異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1302 わずかな希望でも

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「なっ!?あ、あれは!?」

「まずい!伏せろォォォォォーーーーーーッツ!」

視線の先の空に見えた、二つの巨大な光弾。離れていてもここまで届く強烈な圧力に気圧されてしまうと、傍らで叫ぶヴァンの声に我に返った。


「シャクール様ーーーーーーーっ!」

あの二つの光弾がシャクールと、シャクールの戦っている相手によるものだと、サリーは瞬時に理解した。それが黒魔法最大の破壊力を誇る、光源爆裂弾だという事も。

ただでさえすさまじい破壊力を持つ光源爆裂弾。
それを四勇士のシャクール・バルデスが、そして同等の実力を持つ者がぶつけ合う。

それがどれほどの爆発を引き起こすのか・・・・・想像した時サリーは叫んでいた。

「サリーさん!耳を塞いで口を閉じろ!衝撃に備えるんだ!」

「だ、だめです!シャクール様!逃げてぇーーーーーーッツ!」

いつも落ち着いていて理知的なサリーが青い顔で取り乱し、ヴァンの静止も振り払って氷の川へと向かって行く。
ヴァンは後ろから腕を掴み押さえつけると、そのままサリーと地面に倒れこんだ。

「何を考えているんだ!死ぬぞ!」

「離してっ!シャクール様が!」

「ヴァン!サリーさん!来るぞっ! 」

アラタも頭を押さえて腹ばいになると、大きな声で叫んだ。

その直後、目を開けていられない程の大爆発と共に、耳をつんざく轟音、そして吹き飛ばされそうなくらい強烈な突風と衝撃が、地上のアラタ達に襲い掛かって来た。





「くっ、フラナガンめ、まさか光源爆裂弾を使うとは!」

上空で大爆発が起きると、ガルバンはカカーチェを護るように前に出た。
周囲で待機していた青魔法使い達が結界を張るが、シャクールとフラナガンの光源爆裂弾の衝突の余波は、結界を大きく揺さぶり、地表を伝ってくる振動に足がすくわれそうになる程だった。

気を抜くと結界を突き破られそうな衝撃に、青魔法使い達も歯を食い縛り耐えていた。


「ふっふっふっ、フラナガンめ、あと一歩じゃったが相打ちか」

盾となって自分の前に立つガルバンの背に、カカーチェの笑い声が届いた。

「カカーチェ様?」

怪訝な顔で振り返るガルバンに、カカーチェはニヤリと笑ったまま言葉を続けた。

「のうガルバンよ、どうじゃ?ワシの言った通りじゃろ?すさまじい魔力じゃったな、あの男を相手にフラナガンは負けはせんかった。まぁ、あと一歩のところを相打ちに持っていかれたが、そこは敵ながら大した男じゃったと褒めてやろうではないか。フラナガンで無ければ止められんかったじゃろう。あやつは立派に役目を果たした」

「・・・この光源爆裂弾で、空中の黒魔法使い達も巻き込まれました。いくら勝利のためとはいえ、味方を巻き込むなど・・・」

軽い調子のカカーチェに対し、ガルバンの表情は険しいものだった。

シャクール・バルデスに勝つためとはいえ、結果として光源爆裂弾をぶつけ合う事となり、空中戦を繰り広げていた大勢の魔法兵を巻き添えにしてしまったのだ。それはクインズベリー側も同じだが、あの場面で光源爆裂弾を撃つ必要性があったのかも疑問だった。

ガルバンの心中を察したのか、カカーチェは笑みを引っこめると、体を張って自分の前に立つガルバンに鋭い視線を送った。

「ガルバンよ、やり過ぎかもしれんが、フラナガンは確実に四勇士を仕留めるために光源爆裂弾を撃った。あの男の戦闘力は見たじゃろう?あれほどの使い手、万一にも生かしておいてはならん。仕留められる時に確実に仕留めておかねば、こっちが寝首をかかれる事になる。確かに大勢の魔法兵を巻き添えにしたが、ワシはフラナガンのやり方を批判する気はない。なぜならワシも含め、帝国の勝利のためにすでに命は捧げておるからじゃ。ガルバンよ、今はお前にその覚悟を問うつもりはない。じゃが、あそこで散っていった部下達は誰一人悔やんではおらんじゃろう」

ガルバンは言葉を返す事ができなかった。
国のために戦う兵士として、勝利のために仲間さえ道連れにする行動は、ガルバンにはとうてい賛同できるものではなかった。従うべき上官といえど、その意見には頷く事ができない。

カカーチェもガルバンの考えは理解している。
だからこそ、無理にガルバンに返答をさせる事はせず、ただ自分はフラナガンと同じ考えだとだけ伝えたのだ。

「ガルバンよ、空中戦は終わった。時期にクインズベリーは川を渡って来るじゃろう。各部隊の指揮官に地上戦の備えをさせておけ」

「承知しました」


光源爆裂弾の余波も徐々に治まってきた。上空では今だ黒煙が立ち込めているが、クインズベリー軍は川を凍らせ渡って来る。
カカーチェの指示を受けたフラナガンは、少なからず思うところはあったが素早く切り替えると、各部隊へ指示を飛ばし、地上戦への準備に動いた。





「くっ・・・すげぇ威力だったぜ・・・」

しばらくは身を低くしていたが、徐々に爆風が治まってくるとアラタは立ち上がって辺りを見回した。

目の前には青く輝く結界が張られている。
軍の青魔法使い達が張ったもので、光源爆裂弾の衝撃を防いでいたのだ。
これが無ければ腹ばいになっていても、耐えられたかどうか分からない。

「ふぅ・・・たくっ、とんでもねぇ威力だったな」

「ヴァン、大丈夫か?・・・・・サリーさん・・・」

すぐ後ろから聞こえた声に振り返ると、大きく息をついたヴァンが地面から体を起こしたところだった。手を伸ばそうとして、アラタはその横で呆然とした表情で空を見るサリーに目がいった。

サリーは地面に腰を下ろしたまま、ただ呆然と空を見つめていた。
そう、光源爆裂弾の爆発で発生した黒煙を、感情の消えた目でじっと見つめ続けていた。

「・・・サリーさん・・・立てますか?」

「・・・・・」

声をかけても返事は無い。こちらを見ようともしない。ただ空で起きた爆発の跡、シャクールが最後に戦っていたそこだけを見つめ続けていた。

「サリーさん、大丈夫・・・」
「・・・アラタ」

ヴァンは立ち上がると、アラタの肩に手を置いて、小さく首を横に振った。

かけられる言葉などない。
あの大爆発の中心にいたのだ。それがどういう事かなんて、言葉にするまでもない。

いまはただ、そっとしておく事しかできない。
それがヴァンの判断だった。

アラタにもヴァンの言いたい事は理解できた。
慰めや気休めなんて何にもならない、むしろ逆効果になったりするものだ。


「ヴァン・・・っ」

分かってる、分かってるんだ!でも、でも俺は・・・・・!


「サリーさん!サリーさん聞いてください!」

「お、おい!アラタっ、お前」

腰を下ろし、サリーの両肩をつかんで大きく声をかけると、ようやくサリーはアラタに目を向けた。
たった今まで呆然としていたが、他に意識が向いて現実を理解し始めたのか、サリーの両目に涙が浮かんだ。唇を噛みしめ体が震えだす。

「あ・・・ああ・・・シ、シャクール、様が・・・わ、私・・・」


「生きてます!」


震える声でサリーが話そうとすると、それを遮るようにアラタが大きな声をかぶせてきた。

「ッ!?」

思いもよらない言葉に目を見開くサリーに、アラタは繰り返し同じ言葉をかけた。
サリーの心に届くように、サリーが信じるように、サリーが希望を持てるように、何度も何度も繰り返し言葉をかけた。

「生きてます!あいつは、シャクール・バルデスは生きてます!生きてるんです!サリーさん、あいつが死ぬわけないでしょ!シャクールはめっちゃ強いじゃないですか!サリーさんが一番知ってるでしょ!あいつは生きてるんです!サリーさんが信じなくてどうするんですか!?」

これがどれだけ無責任な事かは分かっている。希望だけ持たせて、それでダメだったらどうする?
サリーの心により深い傷をつけるだけかもしれない。

けれどアラタには、なんの根拠もないが、不思議とシャクールが生きていると思えた。


「・・・アラタさん・・・そうです、ね・・・そうですよね、私が、私が信じなくちゃ、ダメですよね。シャクール様は生きてるんですよね」

「サリーさん・・・はい!そうですよ!シャクールは生きてます!だって、あいつがサリーさんを残して死ぬわけないじゃないですか」

サリーの瞳に少しづつ光が戻って来るのを見ると、アラタはゆっくり立ち上がり、サリーにスッと手を伸ばした。

「サリーさん・・・行きましょう。きっとまた会えます。だから前を向いて歩いて行きましょう」


なぁ、シャクール・・・俺はなんの根拠もない無責任な事を言っているよな。
お前の恋人を傷つける結果になるかもしれない。それも分かってる。
でもさ・・・お前だって、ここでサリーさんが生きる希望を失って、泣き崩れるのは見たくないだろ?

今はどんな小さな希望だって、すがれるものがあれば心を繋ぎ止められるはずだ。

それに俺だって、お前が死んだなんて信じちゃいないからな?
だから俺もお前を探すよ、そんでまた会った時、心配かけんなよ!って背中を叩いてやるよ。


「・・・アラタさん・・・ありがとうございます」


こぼれる涙を指先でぬぐうと、サリーはアラタの手をとって立ち上がった。


雲の消えた空では、光源爆裂弾による黒煙が風に流され消えていった。

そこにサリーの想い人の姿は無かった。
その現実にサリーの胸は痛んだ。けれど頭に浮かぶ嫌な考えに、サリーは目を瞑った。


悪い方に考えるのは止めよう。
川に落ちたのかもしれない。爆発で遠くに吹き飛ばされたのかもしれない。

大丈夫・・・生きている。きっと生きている。

取り乱してしまったけれど、私はシャクール様の恋人として、最後の最後まで信じなければなりません。

だから、前を向いて行こう。


「行きましょう。シャクール様が作ってくださった道です。私達は私達の成すべき事をやり遂げましょう」
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