気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件～恋人ルート～

細マッチョな先輩と恋人同士になった件（ソレイユルート）

じゃあ、デートしよっか？

　細い眉が八の字に下がり、形のいい唇から柔らかな微笑みが消えていく。中性的な整った顔が急にしょんもりと、今にも泣き出してしまいそうに歪んでしまったかと思えば長い腕に抱き締められていた。

「シュン……っ」

「おわっ」

　一体、どうしたというのか。訳が分からないが、直前の表情から予想するに何やら悲しませてしまったようではある。

　おかえりって言ってもらえるのが嬉しいって、そう伝えただけなんだが？

　考えてみたもののソレイユを悲しませてしまったであろう言葉は分からなかった。

　せめてとウェーブのかかったオレンジ色の髪へと、俺の肩に細い顎を乗せている彼の頭へと手を伸ばす。慰めるように優しく優しく撫でていると、ぎゅうぎゅうと抱きついてきていた逞しい腕の力が次第に緩んでいった。

「ゴメンね……寂しい思いをさせちゃって」

「いえ……って、え？」

　寂しいだなんて、いつ言ってしまったんだろうか。言わないようにしていたハズなのに知らない内に口走ってしまって？

　頭の中が疑問符でいっぱいになってしまっている俺と同じで、身体を少し離したソレイユも不思議そうな顔をしていた。

「……寂しかったんじゃないの？　だからおかえりが嬉しいって」

「あ……」

　そうか。ソレイユくらいに察しが良ければ、そのくらいの言葉でも分かってしまうのか。迂闊だった。

「ごめん、なさい……剣術部の鍛錬があるから、仕方がないって分かってるんですけど……」

「ああ、やっぱり寂しい思いをさせちゃってたんだね？」

「う……は、はい……」

　腰に回されていた手が伸びてくる。髪を整えてくれるみたいに頭を撫でてくれてから、頬にそっと添えられた。

　じんわりと伝わってくる温もりが、俺に実感を与えてくれる。ソレイユが居るんだって。居てくれて居るんだって。

「シュン……」

「はい……」

　かち合った眼差しが僅かに鋭く細められる。ひたすらに真っ直ぐに、俺を射抜くように見つめてくる。

「この先何があっても、オレは剣術を嫌いにはなれないと思う」

「はい、分かってます。それに……嫌いになって欲しくないです。剣を振るっている時のソレイユも……好きだから……」

　だから俺のことは気にせずに、これからもその道を邁進して欲しい。俺はただ、そんなソレイユの側に居させてもらうだけでいいから。

「ありがとう」

「いえ……」

　俺を見つめているオレンジの瞳は、もうさっきみたいに鋭くはない。いつもの優しい眼差しに戻っていた。この話はこれでおしまいってことなんだろう。ソレイユの表情も明るくなって。

「じゃあ、デートしよっか？　明日、お休みでしょ？」

「はい……って、えぇっ！？」

　流れが……！！　突然過ぎるっ！！　いや、嬉しいけどさ。

「いっ、今、そんな話、でしたか？　嬉しいですけど……」

「そんな話だよ。だって、オレにとってはシュンも比べられないくらいに大事で大好きじゃん？」

　俺のことを俺に聞かないで欲しい。それも自信満々な曇りのない眼差しで。

　そう言ってくれるのは幸せだし、ソレイユが日頃から俺に対してそう伝えてくれているから知っているけれども。

　顔に集まってきている熱をひしひし感じながらも、何故か得意気に口角を上げているソレイユから目が離せない。肯定してよ、とばかりの視線に自然と俺は白旗を上げていた。

「……そう、ですね」

「でしょっ？　だからさ、埋め合わせしようと思って。前々から計画してたんだ」