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1369 帝国軍の誤算
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「できる限り離れて仕留めるんだ!バブルには極力触るな!」
アブエル・マレスは右手に持つ剣で、泡によって手足を地面に張り付けられた、帝国兵の喉を一突きにした。
フェムケのサイレント・バブルがどういうものかは、全員に説明してある。
しかし言葉だけでは軽く見てしまう者はどうしても出てくる。サイレント・バブルは強い粘着力で、相手の動きを封じる魔道具だが、それに敵味方の区別は無い。したがって敵を仕留めようとしてバブルに触れてしまえば、自分自身がバブルに捕らわれてしまうのだ。
「うわっ!し、しまった!」
マレスが注意を促していると、すぐ傍で自軍の兵が帝国兵に捕まっている姿が目に入った。
バブルを受けた帝国兵がそれを逆手にとったようだ。泡に包まれた右腕を、ロンズデール兵の左腕にぶつけ合わせている。泡の粘着は少し触れた程度でも、簡単には引き剥がせない程、べったりとくっ付くのだ。
「ロンズデールッ!ぶっ殺してやる!」
左手で剣を振り上げた帝国兵が、怒声とともにロンズデール兵の頭を斬りつけようとしたその時、泡で押さえていた帝国兵の右腕が、突然宙を舞った。
「なッ!?」
一瞬だった。なぜ自分の腕が目の前を飛んでいる?状況を理解できずに一瞬だが体が硬直する。
それと同時に何かが焼けコゲたような臭いが鼻についたが、その正体を気にする時間など、この帝国兵には無かった。
斬り飛ばされた腕の痛みを感じる間もなく、グルグルと視界が回った。そして自分が誰に殺されたのかも分からないまま、首を斬り落とされた帝国兵の残された体は、その場に崩れ落ちた。
「気を付けろ、この泡は素手では絶対に外せない。対処方がないわけではないが、火魔法で蒸発させるか、俺のこの煉極刃(れんごくじん)のように、熱で斬るしかない。だから基本は離れて刺すんだ」
マレスが右手に持つ剣は、一見すると何の変哲もないありふれた鉄の剣にしか見えない。
しかし今その刀身は、まるで炎で熱したかのように高温を宿し、赤々と輝いていた。
「は、はい!助かりました。ありがとうございます!」
兵士が立ち上がったところを確認すると、マレスは小さく頷いて再び敵地の中に飛び込んで行った。
ロンズデール軍を待ち構えていた帝国軍は、予想だにしない先制攻撃を受けた事で混乱をきたしていた。
何万もの軍隊で帝国へ行くには、この道を通るしかない。のこのこやって来たところを、攻撃魔法の一斉射撃で一網打尽にするつもりだった。当然ロンズデールが先手をとって、しかけて来る可能性も考えた。
だからこそ死角無く兵を配置し、奇襲への備えも万事徹底したつもりだった。
しかし・・・まさかあんなものがあるとは、想像すらしなかった。
そう、それは音もなくふわふわと漂って来た。大小さまざまな無色透明の泡は、陽の光に紛れた事もあって、ある程度の距離に来るまで気が付かなかった。
シャボン玉?それを見た帝国兵達は、最初誰もがそう連想した。
しかし異常な数だった。ざっと見ただけでも数百、いや千以上はあっただろう。
こんなものが自然に発生するなどありえない。すぐにこれがロンズデールの仕掛けだと理解した帝国軍は、剣で斬りつけ、攻撃魔法をぶつけた。
それがフェムケのサイレント・バブルに対して、やってはならない悪手であり、誘い手でもあったのだ。
斬られ、貫かれ、破裂した泡玉は飛び散り、それを頭上から浴びた帝国兵達は、体に纏わりついた泡によって身動きを封じられた。
そこからは、狙いすましたようになだれ込んできたロンズデール軍によって、帝国は防戦を強いられた。
泡を逃れた兵達も、地面に張り付けられた味方が足かせとなって、動きが制限される。対してロンズデール軍は、ただ目の前の敵を倒せばいいだけなのだ。
どんどん倒されていく自軍の兵達を見て、このセインソルボ山の防衛を指揮する、帝国軍第五師団長ジェリメール・カシレロは舌を打った。
「チッ、なんだよあの泡は?めんどくせぇ魔道具だな」
「カシレロ様、ロンズデールを率いているのは、あの剣を振り回している金髪のようですね」
カシレロの隣に立つ銀髪の男が、鋭い眼差しで前方を睨みながら呟いた。
歳の頃は三十手前というところだろう。
身長は180センチ程、スラリとしていて筋肉質というわけではない。
銀の短髪、赤茶色の鋭い瞳、顎の周りに少しだけ髭を生やしているが、綺麗に手入れがされていた。
そしてこの男が帝国軍の幹部という事をしらしめる、深紅の鎧を身に着けていた。
「あぁ、そうみたいだな・・・良い腕だ。アルツール、いけるか?」
カシレロが面倒そうに目を向けると、アルツールは眉一つ動かさずに頷いて見せた。
「承知しました。私が排除してまいります」
アブエル・マレスは右手に持つ剣で、泡によって手足を地面に張り付けられた、帝国兵の喉を一突きにした。
フェムケのサイレント・バブルがどういうものかは、全員に説明してある。
しかし言葉だけでは軽く見てしまう者はどうしても出てくる。サイレント・バブルは強い粘着力で、相手の動きを封じる魔道具だが、それに敵味方の区別は無い。したがって敵を仕留めようとしてバブルに触れてしまえば、自分自身がバブルに捕らわれてしまうのだ。
「うわっ!し、しまった!」
マレスが注意を促していると、すぐ傍で自軍の兵が帝国兵に捕まっている姿が目に入った。
バブルを受けた帝国兵がそれを逆手にとったようだ。泡に包まれた右腕を、ロンズデール兵の左腕にぶつけ合わせている。泡の粘着は少し触れた程度でも、簡単には引き剥がせない程、べったりとくっ付くのだ。
「ロンズデールッ!ぶっ殺してやる!」
左手で剣を振り上げた帝国兵が、怒声とともにロンズデール兵の頭を斬りつけようとしたその時、泡で押さえていた帝国兵の右腕が、突然宙を舞った。
「なッ!?」
一瞬だった。なぜ自分の腕が目の前を飛んでいる?状況を理解できずに一瞬だが体が硬直する。
それと同時に何かが焼けコゲたような臭いが鼻についたが、その正体を気にする時間など、この帝国兵には無かった。
斬り飛ばされた腕の痛みを感じる間もなく、グルグルと視界が回った。そして自分が誰に殺されたのかも分からないまま、首を斬り落とされた帝国兵の残された体は、その場に崩れ落ちた。
「気を付けろ、この泡は素手では絶対に外せない。対処方がないわけではないが、火魔法で蒸発させるか、俺のこの煉極刃(れんごくじん)のように、熱で斬るしかない。だから基本は離れて刺すんだ」
マレスが右手に持つ剣は、一見すると何の変哲もないありふれた鉄の剣にしか見えない。
しかし今その刀身は、まるで炎で熱したかのように高温を宿し、赤々と輝いていた。
「は、はい!助かりました。ありがとうございます!」
兵士が立ち上がったところを確認すると、マレスは小さく頷いて再び敵地の中に飛び込んで行った。
ロンズデール軍を待ち構えていた帝国軍は、予想だにしない先制攻撃を受けた事で混乱をきたしていた。
何万もの軍隊で帝国へ行くには、この道を通るしかない。のこのこやって来たところを、攻撃魔法の一斉射撃で一網打尽にするつもりだった。当然ロンズデールが先手をとって、しかけて来る可能性も考えた。
だからこそ死角無く兵を配置し、奇襲への備えも万事徹底したつもりだった。
しかし・・・まさかあんなものがあるとは、想像すらしなかった。
そう、それは音もなくふわふわと漂って来た。大小さまざまな無色透明の泡は、陽の光に紛れた事もあって、ある程度の距離に来るまで気が付かなかった。
シャボン玉?それを見た帝国兵達は、最初誰もがそう連想した。
しかし異常な数だった。ざっと見ただけでも数百、いや千以上はあっただろう。
こんなものが自然に発生するなどありえない。すぐにこれがロンズデールの仕掛けだと理解した帝国軍は、剣で斬りつけ、攻撃魔法をぶつけた。
それがフェムケのサイレント・バブルに対して、やってはならない悪手であり、誘い手でもあったのだ。
斬られ、貫かれ、破裂した泡玉は飛び散り、それを頭上から浴びた帝国兵達は、体に纏わりついた泡によって身動きを封じられた。
そこからは、狙いすましたようになだれ込んできたロンズデール軍によって、帝国は防戦を強いられた。
泡を逃れた兵達も、地面に張り付けられた味方が足かせとなって、動きが制限される。対してロンズデール軍は、ただ目の前の敵を倒せばいいだけなのだ。
どんどん倒されていく自軍の兵達を見て、このセインソルボ山の防衛を指揮する、帝国軍第五師団長ジェリメール・カシレロは舌を打った。
「チッ、なんだよあの泡は?めんどくせぇ魔道具だな」
「カシレロ様、ロンズデールを率いているのは、あの剣を振り回している金髪のようですね」
カシレロの隣に立つ銀髪の男が、鋭い眼差しで前方を睨みながら呟いた。
歳の頃は三十手前というところだろう。
身長は180センチ程、スラリとしていて筋肉質というわけではない。
銀の短髪、赤茶色の鋭い瞳、顎の周りに少しだけ髭を生やしているが、綺麗に手入れがされていた。
そしてこの男が帝国軍の幹部という事をしらしめる、深紅の鎧を身に着けていた。
「あぁ、そうみたいだな・・・良い腕だ。アルツール、いけるか?」
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