異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,010 / 1,560

1009 パウンド・フォーへ

しおりを挟む
「それではアンリエール様、行ってまいります」

ゴールド騎士のアルベルト・ジョシュアが一礼をすると、それに倣(なら)ってパウンド・フォーに行く他のメンバー達も頭を下げた。

時刻は間もなく6時30分、一通りの話し合いはすんだ。
アンリエールの傍らにはウィッカーとローザが、その脇にはフェリックスと闇の巫女ルナ、そしてジャレット達レイジェスのメンバーが、レイチェル達と向かい合う形で立っていた。


「皆さん、必ず無事に帰って来てくださいね。ご武運を祈ってますよ」


国境の山パウンド・フォー。
闇の力を持つ巨大なヘビがうごめくその山は、死地と呼べる場所だろう。

女王である自分は戦闘に参加する事などできない。闇と戦える力を持つ彼らに全てを託すしかない現状に、アンリエールは歯がゆさを感じている。
だからせめて祈ろうと思った。彼らが無事に帰って来る事を。




「アラタ、ちょっといいか?」

「あ、店長、どうしたんですか?」

女王アンリエールへの出発の挨拶も終わり、いざパウンド・フォーへ発とうとしたその時、ウィッカーがアラタを呼び止めた。

「以前渡した新緑の欠片は、ちゃんと持っているか?」

新緑とは、新庄弥生が愛用した薙刀の名称である。風の精霊と心を通わせていた弥生だからこそ、愛用の新緑にも精霊が宿り、精霊と共に戦ったのだ。
そして精霊は弥生亡き後も、欠片となった新緑に今もなお残っている。

「はい、肌身離さず持っています」

ウィッカーの質問に、アラタはシャツの襟から、麻紐を通してネックレスにした新緑の欠片を取り出した。

一見すると古い樹の欠片にしか見えない。
だがこの欠片には風の精霊が宿っていて、ロンズデールでの戦いでは、帝国の大臣ダリル・パープルズの闇から、アラタを護った事もあるのだ。

「ちょっと貸してくれないか?」

「あ、はい、いいですよ」

言われるままに、アラタは首からネックレスを取り外すと、ウィッカーへ手渡した。

「うん・・・・・」

左手にネックレスを乗せると、ウィッカーは右手を被せ、両手で優しく新緑の欠片を包み込む。
そして静かに目を閉じた。

何をするんだ?そう思いながら、じっとウィッカーを見つめる。
アラタだけではなく、誰もが無言でウィッカーを見つめていた。

微かに頷いたり、少しだけ表情を柔らかくしたり、口は閉じているが、まるで誰かと話でもしているかのように見えた。

時間にして、一、二分というところだろう。
再び目を開けたウィッカーは、スっとアラタに新緑の欠片を差し出した。

「あ、もういいんですか・・・・・え!?」

受け取ったアラタは驚きのあまり、喉の奥から大きな声が出た。

「て、店長、こ、これ!?」

「風の精霊にお前の事を頼んでおいた。闇と戦っているお前には精霊も協力的だし、これまで以上に力を貸してくれるようだ」

アラタの手にした新緑は、見た目こそ同じだが、さっきまでとは明らかに変わっていた。
それは新緑に宿る精霊の力が増したからだろう。

「す、すげぇ・・・今までよりずっと強い力を感じる」

「アラタ、精霊への感謝を忘れるな。今のお前には精霊の声は聞こえないと思う。だが、お前が精霊との繋がりを求め祈り続ければ、いずれ精霊の声が聞こえるだろう」

「俺が、精霊の声を・・・」

「お前ならできると思う。ヤヨイさんがずっと気にかけていたんだ男なんだ、お前ならできる」

はい、と返事をすると、アラタはもう一度新緑の欠片に目を落とした。

この手で握れば隠れるくらいの小さな樹の欠片には、沢山の風の精霊が宿っている。
そしてこの風の精霊達はヤヨイを知っている。それはアラタにとって、とても大きな事だった。

「・・・情けない姿は見せられないな、店長、俺やってみます。弥生さんが風の精霊と繋がっていたんなら、俺も風の精霊と通じ合えるようにがんばってみます。弥生さんの感じた風を、俺も感じてみたい」

アラタの言葉に、ウィッカーは小さな笑みを零した。

「ああ、頑張れよ。きっとヤヨイさんもお前を見守ってくれているから」

アラタの手の平の上で、新緑の欠片が淡く緑色に輝いた。アラタの気持ちを歓迎するかのように・・・




「よし、そろそろ出発だ。先頭は俺が走る、途中休憩は入れるが、陽が暮れるまで走り続ける事になる。途中でもし具合が悪くなったらすぐに言ってくれ」
アルベルト・ジョシュア。29歳、体力型、騎士団所属、ゴールド騎士。


「しんがりは私が務めます。みなさん、よろしくお願いします」
ラヴァル・レミュー。25歳、体力型、騎士団所属、シルバー騎士序列一位。


「今回は無理を言って急遽参加させてもらった。体はもう大丈夫だし、足手まといにはならない。よろしく頼む」
エクトール・エドワーズ。24歳、体力型、騎士団所属、シルバー騎士序列三位。


「アンリエール様の護衛を外れてまで参加したんだ。私も自分の役目はしっかり果たしてみせるさ」
リーザ・アコスタ。22歳、体力型、女王専属護衛。


「闇の力を持つ化け物蛇を倒す必要はない。最優先はレイマート達を救出して、我々が全員無事に帰る事だ」
レイチェル・エリオット。二十歳、体力型、レイジェス所属。副店長。


「まぁよ、俺がいんだから蛇なんかにビビッてっ事ねぇんだよ。どんなにでかくても、蛇は蛇だろ?所詮食い物なんだよ」
リカルド・ガルシア。十七歳、体力型、レイジェス所属。武器担当。


「おい、リカルド!お前油断してると痛い目あうぞ?10メートルの蛇って、俺のいた世界じゃアナコンダって呼ばれてて、人間だって丸呑みにすんだからな?真面目にやれよ?」
坂木新。二十三歳、体力型、レイジェス所属、防具担当。


「アラタ、リカルドはどうせ聞いてないから、言っても無駄。アタシ達が頑張るしかない」
ユーリ・ロサリオ。十九歳、白魔法使い、レイジェス所属、白魔法担当。


「さあ、気合入れてくよ、あの山はけっこう高いし、油断してると蛇じゃなくて山に殺されるからね。じゃあ行こうか」
アゲハ・シンジョウ。二十四歳、体力型、レイジェス所属、武器担当。


総勢九名の救出隊が、帝国との国境の山岳地帯、パウンド・フォーへと発った。

闇が渦巻くパウンド・フォーで待ち受けるものを、彼らはまだ知らなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...