異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,050 / 1,560

1049 レイマートの決断

しおりを挟む
リカルドが大地の矢を射ってから決着がつくまで、それは1分にも満たない僅かな時間であった。

白い大蛇ユーンには、放たれた矢の軌道が、自分の残った右目に向かって見えた。

闇の瘴気を発していれば、ただの鉄の矢など何の脅威でもない。
だが知能があるがゆえに、ユーンはソレを警戒し、決して軽く見なかった。

この場面で使う物が、何の変哲もないただの矢のはずがない。

受けても問題はないだろう。闇の瘴気に触れれば一瞬で腐食させ無力化できる。

だがここはあえて落とす。万に一つも許さない。

ユーンの残った右目がギラリと光ると、腹が大きく膨らんだ。
そして口をガバっと大きく開けると、勢いよく真っ黒な煙を吐き出した。

黒い大蛇サローンが使っていた、結界をも溶かす煙である。


鉄の矢など物の数ではない。
だがユーンの直感が訴えていた、この矢には何かある。
ゆえにユーンは己の直感に従い、受けるのではなく煙をぶつけて矢を落とす事を選択した。

どんな仕掛けのある矢かは分からないが、黒い煙を浴びせれば一瞬で腐食し溶け落ちる。
ユーンの口の端が持ち上がり、ニヤリと嗤いを見せる。




勝ち誇ったユーンの嗤いを見て、リカルドもほくそ笑んだ。

へっ、馬鹿蛇が!クセェ瘴気をまき散らしまくってるテメェに、ただ真っすぐ矢を射ったと思ったのかよ?んなわけねぇだろ!

「ここからが俺の大地の矢の真骨頂だぜ!」

「!?」

ユーンの真っ赤な右目に動揺が走った。
リカルドの射った大地の矢は、ユーンの吐き出した黒い煙に当たる直前で、急速に角度を変えて落ちたのだ。

そして土色の矢尻が地面に触れた。

「吹っ飛べ蛇野郎」

リカルドが右手親指を真下に向けると、それを合図としたように地面が大きく揺れた。




突然揺れ動く大地に、大蛇ユーンは体を強張らせた。
地震か!?真っ先にそう思ったが、すぐに地震ではないと分かった。

なぜなら、ユーンの残った右目に映る青い髪の男と緑色の髪の男は、この揺れの影響をまったく受けていなかったのだから。

そして赤茶色の地面に突き刺さった、一本の矢が目に入った。


まさか・・・!?
さっきのあの矢か?黒い煙を避けるように落下したあの矢が、この地震を起こしているのか!?
しかも使い手と標的を分けて、限られた範囲だけに効果を発揮するなんて!


ユーンが地震の正体に気付いたその時、腹の下の地面に大きく亀裂が走った!
そして火山噴火を連想させるような凄まじい勢いで、割れて砕けた土砂がユーンに向かって噴き上がった!


「フシュァァァァァァァァァァーーーーーーーーーーーッツ!」


ユーンは驚愕した。

拳大の石から、その十倍も大きな石まで、数多くの石がユーンの体を打ち付けて来るのだ。
こんなものまともに食らえば、ミンチ肉にされてしまうだろう。

絶え間なく激しく打ち付けて来る石に恐怖を感じ、僅かな時間体が硬直した。だがユーンはすぐに冷静さを取り戻した。

そう、これをまともに食らえば死んでいただろう。
だがそれはあくまでも、まともに食らえばの話しだ。

地面から噴き上がる石はユーンの肉体に届く前に、闇の瘴気に防がれているのだ。
あまりの勢いに恐怖を感じてしまったが、実際に石が自分に届くことはない。

それに気づいたユーンはすぐに我に返り、小癪な真似をした弓使いの人間に向き直った。


一瞬とは言え、小さき人間がよくも恐怖を与えてくれたな!
この黒い煙で惨たらしく殺してくれるわ!


「はい、お前お終い」


ユーンがリカルドを睨み付けたその時、緑色の髪をした弓使いは、親指を自分の首に当てると、かっ切るように真横に引いて見せた。

次の瞬間、喉元に鋭くも熱い何かが突き刺さった。


グォァッ!?・・・い、痛い!熱い!な、なんだ、これは!?

ソレは肉を深く抉り、喉の奥の奥にまで刺しこんで来た。強烈な痛みが脳を貫いて来て、思考が全くまとまらない。
自分にいったい何がおきたのか?闇の瘴気で護られているはずなのに、なにが闇を超えてきたのか!?
喉を抉られたため必然的に首が曲がり、ユーンの右目がそいつを視界に捉えた。


青い髪をした人間が、光輝く闘気を漲らせた右手を、自分の喉に突き刺していた。


「死ね」


小さき人間は自分と目が合うと、一言そう呟いて、右手を頭上高く振り上げた。

喉から顎先まで肉が裂け、ブチブチと嫌な音を立てながら頭と首が引き千切られる。
真っ赤な血と共に、闇の瘴気が傷口から溢れ出す。そしてレオンクローの闘気で焼かれた瘴気は、浄化されるように風に飛ばされ消えていった。


「フ・・・フシュアァーーーーーーーー・・・・・・」

絞り出すようなか細い音だった。


ば、馬鹿な・・・人間などに、こんな小さき者にアッサリと・・・・・


脅威的な生命力を持つ闇の大蛇は、頭と首を引き裂かれても簡単には死なない。
だがレイマートはすでに知っている。
生命力の源は闇であると。ならばその闇を消し去ってしまえばいい。そしてレイマートの闘気ならば、それが可能である。

レイマートの右手にかかげられたユーンの右目には、すでに他の蛇達もほぼ壊滅状態である事が映った。
小さき者と見下していた人間達が、自分達大蛇をまったく寄せ付けない程の強さを持っていた。


これを見抜けなかった事、小さき者と侮っていた事が敗因か・・・・・


「これで終わりだ!」


レイマートは右手に掴むユーンの頭を上空に投げ飛ばした。
そして右手にもう一度闘気を込めて、レオンクローの体勢に入った。

高々と空まで上がったユーンの頭は、血と瘴気を撒き散らしながら、下で待ち構えるレイマートの元に落下していく。


「ハァァァァァァーーーーーーッツ!」


待ち構えるレイマートの右手は、闘気が獅子の前足を彷彿させるように、鋭く尖って光り輝いていた。



ユーンはすでに死を受け入れていた。
だがこのまま大人しく終わるつもりはない。

群れのボスとして、このまま人間に一方的にやられたまま死するわけにはいかない。
大蛇は大した事がなかった・・・そう思われる事だけは我慢ならない。


この戦いは貴様ら人間の勝ちだ。

だが人間よ・・・蛇がなぜ古来より忌み嫌われ恐れられてきたのか?
その恐怖の一旦だけでも味わわせやる!


「フシャァァァァァァァァーーーーーーーーーーッツ!」

ユーンに残った右目がギラリと光ると、張り裂けそうなくらい大きく口を開けた。
すると上顎の左右に一本づつ生えている、鋭く長い牙が剥き出しになった。

「最後の悪あがきか!?だが、そんな見え見えの噛みつきが通用すると・・・!?」

牙を剥き出しにして落下して来る大蛇ユーン、それをレオンクローで迎撃しようと、レイマートが右腕を振り被ったその時!

ユーンの真っ赤な右目が嗤ったように見えた。

そして剥き出しになった二本の鋭い牙の先から、真っ黒な液体が霧状に噴き出した!


「なにィッ!?」


牙から液体が噴き出すなんて、予想すらしていなかった。
想定外の攻撃に、レイマートの動きに一瞬の遅れが出る。

この黒い液体、蛇の牙から出るとは・・・まさか毒か!?

しまった!動揺したせいで回避が間に合わない!この黒い霧を全て躱す事はもはや不可能。
・・・ならば!


レイマートの決断は早かった。
全て躱しきる事は不可能、少なからず黒い毒液を浴びる事になる。
ならばどう動く事がチームにとって一番利があるか?


「ウォォォォォォォォーーーーーーーッツ!」

地面を強く蹴ってレイマートは上空に飛んだ!
右手には力強く輝く闘気!
レイマートはここで蛇達のボスを仕留める事を選んだ。

これ以上の隠し玉があるとは思わない。
だがこの局面で毒液を吐き出したように、こいつは何をしてくるか分からない!
この大蛇はここで確実に始末しておくべきだ。


「レオンクローーーーーッツ!」


頭から毒液を被りながらも、レイマートの闘気の爪が大蛇ユーンの頭部を引き裂いた!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

処理中です...