1,084 / 1,560
1083 アラタの決意
しおりを挟む
閉店後のレイジェス店内。
なにかあった時には事務所で話し合う。これはレイジェスの恒例になっていた。
今回パウンド・フォーから帰還してレイジェスに来たのは、アラタ、レイチェル、リカルド、ユーリ、そしてアゲハの五人。全員がレイジェスのメンバーだ。
アルベルト達騎士団とリーザは、女王への報告、そして今も安否を気にかけている仲間達に、少しでも早く元気な姿を見せたいと考え、途中で別れて城へと向かったのだった。
そして無事に帰っては来たが、さすがに疲労を隠しきれないアラタ達を見て、今日は解散して詳しい話しは明日以降にしようという意見もでた。
だが事が事だけに、早く情報を共有したいというレイチェルの言葉に従い、いつも通り店に泊まって話し合う事となった。
「いやぁ~、あれはやべぇよ!マジでやべぇ!あんなおっかねぇヤツ初めてだな!人間じゃねぇよあいつ!」
事務所の長いテーブル席に腰を下ろし、リカルドは身振り手振りを交えて演説をしていた。
リカルドが力説しているのは、デューク・サリバンについてだった。
すでに全員が知っている事だが、帝国軍第七師団のデューク・サリバンは、アラタの恩人である村戸修一である。
アラタもそれを知った時には驚いたが、半信半疑な部分もあった。
実際に会えば分かり合える。戦う事もない。そう考えていたところもあった。
だが現実は非情だった。
言葉を交わし突きつけられたものは、明確な決別。
レイチェルもアゲハも、沢山の仲間達が殺されかけた。
「マジハンパじゃねぇんだって!レイチェルの限舞闘争くらってノーダメージなんだぞ!?頭おかしいだろ!?ミゼルなら死んでんぞ!あんなのにどうやって勝つんだよ!?」
「おい!なんでそこで俺を殺すんだよ!」
「リカルード、分かった!分かったから座れって!ミッチーも反応すんなよ!」
「だからなんでリカルードなんだよ!?言うなって言ってんだろ!最近やっとやめたって思ってたのに、ここで復活すんじゃねぇよ!ぶっ飛ばすぞ!」
興奮して席から立ち上がるリカルド。ジャレットがその腕を掴み、落ち着くように言い聞かせて座らせる。抗議の声を上げたミゼルも、不満気ながら口を閉じた。
「はぁ、まったく・・・まぁ言いたい事はだいたい分かった。アラやん、お前のニホンの恩人ってのは、どうやら戦うしかねぇみたいだな?」
ジャレットは自分の向かい側に座るアラタに顔を向けた。
パウンド・フォーで何があったか、その報告はレイチェルが中心に説明し、アゲハが補足する形で進めていた。最後にリカルドが騒ぎ出したが、ここまでアラタはずっと黙りこくっていた。
「・・・・・」
「アラやん、やっぱ無理か?」
話しを向けられても口をつぐんでいるアラタに、ジャレットはもう一度、今度は少し強めに言葉をかけた。
「・・・ジャレットさん、俺は迷ってました」
アラタはゆっくりと顔を上げると、ジャレットの目を真っすぐに見て口を開いた。
真剣味を帯びたアラタの黒い瞳を見て、ジャレットも何かを感じて目を細めた。
隣に座るカチュアも、アラタの口調から何かの決意を感じ取り、その顔をじっと見つめている。
「・・・村戸さんと会うまで、ずっと迷ってました。村戸さんが帝国にいると聞いても、どこか信じ切れなくて・・・あの村戸さんが悪に染まるはずはない。なにかの間違いだって・・・でも、パウンド・フォーで会って俺の覚悟は決まりました。俺は・・・戦います」
そこで言葉を区切ると、アラタは隣に座るカチュアの手を握った。
「アラタ君・・・」
「俺が護るべきものが分かったんです。村戸さんは恩人です。だけど今の俺は結婚して、この店で働いています。このレイジェスが俺の居場所なんです。カチュアを、みんなを護るためなら、俺は村戸さんとも戦わなくてはならない。あの山でそう覚悟を決めたんです」
ジャレットは黙って話しを聞いていた。
押しに弱く、どこか控えめな性格をしているアラタがどんな決断をするのか。ジャレットはずっと気にしていた。
故郷の恩人と戦うなんて、果たしてできるのだろうか?戦争を控えているこの状況でも、まだ決心を固めていないのであれば、じっくり話しをしなければと思っていた。
だがジャレットの心配は杞憂だった。
言葉の一つ一つから、アラタの決意を感じた。
帰って来たアラタを見た時にも感じていたが、空気、身に纏う雰囲気が変わっていた。
今自分を見る黒い瞳にも、以前にはなかった力強さを感じる。
・・・・・アラやん、お前自分の殻を破ったみたいだな
「・・・何を護るべきか、それが分かったんなら俺から言う事は何もねぇよ」
小さくフッと笑うと、ジャレットはシルヴィアに目を向けた。
その視線が話しの続きを託すという意味だと理解し、シルヴィアは小さく頷きアラタに目を向けた。
「アラタ君も頼もしくなったわね・・・さて、それじゃあレイジェスに残っていた私達からも報告があるわ。一昨日、ロンズデールからリンジーさん達が来たわよ」
なにかあった時には事務所で話し合う。これはレイジェスの恒例になっていた。
今回パウンド・フォーから帰還してレイジェスに来たのは、アラタ、レイチェル、リカルド、ユーリ、そしてアゲハの五人。全員がレイジェスのメンバーだ。
アルベルト達騎士団とリーザは、女王への報告、そして今も安否を気にかけている仲間達に、少しでも早く元気な姿を見せたいと考え、途中で別れて城へと向かったのだった。
そして無事に帰っては来たが、さすがに疲労を隠しきれないアラタ達を見て、今日は解散して詳しい話しは明日以降にしようという意見もでた。
だが事が事だけに、早く情報を共有したいというレイチェルの言葉に従い、いつも通り店に泊まって話し合う事となった。
「いやぁ~、あれはやべぇよ!マジでやべぇ!あんなおっかねぇヤツ初めてだな!人間じゃねぇよあいつ!」
事務所の長いテーブル席に腰を下ろし、リカルドは身振り手振りを交えて演説をしていた。
リカルドが力説しているのは、デューク・サリバンについてだった。
すでに全員が知っている事だが、帝国軍第七師団のデューク・サリバンは、アラタの恩人である村戸修一である。
アラタもそれを知った時には驚いたが、半信半疑な部分もあった。
実際に会えば分かり合える。戦う事もない。そう考えていたところもあった。
だが現実は非情だった。
言葉を交わし突きつけられたものは、明確な決別。
レイチェルもアゲハも、沢山の仲間達が殺されかけた。
「マジハンパじゃねぇんだって!レイチェルの限舞闘争くらってノーダメージなんだぞ!?頭おかしいだろ!?ミゼルなら死んでんぞ!あんなのにどうやって勝つんだよ!?」
「おい!なんでそこで俺を殺すんだよ!」
「リカルード、分かった!分かったから座れって!ミッチーも反応すんなよ!」
「だからなんでリカルードなんだよ!?言うなって言ってんだろ!最近やっとやめたって思ってたのに、ここで復活すんじゃねぇよ!ぶっ飛ばすぞ!」
興奮して席から立ち上がるリカルド。ジャレットがその腕を掴み、落ち着くように言い聞かせて座らせる。抗議の声を上げたミゼルも、不満気ながら口を閉じた。
「はぁ、まったく・・・まぁ言いたい事はだいたい分かった。アラやん、お前のニホンの恩人ってのは、どうやら戦うしかねぇみたいだな?」
ジャレットは自分の向かい側に座るアラタに顔を向けた。
パウンド・フォーで何があったか、その報告はレイチェルが中心に説明し、アゲハが補足する形で進めていた。最後にリカルドが騒ぎ出したが、ここまでアラタはずっと黙りこくっていた。
「・・・・・」
「アラやん、やっぱ無理か?」
話しを向けられても口をつぐんでいるアラタに、ジャレットはもう一度、今度は少し強めに言葉をかけた。
「・・・ジャレットさん、俺は迷ってました」
アラタはゆっくりと顔を上げると、ジャレットの目を真っすぐに見て口を開いた。
真剣味を帯びたアラタの黒い瞳を見て、ジャレットも何かを感じて目を細めた。
隣に座るカチュアも、アラタの口調から何かの決意を感じ取り、その顔をじっと見つめている。
「・・・村戸さんと会うまで、ずっと迷ってました。村戸さんが帝国にいると聞いても、どこか信じ切れなくて・・・あの村戸さんが悪に染まるはずはない。なにかの間違いだって・・・でも、パウンド・フォーで会って俺の覚悟は決まりました。俺は・・・戦います」
そこで言葉を区切ると、アラタは隣に座るカチュアの手を握った。
「アラタ君・・・」
「俺が護るべきものが分かったんです。村戸さんは恩人です。だけど今の俺は結婚して、この店で働いています。このレイジェスが俺の居場所なんです。カチュアを、みんなを護るためなら、俺は村戸さんとも戦わなくてはならない。あの山でそう覚悟を決めたんです」
ジャレットは黙って話しを聞いていた。
押しに弱く、どこか控えめな性格をしているアラタがどんな決断をするのか。ジャレットはずっと気にしていた。
故郷の恩人と戦うなんて、果たしてできるのだろうか?戦争を控えているこの状況でも、まだ決心を固めていないのであれば、じっくり話しをしなければと思っていた。
だがジャレットの心配は杞憂だった。
言葉の一つ一つから、アラタの決意を感じた。
帰って来たアラタを見た時にも感じていたが、空気、身に纏う雰囲気が変わっていた。
今自分を見る黒い瞳にも、以前にはなかった力強さを感じる。
・・・・・アラやん、お前自分の殻を破ったみたいだな
「・・・何を護るべきか、それが分かったんなら俺から言う事は何もねぇよ」
小さくフッと笑うと、ジャレットはシルヴィアに目を向けた。
その視線が話しの続きを託すという意味だと理解し、シルヴィアは小さく頷きアラタに目を向けた。
「アラタ君も頼もしくなったわね・・・さて、それじゃあレイジェスに残っていた私達からも報告があるわ。一昨日、ロンズデールからリンジーさん達が来たわよ」
0
あなたにおすすめの小説
俺! 神獣達のママ(♂)なんです!
青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。
世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。
王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。
その犯人は5体の神獣。
そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。
一件落着かと思えたこの事件。
だが、そんな中、叫ぶ男が1人。
「ふざけんなぁぁぁあ!!」
王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。
神獣達のママ(男)であった……。
私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~
Ss侍
ファンタジー
"私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。
動けない、何もできない、そもそも身体がない。
自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。
ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。
それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!
正しい聖女さまのつくりかた
みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。
同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。
一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」
そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた!
果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。
聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜
namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。
かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。
無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。
前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。
アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。
「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」
家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。
立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。
これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる