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1279 勝負をかける
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「へぇ、ジャロン団長本当に強いのね。アゲハさんが逃げ回ってるじゃない。これなら本当に団長一人でクインズベリーを制圧できるかも」
トリッシュ・ルパージュは、自分が考えていた以上の戦闘力を見せたジャロン・リピネッツに、驚きを感じながらも感嘆の言葉を口にした。
師団長なのだから、当然強いのは分かる。
しかし頭で思っているのと、実際に見るのとでは全く別物だった。
今、自分の眼に映る光景は、ジャロン・リピネッツの攻撃に防戦一方となっているアゲハの姿だった。
トリッシュにも分かる。身体能力は完全にアゲハが上である。ジャロンがアゲハに勝っているものは何一つ無い。しかし現実にはアゲハが攻め立てられている。
「本当にどうなっているのかしら?アゲハさんの攻撃が全く当たらないなんて。やっぱり何か秘密があるのは間違いないわね。身体能力以外の何か・・・多分敵の攻撃を見切れるとか、そういう魔道具を持っている。あるいはそれに近い特殊な能力・・・」
腕を組み、自分の考察にある程度の確信を持ち頷く。
四勇士のフィゲロアとジャロンの戦いが始まった直後、トリッシュは巻き添えを食わないために、戦いの場を離れていた。
現在は十数メートル程距離を開け、太く大きな樹の後ろに身を隠しながら、アゲハとジャロンの戦いに目を向けている。
「素晴らしいわ、ジャロン団長。やっぱりあなたに付いて来て正解でしたね」
魔道具研究者であるトリッシュの最大の興味は、やはり魔道具の開発である。
この戦いの中でもそれは変わらない。そのために副団長だったバージルを挑発し、けしかける事までした。
今もジャロン・リピネッツの強さの裏に隠されたものに、好奇心が刺激され目が離せないでいる。
「ふふふ・・・魔道具研究者としての血が騒ぐわ」
そう言ってトリッシュはその目に貪欲な光を宿し、他人には見せる事のない表情で微笑んだ。
「くっ!」
顔を後ろに反らし、振るわれたナイフを躱す。一瞬でも遅れていれば、ジャロンのナイフが顔を斬り裂いていただろう。
だがこれで終わりではない。顔を反らした事で、自然と背中も後ろに反らす形になってしまった。
次の攻撃に対しての動作が一手遅れをとる事になる。
ジャロンの左の蹴りがアゲハの右腿を打ち付ける!
「ぐぅッ!」
ジャロンの蹴りは強いものではない。十人並み程度の力量しかないジャロンの打撃では、単発でアゲハを倒す事は困難である。
だが倒せないわけでない。
単発で倒せないのであれば、倒せるまで打ち続ければいい。
現にアゲハの右足は、ここまで何発も打ち込まれた蹴りによって、赤く腫れ出していた。
「・・・しぶといな。だがいつまでも逃げ切れるものではないぞ」
「はぁっ・・・はぁっ・・・ふん、まだまだいけるさ」
触れたものを腐らせる呪いの刃、回避以外の一切の防御が許されないこのナイフだけは、髪の毛の一本も切らせずに絶対に躱さなくてはならない。
だがそのために無理な体勢を余儀なくされ、ナイフ以外の打撃を受ける事になってしまう。
一発一発は軽いものだとしても、積み重ねる事で無視のできないダメージを抱える事になった。
ジャロン・リピネッツ、ここまでやるとはな・・・
私が攻撃した時にはすでに軌道を見極め、避けながら反撃にまで繋げている。
見てから避けるのではなく、見る前に避けているんだ。回避と反撃が一つになっていて、初動が異常としか言えない速さだ。その結果私の動作が一つ確実に遅れる事になる。
ナイフだけはなんとか躱せているが、ナイフに神経を集中するあまり、次の攻撃がなかなか防げない。
だがあのタイミングでは、ナイフに意識を置くしかできない。髪の毛一本触れるだけでも危険なんだ。
ナイフ以外はあまんじて受けるしかないが、これだけ執拗に同じところを蹴られると、いい加減に足が腫れてきた。
あまり長くは持たないな・・・・・
「・・・どのみちこのままじゃ勝ち目がないんだ。だったら・・・」
アゲハは薙刀を両手に持つと、石突を前に、刃を後ろに向け脇に構えた。
呼吸を整え、精神を集中させる。
「・・・風よ」
そう一言だけ呟くと、足元から緑色の風が捲き起こった。周囲に積もった雪は突風で吹き飛ばされ、樹々の枝葉は大きく揺さぶられる。
フィゲロア、お前の言う通りだ。
やはりこの男、ジャロン・リピネッツは私の動きを完全に見切っている。
いや、見切るなんてものじゃないな、どんな技を繰り出そうと、技を出したその時には躱されて反撃をくらうんだ。これは動きを読むなんてものではすまない。
ジャロン・リピネッツは分かっているんだ。
私がこれから何をするのか、その動きが見えているんだ。そうでもなければ説明がつかない。
とんでもない男だ。こんな力を持っているのなら、身体能力が平凡だとしても何も問題はない。
無敵と言ってもいいだろう。
ではどうやって勝つか?勝てるのか?
「・・・いや、勝つんだよ」
私は両手で握る長刀に力を込める。後ろに向け構えた刃に緑の風が集まり、強く大きく力を漲らせていく。
カエストゥスの風を見せてやる!勝負だ、ジャロン・リピネッツ!
強く吹き付ける雪煙を体に受けながらも、ジャロンは眉の一つも動かさずにアゲハを見据えた。
対峙する黒髪の女戦士の目には、ある種の覚悟を決めた意思の強さが見えた。
さっきまでとは違う。勝負をかけてきたか。
「何をしても無駄だ。あんたでは俺には勝てない」
アゲハの風に対するように、ジャロン・リピネッツは右手に握る古びたナイフを突きつけた。
そうだ。あんたが何をしようと俺には勝てない。俺は一対一なら絶対に負けない。
時間にしてほんの数舜だが、人の動きの先が見える俺の目を持ってすれば、相手が誰であろうと勝てる。
睨み合うアゲハとジャロン。
先に動いたのはアゲハだった。
トリッシュ・ルパージュは、自分が考えていた以上の戦闘力を見せたジャロン・リピネッツに、驚きを感じながらも感嘆の言葉を口にした。
師団長なのだから、当然強いのは分かる。
しかし頭で思っているのと、実際に見るのとでは全く別物だった。
今、自分の眼に映る光景は、ジャロン・リピネッツの攻撃に防戦一方となっているアゲハの姿だった。
トリッシュにも分かる。身体能力は完全にアゲハが上である。ジャロンがアゲハに勝っているものは何一つ無い。しかし現実にはアゲハが攻め立てられている。
「本当にどうなっているのかしら?アゲハさんの攻撃が全く当たらないなんて。やっぱり何か秘密があるのは間違いないわね。身体能力以外の何か・・・多分敵の攻撃を見切れるとか、そういう魔道具を持っている。あるいはそれに近い特殊な能力・・・」
腕を組み、自分の考察にある程度の確信を持ち頷く。
四勇士のフィゲロアとジャロンの戦いが始まった直後、トリッシュは巻き添えを食わないために、戦いの場を離れていた。
現在は十数メートル程距離を開け、太く大きな樹の後ろに身を隠しながら、アゲハとジャロンの戦いに目を向けている。
「素晴らしいわ、ジャロン団長。やっぱりあなたに付いて来て正解でしたね」
魔道具研究者であるトリッシュの最大の興味は、やはり魔道具の開発である。
この戦いの中でもそれは変わらない。そのために副団長だったバージルを挑発し、けしかける事までした。
今もジャロン・リピネッツの強さの裏に隠されたものに、好奇心が刺激され目が離せないでいる。
「ふふふ・・・魔道具研究者としての血が騒ぐわ」
そう言ってトリッシュはその目に貪欲な光を宿し、他人には見せる事のない表情で微笑んだ。
「くっ!」
顔を後ろに反らし、振るわれたナイフを躱す。一瞬でも遅れていれば、ジャロンのナイフが顔を斬り裂いていただろう。
だがこれで終わりではない。顔を反らした事で、自然と背中も後ろに反らす形になってしまった。
次の攻撃に対しての動作が一手遅れをとる事になる。
ジャロンの左の蹴りがアゲハの右腿を打ち付ける!
「ぐぅッ!」
ジャロンの蹴りは強いものではない。十人並み程度の力量しかないジャロンの打撃では、単発でアゲハを倒す事は困難である。
だが倒せないわけでない。
単発で倒せないのであれば、倒せるまで打ち続ければいい。
現にアゲハの右足は、ここまで何発も打ち込まれた蹴りによって、赤く腫れ出していた。
「・・・しぶといな。だがいつまでも逃げ切れるものではないぞ」
「はぁっ・・・はぁっ・・・ふん、まだまだいけるさ」
触れたものを腐らせる呪いの刃、回避以外の一切の防御が許されないこのナイフだけは、髪の毛の一本も切らせずに絶対に躱さなくてはならない。
だがそのために無理な体勢を余儀なくされ、ナイフ以外の打撃を受ける事になってしまう。
一発一発は軽いものだとしても、積み重ねる事で無視のできないダメージを抱える事になった。
ジャロン・リピネッツ、ここまでやるとはな・・・
私が攻撃した時にはすでに軌道を見極め、避けながら反撃にまで繋げている。
見てから避けるのではなく、見る前に避けているんだ。回避と反撃が一つになっていて、初動が異常としか言えない速さだ。その結果私の動作が一つ確実に遅れる事になる。
ナイフだけはなんとか躱せているが、ナイフに神経を集中するあまり、次の攻撃がなかなか防げない。
だがあのタイミングでは、ナイフに意識を置くしかできない。髪の毛一本触れるだけでも危険なんだ。
ナイフ以外はあまんじて受けるしかないが、これだけ執拗に同じところを蹴られると、いい加減に足が腫れてきた。
あまり長くは持たないな・・・・・
「・・・どのみちこのままじゃ勝ち目がないんだ。だったら・・・」
アゲハは薙刀を両手に持つと、石突を前に、刃を後ろに向け脇に構えた。
呼吸を整え、精神を集中させる。
「・・・風よ」
そう一言だけ呟くと、足元から緑色の風が捲き起こった。周囲に積もった雪は突風で吹き飛ばされ、樹々の枝葉は大きく揺さぶられる。
フィゲロア、お前の言う通りだ。
やはりこの男、ジャロン・リピネッツは私の動きを完全に見切っている。
いや、見切るなんてものじゃないな、どんな技を繰り出そうと、技を出したその時には躱されて反撃をくらうんだ。これは動きを読むなんてものではすまない。
ジャロン・リピネッツは分かっているんだ。
私がこれから何をするのか、その動きが見えているんだ。そうでもなければ説明がつかない。
とんでもない男だ。こんな力を持っているのなら、身体能力が平凡だとしても何も問題はない。
無敵と言ってもいいだろう。
ではどうやって勝つか?勝てるのか?
「・・・いや、勝つんだよ」
私は両手で握る長刀に力を込める。後ろに向け構えた刃に緑の風が集まり、強く大きく力を漲らせていく。
カエストゥスの風を見せてやる!勝負だ、ジャロン・リピネッツ!
強く吹き付ける雪煙を体に受けながらも、ジャロンは眉の一つも動かさずにアゲハを見据えた。
対峙する黒髪の女戦士の目には、ある種の覚悟を決めた意思の強さが見えた。
さっきまでとは違う。勝負をかけてきたか。
「何をしても無駄だ。あんたでは俺には勝てない」
アゲハの風に対するように、ジャロン・リピネッツは右手に握る古びたナイフを突きつけた。
そうだ。あんたが何をしようと俺には勝てない。俺は一対一なら絶対に負けない。
時間にしてほんの数舜だが、人の動きの先が見える俺の目を持ってすれば、相手が誰であろうと勝てる。
睨み合うアゲハとジャロン。
先に動いたのはアゲハだった。
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