311 / 645
細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
動き始めた、一世一代の
しおりを挟む
柔らかな風が熱くなった頬を撫でていく。いまだに俺の背を撫でてくれていたサルフが、ああ、と何か思い出したような声を上げた。
「因みにだが、本当はシュンにどうしたいんだ?」
まるで今日のコンディションを聞いてくるような。全く大したことないような調子で、こっちとしては答え辛いことを尋ねてきた。
今更だけど。もうすでに色々と吐き出しちゃった後だし。
「……とことん甘やかして優しくして、オレのことしか考えられないようにしたい。オレが居ないと生きていけないようになって欲しい」
この際だからとことんと素直に告げれば、オレの背をバシバシ叩きながらカラカラと笑い出した。
こっちに関しては笑うのか。いや、真面目な顔して受け止めてもらっちゃっても困るけれど。
「ははっ、それは確かに愛が重たいな……だったら、もういっそ婚約してしまえばいいんじゃないか?」
思いつきにしては、いい提案だと思っているのだろう。サルフは朗らかな笑顔のまま、あっけらかんと言い放った。しかし、オレは気が気ではなかった。ズバリ心の内を見透かされたような気分になっていたからだ。
よっぽど変な顔をしていたんだろう。オレを見つめる黄色い目が丸くなっていく。眉間には再びシワが刻まれていた。
「ん? なんだその顔は? 考えたこと、なかったのか?」
「い、いやー……一応、考えたことはあるけどさ……早くない?」
言えない。実はシュンちゃんに告白しようと決意していた時にはすでに、プロポーズしようと考えていたなんて。
サイズが間違ってたらイヤだから、それっぽい小箱まで買っちゃってさ。だからって、一緒に選ぼうねって空箱だけ渡すのも寂しいかなって、バラのブリザードフラワーまで用意していたなんて。
しかも、結局まだどっちも渡せていないだなんて。それどころか、オレが回りくどい告白をしちゃったせいで勘違いさせて泣かせてしまっただなんて。
絶対に、サルフにだけは、口が裂けても言えない。
だって、事あるごとに引っ張り出されるに決まっている。シュンちゃんの前でも結構しんどい。ましてや、ダンくんやライくんにグレイ先生、セレストさん。はては剣術部の先輩後輩の前でもポロッと言われたりなんかしたら。やっぱり、この秘密だけは死守しなければ。
まぁ、それはそれとして。やらかしちゃったお陰で、シュンちゃんの方から熱烈な告白を聞けたのは、怪我の功名だったのかもしれないけどさ。
「……だって、ついこの間だよ? シュンちゃんと恋人同士になれたの。初デートだって、まだ」
「昨日、家に行ったのはデートに入らないのか?」
どこか納得の言っていない顔をしている親友を納得させようと試みたものの大失敗。さくっと痛いところをつかれてしまった。
「う……そりゃあ、あれも立派なデートでしたけど……」
「だろう? そもそも、恋に出会った期間の長さは関係なかったんじゃないのか? そう貴様が言っていただろう。だったら、別にプロポーズが早くてもいいんじゃないか? 互いの気持ちさえ、同じ方を向いていたらな」
今すぐ蹴っ飛ばしたい。いつぞやに、したり顔でサルフにアドバイスしていたオレを。
というか、サルフは何でそう確信を持ったような顔をしているんだ。まるで、オレが勇気さえ出せれば、シュンちゃんは絶対に応えてくれるみたいな。オレと婚約してくれるみたいな。
根拠はない。けれども、その強い光を宿した瞳は信じられる。試合で心が折れそうな時に『俺達ならば必ず勝てる』と奮い立たせてくれるその眼差しは。
「……どうせなら、思い出に残るような場所でしたくない?」
いつものベンチでプロポーズしようとしてたくせに、今さら何言ってんだって感じだけども。
いやでも、あそこはお気に入りの場所だし。シュンちゃんと仲良くなった切っ掛けの場所でもあったから、オレにとってはスゴく特別な場所なんだけどさ。
「思い出に残るような、か……だったら、少し俺に心当たりがあるが……どうだ?」
なにやら、また自信ありげにサルフは口の端を持ち上げ笑う。思わず前のめりになる気持ちを抑えつつ、オレは耳を傾けた。
「因みにだが、本当はシュンにどうしたいんだ?」
まるで今日のコンディションを聞いてくるような。全く大したことないような調子で、こっちとしては答え辛いことを尋ねてきた。
今更だけど。もうすでに色々と吐き出しちゃった後だし。
「……とことん甘やかして優しくして、オレのことしか考えられないようにしたい。オレが居ないと生きていけないようになって欲しい」
この際だからとことんと素直に告げれば、オレの背をバシバシ叩きながらカラカラと笑い出した。
こっちに関しては笑うのか。いや、真面目な顔して受け止めてもらっちゃっても困るけれど。
「ははっ、それは確かに愛が重たいな……だったら、もういっそ婚約してしまえばいいんじゃないか?」
思いつきにしては、いい提案だと思っているのだろう。サルフは朗らかな笑顔のまま、あっけらかんと言い放った。しかし、オレは気が気ではなかった。ズバリ心の内を見透かされたような気分になっていたからだ。
よっぽど変な顔をしていたんだろう。オレを見つめる黄色い目が丸くなっていく。眉間には再びシワが刻まれていた。
「ん? なんだその顔は? 考えたこと、なかったのか?」
「い、いやー……一応、考えたことはあるけどさ……早くない?」
言えない。実はシュンちゃんに告白しようと決意していた時にはすでに、プロポーズしようと考えていたなんて。
サイズが間違ってたらイヤだから、それっぽい小箱まで買っちゃってさ。だからって、一緒に選ぼうねって空箱だけ渡すのも寂しいかなって、バラのブリザードフラワーまで用意していたなんて。
しかも、結局まだどっちも渡せていないだなんて。それどころか、オレが回りくどい告白をしちゃったせいで勘違いさせて泣かせてしまっただなんて。
絶対に、サルフにだけは、口が裂けても言えない。
だって、事あるごとに引っ張り出されるに決まっている。シュンちゃんの前でも結構しんどい。ましてや、ダンくんやライくんにグレイ先生、セレストさん。はては剣術部の先輩後輩の前でもポロッと言われたりなんかしたら。やっぱり、この秘密だけは死守しなければ。
まぁ、それはそれとして。やらかしちゃったお陰で、シュンちゃんの方から熱烈な告白を聞けたのは、怪我の功名だったのかもしれないけどさ。
「……だって、ついこの間だよ? シュンちゃんと恋人同士になれたの。初デートだって、まだ」
「昨日、家に行ったのはデートに入らないのか?」
どこか納得の言っていない顔をしている親友を納得させようと試みたものの大失敗。さくっと痛いところをつかれてしまった。
「う……そりゃあ、あれも立派なデートでしたけど……」
「だろう? そもそも、恋に出会った期間の長さは関係なかったんじゃないのか? そう貴様が言っていただろう。だったら、別にプロポーズが早くてもいいんじゃないか? 互いの気持ちさえ、同じ方を向いていたらな」
今すぐ蹴っ飛ばしたい。いつぞやに、したり顔でサルフにアドバイスしていたオレを。
というか、サルフは何でそう確信を持ったような顔をしているんだ。まるで、オレが勇気さえ出せれば、シュンちゃんは絶対に応えてくれるみたいな。オレと婚約してくれるみたいな。
根拠はない。けれども、その強い光を宿した瞳は信じられる。試合で心が折れそうな時に『俺達ならば必ず勝てる』と奮い立たせてくれるその眼差しは。
「……どうせなら、思い出に残るような場所でしたくない?」
いつものベンチでプロポーズしようとしてたくせに、今さら何言ってんだって感じだけども。
いやでも、あそこはお気に入りの場所だし。シュンちゃんと仲良くなった切っ掛けの場所でもあったから、オレにとってはスゴく特別な場所なんだけどさ。
「思い出に残るような、か……だったら、少し俺に心当たりがあるが……どうだ?」
なにやら、また自信ありげにサルフは口の端を持ち上げ笑う。思わず前のめりになる気持ちを抑えつつ、オレは耳を傾けた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
転生したらBLゲームのホスト教師だったのでオネエ様になろうと思う
ラットピア
BL
毎日BLゲームだけが生き甲斐の社畜系腐男子凛時(りんじ)は会社(まっくろ♡)からの帰り、信号を渡る子供に突っ込んでいくトラックから子供を守るため飛び出し、トラックに衝突され、最近ハマっているBLゲームを全クリできていないことを悔やみながら目を閉じる。
次に目を覚ますとハマっていたBLゲームの攻略最低難易度のホスト教員籠目 暁(かごめ あかつき)になっていた。BLは見る派で自分がなる気はない凛時は何をとち狂ったのかオネエになることを決めた
オチ決定しました〜☺️
※印はR18です(際どいやつもつけてます)
毎日20時更新 三十話超えたら長編に移行します
メインストーリー開始時 暁→28歳 教員6年目
凛時転生時 暁→19歳 大学1年生(入学当日)
訂正箇所見つけ次第訂正してます。間違い探しみたいに探してみてね⭐︎
11/24 大変際どかったためR18に移行しました
12/3 書記くんのお名前変更しました。今は戌亥 修馬(いぬい しゅうま)くんです
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる