128 / 662
マッチョな先生と恋人同士になった件(グレイルート)
ここから始まっていく俺達の日々(終)
しおりを挟む
紅茶の匂いが薄っすら香るお部屋は、随分と見慣れてきたハズなのに、つい最近も遊びに来たハズなのにそわそわしてしまう。
実感しちゃってるから、だよな。やっぱり。
騒がしい鼓動を、少しでも落ち着かせるべく深呼吸。ダンボールを抱え直した。
「グレイさんっ、この荷物、何処に置いたらいいですか?」
呼びかけてすぐだった。後ろに緩く纏めた青い髪を揺らしながら、グレイさんが俺の元に来てくれる。筋肉質で太い腕が、軽々と俺の荷物を抱えてくれた。
「こっちの空き部屋に置くといいよ。今日から、ここが君の部屋だからね」
リビングからほど近い部屋の扉を開いて中に入り、丁寧に床へと下ろしてくれる。広い背中越しに見えた室内は、一人暮らしでも十分なくらいの広さがあった。俺が元々使っていた机や椅子やら本棚やらも、すでに設置済みだ。有り難い。
「ありがとうございま、うわっ」
頼もしい背中に声をかけていたハズが、眼の前には逞しい雄っぱいが。グレイさんに抱き締められてる。
「ちょ、ぐ、グレイさん?」
「後で手伝うから、今は私を構ってくれないかい?」
「え、それは全然構わないですし、スゴく嬉しいですけ、どっ」
言い終わるより前に、骨ばった指から顎を持ち上げられていた。かち合った青の瞳が嬉しそうに微笑んでいる。
晴れ渡る空のような色に、艷やかに笑う口元に見惚れている内に、重なっていた。優しく唇を食まれながら、ますます強く抱き寄せられる。
ふわふわと頭の中が蕩けていく。触れ合う部分から広がっていく甘い痺れに、すっかり溺れかけていた時だ。
「全く……相変わらずだな、君達は。私が、ケーキを食べ終えるのも待てないのかね?」
リビングに居たハズの彼、セレストさんが呆れたように俺達を見つめていた。お皿もフォークも使わず豪快に手掴みで、ショートケーキを頬張っている。
「……セレスト」
「……す、すみません、セレストさん。わざわざお祝いのケーキ貰ったのに」
「まあ、気持ちは分かるがね。シュン君も無事卒業、約束していた同棲を始められるだけでなく、近い内には籍を入れるのだから。私も、これを食べたら、お暇するつもりではあったからね」
そうボヤいて残りのケーキをぱくんっと一飲み。指先についた生クリームを丁寧に拭い終え、反対の手に持っていた紙袋を俺に向かって押しつけてきた。
「えっと……ありがとう、ございます?」
「うむ、君は実に素直でよろしい。是非とも、そのままでいてくれたまえ。式の日取りが決まったら、いの一番に教えてくれたまえよ!」
はっはっはっと笑いながら去っていく背中を呆然と見送っていると、グレイさんが俺の頭をひと撫でしてから追いかけていった。
何か話していたんだろう、しばらくして帰ってくる。
「ごめんね、初日から騒々しくて」
「いえ、相変わらず嵐みたいな人ですよね、セレストさんって。スゴく良い人ではあるんですけど」
「うん」
苦笑しながらも、やっぱりグレイさんは嬉しそうに口元を緩めている。
「ところで、何だったんだい? それは」
「ああ、何でしょう、ね……おわ……」
袋を開けた瞬間、変な声を上げた俺に「どうかしたのかい?」と尋ねながらグレイさんも覗き込んでくる。そして。
「…………」
顔を真っ赤にしたまま、固まってしまった。
中身は、あの日からずっとお世話になっている、潤滑油代わりのチューブ。そして、その改良版であるローションが数本。
それから「盛んなのはいいことだがね、あまりシュン君に無理をさせないようにしたまえよ」と書かれたメモが入っていた。
「えっと……ごめんなさい、そろそろ無くなりそうだって、俺が連絡したからかと……」
「……そうだったんだね、ごめんね……私が連絡すべきだったのに」
「いっ、いえ、その……無いと……困るのは俺ですし……そのせいでグレイさんと出来ないと、寂しいですから……」
気恥ずかしさに、俯きかけていると肩を掴まれた。
「シュン……」
見下ろす眼差しは妖しい熱を帯びている。頬に添えられた手もだ。熱くて、ドクドク脈打つ音が聞こえてきそう。
「あ……まだ、お昼ですよ……」
「……駄目かい?」
断れる訳がない。
大好きな人から、切なそうに瞳を細められてしまえば、焦がれるような声で願われてしまえば。
「……俺達の分のケーキ、冷蔵庫にしまったら……グレイさんのこと構ってあげます、いっぱい」
「ありがとう」
俺の方が言うべきだろうに。結局、構われるのは、たっぷり愛してもらうのは、俺の方なのにさ。
彫りの深い顔を、ぱぁっと輝かせ、グレイさんが俺を抱き上げる。額を寄せ、手を取り繋ぐ。俺の薬指には、彼と揃いの指輪が輝いていた。
了
実感しちゃってるから、だよな。やっぱり。
騒がしい鼓動を、少しでも落ち着かせるべく深呼吸。ダンボールを抱え直した。
「グレイさんっ、この荷物、何処に置いたらいいですか?」
呼びかけてすぐだった。後ろに緩く纏めた青い髪を揺らしながら、グレイさんが俺の元に来てくれる。筋肉質で太い腕が、軽々と俺の荷物を抱えてくれた。
「こっちの空き部屋に置くといいよ。今日から、ここが君の部屋だからね」
リビングからほど近い部屋の扉を開いて中に入り、丁寧に床へと下ろしてくれる。広い背中越しに見えた室内は、一人暮らしでも十分なくらいの広さがあった。俺が元々使っていた机や椅子やら本棚やらも、すでに設置済みだ。有り難い。
「ありがとうございま、うわっ」
頼もしい背中に声をかけていたハズが、眼の前には逞しい雄っぱいが。グレイさんに抱き締められてる。
「ちょ、ぐ、グレイさん?」
「後で手伝うから、今は私を構ってくれないかい?」
「え、それは全然構わないですし、スゴく嬉しいですけ、どっ」
言い終わるより前に、骨ばった指から顎を持ち上げられていた。かち合った青の瞳が嬉しそうに微笑んでいる。
晴れ渡る空のような色に、艷やかに笑う口元に見惚れている内に、重なっていた。優しく唇を食まれながら、ますます強く抱き寄せられる。
ふわふわと頭の中が蕩けていく。触れ合う部分から広がっていく甘い痺れに、すっかり溺れかけていた時だ。
「全く……相変わらずだな、君達は。私が、ケーキを食べ終えるのも待てないのかね?」
リビングに居たハズの彼、セレストさんが呆れたように俺達を見つめていた。お皿もフォークも使わず豪快に手掴みで、ショートケーキを頬張っている。
「……セレスト」
「……す、すみません、セレストさん。わざわざお祝いのケーキ貰ったのに」
「まあ、気持ちは分かるがね。シュン君も無事卒業、約束していた同棲を始められるだけでなく、近い内には籍を入れるのだから。私も、これを食べたら、お暇するつもりではあったからね」
そうボヤいて残りのケーキをぱくんっと一飲み。指先についた生クリームを丁寧に拭い終え、反対の手に持っていた紙袋を俺に向かって押しつけてきた。
「えっと……ありがとう、ございます?」
「うむ、君は実に素直でよろしい。是非とも、そのままでいてくれたまえ。式の日取りが決まったら、いの一番に教えてくれたまえよ!」
はっはっはっと笑いながら去っていく背中を呆然と見送っていると、グレイさんが俺の頭をひと撫でしてから追いかけていった。
何か話していたんだろう、しばらくして帰ってくる。
「ごめんね、初日から騒々しくて」
「いえ、相変わらず嵐みたいな人ですよね、セレストさんって。スゴく良い人ではあるんですけど」
「うん」
苦笑しながらも、やっぱりグレイさんは嬉しそうに口元を緩めている。
「ところで、何だったんだい? それは」
「ああ、何でしょう、ね……おわ……」
袋を開けた瞬間、変な声を上げた俺に「どうかしたのかい?」と尋ねながらグレイさんも覗き込んでくる。そして。
「…………」
顔を真っ赤にしたまま、固まってしまった。
中身は、あの日からずっとお世話になっている、潤滑油代わりのチューブ。そして、その改良版であるローションが数本。
それから「盛んなのはいいことだがね、あまりシュン君に無理をさせないようにしたまえよ」と書かれたメモが入っていた。
「えっと……ごめんなさい、そろそろ無くなりそうだって、俺が連絡したからかと……」
「……そうだったんだね、ごめんね……私が連絡すべきだったのに」
「いっ、いえ、その……無いと……困るのは俺ですし……そのせいでグレイさんと出来ないと、寂しいですから……」
気恥ずかしさに、俯きかけていると肩を掴まれた。
「シュン……」
見下ろす眼差しは妖しい熱を帯びている。頬に添えられた手もだ。熱くて、ドクドク脈打つ音が聞こえてきそう。
「あ……まだ、お昼ですよ……」
「……駄目かい?」
断れる訳がない。
大好きな人から、切なそうに瞳を細められてしまえば、焦がれるような声で願われてしまえば。
「……俺達の分のケーキ、冷蔵庫にしまったら……グレイさんのこと構ってあげます、いっぱい」
「ありがとう」
俺の方が言うべきだろうに。結局、構われるのは、たっぷり愛してもらうのは、俺の方なのにさ。
彫りの深い顔を、ぱぁっと輝かせ、グレイさんが俺を抱き上げる。額を寄せ、手を取り繋ぐ。俺の薬指には、彼と揃いの指輪が輝いていた。
了
18
あなたにおすすめの小説
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
「好きって言ったら負け!」完璧すぎる生徒会コンビの恋愛頭脳戦は今日も平行線です~恋は勝ち負けじゃないと知るまでの攻防戦
中岡 始
BL
「好きって言ったら負け」
それが、俺たちの間にある、たったひとつのルールだった。
星遥学園の顔、生徒会長・一ノ瀬結翔と副会長・神城凪。
容姿、成績、カリスマ性――すべてが完璧なふたりは、周囲から「最強ペア」と呼ばれている。
けれどその内側では、日々繰り広げられる仁義なき恋愛頭脳戦があった。
・さりげない言葉の応酬
・SNSでの匂わせ合戦
・触れそうで触れない、静かな視線の駆け引き
恋してるなんて認めたくない。
でも、相手からの“告白”を待ち続けてしまう――
そんなふたりの関係が変わったのは、修学旅行での一夜。
「俺、たぶん君に“負けてもいい”って思いかけてる」
その一言が、沈黙を揺るがし、心の距離を塗り替えていく。
勝ち負けなんかじゃない、想いのかたちにたどり着くまで。
これは、美形ふたりの駆け引きまみれなラブコメ戦線、
ついに“終戦”の火蓋が落ちるまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる