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緑、赤、黄、青、そして黒
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「レンッ!」
俺を呼ぶ馴染みのある声。間違える訳がない。大切で大好きな彼の声を。
「ヒスイっ!」
天井に穴が空いたみたいにぽかりと浮かぶ光の渦。そこからヒスイが降ってくる。
「させるか!」
腰のベルトから取り外し、鎧兜に向かって投げた銀の筒。輝石の輝きがヤツの目を潰し、外れた重い一撃がヤツの足元を揺らした。よろめき後退った黒い巨体が大きな手で顔を覆い、獣のように唸っている。
受け身を取って着地したヒスイが俺達の元へ駆け寄ってくる。男らしい首から下げた星が鮮やかな緑の煌めきを放っていた。
「ヒスイっ」
膝をつき、抱き締めてくれた温かく頼もしい腕に視界が滲んでいく。
「よく頑張ったね……後は俺に、俺達に任せて」
「っ……うん! お願い……」
交わした口づけが俺達を眩い緑の光で包み込み、彼の逞しい長身に白銀の鎧を纏わせていく。
瞳と同じ緑のマントを靡かせ、光の翼を広げ、俺とキョウヤさんを庇うように立ち塞がる頼もしい背中。その横顔は俺の知る、とびきりカッコいい男の顔だった。
「黒野先生をよろしくね」
頷く俺に微笑んで、緑に輝く刃を持った白銀のハルバードを手に鎧兜へと向かっていく。
ヒスイの変身のお陰だろう。痛みすら感じなくなっていた俺の身体はすっかり回復していた。今なら安全な所までキョウヤさんを運んでいけるハズ。
……って重っ! 鎧分の重さがあるせいだ。長い腕を肩に回してから背負おうとして、逆に潰されそうになる。
……負けてられるか! ヒスイが頑張ってくれてるんだぞ! 俺がキョウヤさんを守らないと……震える足を叱咤して歩を進める。身長差のせいで引き摺ってじゃないと運べないけれど、それでも少しでも遠くへ。
不意に抱えていた重みが軽くなる。火事場の馬鹿力ってヤツが発揮されてるのかな。
「全く……本当にキミは、いつも誰かの為に全力だな」
「まぁ、レンレンのそういう真っ直ぐなとこが好きなんだけどね、オレ達」
違った。でも嬉しくて堪らない。
「コウイチさん! ダイキさん!」
片方の眉を下げ、困ったように笑うコウイチさんが右からキョウヤさんを。クスクスと人懐っこい笑顔を浮かべながら、ダイキさんが左から抱き支えてくれていたんだ。
俺達に任せてくれ、と白い歯を見せたコウイチさんの提案に従いキョウヤさんを二人に託す。
抜群の足並みの良さで歩を進めた先で俺達を、レンズ越しに柔らかく微笑む青の眼差しと、ホッと細めたアイスブルーの瞳が出迎えた。
「レン君!」
「良かった……間に合ったみたいだね」
「アサギさん! 博士!」
鎧兜とヤツが生み出す影への対策だろう。二人は円を描くように地面にあの銀の筒を、輝石の輝きを放つことが出来る装置を設置しているところだった。
その中心へキョウヤさんを慎重に横たわらせてから、コウイチさんがアサギさんの細い肩をそっと掴む。
「青岩、レンと先生、それから博士を頼む」
「頑張ってるみどりんに、早く加勢しないとだからね」
鋭く細められたダイキさんの視線の先では薄闇の中、緑の輝きが火花のように瞬いていた。石造りの壁を震わせるような、重たい金属同士を打ち鳴らす音が戦いの激しさを物語っている。
「了解した。二人共、気をつけて」
「ああ」
「あおちゃんもね!」
足早に歩み寄ってきたコウイチさん。両腕を広げる彼に俺も鍛え上げられた太い首に腕を回し、熱く柔い唇へ押しつけた。瞼の裏で迸るように鮮烈な赤が輝く。
「必ず戻る」
「信じてます」
爽やかに微笑んで、輝く翼をはためかせ赤い光沢を帯びたマントを翻し、緑の輝きの元へ一目散に飛んでいく。
暗がりでも輝く白銀の背中を見守っていると、頬を優しく掴まれた。
愛らしい笑みを浮かべた唇から振り向きざまに奪われて、眩い黄色の輝きが俺達を照らす。
「んっ……ダイキさん」
「オレ、頑張っちゃうから! 帰ったらいっぱい癒してよね?」
「はい!」
白銀の金属を纏う手で頭を優しく撫でてくれてから、彼もまた戦場へと飛んでいった。
「レン君」
「はい」
差し出された手を取り繋ぎ、屈んでくれたアサギさんと唇を重ねる。彼の胸元で青く光る結晶が更に輝きを増した。
光が収まり、ハッキリと見えるようになった眼前に白銀の鎧を纏うアサギさん。透き通った青の瞳がスクエアタイプの眼鏡越しに微笑んでいる。
「ありがとう」
変身させるのは俺が皆に出来る唯一なのに。律儀というか何というか。
「それはこっちのセリフですよ……でも、どうやって此処に?」
「神頼み……かな?」
「へ?」
博士曰く、一か八かだったらしい。
皆がペンダントとして身に着けている神の輝石。その結晶は神子と引き合う性質を持つんだと。俺が神子だって分かる前もそれを利用して探していたらしい。
ただ、その時はまだ俺の力が目覚めていなかったから、反応が弱すぎて見つけられなかったみたい。
でも今は違う。皆と深い絆を結べている今なら、輝石に願うことで俺の居場所へ導いてくれるんじゃないか……そんな蜘蛛の糸よりもか細い可能性にかけた結果が……
「いやぁーまさかキミの元に直接繋がるゲートを生み出すなんてね」
「頭の中にレン君の声がしたかと思ったら、皆の輝石が輝き始めてね……集まった光の粒から出来た渦の中に、鎧兜と戦う君と先生の姿見えたんだ」
「本当に繋がってるかどうかも分からないのに、緑山クンが一目散に飛び込んじゃって赤木クン達も続くもんだから……ボクだけ行かない訳にはね」
だから準備が足りなくてさ、という割にはだ。
その着の身着のままな白衣の何処から出したんだ? っていう大きさの救急セットで、鎧が解けた先生の傷の手当をしているんだよな。ちゃっかり俺と自分の分の銃も持ってるしさ。
「ところでコレが愛の輝石かい? ずっとセンセから離れないけれど」
手当を終えた博士が、彼の胸元で煌めき続けている白い結晶を指差す。
「はい……あの、キョ……黒野先生のことなんですけど」
「大丈夫だよ」
「え?」
「皆で決めたんだ。ちゃんと話を聞こうって……セレネって人の為なんだよね? 先生がこうするしかなかったのは」
「はいっその人は先生のお母さんみたいで……鎧兜は」
邪魔が入るのは、いつも良い方向へと進み始めていた時ばかりだ。
「っ……レン君、博士、僕の後ろに」
地面からジワジワと水溜りを作るように影が滲み出す。いくつも、いくつも溢れ出て人の形を作っていく。
アサギさんが自身の半身ほどの長さがある白銀の弓を構えた。青く輝く矢をつがい、放つ。
流星のように煌めき、薄闇を打ち払いながら進む光の線。鮮やかな青が俺達に迫りくる影を確実に仕留め、消していく。でも多過ぎる。このままじゃ……
「俺もっ」
「ボクも戦うよ」
「博士?」
「センセのことお願いね。邪神のとはいえ守護者なんだし、神子のキミが居た方が力になれるかもだしね」
こう見えてアウトドア派なんだよ? ボク、と微笑んで、手にした銃で影を次々屠っていく。その身のこなしは軽やかだ。意外過ぎる。
「……うっ」
「キョウヤさんっ」
短く唸る声の元へ駆けつける。丁度開いた紫の瞳が俺を捉えた。
「……レン?」
「良かった……具合はどうですか?」
「……大丈夫だ。万全だ、とは言えないが……これは、君が?」
「いえ、博士です。皆が来てくれて、今は鎧兜……貴方のお父さんと……」
自分の身体に巻かれた包帯を、不思議そうに見ていた瞳が細められる。そうか、と小さく呟いて身を起こそうとした長身がぐらりと傾いた。
「ちょ……まだ安静にしてないと」
慌てて支えた俺の手を、大きな手がやんわり退けようとしてくる。
「ありがとう……だが、全ては私の責任だ。君達にこれ以上迷惑は」
「口、聞きませんよ!」
寂しげな瞳が丸くなる。
「そうやってまた一人で背負い込もうとして……頼って下さいって言ったじゃないですか……」
「……そう、だったな」
擽ったそうに微笑む彼の胸元が淡く輝き出す。愛の輝石……じゃない。ヒスイ達のと同じだ。黒い星柄多角形の結晶が俺達の間で瞬いている。
驚き見開く瞳がかち合う。でもそこから先は、心が通じ合っているみたいにスムーズだった。
額を寄せ合い、口づけを交わす。柔らかい温度と触れ合った瞬間、黒く気高い輝きが俺達を包み込んだ。
俺を呼ぶ馴染みのある声。間違える訳がない。大切で大好きな彼の声を。
「ヒスイっ!」
天井に穴が空いたみたいにぽかりと浮かぶ光の渦。そこからヒスイが降ってくる。
「させるか!」
腰のベルトから取り外し、鎧兜に向かって投げた銀の筒。輝石の輝きがヤツの目を潰し、外れた重い一撃がヤツの足元を揺らした。よろめき後退った黒い巨体が大きな手で顔を覆い、獣のように唸っている。
受け身を取って着地したヒスイが俺達の元へ駆け寄ってくる。男らしい首から下げた星が鮮やかな緑の煌めきを放っていた。
「ヒスイっ」
膝をつき、抱き締めてくれた温かく頼もしい腕に視界が滲んでいく。
「よく頑張ったね……後は俺に、俺達に任せて」
「っ……うん! お願い……」
交わした口づけが俺達を眩い緑の光で包み込み、彼の逞しい長身に白銀の鎧を纏わせていく。
瞳と同じ緑のマントを靡かせ、光の翼を広げ、俺とキョウヤさんを庇うように立ち塞がる頼もしい背中。その横顔は俺の知る、とびきりカッコいい男の顔だった。
「黒野先生をよろしくね」
頷く俺に微笑んで、緑に輝く刃を持った白銀のハルバードを手に鎧兜へと向かっていく。
ヒスイの変身のお陰だろう。痛みすら感じなくなっていた俺の身体はすっかり回復していた。今なら安全な所までキョウヤさんを運んでいけるハズ。
……って重っ! 鎧分の重さがあるせいだ。長い腕を肩に回してから背負おうとして、逆に潰されそうになる。
……負けてられるか! ヒスイが頑張ってくれてるんだぞ! 俺がキョウヤさんを守らないと……震える足を叱咤して歩を進める。身長差のせいで引き摺ってじゃないと運べないけれど、それでも少しでも遠くへ。
不意に抱えていた重みが軽くなる。火事場の馬鹿力ってヤツが発揮されてるのかな。
「全く……本当にキミは、いつも誰かの為に全力だな」
「まぁ、レンレンのそういう真っ直ぐなとこが好きなんだけどね、オレ達」
違った。でも嬉しくて堪らない。
「コウイチさん! ダイキさん!」
片方の眉を下げ、困ったように笑うコウイチさんが右からキョウヤさんを。クスクスと人懐っこい笑顔を浮かべながら、ダイキさんが左から抱き支えてくれていたんだ。
俺達に任せてくれ、と白い歯を見せたコウイチさんの提案に従いキョウヤさんを二人に託す。
抜群の足並みの良さで歩を進めた先で俺達を、レンズ越しに柔らかく微笑む青の眼差しと、ホッと細めたアイスブルーの瞳が出迎えた。
「レン君!」
「良かった……間に合ったみたいだね」
「アサギさん! 博士!」
鎧兜とヤツが生み出す影への対策だろう。二人は円を描くように地面にあの銀の筒を、輝石の輝きを放つことが出来る装置を設置しているところだった。
その中心へキョウヤさんを慎重に横たわらせてから、コウイチさんがアサギさんの細い肩をそっと掴む。
「青岩、レンと先生、それから博士を頼む」
「頑張ってるみどりんに、早く加勢しないとだからね」
鋭く細められたダイキさんの視線の先では薄闇の中、緑の輝きが火花のように瞬いていた。石造りの壁を震わせるような、重たい金属同士を打ち鳴らす音が戦いの激しさを物語っている。
「了解した。二人共、気をつけて」
「ああ」
「あおちゃんもね!」
足早に歩み寄ってきたコウイチさん。両腕を広げる彼に俺も鍛え上げられた太い首に腕を回し、熱く柔い唇へ押しつけた。瞼の裏で迸るように鮮烈な赤が輝く。
「必ず戻る」
「信じてます」
爽やかに微笑んで、輝く翼をはためかせ赤い光沢を帯びたマントを翻し、緑の輝きの元へ一目散に飛んでいく。
暗がりでも輝く白銀の背中を見守っていると、頬を優しく掴まれた。
愛らしい笑みを浮かべた唇から振り向きざまに奪われて、眩い黄色の輝きが俺達を照らす。
「んっ……ダイキさん」
「オレ、頑張っちゃうから! 帰ったらいっぱい癒してよね?」
「はい!」
白銀の金属を纏う手で頭を優しく撫でてくれてから、彼もまた戦場へと飛んでいった。
「レン君」
「はい」
差し出された手を取り繋ぎ、屈んでくれたアサギさんと唇を重ねる。彼の胸元で青く光る結晶が更に輝きを増した。
光が収まり、ハッキリと見えるようになった眼前に白銀の鎧を纏うアサギさん。透き通った青の瞳がスクエアタイプの眼鏡越しに微笑んでいる。
「ありがとう」
変身させるのは俺が皆に出来る唯一なのに。律儀というか何というか。
「それはこっちのセリフですよ……でも、どうやって此処に?」
「神頼み……かな?」
「へ?」
博士曰く、一か八かだったらしい。
皆がペンダントとして身に着けている神の輝石。その結晶は神子と引き合う性質を持つんだと。俺が神子だって分かる前もそれを利用して探していたらしい。
ただ、その時はまだ俺の力が目覚めていなかったから、反応が弱すぎて見つけられなかったみたい。
でも今は違う。皆と深い絆を結べている今なら、輝石に願うことで俺の居場所へ導いてくれるんじゃないか……そんな蜘蛛の糸よりもか細い可能性にかけた結果が……
「いやぁーまさかキミの元に直接繋がるゲートを生み出すなんてね」
「頭の中にレン君の声がしたかと思ったら、皆の輝石が輝き始めてね……集まった光の粒から出来た渦の中に、鎧兜と戦う君と先生の姿見えたんだ」
「本当に繋がってるかどうかも分からないのに、緑山クンが一目散に飛び込んじゃって赤木クン達も続くもんだから……ボクだけ行かない訳にはね」
だから準備が足りなくてさ、という割にはだ。
その着の身着のままな白衣の何処から出したんだ? っていう大きさの救急セットで、鎧が解けた先生の傷の手当をしているんだよな。ちゃっかり俺と自分の分の銃も持ってるしさ。
「ところでコレが愛の輝石かい? ずっとセンセから離れないけれど」
手当を終えた博士が、彼の胸元で煌めき続けている白い結晶を指差す。
「はい……あの、キョ……黒野先生のことなんですけど」
「大丈夫だよ」
「え?」
「皆で決めたんだ。ちゃんと話を聞こうって……セレネって人の為なんだよね? 先生がこうするしかなかったのは」
「はいっその人は先生のお母さんみたいで……鎧兜は」
邪魔が入るのは、いつも良い方向へと進み始めていた時ばかりだ。
「っ……レン君、博士、僕の後ろに」
地面からジワジワと水溜りを作るように影が滲み出す。いくつも、いくつも溢れ出て人の形を作っていく。
アサギさんが自身の半身ほどの長さがある白銀の弓を構えた。青く輝く矢をつがい、放つ。
流星のように煌めき、薄闇を打ち払いながら進む光の線。鮮やかな青が俺達に迫りくる影を確実に仕留め、消していく。でも多過ぎる。このままじゃ……
「俺もっ」
「ボクも戦うよ」
「博士?」
「センセのことお願いね。邪神のとはいえ守護者なんだし、神子のキミが居た方が力になれるかもだしね」
こう見えてアウトドア派なんだよ? ボク、と微笑んで、手にした銃で影を次々屠っていく。その身のこなしは軽やかだ。意外過ぎる。
「……うっ」
「キョウヤさんっ」
短く唸る声の元へ駆けつける。丁度開いた紫の瞳が俺を捉えた。
「……レン?」
「良かった……具合はどうですか?」
「……大丈夫だ。万全だ、とは言えないが……これは、君が?」
「いえ、博士です。皆が来てくれて、今は鎧兜……貴方のお父さんと……」
自分の身体に巻かれた包帯を、不思議そうに見ていた瞳が細められる。そうか、と小さく呟いて身を起こそうとした長身がぐらりと傾いた。
「ちょ……まだ安静にしてないと」
慌てて支えた俺の手を、大きな手がやんわり退けようとしてくる。
「ありがとう……だが、全ては私の責任だ。君達にこれ以上迷惑は」
「口、聞きませんよ!」
寂しげな瞳が丸くなる。
「そうやってまた一人で背負い込もうとして……頼って下さいって言ったじゃないですか……」
「……そう、だったな」
擽ったそうに微笑む彼の胸元が淡く輝き出す。愛の輝石……じゃない。ヒスイ達のと同じだ。黒い星柄多角形の結晶が俺達の間で瞬いている。
驚き見開く瞳がかち合う。でもそこから先は、心が通じ合っているみたいにスムーズだった。
額を寄せ合い、口づけを交わす。柔らかい温度と触れ合った瞬間、黒く気高い輝きが俺達を包み込んだ。
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