【完結】間違って地獄に落とされましたが、俺は幸せです。

白井のわ

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【新婚旅行編】最終日:であれば、教えて差し上げなければ

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 良い知らせであると分かったのであろう。誰かは分からぬが、ホッと息を吐いた。

「このまま魔力の乱れがなければ、たとえ罪を犯した人間が増えようとも我らの国に穢れが発生することは二度とないであろう」

「とはいえ油断は禁物じゃ。今は良くても、今後不測の事態が起こってしまうとも限らん。無論、その為の対策はすでに取っておるがの」

「大樹の魔力量、魔力の流れの測定。それから、大樹の衰えを少しでも防ぐべく、兵士数人で直に魔力の供給を行っておる」

「では、レダ殿が居なかったのは」

「うむ。大樹の件と共に、以前穢れていた大地の様子を数人の部下と共に見に行ってもらっておるのだ。午後には帰ってくるであろうが」

 バアルは納得したように小さく頷いたが、彼の膝の上に座るアオイ殿は何やら不安そうである。愛らしい顔から笑顔が消えてしまっておる。

「アオイ殿」

「はい」

「気になることがあれば、何でも聞いてくれて構わぬぞ」

 促せば、アオイ殿の表情が僅かに和らいだ。それじゃあ、と遠慮がちに尋ねてくる。

「……毎日、行っているんですか? その魔力の供給って」

「うむ」

 頷けば、アオイ殿の表情が忽ちくしゃりと歪んだ。致し方がないことである。魔力を渡すということは、自身の体力を削るということ。その量によっては、渡す側の方が命を削りかねない。不安なのであろうな。

「なに、心配することはない。その日、特に調子が良いものを派遣しておるし、供給する魔力量自体も皆の負担にならない程度に抑えておる」

「そもそもですが、我らが神が遺された大樹のお陰で一部の人間様の反乱は一切起きなくなりました。ですから、その為の毎日の見回りも必要無くなりました故」

 私の言葉にすかさずレタリーが付け加えても、アオイ殿の不安を完全には拭えていないようだ。まだ、その細い眉は下がったまま。表情も曇り空のまま。
 こればかりは、バアルが宥めるように彼の背を撫でたところでも効果は薄いようである。

 これは、確かな意見とデータを元に更に言葉を重ねるより他はない。

「兵士達から意見を募ったが、寧ろ遠征が楽になったとのことだ」

「え……」

「元々、彼らに向かってもらっていた先は穢れの侵食が進んでおった土地であるからな。そちらへと向かう際の魔力量の消費に比べれば、大樹への魔力供給は微々たるものである。どうだ? 多少は胸のつかえがおりたかな?」

「はい……」

 納得は出来た。安心もした。だが、まだ何やらモヤッとするといったところであろうか。優しい彼のことだ。何か自分が力になれることはないだろうかと考えておるのであろう。

 であれば、教えて差し上げなければ。すでに十分に皆の力になれていると。

「ああ、そうであった、そうであった。このような意見もあったな」

「……どんな意見か、お聞きしても?」

「うむ」

 遠慮がちに尋ねてきた彼に頷いてから、私は微笑みかけた。

「アオイ殿の焼き菓子が恋しいと」

「っ、」

「どうやら、皆、貴殿の差し入れに随分と元気をもらっておったようであるぞ?」

 目を丸くして息を呑んだかと思えば、表情を明るく輝かせる。しかし、満面な喜びを見せてくれたのは束の間で、すぐさま照れが混じっていった。
 コロコロと表情を変えているアオイ殿をバアルは得意気に微笑みながら見つめ、羽をはためかせる。

「アオイ様の焼き菓子は美味しいですもんねっ」

 これまた得意気に、自信満々に、そして無邪気に。グリムがその小さな鼻を鳴らしながら言い放ったことで、微笑ましい表情が見えなくなってしまった。バアルの胸元に顔を寄せながら縮こまってしまわれた。真っ赤な耳は隠せてはいなかったが。
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