異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!

理太郎

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1366 東に向かったロンズデール軍

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クインズベリー国が西のパウンド・フォー、そして北のユナニマス大川で、帝国軍との激しい戦いを繰り広げていた時、東のセインソルボ山では、同盟国のロンズデールもまた帝国と睨みあっていた。


「おいマレス、帝国の連中は向こう側から動く気配はねぇぞ。完全に待ちだ。俺らが攻めて来たところを狙い撃ちにするつもりだぜ」

しとしと降る雪が肩を濡らす。
声をかけられた男アブエル・マレスは、水分を含んだ湿り気のある雪を右手で払い落し、声の主にスッと目を向けた。

「そうか、予想通りだな。ニール、ここはヤツらのテリトリーだ。当然俺達の動きは全て見られているはず。それにも関わらず帝国に動きがないと言う事は、こっちに動いてほしいんだろう。おそらく遠距離攻撃だ。この道は細いから逃げ場も無いしな」

アラルコン商会の跡取り娘、シャノン・アラルコン。
その右腕であり、全幅の信頼を得ているアブエル・マレスは、この闘いで東のセインソルボ山攻略の、総司令官という立場を請け負っていた。

アブエル・マレスがここまで高い評価を受けているのは、平民とは思えないほどの高い教養と、唯一無二と言っていいマレスの特異能力にある。
その特異能力とは、単身で帝国に潜入し、各師団の情勢を調べ上げた密偵としての稀有なまでの力である。

密偵としてのマレスの能力は、司令官として誰よりも優れた力を発揮できる。
シャノンはロンズデール国王にそう進言し、実現させた事だった。


「だろうよ。偵察からの報告だと、黒魔法使いが前に出ていたようだ。俺らがこの道に入ったところでドカーン!ってとこだな。んで、どうするよマレス」

顔をしかめて両手の平を空に向ける男の名は、ニール・グラテロール。年齢は28歳、マレスとは同い年の幼馴染である。
身長は175cm程で標準的な体系をしている。短い銀髪に人なつっこそうな優しい目をしている。
青いパイピングをあしらった、薄水色の生地のローブを身にまとっている。

マレスはこの戦いにおいて総司令官という立場である。だがニールとは立場を超えた友情があるゆえに、ニールの態度や話し方に口を挟む事はしない。

「そうだな・・・一度整理するぞ、地形的に俺達がこの山を越えて帝国に入るには、この道を行く事が一番だ。他の道は傾斜がキツイし、戦うどころか雪と氷でまともに動けないからな。それは相手も同じ条件だが、開けた場所を確保して陣形を作っている帝国に対し、俺達はあの狭い道を通って攻め込まないといけないって事が厳しいな」

マレスとニールが難色を示している道は、両側が切り立った岩壁に阻まれ、さらに先に行くに連れてどんどん感覚が狭まっているのだ。
今は何十人が横に並ぼうとも道幅に余裕があるが、奥に行けばその幅も半分以下になる。
身動きがとりにくくなったところを、帝国軍は狙い撃ちにするという作戦だった。

「そうそう、帝国があそこから出てきてくれりゃ、俺らも楽に戦えんだけどな。って言っても、現実問題としては俺らが行くしかねぇんだよな。どうする?やっぱ青魔法使いで決壊を張って突撃をかけるか?それしかねぇと思うぜ?帝国のヤツらもそう思ってんだろうけど」

「ああ、そうだよな。俺もそれしか無いと思う・・・あいつがいなかったらな」

ニッと口角を持ち上げると、マレスは後ろを振り返って声を上げた。


「フェムケ!こっちに来てくれ!」


マレスとニールの後ろには、およそ五千のロンズデール兵が列を成していた。
ロンズデールがセインソルボ山の攻略に用意した兵の総数は二万五千。しかし地形上の問題で、一度にそれだけの数では移動ができないため、残りの二万は山の麓(ふもと)で待機している。


「え~・・・私ですかぁ?」


名前を呼ばれて、面倒そうに眉根を寄せながら前に出てきたのは、薄水色のローブを着て、栗色の髪を肩口でくるくると巻いた小柄な女の子だった。そう、大人の女性ではなく、言葉通り女の子だ。

フェムケ・ソルスランド。年齢は13歳、身長は150センチにも満たない小柄な女の子である。
ローブにあしらわれた白のパイピングから、彼女が白魔法使いである事が分かる。

「そうだフェムケ、さっそく出番だぞ」

そう言って目を細めニヤリと笑うマレスに、フェムケは露骨に顔を引きつらせて、体を後ろに反らした。
髪と同じ栗色の瞳には、マレスに対する苦手意識がありありと浮かんで見える。

「あ、あの・・・マレスさん、悪人顔してますよ?私に何をやらせる気ですか?」

「決まってるだろ?お前のサイレント・バブルだ。敵はこの道の先で密集してるそうだが、この状況、お前の魔道具が最も生かせるんじゃないのか?」

「あ~・・・はい、やりたい事は分かりました。そうですねぇ・・・確かに私のバブルがぴったりですねぇ・・・」

「なんだフェムケ、面倒くさいってのか?」

てきとうな返事にマレスが一歩詰め寄り、フェムケをチラリと睨む。するとフェムケは慌てて両手を顔の前で振った。

「あ、いやいやいや!そんな事ないですよぉ!やりますやります!あはははははは~」

「まったく、そりゃこんなとこに連れて来られて不本意なのは分かるが、お前は俺にもう少し感謝してもいいと思うぞ?」

「はいはい、そりゃもう感謝してますよぉ、じゃあパッパッとやっちゃいますね。マレスさんは、後始末頼みますよぉ」

作り笑いを浮かべ、後ろ手に頭を掻きながら、フェムケは足早にマレスを追い越し、切り立った崖の前まで進み出た。


「・・・おい、マレス、あの子誰だ?初めて見る顔だな」

なにやら気心が知れた様子で話す二人を見て、ニールが近づき声をかけた。


「ああ・・・最近知り合った白魔法使いの子でな、フェムケ・ソルスランドって言うんだ。手癖が悪くてな、あの年でスリを生業をしていたんだ」

「はぁっ!?・・・スリ!?」

驚きをそのまま言葉に出すニールに、マレスはニヤリと笑い、そうだ、と頷いた。


「俺も財布をスラれたんだが、神業ってヤツだな。まったく分からなかった。だが、そんな事ばかりやってると恨みを買うだろ?ゴツイ男連中に目を付けられてたようで、囲まれてたところを助けてやったんだよ」

「はぁ~・・・そんな事があったのか。それで、あの子が白魔法使いだって分かって、戦力に加えたって事か?しかし、白魔法使いがどうやってここを突破するんだ?」

「・・・まぁ、見てな」


首を傾げるニールを促し、マレスは顔を前方に向ける。そして切り立った崖の前に立つフェムケの背中を見た。



あの日・・・俺がフェムケを助けたなんて言ったが、本当はフェムケには俺の助けなんていらなかったんだ。フェムケのサイレント・バブルなら、あんな状況なんでもないからな。

けど、スリなんて続けていたら、いつまで経ってもまともな生活を送れない。
だから俺はフェムケに住む家を用意して、アラルコン商会での仕事を世話してやった。

正直、この戦争に連れて来るかはギリギリまで迷った。せっかく落ち着いた生活をできるようになったんだ。血なまぐさい戦争なんて関わらせたくなかった。

だがやはり、フェムケの魔道具が有るのと無いのとでは戦略がまるで違う。

国のため、ロンズデールで暮らす人々のために、フェムケを連れて来る事に決めたんだ。


「悪いなフェムケ、前線に出すつもりは無い。だが少しばかり力を貸してもらうぞ」

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