異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,020 / 1,560

1019 捕食

しおりを挟む
硬い!トルネードバーストでも、この蛇を斬る事ができない!

魔力を通して手応えが伝わって来るから分かる。上級魔法でもこの蛇の纏う闇の瘴気は貫けない。
竜氷縛でも僅かな時間しか固められなかったから予想はしていたが、やはり魔法は通じないのか?

「だがな、俺の本命はこっちだ!」

トルネードバーストで大蛇を切り刻む事はできなかった。だがその巨体を持ち上げる事はできた。
10メートル級の大蛇は渦巻く風にその身を捕らわれ、少しづつ、だが確実に空へと登っている。

大蛇は喉の奥から空気を噴射させるような音を漏らしながら、自分を捕らえる風から逃れようと暴れもがく。

「ぐうッ!こ、この化け物蛇、やっぱでけぇだけあってすげぇパワーだ!

10メートル級の大蛇、その身の重さは300キロか400キロか、その超重量の巨体が、鞭のように体を振るわせて風を破ろうとしてくる。
その衝撃に耐えれば耐えるだけの魔力を使う事になり、フィルはトルネードバーストを維持するだけでも、相当な魔力を消耗させられていた。

長引くと不利だ!

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーッツ!」

一気に魔力を放出し風の渦を倍にも膨らませる!

「!?」

己を捕らえる風が突然大きくなった。体が強く締め上げられ、大蛇スターンが驚いたように目をギョツとさせるが、身じろぎ一つ許さない程の締め上げに、なすすべはなかった。

これに懸ける!

腕を上げてトルネードバーストを操る!
渾身の風の渦は高く、樹々よりもはるかに高く、高く空へと大蛇を持ち上げる。そして大蛇の姿が目視できない程になった。


「これで・・・どうだァァァァァァァーーーーーーーーーッツ!」


高々と上空に持ち上がった大蛇スターン。
フィルは碧い目をギラリと光らせると、頭上に上げていた両腕を振り下ろした!

その瞬間、大蛇スターンの体が地上へと激しく引き寄せられ、同時にスターンを締め上げていた風の圧力がフッと消えた。

全長10メートル、体重300~400キロと見られる超巨体が、上空から一直線に落下してくる!


「エミリー!ロゼ!俺の後ろで頭を低くしろ!急げ!」

正面を向いたまま両手を前に出して声を張り上げる!
エミリーの魔力が尽きた今、これから起こる衝撃に備えるのは自分の役目だ。

エミリーとロゼがフィルの背中に隠れるように入り、頭を抱えるようにしてしゃがみ込むと、残りの魔力で自分達三人を覆い囲むように風の盾を作り出した。


「来るぞッツ!」

そう声を上げた一瞬の後、目の前でまるで隕石でも落ちたのかと思う程の轟音が鳴り響た。
山全体が揺れ動く程の衝撃に襲われ、立っている事さえできず、土煙を巻き上げる爆風と地揺れでフィル達は体を投げ飛ばされた。





「フッ!」

短く息を吐き出して地面を蹴る。一瞬にして黄色い大蛇トランの懐に入り込むと、闘気を纏わせた鉄の剣をトランの胴体に突き刺した!

「フシャァァァァァーーーーーーーーッツ!」

強烈な痛みにトランが大口を開けて空気を噴射させる。
痛みの元凶であるレイマートに向かって、尻尾を振り上げ叩きつける!大蛇の一撃は地面が砕ける程に重く強烈なものだったが、すでにレイマートはトランの視界から消えていた。

忽然と消えた標的に、トランが首を動かし辺りを見回す。


この時レイマートは、トランの尻尾を躱して樹の陰に飛び込んでいた。



黄色い大蛇トランは、首も半分に斬られ、顔の右半分はレイマートによって蹴り潰されている。
ならばその死角となっている右側から、次の一撃で仕留めて見せる。
いつまでもこの一匹に時間をかけてはいられない。まだ蛇は二匹もいるんだ。

黄色い蛇の右の死角から、レイマートが姿を現した!


蛇はまだ自分に気づいていない!この一太刀で首を斬り落とす!


レイマートは一蹴りで大蛇に迫ると、闘気を纏った剣を振りかぶった!




全ての蛇が備えているわけではないが、ピット器官という赤外線感知器官を持つ蛇がいる。
目と鼻孔の間に窪みがあり、それがセンサーとなって得物を追い詰め捕らえる。
種類にもよるが、蛇は視力が弱いものが多い。だがこのピット器官を持つ蛇は、暗闇でも得物を見失う事は無い。

アラタの生まれ育った情報溢れる現代日本であれば、蛇に興味が無くても、蛇が匂いや熱で得物を追跡するという事は、どこかで耳にした事があるだろう。

だがこの世界では違う。
専門家ならばともかく、目があるのだから、目で得物を追っていると考える事が普通である。
レイマートがピット器官など知る由も無かった。


そしてこの黄色い大蛇トランは、ピット器官を持っていた。


グルリと首を回すと、残った左目がレイマートを正面から捉えた。


「なにっ!?」


完全に自分の動きが読まれていた事に驚愕したが、振りかぶった剣を止める事はできなかった。
レイマートの剣がトランの頭に振り下ろされたその時、トランの頭がレイマートの胴体にぶち当たった。

「ごはァッツ!」

闘気の剣が自分を斬る事ができると、身を持って味わっておきながら、その剣に向かって頭から突っ込んで来るとは想定しなかった。
だが、僅かにふれた剣がトランの頭の皮を斬ったが、大蛇の頭突きをまともに受けたレイマートの方が、はるかにダメージは大きかった。
結果として頭から向かって来た大蛇トランの判断は、この局面で詰めの一手となった。

頭突きで弾き飛ばされたレイマートは、高々と空中に打ち上げられると、十数メートルも遠くに背中から落ちた。

闇の蛇の一撃は息が止まる程の衝撃だった。闘気が蛇の闇の瘴気を斬り裂くように、蛇が発している闇の瘴気もまた、レイマートの闘気を打ち破って来るのだ。

「ぐはッ・・・あ、ぐぅ・・・!」

倒れたまま苦痛に顔を歪めるレイマートを見つめ、トランは先が二つに割れた舌をチロチロと伸ばしながら、ニタリと笑った。


「ふははははははははは!どうやら勝負あったな!まぁよく頑張ったと褒めておこう!だが俺の息子達にかなうはずがないだろう!さぁトラン待たせたな、食事の時間だ。ヤツを生きたまま呑み込んでやれ!」

蛇使いバドゥ・バックの指示に、黄色い大蛇トランは鎌首をもたげて、ズルリと胴体を動かした。

自分を食べようと蛇が迫って来る。
だがレイマートの受けたダメージは大きかった。気力でなんとか上半身を起こすが、足に力が入らず立つ事ができない。そして今の頭突きでレイマートは剣を落とし丸腰だった。

大蛇がレイマートの目の前まで来た。
そしてその手に自分を傷つける剣が握られていない事を見て、トランの残った左目がまるで嗤っているかのように細められた。


「・・・化け物蛇が、嗤ってんじゃねぇよ」

「フシャアァァァーーーー」

レイマートが睨みつけるが、トランは獲物をやっと食べれる喜びを表すように、喉から空気を噴射させた。

そしてズルリと尻尾を伸ばすと、レイマートの腹に尻尾を巻き付け、あっという間に首から下をグルグルと巻いてしまった。

「うぐあぁッ!」

万力で締め上げられるような強烈な圧迫感に、思わず苦悶の表情が浮かび出る。

自分を傷つけた獲物が、今は自分に閉められ苦しんでいる。
トランはそんなレイマートを、頭の上からニタリ嗤いと眺めていた。

「があぁぁぁぁーーーッツ!」


そして更に強く締め上げ、もう一度レイマートが苦痛の声を上げると、トランは口が裂けそうな程大きく開けて、ゆっくりとレイマートの頭へと近づいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

処理中です...