84 / 122
先生に対して妙に馴れ馴れしい男がアトリエに居たんだが?
しおりを挟む
終業のチャイムが鳴り終わり、閑散とした廊下に響く俺達の足音。
今日も今日とてグレイ先生のアトリエにお邪魔することになった俺は、ピシリとスーツを着こなす彼と肩を並べ歩みを進めていた。
うららかな午後の日差しが窓から差し込んできて思わず欠伸が出そうになる。
「今日は随分と眠そうだね……大丈夫かい?」
後ろに束ねた青い髪に艷やかな光が浮かぶ。大きくて優しい先生の手が俺の背中を支えるようにそっと添えられた。
「何だか疲れが溜まってるみたいで……すみませんグレイ先生」
……よっぽど、なのかな俺。心配してくれたダンが部屋まで来てくれたのに、なかなか目が覚めなかったし。
「……ごめんねシュン君。あれだけ大口を叩いたのに結局君に怖い思いをさせてしまった」
急にその場で立ち止まった先生は自分のことみたいに辛そうな顔をしていた。青い瞳には深い悲しみの色が宿っている。
「そんな……あのブレスレットが無かったら俺、今頃どうなってたか……どうか、あまり自分を責めないでください」
ブレスレットに施されていた魔術によって、俺の身を守ってくれた障壁。あの守りが時間を稼いでくれたから、魔獣の猛攻を防いでくれていたから、サルファー先輩が間に合ったのに。
先生の顔を見上げるように前に立ち、その手を握りしめると目尻がふっと緩んだ。
「ありがとう、シュン君。でも、私はどうしても自分を許すことが出来ないんだよ、それに……」
青い瞳を静かに見つめて続きを促すと先生は頬を朱に染めて口をもごもごさせながら呟いた。
「悔しいんだ……私以外の男が君を助けたという事実が。男の嫉妬は見苦しいというが、全くその通りだね」
自嘲めいた笑みを浮かべながら太い指がゆるりと俺の頬を撫でる。熱い。顔から火が出そうなくらいに。思いもよらない先生の気持ちを知ってしまったからだ。
「えっと……先生、俺、その……」
「ごめんね、また君を困らせてしまって。つい君のことを独り占めしたくなってしまうんだ」
「先生……」
「つまらない話をしてしまったね。今日は君に会わせたい人がいるんだよ。あまり待たせても悪いからね、少し急ごうか」
もう、いつもの先生だった。優しく微笑んでくれてから俺の手を引き、歩き出す。
俺はかける言葉が見付からず、ただ付き従うしかなかった。
先生がアトリエの扉を開けると見慣れぬ白衣の男性がテーブルに腰掛けていた。眼鏡にサラリとかかった水色の髪を指先で弄りながら、リスみたいに膨らませた頬をモグモグと動かしている。
その手には、グレイ先生のお気に入りのチョコレートの空箱が握られていた。
呆然と立ち尽くすグレイ先生に気付いた男性が近付いてきて箱を先生に押し付ける。
「邪魔してるよグレイ。あっこれなかなか美味しかったよ、はい」
「今日のお茶請けに用意していたのに、君ってやつは……」
空き箱を見つめながら幅広の肩をガクリと落とし重い溜め息を吐く。よっぽど楽しみにしてたんだろうな……
「はっはっはチョコくらいで大げさだなぁ。ところで隣の彼は一体誰だい? 紹介したまえよ」
チョコくらいって……先生にとっては大事な物なのに勝手に食べておいて酷い人だな……
先生に対して妙に馴れ馴れしくて、ちょっとムカつく男は先生の肩をバシバシ叩きながらひとしきり笑った後、俺の方へと視線を向けてきた。
「あぁ、彼はシュン君。私の大切な人だよ」
今日も今日とてグレイ先生のアトリエにお邪魔することになった俺は、ピシリとスーツを着こなす彼と肩を並べ歩みを進めていた。
うららかな午後の日差しが窓から差し込んできて思わず欠伸が出そうになる。
「今日は随分と眠そうだね……大丈夫かい?」
後ろに束ねた青い髪に艷やかな光が浮かぶ。大きくて優しい先生の手が俺の背中を支えるようにそっと添えられた。
「何だか疲れが溜まってるみたいで……すみませんグレイ先生」
……よっぽど、なのかな俺。心配してくれたダンが部屋まで来てくれたのに、なかなか目が覚めなかったし。
「……ごめんねシュン君。あれだけ大口を叩いたのに結局君に怖い思いをさせてしまった」
急にその場で立ち止まった先生は自分のことみたいに辛そうな顔をしていた。青い瞳には深い悲しみの色が宿っている。
「そんな……あのブレスレットが無かったら俺、今頃どうなってたか……どうか、あまり自分を責めないでください」
ブレスレットに施されていた魔術によって、俺の身を守ってくれた障壁。あの守りが時間を稼いでくれたから、魔獣の猛攻を防いでくれていたから、サルファー先輩が間に合ったのに。
先生の顔を見上げるように前に立ち、その手を握りしめると目尻がふっと緩んだ。
「ありがとう、シュン君。でも、私はどうしても自分を許すことが出来ないんだよ、それに……」
青い瞳を静かに見つめて続きを促すと先生は頬を朱に染めて口をもごもごさせながら呟いた。
「悔しいんだ……私以外の男が君を助けたという事実が。男の嫉妬は見苦しいというが、全くその通りだね」
自嘲めいた笑みを浮かべながら太い指がゆるりと俺の頬を撫でる。熱い。顔から火が出そうなくらいに。思いもよらない先生の気持ちを知ってしまったからだ。
「えっと……先生、俺、その……」
「ごめんね、また君を困らせてしまって。つい君のことを独り占めしたくなってしまうんだ」
「先生……」
「つまらない話をしてしまったね。今日は君に会わせたい人がいるんだよ。あまり待たせても悪いからね、少し急ごうか」
もう、いつもの先生だった。優しく微笑んでくれてから俺の手を引き、歩き出す。
俺はかける言葉が見付からず、ただ付き従うしかなかった。
先生がアトリエの扉を開けると見慣れぬ白衣の男性がテーブルに腰掛けていた。眼鏡にサラリとかかった水色の髪を指先で弄りながら、リスみたいに膨らませた頬をモグモグと動かしている。
その手には、グレイ先生のお気に入りのチョコレートの空箱が握られていた。
呆然と立ち尽くすグレイ先生に気付いた男性が近付いてきて箱を先生に押し付ける。
「邪魔してるよグレイ。あっこれなかなか美味しかったよ、はい」
「今日のお茶請けに用意していたのに、君ってやつは……」
空き箱を見つめながら幅広の肩をガクリと落とし重い溜め息を吐く。よっぽど楽しみにしてたんだろうな……
「はっはっはチョコくらいで大げさだなぁ。ところで隣の彼は一体誰だい? 紹介したまえよ」
チョコくらいって……先生にとっては大事な物なのに勝手に食べておいて酷い人だな……
先生に対して妙に馴れ馴れしくて、ちょっとムカつく男は先生の肩をバシバシ叩きながらひとしきり笑った後、俺の方へと視線を向けてきた。
「あぁ、彼はシュン君。私の大切な人だよ」
35
あなたにおすすめの小説
【完結】俺の愛が世界を救うってマジ?
白井のわ
BL
総受け、受けのキスで変身するヒーローもの。
受け)天音レン、16歳、ごく普通の高校生だった、小柄な体格が悩み、真っ直ぐな性格。
攻め1)緑山ヒスイ、16歳、レンの幼なじみで親友、穏やかで一途な性格、小さい頃からレンのことが好き。
攻め2)赤木コウイチ、17歳、レン達の1つ上の先輩、熱血漢なリーダー、ヒーローに憧れている。
攻め3)黄川ダイキ、17歳、陽気な性格、趣味はゲーム、お姉ちゃんっこ。
攻め4)青岩アサギ、17歳、冷静な性格、恋愛ごとには疎い、可愛いものが好き。
攻め5)黒野キョウヤ、28歳、レンの体調管理と心のケアを担当する医師、面倒見が良い。
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜
陽七 葵
BL
主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。
この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。
そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!
ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。
友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?
オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。
※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※
この僕が、いろんな人に詰め寄られまくって困ってます!〜まだ無自覚編〜
小屋瀬
BL
〜まだ無自覚編〜のあらすじ
アニメ・漫画ヲタクの主人公、薄井 凌(うすい りょう)と、幼なじみの金持ち息子の悠斗(ゆうと)、ストーカー気質の天才少年の遊佐(ゆさ)。そしていつもだるーんとしてる担任の幸崎(さいざき)teacher。
主にこれらのメンバーで構成される相関図激ヤバ案件のBL物語。
他にも天才遊佐の事が好きな科学者だったり、悠斗Loveの悠斗の実の兄だったりと個性豊かな人達が出てくるよ☆
〜自覚編〜 のあらすじ(書く予定)
アニメ・漫画をこよなく愛し、スポーツ万能、頭も良い、ヲタク男子&陽キャな主人公、薄井 凌(うすい りょう)には、とある悩みがある。
それは、何人かの同性の人たちに好意を寄せられていることに気づいてしまったからである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
【超重要】
☆まず、主人公が各キャラからの好意を自覚するまでの間、結構な文字数がかかると思います。(まぁ、「自覚する前」ということを踏まえて呼んでくだせぇ)
また、自覚した後、今まで通りの頻度で物語を書くかどうかは気分次第です。(だって書くの疲れるんだもん)
ですので、それでもいいよって方や、気長に待つよって方、どうぞどうぞ、読んでってくだせぇな!
(まぁ「長編」設定してますもん。)
・女性キャラが出てくることがありますが、主人公との恋愛には発展しません。
・突然そういうシーンが出てくることがあります。ご了承ください。
・気分にもよりますが、3日に1回は新しい話を更新します(3日以内に投稿されない場合もあります。まぁ、そこは善処します。(その時はまた近況ボード等でお知らせすると思います。))。
【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています
小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~
朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」
普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。
史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。
その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。
外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。
いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。
領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。
彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。
やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。
無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。
(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
【完結】かわいい彼氏
* ゆるゆ
BL
いっしょに幼稚園に通っていた5歳のころからずっと、だいすきだけど、言えなくて。高校生になったら、またひとつ秘密ができた。それは──
ご感想がうれしくて、すぐ承認してしまい(笑)ネタバレ配慮できないので、ご覧になるときはお気をつけください! 驚きとかが消滅します(笑)
遥斗と涼真の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから飛べます!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる