異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1198 雪に残った足跡

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時折吹いて来る小さな雪の混じった風が、そこに立つ戦士達の髪をなびかせる。
今朝は晴れ間も覗いているが、少し遠くには灰色の雲も見える。午後には天候も荒れるかもしれない。

セドコン村へ向かおうとしたレイチェルの達の前に立ったのは、奪還部隊の唯一の生き残り、青魔法使いのニーディア・エスパーザだった。

目元が赤く、わずかに腫れぼったく見えるのは、昨夜泣きはらしたからかもしれない。
これまでチームを組んでいた仲間達を、たった一日で失ったのだから、その悲しみは計り知れないだろう。

だがニーディア・エスパーザは、悲しみにくれるだけではなく、心を奮い起こし立ち上がったのだ。

「私はあの蔦を封じる事ができる。あなた達があいつらを倒すための力になれるわ」

突然のニーディアの申し出に、レイチェルはすぐには返事をしなかった。

ニーディアが蔦を封じて、他の仲間が村に突入した事は、昨日の報告で聞いていた。

ただでさえ地中の魔力なんて感じ取りにくい。しかも村全体に張り巡らされているのだから、それを追うなど並外れたセンスと魔力操作が要求される。そしてその全てに己の魔力を絡めて封じるというのだから、ニーディアがどれほどの使い手なのか分かろうものだった。

やっかいな蔦を封じれるのだから、協力してもらった方がレイチェル達も利が大きいのは明白である。

「・・・お前達はカルロス副団長と同じで、私達を煙たく思っていたんじゃないのか?協力してくれるという言葉は嬉しいが、チームで動く以上私の指示に従ってもらう事になる。それはいいのか?」

クインズベリー軍副団長のカルロス・フォスターは、レイジェスを疎ましく思っていた。
独立部隊として自由に動くレイジェスは、規律ある軍の中に入り込んだ、異物のようなものだと見ているのだ。
そのカルロスが見込んだ部下なのだから、このニーディア・エスパーザもレイジェスを疎ましく思っているのだろう。レイチェルはそう思っていた。

だがニーディアは首を横に振ると、声に力を込めてもう一度言葉を発した。

「軍だとかレイジェスだとかそんな事はどうでもいいの!私は仲間の敵を討ちたいだけ!あなた達がヤツらを倒せるのなら私の力を利用すればいい!私はこの命を懸けて蔦を封じるわ!だから私を連れて行って!」

胸に手を当て、真っすぐにレイチェルを見るニーディアの瞳には、断固たる覚悟があった。
自分の身がどうなろうと仲間の敵を討つ。それほどの強い覚悟を感じたレイチェルは、一度瞼を閉じた後、スっと右手を差し出した。


「私はレイチェル・エリオットだ」

一瞬驚いたように目を開いたニーディアだが、すぐに笑顔を見せるとその手を掴んだ。

「ニーディア・エスパーザよ。よろしくね」




レイチェルとニーディアが手を取り合った場面を、少し離れた場所で、眉間にシワを寄せて見ていた男がいた。

クインズベリー軍副団長の、カルロス・フォスターである。
腕を組み、黒いローブをはためかせているその後ろ姿に、一人の男が近づき声をかけた。

「カルロス、まだ納得できんのか?」

シワがれているが、威厳のあるその声の主は、クインズベリー軍軍団長のバーナード・ロブギンスである。
かけられた声にゆっくりと振り返ったカルロスは、難しい顔をしながら口を開いた。

「・・・いえ、そういうわけではありません。実際に私は結果をだせず、軍の精鋭を失ってしまいました。ですが・・・果たして彼らなら勝てるのか?という疑問はあります」

「・・・まぁ、そうだな、お前の言う事も分かる。ワシらが知ってるレイジェスの情報は、ほとんど女王陛下から聞いたものだ。だが、今回敵の襲撃を二回防いだ事は、お前も見ているじゃねぇか?少しは信用してやりな」

ロブギンスが諭すように話すと、カルロスは一言だけ、はい、と短く返事をして、また顔を前に戻した。

自分が疎んじていたレイジェス。そのレイジェスと自分の部下であるニーディアが手を結んでいる。
仲間達の敵を討つため、ニーディアがその道を選んだ気持ちは分かる。だからこそカルロスは複雑な気持ちだった。

「・・・少なくとも、私が彼らに何か言う事はありません」

つまらない意地かもしれないが、立場もプライドもある。
失態をおかしたとは言え、これがカルロスに言えるギリギリの言葉だった。

「・・・まったくお前は頑固者だな。だが、今はそれでいいさ。彼らの戦いを見届けようじゃねぇか」

バーナード・ロブギンスは、視線の先のレイチェルとニーディアを目に映し、楽しそうに笑った。




出発したレイチェル達の背中を見送りながら、カチュアはふと、隣に立つ夫のアラタに目を向けた。

「・・・アラタ君?やっぱり一緒に行きたかったの?」

眉根を寄せて難しい顔をしているアラタを見て、カチュアはアラタが、セドコン村奪還チームから外された事に不満を持っているのかと思った。

「あ、いや・・・そりゃ一緒に行きたかったけど、今回は蔦を躱しきれるスピードが必要って理由もあるから、納得はしてるんだ。レイチェルの言う通り、俺は危なくなったら光の力使うかもしれないしね」

ここを過ぎれば中間地点に着く。そこまで行けばパウンド・フォーとユナニマス大川に分かれる事になる。
帝国の領内にもだいぶ近づいているのだから、光の力はできるだけ温存させた方がいいというレイチェルの考えは正しい。

「レイチェル達みんなの力を疑ってるわけじゃないんだ。でも、なんだか嫌な予感がしてさ・・・今回の敵は、本当にヤバイ気がするんだ・・・」

「アラタ君・・・・・」


すでにレイチェル達の姿は見えなくなった。だがアラタはその場を動こうとはしなかった。
冷たい風を頬に受けながら、降り積もった雪の上に立ち、仲間達が残した足跡をいつまでも見つめていた。
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