【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】最終日:妙案が浮かんだ、浮かんでしまった

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 視線を落とし、自身の身体を客観的に見る。筋肉が乗ることで厚めに盛り上がっている胸板。割れていると言っていい腹筋は凸凹としており、たるみもさしてなく、皮下脂肪も指先で摘める程にもない。

 兵団長であるレダ殿や、彼の親愛なる部下である精鋭の方々には年齢故の衰えも含めて劣るやもしれない。が、及第点くらいは上げても良いのではなかろうか。

 我らが太陽と星が愛する国を守る為、自身の使命を果たす為、それ故に必要だっただけ。ただ誰よりも丈夫な身体を、鋭敏な反射神経を、機動力を。体力、魔力の持久力をと。それらを得る為に為すべきことを為していただけなのだが。

 まさか可愛らしい妻の視線を惹くことが出来る武器にもなるとは。

 ……良く頑張りましたね。しみじみと過去の自分自身を褒めていると、妙案が浮かんだ。浮かんでしまった。

 アオイの好みを取り入れて鍛えれば、もっと私に見惚れて頂けるのでは?

 最近は大切な新婚旅行中ともあって、鍛錬が疎かになってしまって……否、私がいけないのだ。欲深いこの私自身が。時間を取ろうと思えばアオイがお休みになられている最中にいくらでも取ることが出来る。

 しかし、そうしないのは、ひとえに私の我儘。愛しい妻を腕に抱いたまま、ただ微睡んでいたい。彼の柔らかな胸元に頬を寄せ、優しい鼓動を聞いていたい。そのような欲を思う存分に満たしてしまっているだけなのだから。

 結論に至ってもなお、うだうだと回りそうだった思考を無理矢理止める。此方に関してはこれ以上考えていると深みに嵌ってしまいそう。後ろ向きな考えが浮かんできてしまいそうだ。

 そのようなことよりも。

「アオイ」

「う、うん……なあに、バアル?」

「アオイは、どのようなお身体がお好みで? どちらの部位を、どの程度鍛えれば、今まで以上に私の身体に見惚れてくれますか?」

 前向きに、さらなる高みを目指す方が余程有益だろう。

「えっ、ぅ……」

 不思議そうに見つめていた眼差しが驚きに見開かれる。元の白さを取り戻しかけていた頬が、愛らしく赤く色づいていく。

 薄っすらと滲んだ、丸い琥珀色の瞳に映れたのは僅かな間で。アオイは小さな体を更に縮めるように背筋を丸めながら、視線を手元のガラス瓶へと落としてしまわれた。

 細く可憐な指が、また瓶に触れる。私の羽と似た、ツルリと光沢のある表面に親近感を覚えたのも束の間。年甲斐もない、薄暗い感情が胸の内に滲んでしまう。

 指心地の良さであれば、明らかに私の羽の方が勝っているというのに。私を愛でて頂ければ宜しいのに。

 つい向けてしまっていた物欲しげな視線をアオイはどのように勘違いなされたのだろう。ぱちりと目が合うと分かりやすいくらいに慌て始めた。
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