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細マッチョな先輩と恋人同士になった件(ソレイユルート)
だから言ったじゃないですか
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俺のせいだ。俺が変に恥ずかしがってしまったせいで折角の機会が失われてしまいそうに。
思いがけなかった提案に慌てて顔を上げれば、温かい手のひらが頬に添えられた。
「大丈夫だよ。心配しなくてもシュンちゃんがオレとお風呂に入りたかったのは分かってるから。それでも恥ずかしい気持ちってのはどうしようもないからね。だから、シュンちゃんのペースでいいんだよ?」
ゆるゆると撫でてくれながら、続けて尋ねてきた声はことさらに優しい。つい甘えたくなってしまう。でも。
「っ……シュンちゃん!?」
俺は服の裾を掴んだ勢いのまま、思いっきり肌着ごとたくし上げた。
邪魔していた気恥ずかしさと一緒に服を脱衣カゴへと脱ぎ捨てる。素肌に触れた外気がひんやりと感じるほど体が熱くなってしまっている。でも不思議と気持ちは落ち着いていた。
「ソレイユ先ぱ……先輩?」
先輩は何故か手のひらで顔を覆っていた。隠すことが出来ない耳が、引き締まった首までもがほんのりと赤く染まっている。少しずつ後ずさりながら俺に向かって必死に弁明をしてきた。
「み、見てないからね? ちゃんとオレ、目も瞑ってるからね? だから、今の内にバスタオルで」
「隠しませんよ」
「え……?」
「隠しませんから……見て、いいですよ。俺ばっかりじゃあ不公平だし……先輩と流し合いっこしたいですから」
足を止めてはくれたものの、先輩が顔から手を離す気配はない。
「……いいの?」
「いいですよ」
「ホントに?」
「いいって言ってるじゃないですか」
俺が二度目のオッケーを出した後も先輩は「外すからね? 大丈夫?」と繰り返し確認してきた。気遣ってくれているその優しさは嬉しいんだけれど。
あんまりにも慎重過ぎるもんだから外してやろうかと距離を詰めて、手を伸ばしかけていたところでようやくだった。
「…………」
声になっていなかった。ひゅっと息を呑むような音しか聞こえなかった。そのまま唇を引き結んで、先輩は固まったように動かなくなってしまった。目線だけは除いて。
食い入るような眼差しがなぞるように見つめている。俺の頭の天辺から足先までを、じっくりゆっくり余すことなく。
視線そのものが触れることが出来ないのは当たり前だ。なのだけれども、肌に直に感じてしまう。焦がれるような熱のこもった視線が。
……成る程、これは確かに。
「えっと……どう、ですかね?」
こりゃあ感想を聞いてみたくもなっちゃうな。詳しく尋ねようとしてきた先輩の気持ち、分かったかも。
鍛え抜かれた長身が僅かにビクッと揺れた。整った顔に徐々に表情が戻ってくる。真っ直ぐだった視線が左右に泳ぎ始める。困ったように眉が下がり、頬が色づき、真一文字だった唇が上唇だけ拗ねたようにちょこんと前に出た。
「……可愛い」
「……どこが、ですか? 先輩は、その……特別好きな部位とかってないんですか?」
「あー……ゴメン、オレもだった……」
一度先輩は天井を仰いでから、照れた口元を隠すように顔の前で手を合わせた。
「……オレも選べない……全部特別だし、全部好き……シュンちゃんを構成している全部が可愛い……胸がシンドい……」
「っ……だ、だから言ったじゃないですか……」
そこはありがとうございますなのに。熱烈なことばかり言ってくれたもんだから、素っ気のない返事をしてしまっていた。
有り難いことに先輩は気にしないでくれたらしかった。目線を合わせてくれるように軽く背を屈め、両手で俺の手を包み込むように握ってくれながら、額を合わせてくる。
「うん……ね、キス……してもいい? 一回にするから。させてもらえたら、今度はお風呂から上がるまでちゃんと我慢するから」
「……必要なくないですか? 俺に許可を求めるの」
またしても俺は可愛くない調子で返してしまっていた。遠慮がちに甘えてくる眼差しから目を逸らして。
「……先輩がそう決めちゃっただけで、俺はいつでもって……先輩の好きな時にして欲しいって言ってるんですから」
握られた手に力が込められる。絞り出すような声が返してきた言葉は、またしても思いがけないものだった。
「……やっぱり、我慢する」
「え、何で……っ」
「マズいから」
「へ……?」
「今させてもらったら、キスだけで止めておけなくなっちゃう……そしたら、お風呂はまた今度になっちゃう……」
「…………」
今度は俺の番だった。声にならない声を上げてしまったのも、固まったように動けなくなってしまったのも。
思いがけなかった提案に慌てて顔を上げれば、温かい手のひらが頬に添えられた。
「大丈夫だよ。心配しなくてもシュンちゃんがオレとお風呂に入りたかったのは分かってるから。それでも恥ずかしい気持ちってのはどうしようもないからね。だから、シュンちゃんのペースでいいんだよ?」
ゆるゆると撫でてくれながら、続けて尋ねてきた声はことさらに優しい。つい甘えたくなってしまう。でも。
「っ……シュンちゃん!?」
俺は服の裾を掴んだ勢いのまま、思いっきり肌着ごとたくし上げた。
邪魔していた気恥ずかしさと一緒に服を脱衣カゴへと脱ぎ捨てる。素肌に触れた外気がひんやりと感じるほど体が熱くなってしまっている。でも不思議と気持ちは落ち着いていた。
「ソレイユ先ぱ……先輩?」
先輩は何故か手のひらで顔を覆っていた。隠すことが出来ない耳が、引き締まった首までもがほんのりと赤く染まっている。少しずつ後ずさりながら俺に向かって必死に弁明をしてきた。
「み、見てないからね? ちゃんとオレ、目も瞑ってるからね? だから、今の内にバスタオルで」
「隠しませんよ」
「え……?」
「隠しませんから……見て、いいですよ。俺ばっかりじゃあ不公平だし……先輩と流し合いっこしたいですから」
足を止めてはくれたものの、先輩が顔から手を離す気配はない。
「……いいの?」
「いいですよ」
「ホントに?」
「いいって言ってるじゃないですか」
俺が二度目のオッケーを出した後も先輩は「外すからね? 大丈夫?」と繰り返し確認してきた。気遣ってくれているその優しさは嬉しいんだけれど。
あんまりにも慎重過ぎるもんだから外してやろうかと距離を詰めて、手を伸ばしかけていたところでようやくだった。
「…………」
声になっていなかった。ひゅっと息を呑むような音しか聞こえなかった。そのまま唇を引き結んで、先輩は固まったように動かなくなってしまった。目線だけは除いて。
食い入るような眼差しがなぞるように見つめている。俺の頭の天辺から足先までを、じっくりゆっくり余すことなく。
視線そのものが触れることが出来ないのは当たり前だ。なのだけれども、肌に直に感じてしまう。焦がれるような熱のこもった視線が。
……成る程、これは確かに。
「えっと……どう、ですかね?」
こりゃあ感想を聞いてみたくもなっちゃうな。詳しく尋ねようとしてきた先輩の気持ち、分かったかも。
鍛え抜かれた長身が僅かにビクッと揺れた。整った顔に徐々に表情が戻ってくる。真っ直ぐだった視線が左右に泳ぎ始める。困ったように眉が下がり、頬が色づき、真一文字だった唇が上唇だけ拗ねたようにちょこんと前に出た。
「……可愛い」
「……どこが、ですか? 先輩は、その……特別好きな部位とかってないんですか?」
「あー……ゴメン、オレもだった……」
一度先輩は天井を仰いでから、照れた口元を隠すように顔の前で手を合わせた。
「……オレも選べない……全部特別だし、全部好き……シュンちゃんを構成している全部が可愛い……胸がシンドい……」
「っ……だ、だから言ったじゃないですか……」
そこはありがとうございますなのに。熱烈なことばかり言ってくれたもんだから、素っ気のない返事をしてしまっていた。
有り難いことに先輩は気にしないでくれたらしかった。目線を合わせてくれるように軽く背を屈め、両手で俺の手を包み込むように握ってくれながら、額を合わせてくる。
「うん……ね、キス……してもいい? 一回にするから。させてもらえたら、今度はお風呂から上がるまでちゃんと我慢するから」
「……必要なくないですか? 俺に許可を求めるの」
またしても俺は可愛くない調子で返してしまっていた。遠慮がちに甘えてくる眼差しから目を逸らして。
「……先輩がそう決めちゃっただけで、俺はいつでもって……先輩の好きな時にして欲しいって言ってるんですから」
握られた手に力が込められる。絞り出すような声が返してきた言葉は、またしても思いがけないものだった。
「……やっぱり、我慢する」
「え、何で……っ」
「マズいから」
「へ……?」
「今させてもらったら、キスだけで止めておけなくなっちゃう……そしたら、お風呂はまた今度になっちゃう……」
「…………」
今度は俺の番だった。声にならない声を上げてしまったのも、固まったように動けなくなってしまったのも。
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