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突然背後から現れた漆黒の鎧を身につけたこの男は、右手に持つ大振りのナイフを下ろすと、左手を自分の胸に当てて堂々と名乗りを上げた。
「私は帝国軍第二師団長ジャロン・リピネッツ様直属の、影の四人衆が筆頭バーフラム・ハヌリと申します。今の一撃、完全に気配を消したつもりでしたが、よくお受け止めになられました。敬意を表して少し本気を出しましょう」
年齢はおそらく30~35歳、身長は185、いや190センチはあるか?鎧の上からでも分かる、無駄のない筋肉、バランスの取れた体付きだ。ボウズ頭に髭面で強面だが、言葉使いや態度は妙に礼儀正しい。
かと言って堅苦しい程ではなく、適度な距離感を保っている・・・これは接客だ。
客商売をやっている私には分かるが、これは一朝一夕で身につくものではない。長年人を相手にした商売をしてきた人間が、日常的にも意識せず出る振る舞いだ。
「・・・私はリサイクルショップ・レイジェスの副店長でレイチェル・エリオットだ。お前、本当に軍人か?その言葉使いや雰囲気は、日常的に接客をしてきた者の匂いがする」
右手のナイフを順手に、左手のナイフを逆手に持ち握り直す。そして右足を一歩後ろに引いて、左半身に構える。
言葉を交わしても警戒は怠らない。この男にはさっき後ろを取られている。それも事前になんの気配もなく、唐突に表れた印象だ。
体術でここまでの動きができるのか?できたとしても大人と子供くらいの、よほどの力の差が無ければ無理だろう。そして自分が感じた印象では、あれは何らかの能力である可能性が高い。
「ほぅ、これはこれは、よくお分かりになりましたね?その通りです。私はまだ軍に入って一年足らずの新参者です。前職はしがない町の仕立て屋でした。それがどうして軍人に転職したのか気になるところでしょうが、人様にお聞かせするには気持ちの良い話しではありませんので、割合させていただきます。ただ、私も家族もジャロン様に救われました。そのご恩に報いるために戦いに身を投じた。それだけは申し上げておきます」
目元には笑みをたたえ、親しみやすい柔らかい口調で話す姿は、とても敵対している相手とは思えない。
ここが戦場でなければ、目の前の男が敵だとあらかじめ分かっていなければ、疑う事もなく気を許してしまっていただろう。
「・・・なかなか怖い男だね。人の懐に入り込むのが上手そうだ。けれどまさか私に通用するとは思ってないだろ?構えなよ」
ナイフの刃先向けて、かかってこいと招くように振ると、目の前の坊主頭の男は笑みを絶やさずに口を開いた。
「・・・ふふ・・・ははははは、そうですね、あなたのおっしゃる通りです。ここまでの戦いを見させていただきましたが、あなたの油断はそう簡単には誘えそうにありません・・・では」
やりましょうか
そう呟いて、バーフラムは右手に握る大振りのナイフをレイチェルに突き付けた。
互いに向けあう白銀の刃が殺気をぶつけ合い、レイチェルとバーフラムの間の空気がビリビリと張り詰められていく。
別空間かと錯覚するほどの緊張感に当てられたからか、いつの間にか二人を囲むように円ができていた。
クインズベリー兵も帝国兵も剣を下ろし、魔法を撃つ事を止め、赤毛の女戦士と、見慣れぬ漆黒の鎧の男。思わず一歩後ずさってしまいそうなくらい強烈な圧迫感に、兵士達が息を飲み、顎の先から汗の粒を落とす。
・・・こいつ、隙が無い・・・・・
相手に向けたナイフの切っ先、肩と肘、腰から下、そして視線の動き。
いくつものフェイントをかけ、さっきから先手の取り合いをしているが、お互いに全て読み切って躱し、高度な駆け引きが続いている。
・・・ジャロン・リピネッツ直属の四人衆とか言っていたな、つまりこいつレベルの敵が、あと三人いるということか。
向き合ったから分かる、こいつは幹部クラスの実力はある。
さっきは私一人で帝国軍を蹴散らしてやると思ったが、そう簡単にはいかせてくれないみたいだな。
・・・ほう、口だけじゃないですね、やはり強い、先手をとろうとしても先の先をとってくる。
見たところ二十歳かそこらの女子(じょし)ですが、その若さで熟練の達人を感じさせる風格がある。
彼女が持つ本来の才能はあるでしょう。でもそれだけじゃない・・・良い師に恵まれたのでしょう。
私もね、かつては国一番の戦士になるために鍛えに鍛えたものです。
親の後を継いで仕立て屋になった後は、戦士としての闘志を胸の内にしまってましたがね。
ジャロン団長の下について戦場に復帰し、眠っていた私の闘志が再び燃え上がりました。
この一年、ジャロン団長の下で任務をこなす日々に不満はありませんでした。私達家族の恩人の力になれるのですから、不満などありようがない。
・・・ですが、どこか退屈でした。
私がかつて目指した最強・・・
その魂を奮い立たせるだけの強者がいない。
どこにいけば会える?どこにいけば私の全力をぶつけられる?
私はずっと彷徨っていました。
そしてやっと出会えた。
レイチェル・エリオット、あなたなら私の魂を奮わせる事ができるでしょう!
「ッ!?」
その時、樹々の葉をすり抜けて陽の光がレイチェルの視界を遮った。
眩しさにレイチェルが瞼を閉じた一瞬、それを見逃す程バーフラムはあまい相手ではない。
「ツァァァァァァァーーーーーーーーッツ!」
大地を踏み砕き、爆風を巻き上げバーフラムが迫った!
「私は帝国軍第二師団長ジャロン・リピネッツ様直属の、影の四人衆が筆頭バーフラム・ハヌリと申します。今の一撃、完全に気配を消したつもりでしたが、よくお受け止めになられました。敬意を表して少し本気を出しましょう」
年齢はおそらく30~35歳、身長は185、いや190センチはあるか?鎧の上からでも分かる、無駄のない筋肉、バランスの取れた体付きだ。ボウズ頭に髭面で強面だが、言葉使いや態度は妙に礼儀正しい。
かと言って堅苦しい程ではなく、適度な距離感を保っている・・・これは接客だ。
客商売をやっている私には分かるが、これは一朝一夕で身につくものではない。長年人を相手にした商売をしてきた人間が、日常的にも意識せず出る振る舞いだ。
「・・・私はリサイクルショップ・レイジェスの副店長でレイチェル・エリオットだ。お前、本当に軍人か?その言葉使いや雰囲気は、日常的に接客をしてきた者の匂いがする」
右手のナイフを順手に、左手のナイフを逆手に持ち握り直す。そして右足を一歩後ろに引いて、左半身に構える。
言葉を交わしても警戒は怠らない。この男にはさっき後ろを取られている。それも事前になんの気配もなく、唐突に表れた印象だ。
体術でここまでの動きができるのか?できたとしても大人と子供くらいの、よほどの力の差が無ければ無理だろう。そして自分が感じた印象では、あれは何らかの能力である可能性が高い。
「ほぅ、これはこれは、よくお分かりになりましたね?その通りです。私はまだ軍に入って一年足らずの新参者です。前職はしがない町の仕立て屋でした。それがどうして軍人に転職したのか気になるところでしょうが、人様にお聞かせするには気持ちの良い話しではありませんので、割合させていただきます。ただ、私も家族もジャロン様に救われました。そのご恩に報いるために戦いに身を投じた。それだけは申し上げておきます」
目元には笑みをたたえ、親しみやすい柔らかい口調で話す姿は、とても敵対している相手とは思えない。
ここが戦場でなければ、目の前の男が敵だとあらかじめ分かっていなければ、疑う事もなく気を許してしまっていただろう。
「・・・なかなか怖い男だね。人の懐に入り込むのが上手そうだ。けれどまさか私に通用するとは思ってないだろ?構えなよ」
ナイフの刃先向けて、かかってこいと招くように振ると、目の前の坊主頭の男は笑みを絶やさずに口を開いた。
「・・・ふふ・・・ははははは、そうですね、あなたのおっしゃる通りです。ここまでの戦いを見させていただきましたが、あなたの油断はそう簡単には誘えそうにありません・・・では」
やりましょうか
そう呟いて、バーフラムは右手に握る大振りのナイフをレイチェルに突き付けた。
互いに向けあう白銀の刃が殺気をぶつけ合い、レイチェルとバーフラムの間の空気がビリビリと張り詰められていく。
別空間かと錯覚するほどの緊張感に当てられたからか、いつの間にか二人を囲むように円ができていた。
クインズベリー兵も帝国兵も剣を下ろし、魔法を撃つ事を止め、赤毛の女戦士と、見慣れぬ漆黒の鎧の男。思わず一歩後ずさってしまいそうなくらい強烈な圧迫感に、兵士達が息を飲み、顎の先から汗の粒を落とす。
・・・こいつ、隙が無い・・・・・
相手に向けたナイフの切っ先、肩と肘、腰から下、そして視線の動き。
いくつものフェイントをかけ、さっきから先手の取り合いをしているが、お互いに全て読み切って躱し、高度な駆け引きが続いている。
・・・ジャロン・リピネッツ直属の四人衆とか言っていたな、つまりこいつレベルの敵が、あと三人いるということか。
向き合ったから分かる、こいつは幹部クラスの実力はある。
さっきは私一人で帝国軍を蹴散らしてやると思ったが、そう簡単にはいかせてくれないみたいだな。
・・・ほう、口だけじゃないですね、やはり強い、先手をとろうとしても先の先をとってくる。
見たところ二十歳かそこらの女子(じょし)ですが、その若さで熟練の達人を感じさせる風格がある。
彼女が持つ本来の才能はあるでしょう。でもそれだけじゃない・・・良い師に恵まれたのでしょう。
私もね、かつては国一番の戦士になるために鍛えに鍛えたものです。
親の後を継いで仕立て屋になった後は、戦士としての闘志を胸の内にしまってましたがね。
ジャロン団長の下について戦場に復帰し、眠っていた私の闘志が再び燃え上がりました。
この一年、ジャロン団長の下で任務をこなす日々に不満はありませんでした。私達家族の恩人の力になれるのですから、不満などありようがない。
・・・ですが、どこか退屈でした。
私がかつて目指した最強・・・
その魂を奮い立たせるだけの強者がいない。
どこにいけば会える?どこにいけば私の全力をぶつけられる?
私はずっと彷徨っていました。
そしてやっと出会えた。
レイチェル・エリオット、あなたなら私の魂を奮わせる事ができるでしょう!
「ッ!?」
その時、樹々の葉をすり抜けて陽の光がレイチェルの視界を遮った。
眩しさにレイチェルが瞼を閉じた一瞬、それを見逃す程バーフラムはあまい相手ではない。
「ツァァァァァァァーーーーーーーーッツ!」
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