきた。
「だがな、勝つのは俺だッ!」
ウィッカーもまた魔力を全開し、光をより強く輝かせた。
皇帝が限界を超えてくるのならば、俺はそれをさらに超えるだけだ!
両手に魔力を集中させ、皇帝に向かって構える!
「ウィッカァァァーーーーッ!決着をつけてやるッツ!」
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