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【946 開戦の花火】
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「・・・とうとう、ここまで来たか」
エンスウィル城の前に立つカエストゥス軍の前に、深紅のローブを身に纏う金色の髪をした男、ブロートン帝国皇帝ローランド・ライアンを先頭にした帝国軍が現れた。
その数は、一目で自軍を大きく上回っている事が分かる。
しかし幹部のみが着る事を許される深紅の装備は、今や皇帝の他には数える程度だった。
師団長が壊滅した現在、副官からせいぜいその下の三番手が数人である。
主力を欠いた帝国だが、それはカエストゥスも同じだった。
ウィッカー達がいない今、まがりなりにも皇帝と戦えるのはロペスしかいない。
しかし皇帝の魔力は絶大である。
総合力でも、個人の戦闘力でも、帝国に勝つ事は非常に困難な見通しだった。
カエストゥス軍と帝国軍との距離は、互いの姿が小さく視認できる程度の開きがあるが、黒魔法使いの射程圏には入っている。城の前に並び立つカエストゥス軍を前にして、帝国は足を止めたが、両軍はすでに攻撃が当たる距離だった。
「ロペス様、皆覚悟はできております。いつでも号令を出してください」
隣に立つ鉄の鎧を身に纏った部隊長の男が、強い決意を秘めた目で私に言葉をかけてきた。
「うむ・・・そうだな」
いよいよ後が無くなったな・・・・・
ウィッカー達ならば、タジーム様がいなくとも帝国を落とせると信じていた。
だが帝国は、私の想定を上回る戦力を有していたという事なのだろう。
敵がここまで攻めて来た以上、私だけがいつまでも戦場に立たないわけにはいかんだろう。
なにより、私以上に指揮をとれる者もいない。
マルコ様の傍にはタジーム様がいる。あのお方は強い、そしてマルコ様を想う気持ちは本物だ。
私になにかあったとしても大丈夫だろう。
覚悟を決めて、隣に立つ部隊長の男に顔を向ける。
「皇帝の狙いはカエストゥスの領土だが、今回の戦争で被った被害の穴埋めのため、できれば城は破壊したくないはずだ。宝物庫は魅力的だろうからな。上級魔法の光源爆裂弾はおそらく使ってこない。だが灼炎竜や竜氷縛、トルネードバーストは追い詰められれば分からん。青魔法使い達は結界の準備を怠るな。前線は剣士隊、その後ろを黒魔法使いで援護して戦う」
皇帝はすでに光源爆裂弾を撃ち放っている。
だがそれは城とは反対方向であり、町の入り口付近であった。無論被害は大きいが、城に向けて撃つのとでは比べ物にならない。
カエストゥスを帝国のものにと考えている以上、できるだけ損害を出さずに押さえたいだろうという皇帝の考えを計算した上での指示だ。
「承知しました!」
これまで何度も確認した指示をあらためて口にすると、部隊長の男は大きく返事をして、並び立つ各部隊に指示を飛ばしていった。
「・・・さて、いつまでも睨めっこというわけにもいかんしな。そろそろいくか」
誰に言うでもなく、一人呟いた。
右手の中指を鼻筋に当てながら眼鏡の位置を直し、半分以上白くなった頭髪を後ろに撫でつける。
大臣に就任して以来初めて、緑色のパイピングをあしらった黒魔法使いのローブに袖を通した。
久しぶりの感覚だった。これを着ると、かつて魔法兵団でロビンやビボルと切磋琢磨した日々を思い出す。
セインソルボ山で散った旧友の顔が脳裏に浮かぶ。こんな状況なのに、なぜか不思議と頬が緩んだ。
いよいよ私の番かもな・・・・・
黒魔法使いである私の魔力は、魔法兵団団長だったロビンと同等程度だ。
師団長レベルならともかく、果たして皇帝に通用するだろうか?
いや、ウィッカー達を退けてここまで来たのだ、私の魔法など通用するとは思えない。
だが私にも意地というものがある。それに部下の命を預かる以上、勝算なく戦いに挑む程愚かではない。
私は振り返り、この場に立った兵士達を見渡した。
おそらく大半の者が生き残れないだろう。彼らもそれは分かっている。
だが、死を間近にしてこの面構えはどうだ?誰一人として怯えが見えない。
それどころか、闘志を漲らせた良い眼をしている。
・・・・・フッ、そんな顔を見せられたら、私・・・いや、俺も昔を思い出すじゃねぇか。
ロビン、ビボル、俺も昔に戻ろうと思う。お前達と暴れまわってたあの頃に!
「勇敢なるカエストゥスの兵士達よ!ここが最終決戦の場だ!帝国にカエストゥスの誇りを見せてろうじゃねぇか!」
拳を掲げて声を張り上げた!普段と違う俺の様子に、兵達は驚いたように一瞬だけ目を開いたが、すぐに空気を震わせる程の大きな響きが返ってきた。
「ヘッ、いい気合だぜ、お前ら!」
腹に響く兵達の大声を受け止めて、俺は自然と口の端を持ち上げて笑った。
帝国軍へ向き直り、右手に魔力を集中させて破壊の力へと変換する!
「よぉーしッ!開戦の花火は俺が上げてやる!」
声を張り上げ、右手に漲らせた光輝く破壊の魔力を、帝国軍へと撃ち放った!
爆裂空破弾!
ロビン、ビボル、見てろよ!俺がお前達の仇を討ってやる!
エンスウィル城の前に立つカエストゥス軍の前に、深紅のローブを身に纏う金色の髪をした男、ブロートン帝国皇帝ローランド・ライアンを先頭にした帝国軍が現れた。
その数は、一目で自軍を大きく上回っている事が分かる。
しかし幹部のみが着る事を許される深紅の装備は、今や皇帝の他には数える程度だった。
師団長が壊滅した現在、副官からせいぜいその下の三番手が数人である。
主力を欠いた帝国だが、それはカエストゥスも同じだった。
ウィッカー達がいない今、まがりなりにも皇帝と戦えるのはロペスしかいない。
しかし皇帝の魔力は絶大である。
総合力でも、個人の戦闘力でも、帝国に勝つ事は非常に困難な見通しだった。
カエストゥス軍と帝国軍との距離は、互いの姿が小さく視認できる程度の開きがあるが、黒魔法使いの射程圏には入っている。城の前に並び立つカエストゥス軍を前にして、帝国は足を止めたが、両軍はすでに攻撃が当たる距離だった。
「ロペス様、皆覚悟はできております。いつでも号令を出してください」
隣に立つ鉄の鎧を身に纏った部隊長の男が、強い決意を秘めた目で私に言葉をかけてきた。
「うむ・・・そうだな」
いよいよ後が無くなったな・・・・・
ウィッカー達ならば、タジーム様がいなくとも帝国を落とせると信じていた。
だが帝国は、私の想定を上回る戦力を有していたという事なのだろう。
敵がここまで攻めて来た以上、私だけがいつまでも戦場に立たないわけにはいかんだろう。
なにより、私以上に指揮をとれる者もいない。
マルコ様の傍にはタジーム様がいる。あのお方は強い、そしてマルコ様を想う気持ちは本物だ。
私になにかあったとしても大丈夫だろう。
覚悟を決めて、隣に立つ部隊長の男に顔を向ける。
「皇帝の狙いはカエストゥスの領土だが、今回の戦争で被った被害の穴埋めのため、できれば城は破壊したくないはずだ。宝物庫は魅力的だろうからな。上級魔法の光源爆裂弾はおそらく使ってこない。だが灼炎竜や竜氷縛、トルネードバーストは追い詰められれば分からん。青魔法使い達は結界の準備を怠るな。前線は剣士隊、その後ろを黒魔法使いで援護して戦う」
皇帝はすでに光源爆裂弾を撃ち放っている。
だがそれは城とは反対方向であり、町の入り口付近であった。無論被害は大きいが、城に向けて撃つのとでは比べ物にならない。
カエストゥスを帝国のものにと考えている以上、できるだけ損害を出さずに押さえたいだろうという皇帝の考えを計算した上での指示だ。
「承知しました!」
これまで何度も確認した指示をあらためて口にすると、部隊長の男は大きく返事をして、並び立つ各部隊に指示を飛ばしていった。
「・・・さて、いつまでも睨めっこというわけにもいかんしな。そろそろいくか」
誰に言うでもなく、一人呟いた。
右手の中指を鼻筋に当てながら眼鏡の位置を直し、半分以上白くなった頭髪を後ろに撫でつける。
大臣に就任して以来初めて、緑色のパイピングをあしらった黒魔法使いのローブに袖を通した。
久しぶりの感覚だった。これを着ると、かつて魔法兵団でロビンやビボルと切磋琢磨した日々を思い出す。
セインソルボ山で散った旧友の顔が脳裏に浮かぶ。こんな状況なのに、なぜか不思議と頬が緩んだ。
いよいよ私の番かもな・・・・・
黒魔法使いである私の魔力は、魔法兵団団長だったロビンと同等程度だ。
師団長レベルならともかく、果たして皇帝に通用するだろうか?
いや、ウィッカー達を退けてここまで来たのだ、私の魔法など通用するとは思えない。
だが私にも意地というものがある。それに部下の命を預かる以上、勝算なく戦いに挑む程愚かではない。
私は振り返り、この場に立った兵士達を見渡した。
おそらく大半の者が生き残れないだろう。彼らもそれは分かっている。
だが、死を間近にしてこの面構えはどうだ?誰一人として怯えが見えない。
それどころか、闘志を漲らせた良い眼をしている。
・・・・・フッ、そんな顔を見せられたら、私・・・いや、俺も昔を思い出すじゃねぇか。
ロビン、ビボル、俺も昔に戻ろうと思う。お前達と暴れまわってたあの頃に!
「勇敢なるカエストゥスの兵士達よ!ここが最終決戦の場だ!帝国にカエストゥスの誇りを見せてろうじゃねぇか!」
拳を掲げて声を張り上げた!普段と違う俺の様子に、兵達は驚いたように一瞬だけ目を開いたが、すぐに空気を震わせる程の大きな響きが返ってきた。
「ヘッ、いい気合だぜ、お前ら!」
腹に響く兵達の大声を受け止めて、俺は自然と口の端を持ち上げて笑った。
帝国軍へ向き直り、右手に魔力を集中させて破壊の力へと変換する!
「よぉーしッ!開戦の花火は俺が上げてやる!」
声を張り上げ、右手に漲らせた光輝く破壊の魔力を、帝国軍へと撃ち放った!
爆裂空破弾!
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