異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
980 / 1,560

【979 命を喰らった魔法】

しおりを挟む
王子がマルコ様を殺した・・・・・?

何を言ってるんだ?
王子は自分の気持ちをあまり表に出さないが、誰よりもマルコ様を大切に想っていたじゃないか。
王子とマルコ様には確かな強い絆があった。あんなに信頼し合っていたのに殺すなんてありえない。

「・・・嘘です。馬鹿な事言わないでください。信じられません!」

「嘘じゃない。俺がマルコを殺したんだ・・・・・」

王子は俺から視線を離さず、もう一度自分が殺したと口にした。
淡々とした感情のこもらない声だった。それが俺の背筋をゾッとさせた。

こんな・・・こんな目をしていたか?

王子の瞳からは何の感情も読み取れなかった。
怒りも悲しみもなく、ただ、どこまでも暗く深い闇がそこにある。
俺を見ているようで、その黒い瞳は何も映していないように感じる。

王子の黒い瞳には、ただ空虚な闇が広がっているだけだ。


「・・・お、王子・・・・・」

それ以上言葉が出て来ない。
まるで心を失った抜け殻のようだ。こんな目をした王子に、どんな言葉をかければいいか分からなかった。

一つだけハッキリしているのは、王子は絶望している。
そして失うものが無くなった今、王子は故郷であるカエストゥスを消す事に躊躇がない。

無理もない・・・町は破壊され、民もいなくなり、唯一の肉親であるマルコ様まで失ったんだ。
しかも、どんな状況でかは分からないが、王子は自分で殺したと言っている。

それが本意でなかった事は顔をこの姿を見れば分かる。
だが、どんな理由があったにせよ、王子は自分が殺してしまったという結果に絶望してしまったんだ。

そしてなにもかも全て、諦めてしまった。
だから黒渦を使ったんだ。


俺が言葉を出せずに王子と向き合っていると、ふいに王子が地上に顔を向けた。
ここを見ろ、そう言われた気がして、王子の視線を追って俺も地上に顔を向けると、視線の先には地面に横たわっているマルコ様がいた。


「なッ!?あ、あれは・・・マルコ様・・・」

額から流れている血が、顔の下に赤黒い染みを作っている。
細く柔らかだった金色の髪も、女性と見紛うような美しい顔も、今は泥にまみれてしまっていた。
見開かれたその目には光は無く、何も映していない。

中庭に無残に倒れている姿はあまりに痛々しかった。
俺が王子に向き直ると、すでに俺の方を向いていた王子と目が合った。


「なんで・・・なんでマルコ様が殺されたんですか?」

「ベンの魔道具は幻覚を見せる。俺はそれを知らぬ間に受けていた。そしてベンだと思って撃った相手がマルコだったんだ・・・」

「なっ!?そ、それじゃ・・・王子もあいつに!」

ベン・フィング、あいつの魔道具に俺もメアリーの幻覚を見せられて刺された。
あれは受けた者にしか分からないだろう。幻覚だなんてまったく考えられない。存在感、気配、息遣い、そういったものが全て感じられるんだ。そして愛する人を目にした時、どうして幻だと疑うだろうか?疑うはずがない。疑う理由がない。
それが苦しくも辛い戦場であるならば、その存在にすがりたくなっても、しかたないのではないだろうか。

俺はそれで隙ができてしまったから、言い訳にしかならないが、まさか王子にまでマルコ様の幻覚を見せて、そんな卑劣な真似をしていたなんて・・・外道が!

正直、幻覚がこれほど恐ろしい魔道具だとは思わなかった。
だが、それならやはり、王子は自分の意思でマルコ様を殺したわけじゃない。

「王子・・・王子はあいつの罠にはめられただけなんです。だから・・・」

もちろん分かっている。自分の意思であろうとなかろうと、自分が殺してしまったという事実は消せない。だから王子は全てを消す覚悟で黒渦を使ったんだ。
だけど・・・だけど・・・・・


「ウィッカー・・・・・」

王子は俺の言葉を遮るように、地上で横たわるマルコ様に右手の指先を向けると、持ち上げるようにゆっくりと手の平を上に挙げた。
するとマルコ様の体がぼんやりと輝きながら、静かに浮かび出した。


「・・・魔力・・・」

慎重に、気遣うように浮かび上がって来るマルコ様の遺体を見て、俺は呟いた。
マルコ様の遺体は王子の魔力で護られていたのか。この黒渦に吸い込まれないように。

強烈な風を巻き起こして、地上の全てを吸いつくさんとしている黒渦に、無防備なマルコ様がなぜまだ呑まれていなかったのか分かった。王子が魔力で護っていたんだ。

そしてマルコ様の遺体は王子の隣まで浮かんでくると、静かに止まった。


「・・・・・マルコ、すまない・・・・・」

王子は見開かれたマルコ様の両目に右手を当て、そっとその瞼を下ろした。
ずっと感情の抜け落ちた表情をしていたが、マルコ様を見つめる王子の顔は、深い悲しみで満ちていた。

「・・・王子・・・悪いのは帝国なんです。マルコ様はカエストゥスを愛していました。黒渦を使うなんてマルコ様は望んでいません。俺もまだ戦えます。黒渦を使わなくても、俺と王子なら帝国にだって勝てます。一緒に戦いましょう!だから今すぐ黒渦を止めて下さい!」


「・・・・・ウィッカー・・・・・お前の言う通りなんだろうな・・・・・」

そう言って俺に向き直った王子の顔は、さっきまでとは違い、今度はちゃんと俺を見ている。俺を見て話しをしている。そう感じられた。

俺は初めて王子と目が合ったような気がした。


「この黒渦は生きている。こいつはあの日喰らったバッタの命を取り込んで、生きた魔法になった。いや、もう魔法ではない別の存在・・・しいて言うなら闇だ。お前達がなんで黒渦を二度と使うなと言っていたのか、俺も今になって分かったよ」


王子は上空の黒渦を見上げて話した。
これがどれだけ危険なものなのか、王子も分かってくれた。そうだ、これは一刻も早く消さなければならない。早く、全てが消える前に早く!

「王子、そうです、その通りです。黒渦をこのままにしておいたら、何もかも全てが呑まれてしまう。だから早く消してください!」

「無理だ」

「・・・え?」

無理・・・?何を言ってるんだ?どうして消せない?王子が使っている魔法なんだから、王子に消せないはずがない。

王子の言葉に唖然とする俺に向き直って、王子は言葉を続けた。


「ウィッカー、もう黒渦は消せない。これは俺の手を離れた・・・全ての生命を喰らいつくすまで消える事はない」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...