967 / 1,560
【966 必要とされる事】
しおりを挟む
「私はフローラ・ラミレスです。こちらこそよろしくお願いします。あらためて、本当にありがとうございました」
帝国兵に捕まった私を助けてくれたのは、ジョルジュ様のお姉様だった。
深く頭を下げると、シャーロット様は、頭上げて、と笑って声をかけてくれた。
「あ~、フローラちゃん、そんなかしこまんないでよ。ゲスい男がいたから射っただけだしね。それよか、どっか行こうとしてたんじゃないの?」
シャーロット様に言われて思い出した。
「あ、そうだ!お城に行かないないと!すみませんシャーロット様、急いでますので私はこれで!」
「え、城?待って!城はダメだよ」
自分の役目を思い出して、シャーロット様の脇を走り抜けようとすると腕を掴まれた。
「え・・・?」
強い力で掴まれて、何事かと目を丸くすると、シャーロット様は真剣な顔で話し始めた。
「フローラちゃん、今城に行くのは死にに行くようなものだよ。少し前に城の近くを通ったんだけど、大臣のロペスさんが軍を率いて出陣していた。もう帝国とぶつかってる頃だと思う。今言ったら巻き込まれる」
「で、でも私は・・・私のヒールだって、少しは役に立つと思うから・・・」
みんな死んだ。みんな逃げずに戦った。だから私もこの魔力の限り戦わないと・・・・・
俯く私の肩に手が置かれる。顔を上げるとシャーロット様と目が合った。
シャーロット様のアイスブルーの瞳は、私の心の中まで見通すように、深く澄んだ色をしていた。
「・・・何か思い詰めてるね?あのさ、フローラちゃんの事情は知らないけど、自分から死にに行くのはダメだよ。見過ごせない。誰かを助けたいって気持ちは立派だし応援したいけど、それは自分が生き残ってからの話しだよ?フローラちゃんが死んじゃったら、これから先助けられる人も助けられなくなる。まずは自分を大事にして?いいね?」
「・・・・・」
反論なんてできるはずもない。シャーロット様の言う通りだ・・・・・でも、理屈じゃない。
納得したいけれど気持ちがついていけなくて、私はまた下を向いてしまった。
「あのさ、私・・・ッ!?」
なにかを言いかけて、シャーロット様は突然私に飛びついた。
「きゃぁッ!?」
肩を掴まれ地面に押し倒されたその時、耳をつんざく爆発音が鳴り響いた。同時に大きな地揺れが起きて、突風が吹き荒れた。とても目を開けていられなかった。
そしてそれは一発で終わらず、連続した爆発とそれに伴う大揺れ、そしてその衝撃が起こす大風が私達の体を強く打ちつけた。
な、何!?なんなの!?
お城の方からだ、シャーロット様の言う通り、きっとロペス様が皇帝とぶつかったんだ。
こんな大爆発、多分上級魔法だ。
私はシャーロット様に頭を抱えられ、ただ風が治まるのを待つしかなかった・・・・・
「・・・あ、あのシャーロット様、ありがとうございます。もう大丈夫では?」
「顔を上げないで!もう一発来る!」
ある程度風が治まって、私が体を起こそうとすると、シャーロット様が鋭く言葉を発して私を止めた。
その直後、わずかに顔を上げていた私の目に映ったのは、今までで一番の大爆発だった。
凄まじい爆風が襲ってきた。城まではまだいくらか距離があったけれど、シャーロット様が押さえてくれてなかったら、私なんて一瞬で吹き飛ばされていただろう。
目を閉じて歯を食いしばり体を低くして、必死に地面にしがみつくだけで精一杯だった。
しばらくそうして堪えて、やっと爆風が治まってきた時に目を開けると、エンスウィル城があった場所には巨大なキノコ雲が立ち昇り、カエストゥスの空を灰色に染めていた。
この時の私は知る由もなかったのだが、この時まだ城は落ちてはいなかった。
皇帝が城の前に並び立つカエストゥス軍に向かって、光源爆裂弾を撃ち放った事による爆煙が城を隠してしまったのだが、目にした位置の関係で私には、城が跡形もなく吹き飛んでしまったように見えたのだ。
呆然とへたりこんでている私の肩に、シャーロット様が手をかけた。
「・・・フローラちゃん、気をしっかり持って。私の父と母が一般人の救助を手伝っているんだ。一緒に来て」
「・・・・・・・」
すぐには言葉が出てこなかった。
だけど、ゆっくり顔を向けると、シャーロット様は力強い目で私を見つめ、もう一度言葉をかけてくれた。
「行こう。私もできるだけの人を誘導したけれど、あの爆発ではもうここにはいられない。でも最後にあなたと会えて良かった。白魔法使いなんでしょ?力を貸して、あなたが必要なの!」
シャーロット様から差し出された手を見て、なぜか急に、胸が締め付けられるような・・・とても切ないものがこみ上げてきた。
「あれ?フローラちゃん?・・・・・泣いてるの?」
エロール君の願いなら、どんなに辛くても頑張って生きないとって、そう思ってここまで走ってきた。
お城に行って戦っている人達の手当をしなきゃ、もう私にできる事はそれしかないって思ってた。
でもお城が無くなってしまったら、私は何をすればいいんだろう?
生きてる意味があるのかな?
「・・・辛い事がいっぱいあったんだね?・・・おいで」
差し出された手を握ると、シャーロット様は私をそっと引き寄せて、そして抱きしめてくれた。
温かい胸に顔をうずめて、頭を優しく撫でられると、私は涙が止まらなくなった。
それから私が泣き止むまで、シャーロット様は何も言わずに頭を撫でてくれた。
こんな私でも、必要だって言ってくれた事が嬉しかった。
お城が無くなっても、まだ私の力が役に立てる場所があるんだ。
エロール君・・・辛いけど、寂しいけど、私・・・頑張ってみるよ。
帝国兵に捕まった私を助けてくれたのは、ジョルジュ様のお姉様だった。
深く頭を下げると、シャーロット様は、頭上げて、と笑って声をかけてくれた。
「あ~、フローラちゃん、そんなかしこまんないでよ。ゲスい男がいたから射っただけだしね。それよか、どっか行こうとしてたんじゃないの?」
シャーロット様に言われて思い出した。
「あ、そうだ!お城に行かないないと!すみませんシャーロット様、急いでますので私はこれで!」
「え、城?待って!城はダメだよ」
自分の役目を思い出して、シャーロット様の脇を走り抜けようとすると腕を掴まれた。
「え・・・?」
強い力で掴まれて、何事かと目を丸くすると、シャーロット様は真剣な顔で話し始めた。
「フローラちゃん、今城に行くのは死にに行くようなものだよ。少し前に城の近くを通ったんだけど、大臣のロペスさんが軍を率いて出陣していた。もう帝国とぶつかってる頃だと思う。今言ったら巻き込まれる」
「で、でも私は・・・私のヒールだって、少しは役に立つと思うから・・・」
みんな死んだ。みんな逃げずに戦った。だから私もこの魔力の限り戦わないと・・・・・
俯く私の肩に手が置かれる。顔を上げるとシャーロット様と目が合った。
シャーロット様のアイスブルーの瞳は、私の心の中まで見通すように、深く澄んだ色をしていた。
「・・・何か思い詰めてるね?あのさ、フローラちゃんの事情は知らないけど、自分から死にに行くのはダメだよ。見過ごせない。誰かを助けたいって気持ちは立派だし応援したいけど、それは自分が生き残ってからの話しだよ?フローラちゃんが死んじゃったら、これから先助けられる人も助けられなくなる。まずは自分を大事にして?いいね?」
「・・・・・」
反論なんてできるはずもない。シャーロット様の言う通りだ・・・・・でも、理屈じゃない。
納得したいけれど気持ちがついていけなくて、私はまた下を向いてしまった。
「あのさ、私・・・ッ!?」
なにかを言いかけて、シャーロット様は突然私に飛びついた。
「きゃぁッ!?」
肩を掴まれ地面に押し倒されたその時、耳をつんざく爆発音が鳴り響いた。同時に大きな地揺れが起きて、突風が吹き荒れた。とても目を開けていられなかった。
そしてそれは一発で終わらず、連続した爆発とそれに伴う大揺れ、そしてその衝撃が起こす大風が私達の体を強く打ちつけた。
な、何!?なんなの!?
お城の方からだ、シャーロット様の言う通り、きっとロペス様が皇帝とぶつかったんだ。
こんな大爆発、多分上級魔法だ。
私はシャーロット様に頭を抱えられ、ただ風が治まるのを待つしかなかった・・・・・
「・・・あ、あのシャーロット様、ありがとうございます。もう大丈夫では?」
「顔を上げないで!もう一発来る!」
ある程度風が治まって、私が体を起こそうとすると、シャーロット様が鋭く言葉を発して私を止めた。
その直後、わずかに顔を上げていた私の目に映ったのは、今までで一番の大爆発だった。
凄まじい爆風が襲ってきた。城まではまだいくらか距離があったけれど、シャーロット様が押さえてくれてなかったら、私なんて一瞬で吹き飛ばされていただろう。
目を閉じて歯を食いしばり体を低くして、必死に地面にしがみつくだけで精一杯だった。
しばらくそうして堪えて、やっと爆風が治まってきた時に目を開けると、エンスウィル城があった場所には巨大なキノコ雲が立ち昇り、カエストゥスの空を灰色に染めていた。
この時の私は知る由もなかったのだが、この時まだ城は落ちてはいなかった。
皇帝が城の前に並び立つカエストゥス軍に向かって、光源爆裂弾を撃ち放った事による爆煙が城を隠してしまったのだが、目にした位置の関係で私には、城が跡形もなく吹き飛んでしまったように見えたのだ。
呆然とへたりこんでている私の肩に、シャーロット様が手をかけた。
「・・・フローラちゃん、気をしっかり持って。私の父と母が一般人の救助を手伝っているんだ。一緒に来て」
「・・・・・・・」
すぐには言葉が出てこなかった。
だけど、ゆっくり顔を向けると、シャーロット様は力強い目で私を見つめ、もう一度言葉をかけてくれた。
「行こう。私もできるだけの人を誘導したけれど、あの爆発ではもうここにはいられない。でも最後にあなたと会えて良かった。白魔法使いなんでしょ?力を貸して、あなたが必要なの!」
シャーロット様から差し出された手を見て、なぜか急に、胸が締め付けられるような・・・とても切ないものがこみ上げてきた。
「あれ?フローラちゃん?・・・・・泣いてるの?」
エロール君の願いなら、どんなに辛くても頑張って生きないとって、そう思ってここまで走ってきた。
お城に行って戦っている人達の手当をしなきゃ、もう私にできる事はそれしかないって思ってた。
でもお城が無くなってしまったら、私は何をすればいいんだろう?
生きてる意味があるのかな?
「・・・辛い事がいっぱいあったんだね?・・・おいで」
差し出された手を握ると、シャーロット様は私をそっと引き寄せて、そして抱きしめてくれた。
温かい胸に顔をうずめて、頭を優しく撫でられると、私は涙が止まらなくなった。
それから私が泣き止むまで、シャーロット様は何も言わずに頭を撫でてくれた。
こんな私でも、必要だって言ってくれた事が嬉しかった。
お城が無くなっても、まだ私の力が役に立てる場所があるんだ。
エロール君・・・辛いけど、寂しいけど、私・・・頑張ってみるよ。
0
あなたにおすすめの小説
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!
Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。
裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、
剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。
与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。
兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。
「ならば、この世界そのものを買い叩く」
漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。
冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力――
すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。
弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。
交渉は戦争、戦争は経営。
数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。
やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、
世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。
これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。
奪うのではない。支配するのでもない。
価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける――
救済か、支配か。正義か、合理か。
その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。
異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。
「この世界には、村があり、町があり、国家がある。
――全部まとめて、俺が買い叩く」
【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜
伽羅
ファンタジー
事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。
しかも王子だって!?
けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。
助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。
以前、投稿していた作品を加筆修正しています。
巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった
ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。
学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。
だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。
暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。
よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!?
……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい!
そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。
赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。
「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」
そう、他人事のように見送った俺だったが……。
直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。
「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」
――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる