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第二章 名無しの絵本
023話 終わりなき物語
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ユウは葛藤していた。
目の前には昨日拾った古ぼけた一冊の本がテーブルに置いてあるのだが中身はまだ見ていない。
流石に他人のものに手を出すのは気が引ける。しかし、好奇心故か中身には一体何が書かれているのか気になってしまっているのだ。
そして決心がついたのか、ユウは本を持ち目の前で茶を啜っているジンさんのあぐらの上に座った。
「お?読む気になったのか」
「流石にタイトル無し、作者不明の本は気になります」
「まぁ、仕方ないよな」
ジンさんも実は気になっていたらしく先程からこの本をガン見していた。全く子供みたいな人だよね。
ユウは早速1ページ目をめくるとそこには目次が書かれていた。
・プロローグ~出会い~
・第一章 奴霊王
・第二章 屍の神
・第三章 絶剣
・第四章 永遠なる静寂
・第五章 始祖
・第六章 魔毒龍皇
・第七章 百花狂乱
・第八章 大喰らい
・第九章 隠の王
・第十章 世界を焼く剣
・第十一章 石呪と黒霧
・第十二章 魔導帝
・第十三章 決戦の日
結構長めだなと思いつつもユウはある違和感に気がついた。それは、ジンも同様である。
「エピローグがないね」
「あぁ、確かにな。それとこの本はおそらく【終末の夜明け】っつう御伽話だな」
「【終末の夜明け】?」
「勇者が邪神を討伐する物語だよ」
「なるほど。これが」
勇者と邪神の話は有名だ。中にはそれを題材にした絵本や小説、演劇まであるぐらいだ。
「ひょっとしたらこの本ってかなり初期に書かれた物だったりして」
この古さ的にかなり昔に書かれた本なのではないか?いわゆる原本のような物なのかもしれない。全てはこの本から始まり勇者と邪神の物語が世界に広まったとか。
大抵の模造品は原作とは少し異なる部分がある。それが何十年、何百年と時代が移り変わり物語が受け継がれていけば必ず少しずつ脚色されていく物だ。
その点ユウは運が良かったのかもしれない。二度と出会うことのない本に出会ったのかもしれないのだから。
「とりあえず読もう!」
「おう!」
そしてユウは次のページをめくり読み進めていく。本の大きさ的に予想はできていたがこの本は絵本であった。それとかなり絵は荒いがそういう画風であると認識すれば気にはならない。独特なタッチで顔の輪郭ははっきりしているが目と鼻等が描かれていないためユウからしたら少し物足りなさを感じた。やはり、漫画やアニメを知ってしまっているため尚更だろう。
そして、最後のページをめくるとボロボロの勇者と余裕の笑みを浮かべている邪神が剣を交えている描写が見開きで描かれていた。
今までの絵とはガラリと画風が変わって古典絵画のようなリアリティあふれる絵となっている。
「結局、どっちが勝ったんだろう?」
「普通は勇者が勝って終わるんだがな」
エピローグどころか十三章の途中で終わってしまった。しかも、見るからに勇者が負けそうな雰囲気である。
「未完成なのかな?」
「どうなんだろうな。持ち主に聞いてみりゃあー早いんじゃないか?」
「そうだね。因みにジンさんが知ってる【終末の夜明け】と何か違いとかあった?」
「まぁ、大体同じだったな。だが、第十二章に出て来た【時の大精霊】については初耳だな」
あぁ、アレね。
魔導帝が【時の邪法】によって過去へと渡り子供の頃の勇者を襲う場面があるのだが、時の大精霊に阻止されそのままその大精霊によって討伐されるという勇者が唯一殺されかけた章だ。
他の章では結構余裕綽々と眷属に勝利していたからかなり印象に残っている。
十二章だけはほんと肝が冷えたよ。子供の勇者を殺そうとするなんてチートだよチート!というか眷属全員殺意高すぎなんよね。マジで世界終わらしに来てる感じで怖い。
そう考えてみると勇者ってすごいよな。一度会ってみたいよ。
もう生きてはいないことは承知だけど、もしかするとプロローグに出て来た導きの精霊さんであれば会えるかな?
何を基準に主人公を勇者として選んだのかとても気になるよね。
「まぁ、これがどれだけ史実に忠実なのか分からないが一番リアリティはあったな」
ユウからしたらゲームやアニメにありそうなストーリーで現実感があまりないのだがこの世界の住人からしたらあり得る話なのだろう。
精霊や天使がいる世界だからなこの世界って。色々な伝説や伝承があるに違いない。
その後、ユウ達二人は絵本の感想を言い合ったり勇者ごっこをして遊んでいたりと気がついたら外はもうすでに日が暮れていた。
「てかなんで俺が邪神なの?」
「ツノが生えてるから。あ!もうこんな時間!夕飯作らなきゃ!」
遊びに熱中してしまい夕飯の準備が遅れてしまった。なかなかやられてくれないジンさんのせいだ。
何が「ぬるい!」「爪が甘いぞ」「読めている」だ!
遊びだよね?全然攻撃当てさせてくれないんだけど?
後で、我が警備員さんに手伝ってもらおう。後にわかったことだが《大精霊の自宅警備員》にて召喚される警備員さんはオートモードにすれば家事洗濯を手伝ってくれるのだ。他にもユウの命令を聞いてくれるためあのツノ付き邪神を掃除してもらうことに決めた。
そしてユウは夕飯の準備をするため台所へと向かうが来客の気配がしたためフロントへと進路をかえた。
フロントに着くとそこにいたのはカイン君とフランさん、そして……
「あ、方羽根の精霊さん」
「どうも」
ギルドホールで倒れていた本の持ち主であろう精霊さんが来ていた。
目の前には昨日拾った古ぼけた一冊の本がテーブルに置いてあるのだが中身はまだ見ていない。
流石に他人のものに手を出すのは気が引ける。しかし、好奇心故か中身には一体何が書かれているのか気になってしまっているのだ。
そして決心がついたのか、ユウは本を持ち目の前で茶を啜っているジンさんのあぐらの上に座った。
「お?読む気になったのか」
「流石にタイトル無し、作者不明の本は気になります」
「まぁ、仕方ないよな」
ジンさんも実は気になっていたらしく先程からこの本をガン見していた。全く子供みたいな人だよね。
ユウは早速1ページ目をめくるとそこには目次が書かれていた。
・プロローグ~出会い~
・第一章 奴霊王
・第二章 屍の神
・第三章 絶剣
・第四章 永遠なる静寂
・第五章 始祖
・第六章 魔毒龍皇
・第七章 百花狂乱
・第八章 大喰らい
・第九章 隠の王
・第十章 世界を焼く剣
・第十一章 石呪と黒霧
・第十二章 魔導帝
・第十三章 決戦の日
結構長めだなと思いつつもユウはある違和感に気がついた。それは、ジンも同様である。
「エピローグがないね」
「あぁ、確かにな。それとこの本はおそらく【終末の夜明け】っつう御伽話だな」
「【終末の夜明け】?」
「勇者が邪神を討伐する物語だよ」
「なるほど。これが」
勇者と邪神の話は有名だ。中にはそれを題材にした絵本や小説、演劇まであるぐらいだ。
「ひょっとしたらこの本ってかなり初期に書かれた物だったりして」
この古さ的にかなり昔に書かれた本なのではないか?いわゆる原本のような物なのかもしれない。全てはこの本から始まり勇者と邪神の物語が世界に広まったとか。
大抵の模造品は原作とは少し異なる部分がある。それが何十年、何百年と時代が移り変わり物語が受け継がれていけば必ず少しずつ脚色されていく物だ。
その点ユウは運が良かったのかもしれない。二度と出会うことのない本に出会ったのかもしれないのだから。
「とりあえず読もう!」
「おう!」
そしてユウは次のページをめくり読み進めていく。本の大きさ的に予想はできていたがこの本は絵本であった。それとかなり絵は荒いがそういう画風であると認識すれば気にはならない。独特なタッチで顔の輪郭ははっきりしているが目と鼻等が描かれていないためユウからしたら少し物足りなさを感じた。やはり、漫画やアニメを知ってしまっているため尚更だろう。
そして、最後のページをめくるとボロボロの勇者と余裕の笑みを浮かべている邪神が剣を交えている描写が見開きで描かれていた。
今までの絵とはガラリと画風が変わって古典絵画のようなリアリティあふれる絵となっている。
「結局、どっちが勝ったんだろう?」
「普通は勇者が勝って終わるんだがな」
エピローグどころか十三章の途中で終わってしまった。しかも、見るからに勇者が負けそうな雰囲気である。
「未完成なのかな?」
「どうなんだろうな。持ち主に聞いてみりゃあー早いんじゃないか?」
「そうだね。因みにジンさんが知ってる【終末の夜明け】と何か違いとかあった?」
「まぁ、大体同じだったな。だが、第十二章に出て来た【時の大精霊】については初耳だな」
あぁ、アレね。
魔導帝が【時の邪法】によって過去へと渡り子供の頃の勇者を襲う場面があるのだが、時の大精霊に阻止されそのままその大精霊によって討伐されるという勇者が唯一殺されかけた章だ。
他の章では結構余裕綽々と眷属に勝利していたからかなり印象に残っている。
十二章だけはほんと肝が冷えたよ。子供の勇者を殺そうとするなんてチートだよチート!というか眷属全員殺意高すぎなんよね。マジで世界終わらしに来てる感じで怖い。
そう考えてみると勇者ってすごいよな。一度会ってみたいよ。
もう生きてはいないことは承知だけど、もしかするとプロローグに出て来た導きの精霊さんであれば会えるかな?
何を基準に主人公を勇者として選んだのかとても気になるよね。
「まぁ、これがどれだけ史実に忠実なのか分からないが一番リアリティはあったな」
ユウからしたらゲームやアニメにありそうなストーリーで現実感があまりないのだがこの世界の住人からしたらあり得る話なのだろう。
精霊や天使がいる世界だからなこの世界って。色々な伝説や伝承があるに違いない。
その後、ユウ達二人は絵本の感想を言い合ったり勇者ごっこをして遊んでいたりと気がついたら外はもうすでに日が暮れていた。
「てかなんで俺が邪神なの?」
「ツノが生えてるから。あ!もうこんな時間!夕飯作らなきゃ!」
遊びに熱中してしまい夕飯の準備が遅れてしまった。なかなかやられてくれないジンさんのせいだ。
何が「ぬるい!」「爪が甘いぞ」「読めている」だ!
遊びだよね?全然攻撃当てさせてくれないんだけど?
後で、我が警備員さんに手伝ってもらおう。後にわかったことだが《大精霊の自宅警備員》にて召喚される警備員さんはオートモードにすれば家事洗濯を手伝ってくれるのだ。他にもユウの命令を聞いてくれるためあのツノ付き邪神を掃除してもらうことに決めた。
そしてユウは夕飯の準備をするため台所へと向かうが来客の気配がしたためフロントへと進路をかえた。
フロントに着くとそこにいたのはカイン君とフランさん、そして……
「あ、方羽根の精霊さん」
「どうも」
ギルドホールで倒れていた本の持ち主であろう精霊さんが来ていた。
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