気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件～恋人ルート～

マッチョな先輩と恋人同士になった件（サルファールート）

ハートたっぷり、時々ウサギ

　可愛らしさ全開なお店の雰囲気に対して意外や意外。ハンバーグステーキやカツカレーなど、ガッツリ目のメニューも普通にあった。

　まぁ、お皿がウサギの形をしていたり、付け合せの人参がハート型だったりと、ところどころに可愛らしさが顔を覗かせてはいるけれど。

　これくらいなら、まぁ。むしろ、馴染みのあるメニューでちょっとした非日常的な気分を味わえるし。

「俺は、カツカレーにしようかな」

「あ、いいですね。俺もそれにしよう」

「はは、そうか……後はパンケーキ、だったよな」

　細く伸びた目尻を下げて、横から先輩がめくって示したデザートのページ。

　見開き一ページを全て埋め尽くしているラインナップの中には、お目当てのパンケーキ以外にも、定番のパフェにケーキ、プリンアラモードにティラミスなどなど。品数の段階で、すでに充実しているんだが。

「どれにするんだ？　三種類あるみたいだぞ？」

　種類も豊富だった。パフェやケーキも三、四種類ずつあるし。

「うーん……チケットに載っていたのは、このパンケーキでしたよね？　……ハートの形の」

「ああ、そうだな」

　盛り盛りのクリームやフルーツにばかり注目してしまっていたが、少し厚めでふわふわそうな二枚のパンケーキもしっかりハート。

　残りの二種類は、おそらくマスコットである二匹のウサギをモチーフにしているんだろう。どちらもウサギの形をしていて、片方はピンク色のイチゴチョコレートやイチゴクリームで。もう一方は水色のチョコレートとクリーム、それからブルーベリーで飾られていた。

　どれも、もれなく可愛らしい。でも、美味しそうだしなぁ。

　味とは違う部分で迷っている俺の気持ちを知ってか知らずか、先輩が俺の背中を押してくれる。

「これにしようか？　元々、チケットのパンケーキを見て、食べたいなと思ったんだろう？」

「はい……」

「よしっ、決まりだな。それと、限定メニューの方はどうする？　飲み物とか、パフェがあるみたいだが……」

　あんまり意識していないんだろうか。先輩は骨ばった男らしい指で、照れた様子もなくカップル限定メニューのところを指し示してくる。

　そこにはいかにもな、二人で一緒に飲めるハートのストローが刺さった真っ赤なフロート。ハートのクッキーがアイスの上にトッピングされたパフェ、ハートの器に入ったムースと、これまたハートまみれ。

　すでにハートなパンケーキを頼もうとしていてなんだが、流石にこれはちょっと勇気が。

「俺は、このフロートが気になるな。君と一緒にこのストローを使ってみたい」

　弾んだ声でフロートを指差した先輩が、視線をメニューから俺へと向ける。その眼差しに一切の照れはない。ただただ純粋な興味や期待しか。

　そんな無邪気な眼差しを向けられてしまったら、俺と一緒にだなんて言われてしまったら。

「お、俺も……フロートが、いいです……」

　応えるしかないじゃないか。