異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

文字の大きさ
1,095 / 1,560

1094 宴会 ③

しおりを挟む
「ジーン君、ケイトちゃん、本当におめでとう!」

リンジーは二人が結婚するという話しを聞いて、まるで自分の事のように表情を輝かせた。

「リンジーさん、ありがとう。なかなかふんぎりがつかなくて、ケイトをずっと待たせてたんだけど、戦争が始まる前に一緒になりたいって思ったんです」

ジーンは少し照れたように指先で頬を掻いた。
そして隣に座るケイトが向けてくる、ジっとした視線に気が付いて顔を向けた。


「ジーン、結婚決めてくれたのはすごく嬉しいよ。それでね、一つだけ言っておきたいんだ。これからはあれこれ難しく考えないで。ジーンはアタシがジーンに依存してるって思って、結婚を先延ばしにしてたでしょ?」

「え、いや・・・」

「隠さなくていいよ。実際最初の頃はそうだったと思う。ロンズデールにいた二年間は正直辛かったし、毎日ジーンとの思い出ばかり夢に見てた。クインズベリーで再会して、レイジェスで雇われても、ずっとジーンにくっ付いてたし、確かに依存だよねって自分でも思うし・・・」

そこまで話すと、ケイトはトレードマークの黒い鍔付きのキャップを脱いだ。
押さえられていたベージュ色の髪がふわっと飛び出し、ケイトは軽く頭を振った。

「あ~、やっぱクセになっちゃてる」

そして手櫛で髪を掻き分けて形を整えると、あらためてジーンの顔を見つめた。


「ジーン・・・アタシはもう大丈夫だよ。依存なんてしてない。レイジェスで働いてさ、みんなと仲良くなれたからね。最近は楽しい事ばっかりで、あの頃の夢も見なくなったんだよ。だからさ、アタシは純粋にジーンが好きなだけなの。ジーンにも、ちゃんとアタシを見てほしい。変な同情はいらないからね?」

宣言するように、右手の人指し指をジーンに向けて、ケイトはニコリと笑った。


「・・・ケイト」


そうか・・・いつの間にかケイトは、過去を乗り越えていたんだ。

ケイトの言う通り、僕はケイトがずっと僕に依存していると思っていた。
僕がケイトを護らなければと思っていたのも、確かにケイトの過去が関係している。
それが理由で、結婚を躊躇していた事は否定できない。
弱っている心に漬け込むようで、嫌だったからだ。

これは僕が悪い。僕がケイトにちゃんと説明していなかったからだ。
結婚しようって言葉だけじゃ、伝わらない事もある。ケイトが望んでいる関係はもっと対等なものなんだ。


「ケイト・・・聞いてほしい。僕は同情や義務で、ケイトとの結婚を決めたわけじゃないよ。確かに以前そういう気持ちもあった事は否定できないけど、今は違う。明るくて、料理が上手で、いつも笑顔で元気をくれるケイトが好きなんだ。だから結婚してずっと一緒にいたいって思ったんだよ。ケイト、あらためて言わせてくれ・・・僕と結婚してください」

ケイトの手を両手で包み込み、真っ直ぐに目を見て気持ちを伝えた。


「嬉しい・・・嬉しいよ、ジーン。もちろんだよ、これからもずっと一緒にいようね」


大輪の花を咲かせたような、心からの笑顔でケイトはジーンを受け入れた。

もう過去は振り返らない。過去には縛られない。
ケイトはジーンと共に、新しい人生を歩むと決めた。


「フフフ、なんだか妬けちゃうな・・・二人とも、本当にお似合いだね」

すっかり二人の世界に入ったジーンとケイトを、リンジーは微笑ましく眺めていた。






「ねぇ、あんた、ファビアナでいいんだよね?ロンズデールのお姫様なんだって?」

「あ、えっと・・・はい、一応そうです。王位継承権は放棄しましたし、王女教育もほとんど受けていないので、お姫様なんて呼ばれるものでもないですけど・・・父は国王なので、王女には間違いありません」

あちこちのグループを回ったアゲハは、最後にまだ一度も話していないファビアナと向き合っていた。

ファビアナも以前は誰ともあまり話せなかったため、今は交流を広めようと、レイジェスの面々と話して回っていた。

そして二人は最後にばったりと遭遇したのだった。


「ふ~ん・・・ねぇ、よかったら話さない?」

ファビアナの説明を聞いて、アゲハは腕を組んで頷くと、視線を脇のテーブルに向けた。

「あ、はい、もちろんです。えっと、では座りましょうか」

アゲハが誘うと、ファビアナも二つ返事で応じ、二人は同じタイミングで腰を下ろした。


「ん~・・・あ、これまだ栓抜いてない。グラスは・・・あったあった。ファビアナ、レモン水飲める?」

「あ、はい、飲めます。すみません、ありがとうございます」

透明の液体が入ったグラスを手渡され、ファビアナはお礼を言って受け取った。


「・・・いい国だよね、ここ」

「はい、私もそう思います。ロンズデールは水の精霊の加護を受けているから、綺麗な海と海産物に恵まれています。でもこのクインズベリーは土の精霊の加護があるから、緑豊かだし、栄養たっぷりの土で育った作物がとても美味しいですよね」

「そうそう、ロンズデールの水、クインズベリーの土、どちらもお互いの国を豊かにしてくれる。精霊の加護は本当に素晴らしいよね。でもさ、帝国の火の精霊はちょっと違う・・・」

「火の、精霊・・・」

アゲハはグラス一杯のレモン水を半分程飲むと、前を向いたまま話しを続けた。

「・・・そう、火の精霊・・・私は帝国にいたからね、よく知ってるよ。火の精霊の加護で、帝国は燃料資源や鉄が本当によく採れる。土の精霊の加護があるから、クインズベリーもそこそこ採れるみたいだけど、帝国とは比べ物にならない。使い放題使っても、まだ余りある・・・そのくらいの量だよ。だからこそ、兵士の訓練に使う鉄にも事欠かなかった。そしてそれが、帝国が大陸最強の軍事国家として栄えている理由でもある」

「・・・はい、そして火の精霊は、非常に好戦的です。一般人にはあまり関係はありませんが、軍に入った兵士達は、その影響から攻撃的になります。だからまず退く事は無いし、死を恐れずに向かって来るから気迫が違う。帝国の兵士は一人一人が精鋭という事ですね」


「うん、その通り。説明は不要だったね」

「あはは、勉強しました。帝国と戦うんだから、帝国についても知っておかなきゃって・・・今までなんとなくでしか知らなかった事も、しっかり学ぶとその本質がよく分かる。だから帝国の強さの理由も、分かったつもりです」

ファビアナはクルーズ船での戦いの後、帝国との戦争に備えて、一から魔法を学び直し、帝国の歴史や状勢についても調べていたのだ。
人の顔色を伺い、おどおどとしていたあの頃とはもう違う。
ファビアナは国の未来を想う一人の民として、帝国と戦う覚悟を決めていたのだ。


「・・・お姫様だって聞いてたから、帝国とどう立ち向かうつもりなのかなって思ったんだけど、何も心配いらなかったみたいだね。ごめん、ちょっとあんたの事見くびってた。箱入りかと思ったら、全然そんな事なかった」

アゲハはファビアナの紫色の瞳を見つめ、そこに一切の迷いがない事を見て取ると、瞳を閉じて小さく頭を下げた。

「いえ、そんな事ありますよ・・・だって、少し前まで私は本当に憶病でダメダメでしたから。でも、変わらなきゃって思ったんです。もう甘えてばかりいられないから・・・アゲハさん、お互い頑張りましょうね」

アゲハが元帝国軍だという事は聞いているのだろう。
過去を振り返らず今を見て戦おう、そう言われているような気がして、アゲハは笑った。

「あはは、そうだな・・・帝国の裏切り者と、臆病者、お互い頑張らなきゃだよね・・・」

「ありがとうございます。あ、お腹いっぱいかもしれませんが、飲んでるだけなのもなんですし、少し食べませんか?」

ファビアナの空いたグラスに、アゲハがレモン水を注ぎ足すと、ファビアナは大皿に残った料理を取り始めた。

「ん、そうだね~・・・あ、じゃあそこの、きゅうりの漬物ちょうだい」

「あ、はい、これですね。私は・・・だし巻き卵にしよっと」


それから二人は他愛のない話しも交えながら、国の事やこれからの戦争の事など、多くを話し合った。

帝国を抜け、新しい国で一から生き方を探しているアゲハ。

過去の自分と決別し、国を護るために戦い始めたファビアナ。


どこか他人と思えない。

そしてどこか通じるものがある二人は、夜が更けても話しこんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

私は〈元〉小石でございます! ~癒し系ゴーレムと魔物使い~

Ss侍
ファンタジー
 "私"はある時目覚めたら身体が小石になっていた。  動けない、何もできない、そもそも身体がない。  自分の運命に嘆きつつ小石として過ごしていたある日、小さな人形のような可愛らしいゴーレムがやってきた。 ひょんなことからそのゴーレムの身体をのっとってしまった"私"。  それが、全ての出会いと冒険の始まりだとは知らずに_____!!

正しい聖女さまのつくりかた

みるくてぃー
ファンタジー
王家で育てられた(自称)平民少女が、学園で起こすハチャメチャ学園(ラブ?)コメディ。 同じ年の第二王女をはじめ、優しい兄姉(第一王女と王子)に見守られながら成長していく。 一般常識が一切通用しない少女に友人達は振り回されてばかり、「アリスちゃんメイドを目指すのになぜダンスや淑女教育が必要なの!?」 そこには人知れず王妃と王女達によるとある計画が進められていた! 果たしてアリスは無事に立派なメイドになれるのか!? たぶん無理かなぁ……。 聖女シリーズ第一弾「正しい聖女さまのつくりかた」

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

武装法人二階堂商会 ―― 企業買収(M&A)で異世界を支配する!

Innocentblue
ファンタジー
日本で企業買収の最前線を駆け抜けてきた敏腕社長・二階堂漣司。 裏切りにより命を落としたはずの彼が目を覚ましたのは、 剣と魔法が支配する異世界の戦場だった。 与えられたスキルは《企業買収(M&A)》。 兵士も村も土地も国家さえも、株式として評価・買収・支配できる異能の力。 「ならば、この世界そのものを買い叩く」 漣司は《武装法人二階堂商会》を設立。 冷徹な参謀にして最強の魔導士リュシア、獣人傭兵団、裏社会の戦力―― すべてを子会社として編成し、経済と武力を融合した前代未聞の経営戦争へと踏み出す。 弱小の村を救済し、都市と契約を結び、裏切り者を切り捨て、敵対勢力を力で買収する。 交渉は戦争、戦争は経営。 数字が命運を決め、契約が国境を塗り替える。 やがて商会は、都市国家・ギルド・貴族・宗教勢力すら巻き込み、 世界の価値そのものを再定義する巨大企業へと変貌していく。 これは、剣ではなく契約で世界を制圧する男の物語。 奪うのではない。支配するのでもない。 価値を見抜き、価値を操り、世界に値札を付ける―― 救済か、支配か。正義か、合理か。 その境界線を踏み越えながら、蓮司は異世界そのものを経営していく。 異世界×経済×武力が激突する、知略と覇道の武装経営ファンタジー。 「この世界には、村があり、町があり、国家がある。 ――全部まとめて、俺が買い叩く」

【完結】奪われたものを取り戻せ!〜転生王子の奪還〜

伽羅
ファンタジー
 事故で死んだはずの僕は、気がついたら異世界に転生していた。  しかも王子だって!?  けれど5歳になる頃、宰相の謀反にあい、両親は殺され、僕自身も傷を負い、命からがら逃げ出した。  助けてくれた騎士団長達と共に生き延びて奪還の機会をうかがうが…。  以前、投稿していた作品を加筆修正しています。

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。 神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。

処理中です...