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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
どんな些細なことだろうと、俺の気持ちはお見通しらしい
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浴室内にふわりと香る、取って付けたようなレモンの匂い。いかにも洗剤らしい香りを漂わせている泡は、今や浴室の床だけでなく浴槽をも満遍なく包み込んでいる。
泡だらけのスポンジを蛇口の水で洗い流してから、シャワーへと切り替える。もこもことしたそれらをキレイに流し終えたところで、風呂の栓を戻した。後は、壁に設置されているお風呂のスイッチを押すだけ。
ピロンと音がした途端、お湯が浴槽をじわじわと満たし始めていく。念の為、ちゃんと溜まっていっていることを確認してから、浴槽の蓋を閉じた。
ソレイユの方はどんな感じかな。
浴室を出た途端に浮かんだ考えに、またそわそわとした気分になってしまう。濡れた足と手をタオルで手早く拭いてから、捲っていたズボンの裾と服の袖を直した。
足早に、けれどもこの落ち着かない気持ちは悟られてしまわないよう、表情を引き締める。台所へと続く扉を開けるよりも先に、食欲を誘う香りが俺の鼻先を擽った。
「ありがとう、シュン。お風呂の準備お疲れ様」
「いえ、ソレイユの方こそ」
お疲れ様です。
そう言おうとして、違うなと思った。なんせ、まだソレイユの方は終わっていない。
顔だけ振り向いて、微笑みかけてくれて。すぐに前を向いた彼の手元からは、ジュウジュウと美味しそうな音。それから香ばしくも甘いタレと生姜の香りが漂ってきていた。
どうやら下ごしらえの方は終わってしまっていたらしい。フライパンを手に、調理を進めている彼の傍ら、銀の作業台の上にはすでに二人分のお皿が乗せられていて。そこにはそれぞれ付け合わせの千切りキャベツまで。
じゃあ、せめてお片付けを、とも思ったが、そちらも終わってしまっているようだ。
包丁やまな板は、すでに定位置に置かれているし、洗い終えた物を置く、水切りのラックの上にも。豚肉の下ごしらえに使ったであろうバット。キャベツを洗った時に使ったんであろうボウルやステンレスのザルが、丁寧に並べられていた。
「……あの、ソレイユ」
「お疲れのところ悪いけど、早速手伝ってくれないかな?」
「へ? そりゃあ、勿論……」
「ありがと。じゃあ、お椀にご飯をよそっておいてくれない? それから、ポットでお湯も沸かしておいて欲しいな」
「っ、はいっ!」
良かった。まだ手伝えることがあって。
食器棚からお椀を取り出そうとしていたところで、ソレイユからまたお願いが。
「ついでにお味噌汁用のお椀もお願いね」
「はい」
「インスタントの味噌汁、どこにオレがしまったか分かる?」
「えっと……確か、冷蔵庫の横の棚でしたっけ?」
「うん、そこ。三種類くらいセットになってたよね? オレはナスのがいいな」
「分かりました」
ご飯用と味噌汁用、取り出した二人分お椀を四つ。一旦テーブルへと預けてから、冷蔵庫の隣の棚へ。下から二番目に、バラエティパックと銘打ったインスタントの味噌汁を見付けた。ラインナップには、豆腐、小松菜、揚げナスと書かれている。
「……俺もナスにしよっかな」
「美味しいもんね、ナス」
そんなに大きな声じゃなかったのに。
咄嗟に振り向けば、ソレイユが微笑んでいた。出来上がったのか、しょうが焼きをお皿に盛ろうとしていたところだった。
泡だらけのスポンジを蛇口の水で洗い流してから、シャワーへと切り替える。もこもことしたそれらをキレイに流し終えたところで、風呂の栓を戻した。後は、壁に設置されているお風呂のスイッチを押すだけ。
ピロンと音がした途端、お湯が浴槽をじわじわと満たし始めていく。念の為、ちゃんと溜まっていっていることを確認してから、浴槽の蓋を閉じた。
ソレイユの方はどんな感じかな。
浴室を出た途端に浮かんだ考えに、またそわそわとした気分になってしまう。濡れた足と手をタオルで手早く拭いてから、捲っていたズボンの裾と服の袖を直した。
足早に、けれどもこの落ち着かない気持ちは悟られてしまわないよう、表情を引き締める。台所へと続く扉を開けるよりも先に、食欲を誘う香りが俺の鼻先を擽った。
「ありがとう、シュン。お風呂の準備お疲れ様」
「いえ、ソレイユの方こそ」
お疲れ様です。
そう言おうとして、違うなと思った。なんせ、まだソレイユの方は終わっていない。
顔だけ振り向いて、微笑みかけてくれて。すぐに前を向いた彼の手元からは、ジュウジュウと美味しそうな音。それから香ばしくも甘いタレと生姜の香りが漂ってきていた。
どうやら下ごしらえの方は終わってしまっていたらしい。フライパンを手に、調理を進めている彼の傍ら、銀の作業台の上にはすでに二人分のお皿が乗せられていて。そこにはそれぞれ付け合わせの千切りキャベツまで。
じゃあ、せめてお片付けを、とも思ったが、そちらも終わってしまっているようだ。
包丁やまな板は、すでに定位置に置かれているし、洗い終えた物を置く、水切りのラックの上にも。豚肉の下ごしらえに使ったであろうバット。キャベツを洗った時に使ったんであろうボウルやステンレスのザルが、丁寧に並べられていた。
「……あの、ソレイユ」
「お疲れのところ悪いけど、早速手伝ってくれないかな?」
「へ? そりゃあ、勿論……」
「ありがと。じゃあ、お椀にご飯をよそっておいてくれない? それから、ポットでお湯も沸かしておいて欲しいな」
「っ、はいっ!」
良かった。まだ手伝えることがあって。
食器棚からお椀を取り出そうとしていたところで、ソレイユからまたお願いが。
「ついでにお味噌汁用のお椀もお願いね」
「はい」
「インスタントの味噌汁、どこにオレがしまったか分かる?」
「えっと……確か、冷蔵庫の横の棚でしたっけ?」
「うん、そこ。三種類くらいセットになってたよね? オレはナスのがいいな」
「分かりました」
ご飯用と味噌汁用、取り出した二人分お椀を四つ。一旦テーブルへと預けてから、冷蔵庫の隣の棚へ。下から二番目に、バラエティパックと銘打ったインスタントの味噌汁を見付けた。ラインナップには、豆腐、小松菜、揚げナスと書かれている。
「……俺もナスにしよっかな」
「美味しいもんね、ナス」
そんなに大きな声じゃなかったのに。
咄嗟に振り向けば、ソレイユが微笑んでいた。出来上がったのか、しょうが焼きをお皿に盛ろうとしていたところだった。
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